「カルチャー」の記事

その面倒な組織カルチャー、印鑑が原因ですよ

藤田朋宏の必殺仕分け人 第4回

その面倒な組織カルチャー、印鑑が原因ですよ

2019.03.18

印鑑業界による印鑑文化の優位性アピールが話題

会社経営者として感じる、捺印作業の面倒さ

「サイン文化」と「印鑑文化」で変わる組織カルチャー

行政手続きのオンライン化を目指す「デジタル手続き法案」をめぐり、全日本印章業協会がアピールした「印鑑のメリット」が話題になっている

「代理決済できるという印章の特長が、迅速な意思決定や決済に繋がり、戦後の日本経済の急速な発展にも寄与してきた」(原文ママ)というものだ。

「ハンコならこっそり代理決済ができる」などと、身も蓋もなく自ら印鑑廃止を後押ししてしまいかねない意見が出てしまったことは興味深い。
でも僕は、ただのバイオテクノロジー屋なので、ITを活用した効率化しますよ業界の回し者でもなければ、印鑑業界の人を敵に回すメリットだってないので、特にこの点について深く言及しないし、「日本における今後のハンコをどうするべきか」なんてことを掘り下げて云々するつもりもない。

ただ、日本を含む4カ国でスタートアップを立ち上げた経験から、企業の組織カルチャー形成に、承認方法としての「印鑑」と「サイン」の違いが、とても大きな影響を与えているのではと実感した話を書いておきたい。

日々、何かと多すぎるハンコ作業

まず共有しておきたい事実は、日本で会社を経営すると、毎日ものすごい数の代表印や銀行印や社印を押さなければいけないということだ。(会社の印鑑って3種類あるの知ってました?)

お客さんと契約してお金をいただくときに契約書に捺印するのはイメージできると思うが、その後もお金が銀行口座に無事入るまで、受領やらなにやら契約書だけでなく、さまざまな書類にとにかく捺印をしまくる必要がある。

また、家賃を払う、プリンターのトナーが切れる、実験試薬を買うなどなど、とにかく会社を運営する活動の一つ一つに対して、それぞれ細かくおびただしい数の印鑑を押す。法人が国や地方自治体に税金を払う時はもちろん、社員のあれこれも、例えば社員の誰かが結婚したり引っ越したりするだけでも印鑑を押しまくる。自分で会社をやってみてつくづくわかったが、とにかく捺印の数が膨大だ。

しかも、びっくりすることに、民間企業も市町村も、同じことをするために、それぞれがまったく違うフォーマットの書類に捺印を求めてくる。

こうして、大量な上にフォーマットがまったく違う書類を毎日渡されて、決められた位置に決められた種類の捺印をすることは、仮に契約書や書類の中身をまったくチェックしないで無責任に捺印したとしても、結構な時間を必要とする作業だ。

捺印にかける時間が惜しい

しかもうわの空で押していると、銀行印を押すべきところに代表印を押し間違えてしまったり、インクが簡単にかすれてしまったりするのが印鑑だ。人生において、こんな捺印ミスなどという程度のことで書類を作り直してもらう羽目になった回数を考えただけで、こんな単純な作業に失敗する情けなさとと、書類を作ってくれる従業員への申し訳なさで、どこかに隠れてしまいたい気持ちになる。

そう、僕は毎日、隠れてしまいたい気持ちになっているのだ。

なぜ、日本から印鑑はなくならないのか

我々の会社のように、たとえ社長だろうがあっちこっちに、営業に謝罪にと、せわしなく飛び回わることで、なんとか会社の体を保っているような規模の企業の方が世の中には多いと思う。そんな"貧乏暇なし社長”がこの捺印という物理的作業に忙殺される時間というのは、正直いって無駄以外の何物でもない。

にもかかわらず印鑑を押すという文化が日本に残っているのは「捺印するという作業」は、誰かに頼めてしまうからなのだと思う。多くの会社において「捺印をし続けるという作業」を自分でやっている社長はあまり居ないのかもしれず、ここが、すべて自ら書かなければいけないサインとの最大の違いなのだろう。

ちなみに、僕の場合は「捺印をし続けるという作業」だけを人に頼むような仕事の依頼の仕方は好みではないので、あちこちに会社を立ち上げては、担当者に「代表取締役」の役職ごと譲るようにしている。

海外の「サイン文化」は印鑑以上に面倒?

冒頭にも書いたが、僕は日本以外の3カ国でも会社を経営している。言うまでもなく日本以外の国は、承認の証としては「サイン」が一般的だ。

日本の会社同士の契約書の場合は、代表者の名前の脇に代表印と社印を、契約書を閉じた裏面に割印を一カ所押す形式であることが多い。つまり、二者間の契約であれば、先方用の契約書と当方用の契約書をあわせて、計4カ所の代表印と計2カ所の社印を押せばよい。

ところが、海外の契約書は、すべてのページにサインをしなければならない。海外の契約書は「実際にそんなことは起きないって」ってくらい、ありとあらゆる場面を想定した契約書になっていることが多く、とにかく契約書が長い。

感覚として、同じような内容の契約をするのに、日本の会社同士の契約の5倍~10倍のページ数になっても驚かない。

つまり、ちょっとした契約書でも軽く100ページを超えてくるわけだが、このすべてのページに手書きでサインをすることを想像して欲しい。契約書の中身を読んでただただサインを書き続けていると、「こんな作業に時間を使い続けてていいのだろうか」という自問の気持ちが芽生えてくる。

その組織カルチャーの差、ハンコとサインの差が原因ですよ

言うまでもなく、サインは誰かに代わりに書いてもらうことはできない。では、サインを書く物理的な時間を減らすために、何が起こるのかというと、「権限委譲」が進むのである。

日本の会社だと当たり前のように社長の名前で締結する規模の契約でも、海外の会社だと担当部長あたりの名前で契約を締結してくる。

もしかしたら、日本の会社のカルチャーだとそれは失礼なことに当たるのかもしれないが、サインを前提とした会社において、会社のすべての契約を社長名義で契約していたら、社長の一日は「サインを書く」という作業だけで終わってしまう。だから、どんどん権限委譲をしていくしかない。

日本の大企業の合意形成や意思決定のあり方を分析する文脈において、「日本の会社は権限委譲が進んでいない」とか、「プロジェクトごとの意思決定者の所在がよくわからないから、スピード感が遅くなってグローバル競争に負けてしまう」などという指摘を頻繁に見る。

特に近年流行りの「日本企業のホワイトカラーの生産性を高めましょう」という議論の多くでは、日本企業のこういった特殊性の原因を、日本人の歴史的・文化的背景や、国民性が理由であると結論づけている。

だからもっぱら、風通しがよく責任範囲が明確で、意思決定の早い会社にするために、せっせと組織構造をいじったり、管理職に研修をしたりと、コンサル屋さんが儲かるだけの努力に大きなお金を払うことになっているのだが、大きな効果が得られているようにみえない。

僕の考えは、特殊性の理由がちょっと違っていて、「その組織カルチャーの差って、捺印とサインの差が本質的な原因ですよ」と、わりと確信に近い自信を持っている。

捺印の作業だけを誰かに頼むのではなく、捺印をする権限ごとどんどん頼んでしまえばいい。ハンコにウンザリしている世の中の社長さん、そう思いません?

(藤田朋宏:ちとせグループ 創業者 兼 最高経営責任者)

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うんこミュージアムで一躍話題に、「アソビル」は横浜の新名所となるか

うんこミュージアムで一躍話題に、「アソビル」は横浜の新名所となるか

2019.03.15

「うんこミュージアム」で話題になった横浜の新スポット「アソビル」

体験型コンテンツ、飲食店、クラフト教室など多種多様な内容を展開

目指すは年間200万人来場、コンテンツの試金石として運営

“うんこミュージアム”という強烈なインパクトを持つキーワードが一時SNSを騒がしたが、これは横浜駅東口に3月15日より開業する複合施設「アソビル」の一角にある期間限定コンテンツ「うんこミュージアム YOKOHAMA」のことだ。

内覧会でも一番の賑わいを見せていた「うんこミュージアム YOKOHAMA」

実はこのインパクト大な催し以外にも、「アソビル」では数多くの店舗・エンタメコンテンツに触れることができる。百貨店やショッピングモールが目立つ横浜駅東口エリアには、これまでなかったタイプの施設だ。その開業の狙いについて、施設内の様子を交えてお伝えしたい。

「アソビル」外観

「うんこ」だけではない、エンタメ複合施設

「(うんこミュージアムに関して)ここまでの反響があるとは予想外でした」

「アソビル」を運営するアカツキライブエンタテインメント(ALE) 代表取締役 CEO 香田哲朗氏は、SNSでの盛り上がりについてそう語った。強烈なインパクトの「うんこミュージアム」に注目が集まっているが、「アソビル」は複合型エンターテインメントビルを謳っており、さまざまなコンテンツを提供しているため、そちらも楽しんでほしいともコメントした。

古い歴史を持つ日本郵便別館ビルをリノベーションして作られた「アソビル」。B1F~屋上(5F)の6フロア構成だが、3月15日の開業段階では、以下の4フロアを中心とした営業となる。

■1F:横浜の有名店や都内の人気店が集結

1Fの名称は「横浜駅東口 POST STREET」、飲食店と常設アートのフロアだ。

1店舗ごとのスペースは小ぶりで、軒を連ねる屋台のようなレイアウト

出店ラインアップはシウマイで知られる「崎陽軒」のバル業態をはじめ、「横浜らーめん 壱六家」、「丿貫(へちかん)」といった人気ラーメン店、 「野毛焼きそばセンターまるき」、ピンチョス専門店「Spinx」など、横浜にゆかりを持つ店が集う。

蒸したての崎陽軒のシウマイ盛り合わせが食べられる
ひとつ150円~のピンチョスとワインなどをペアリングして楽しむ「Spinx」

一方で、横浜初出店となる都内の人気店も。麻布十番の人気ドーナツ店「DUMBO Doughnuts and Coffee(ダンボ ドーナツ&コーヒー)」や新宿はじめ都内中心に展開している「もうやんカレー」のほか、青山のチーズ専門店の別業態「DAIGOMI BURGER」など、合計18店舗がオープンする(※一部店舗は3月下旬~4月以降に開業)。

「DUMBO Doughnuts and Coffee」は、シドニー発の「テラボールシェイク」風にドリンクの上にドーナツを載せてInstagramに投稿されることでも知られる人気店。ドーナツは大きさに反して軽い食べ応え
チーズのシズル感が目をひく「DAIGOMI BURGER」

■2F:「うんこミュージアム」ほか体験型コンテンツを提供

2Fは「ALE-BOX」、映画館のシアターのような扉が複数立ち並ぶフロアで、各部屋で異なる体験型コンテンツを楽しむことができる。「うんこミュージアム」があるのもこの階だ。コンテンツは定期的に入れ替わる。

「ALE-BOX」フロアは体験型コンテンツの集合シアターのような趣
インスタ映えならぬ「うんスタジェニック」を狙う一角。このコンテンツは面白法人カヤックがALEと共同で企画。会期は7月15日まで

話題の「うんこミュージアム」、“ミュージアム”と銘打っているが、内覧した感触としては、スタッフのアテンドの仕方や設置内容などが、池袋のナンジャタウンなどの施設に近い雰囲気。「インスタ映え」するスポットも多く、グループや親子連れでの来館向きとなっていた。

オープン時は、SCRAPが提供する脱出ゲームや、キングコング・西野亮廣氏の絵本「えんとつ町のプペル」の世界を表現したVRコンテンツ、体験型ショートフィルム「THE STORY HOTEL」が展開される。

「リアル脱出ゲーム」を提供する「横浜ヒミツキチオブスクラップ」。オープン時には2つのコンテンツが展開される
「えんとつ町のプペル」VRコンテンツは、VRが得意な「奥行き」と「浮遊感」が活かされた構成。脅かす要素はないのでVR初心者でも安心して楽しめる

■3F:作家からレクチャーを受けハンドメイドを体験

3Fは「MONOTORY」、「ものづくりワークショップ」のためのハンドメイド体験フロアだ。

他のフロアと比べゆったりとしたレイアウトとなっており、多数の講師が一度にレクチャーを行える
アクセサリーや彫金加工、陶芸、レザークラフト、食品サンプルなどさまざまなジャンルの手仕事を体験できる

手仕事のレクチャーのほか、3DプリンタやUVプリンタ、レーザーカッターなどの機材も設置。20ジャンル、200種類以上の「ものづくりワークショップ」を展開予定となっている。

UVプリンタなどの機器も設置されており、ハンドクラフトのみならず、デジタルファブリケーションにも触れられる
内覧会当日は、好みの施設のマスコットキャラと枠を選び、名入れをしてUVプリンタでオリジナルキーホルダーを作るコーナーが展開されていた

■RF:元プロ選手に教わるスポーツ教室を実施

屋上は「マルチスポーツコート」として、フットサル・バスケットのコートを1面ずつとれる広さのコートを用意し、3月1日より運営をすでに開始している。この2競技に限らず野球から最新アクティビティなどの実施も予定する。

駅至近にありながらスポーツを楽しめる

このほか、B1Fにバーラウンジ「PITCH CLUB」(3月15日はプレオープン、グランドオープンは4月5日)、4Fに子供向け施設「Puchu!」(5月初旬オープン)がある。

バーラウンジ「PITCH CLUB」

東口のあらたな目的地となれるか

1つのビルにこれだけ多数の要素の「アソビ」を盛り込んだこの施設だが、横浜東口の開発想定エリア内に位置しており、期間限定の運営を前提として開業する。説明会では「最低3年は営業する」と明言されたが、再開発の動向を見て営業期間を判断するという。

駅出口からアプローチした場合アソビルそのものは見えないため、横浜中央郵便局を目印に、向かって右手にある「みなみ東口通路」を進むことになる

横浜駅東口エリアに隣接するみなとみらいエリアには、資生堂など大企業の本社機能が移転される。そういった意味でも今後、同エリアの人の流れは増加することが予想される。

同施設の各コンテンツに対する予約動向も明かされた。年齢は30代を中心に前後10歳がボリュームゾーンとなっており、男女比率はやや女性が多くなっていたという。予約者の住所は、7割の人が神奈川県、次いで都内が2割、そのほかは日本各地、海外の合計で1割となる。まずは地元民の心をどれだけつかめるかということになりそうだが、ALE香田社長はそのフェーズを越えて「今後はインバウンド含め、旅行の目的地としてより多くの人に来てほしい」と展望を語っていた。

こうした背景を受けてか、初年度の目標は「200万人来館」と大きな数字を掲げる。今後5年以内に日本では主要都市を中心に展開、海外展開も意欲的に行う。「アソビル」は館全体でもフロア単位でも横展開が可能であるとし、この施設での反応を見て、多店舗展開の内容を決めていくという。各コンテンツの反響を見る試金石としての役割を重要視しているようだ。

その一方で、横浜観光という視点でみれば、横浜駅東口エリアはショッピング目的の来訪であれば利便性に長けているものの、観光面での魅力は多いとは言えなかった。

また、同施設ほど近くに大きなレストランを運営している崎陽軒を例にとっても、価格帯が高めであったり、混雑するため予約なしに立ち寄るのは難しかったりと、横浜ならではの飲食店を気軽に利用するのは意外に難しい。そのため、アソビル内の多様な体験コンテンツや飲食店は、観光客にとっても見どころのあるものになっていると感じた。

「アソビル」は「うんこミュージアム」を起爆剤に横浜駅東口の新しいにぎわいを創出できるか、オープン以降の動きに注目していきたい。

NHK受信料「ワンセグ携帯」に支払い義務、最高裁確定で注意すべきこと

NHK受信料「ワンセグ携帯」に支払い義務、最高裁確定で注意すべきこと

2019.03.13

ワンセグもNHK契約義務、初めて最高裁で認められる

テレビと無縁でも契約該当する可能性、心配ならiPhoneを

テレビ離れ進めば、徴収手段もどんどん広がる?

ワンセグ携帯を持っているだけで、NHKと受信契約を結ぶ義務が発生することが確定した。

ワンセグ携帯でのNHK受信契約義務をめぐる訴訟は複数起こされていたが、最高裁は3月13日、そのうちの1件について、契約義務があるとしていたNHKの勝訴を初めて確定した。スマートフォンや携帯電話といった、本来はテレビ視聴を目的としない機器であっても、ワンセグ機能を搭載していればNHKと受信料契約を結ぶ義務が生じると認められた。

NHKは、受信契約義務のある受信機の設置数のうち、「ワンセグ機能付き携帯電話のみを設置されている方の割合は約0.3%と推計しています」と、影響範囲の狭さを説明している。ただしワンセグ機能は、特に国内主要キャリアが近年取り扱った国内メーカー製のスマホ・携帯電話では、ほとんどの機種で標準搭載されてきた。実際には0.3%以上の人に影響が及ぶ恐れもある。

今回の件を受けてワンセグ所持により契約義務が発生した場合、NHKの定める「地上契約」に該当すると考えられ、月額で1,260円から、年額前払い割引でも13,990円の支払いが必要だ。

またNHKは受信料契約について、生計をともにする同一世帯では、受信機器の数にかかわらず1件の世帯ごと契約でかまわないとしているが、単身赴任や、大学生(未成年含む)の子供のひとり暮らし、2世帯家族で生活費が別々などの場合は、家族であっても別途の受信料契約が必要(家族割引あり)になる場合があるとしている。家族の所持するスマホについても、ワンセグ機能の有無を確認しておく必要があるだろう。

NHKの視聴はしないが、スマートフォンは無いと困るという場合は、海外メーカーのスマートフォンであればワンセグ機能を搭載しないモデルを選べることがあり、特にアップル社のiPhoneであれば全機種でワンセグ機能を搭載していない。スマートフォンの細かな機能などを把握できないのであれば、iPhoneを選んでおけば間違いないだろう。

NHKは従来から、「NHKのテレビの視聴が可能なパソコン、あるいはテレビ付携帯電話についても、放送法第64条によって規定されている『協会の放送を受信することのできる受信設備』であり、受信契約の対象」と説明してきた。

またNHKは、2019年4月の開始を目指し、テレビ放送のインターネット常時同時配信の準備を進めている。放送法の不備を指摘したい人々の間では「インターネットに接続するだけで契約義務が生じるようになる」と喧伝する声も根強いが、インターネットというネットワークの相互接続で成り立っているインフラを利用する側にいながら、その上でいちコンテンツ提供者以上の何らかの権利を主張できるはずがない。