「オリンピック」の記事

パナソニックの映像制作会社が脚光を浴びる日、オリンピックや体験型消費が追い風

パナソニックの映像制作会社が脚光を浴びる日、オリンピックや体験型消費が追い風

2018.10.12

パナソニックの名を冠する映像制作会社「パナソニック映像」

プロジェクションマッピング需要、スポーツ需要の拡大で注目

映像コンテンツ領域でもパナソニックならではの強みで戦う

パナソニックには、映像コンテンツ制作を行う100%出資会社として、パナソニック映像がある。パナソニックグループ唯一の映像製作会社だ。

「映像先進企業」を目指す同社は、設立から25年間、長年にわたって培ってきたコンテンツ制作力とパナソニックが持つ先進技術を組み合わせて、最新の映像ソリューションや様々な場面で活用できる空間映像演出を提供している。

昨今ではプロジェクションマッピングの需要拡大や、スポーツイベントを中心としたパブリックビューイングの需要拡大によって、同社の取り組みに注目が集まっている。

そのパナソニック映像が、10月10日、11日の2日間、東京・有明のパナソニックセンター東京で、「パナ映展」を開催し、最新の映像ソリューションを紹介した。

ご存知でした? パナソニックの映像制作会社

パナソニック映像の宮城邦彦社長

パナソニック映像の宮城邦彦社長は、「映像コンテンツ制作を通じて、パナソニックの最先端技術を映像業界に提供する役割を担っているのがパナソニック映像。今後、パナソニック以外の外部企業との商談を拡大し、現在は3割の外部比率を、4割、5割と高めていきたい」と意欲をみせる。

パナソニック映像は、1990年に松下電器産業(現パナソニック)の宣伝事業部傘下として設立された「エクセルAVソフト」と、1970年にビクター、松下電器産業、TBS、電通によって設立された「パックインビデオ」の2社が前身となり、1993年6月に設立した。松下電器産業が1990年にMCAを買収してソフトウェア事業へと本格的に進出したタイミングとも重なったことで、映像コンテンツ制作において長年ノウハウを蓄積。パナソニックが、2006年に、MCAの株式をすべて売却したあとも、継続的に事業を進めてきた。

「パナソニックの冠をつけた企業は、1993年のJリーグのスタートとも設立したパナソニックガンバが最初。だが、現在ではガンバ大阪となっており、現存するパナソニックの冠につけた会社のなかでは、パナソニック映像が最も古い会社になる」と、パナソニック映像の宮城社長は胸を張る。

現在、社員数は108人。大阪・京橋に本社を置くほか、東京・品川の東京制作センター、中国・上海の松下広告有限公司を持つ。

新たな映像制作技術のラボとしての役割も

同社は、映像制作、空間演出、ポスプロ・撮影、番組制作の4つの重点事業で展開している。人工知能やARなど、パナソニックが持つ最新技術を活用することで、新たな映像制作へも挑戦する「映像ソリューションラボ」としての役割も担っているという。

たとえば、パナソニックの顔認証技術を活用して、放送コンテンツの顔やナンバー、ロゴなどを自動検出し、その部分を自動的にプライバシー保護。ここで特定の人以外はマスクをかけるという作業を、従来の手作業から自動化に転換するといったソリューションを開発している。

また、高精度3Dスキャン技術を活用して生成したデータに、ボーンを入れアバターとしてCG画像化するソリューションも開発している。これにより、ダンスのできない人が、アバターとして、アクロバティックなダンスまで披露できるという使い方が可能だ。

3Dスキャンをしたアバターがダンスを披露する
身体全体の3Dスキャンを行う装置。70台の4Kカメラで撮影する

特に力を注いでいるのが、バーチャルリアリティやドローンを活用した映像制作だ。社内には新規技術に取り組むR&Dグループと、新規ビジネスを創出するソリューショングループを設置しており、これら最新技術を活用した映像ソリューションに取り組んでいる。

フォログラムでの3D映像を表示するデモストレーション
様々な素材に対しても映像表示を行うことができる

今回のパナ映展では新たに、ゴーグルを使わないVR技術として「TRICK MAPPING」を公開。三つ投影面の組み合わせ立体感を持たせたステージにキャラクターを表示し、利用者の持つデバイスが位置関係を把握することで、それに応じてキャラクターを表示するアングルが変わる。このデバイスを高い位置にあげると上から見下ろした形になり、しゃがみ込むと下から見え上げる映像が表示される。「ゴーグルを使用すると、一人でしか体験ができないが、この技術を利用することで、多くの人が一度に体験を共有することができる」という。

ゴーグルを使わないVR技術「TRICK MAPPING」(c) UTJ/UCL
利用者が手に持つデバイスで位置情報を検出。それにあわせてキャラクターが動く

他にも新たな映像提案として、同社の体幹トレーニング機器である「コアトレチェア」とVR映像を組み合わせて、川下りをしているような雰囲気のなかで自然とトレーニングができるシステム。照明、音、気流、香りに映像を組み合わせて、眠りを誘引する仮眠環境システム。直径4.5メートルのドームに3D映像を映し出し、アクティブシャッター方式3Dメガネで視聴することで、花火の打ち上げ場所から上がった花火を見上げるといった、普段は体験できない映像を見ることができる高画質3D VRドームなども展示していた。

コアトレチェアとVR映像を組み合わせて、川下りをしているような雰囲気のなかで、自然とトレーニングできる。映像とコアトレチェアの動きはまだ同期はしていない
直径4.5メートルの3D VRドーム

一般回線で遅延なくライブ プロジェクションマッピング

今回のパナ映展で注目を集めていたのが、遠隔ライブ映像をプロジェクションマッピングし、映像だけでなく音声も遅延なく投影するソリューションの実演だ。

特筆されるのは、パナソニックのテレビ会議システムである「HDコム」を利用し、2点間の同期制御を実現したことである。

一般的に、遠隔地と結んだ映像の同期は、伝送の遅延を緩和するために専用線による回線確保が必要であるため、コストが上昇してしまうなどの課題があった。

今回のソリューションは、HDコムの技術を活用することで、一般回線を利用しながらも、映像や音途切れが発生しにくい安定した接続環境を維持する。ライブ中継にも使用できる高画質と高音質を実現しながら、低遅延のため、補正バッファリング容量を抑えることが可能になる。

「HDコムは、もともと会議用に開発された技術ではあるが、しゃべっている映像と音声がずれることなく表示され、違和感なく会議ができることにこだわってきた。AVタイミングが100ms周期で細かく制御されており、音声ラインに、タイムコード信号を一緒に乗せて伝送することで、オーディオ、ビジュアル、タイムコードの同期運用が可能になった」(パナソニック映像の宮城社長)。

遠隔ライブ映像を投影したプロジェクションマッピングのデモストレーション。映像と音声は品川からの中継

実演されたライブプロジェクションマッピング(Wonder Biz Media Entertainment TOKYO 2018)は、東京・品川のパナソニック映像 東京制作センターで演奏するバイオリン奏者の映像と音に、パナソニックセンター東京での音と光、映像を組み合わせて合成処理したもの。3台の超高輝度4Kプロジェクター(製品はPT-RQ32KJおよびPT-RQ22KJで構成)を使用して、東京・有明のパナソニックセンター東京の建物の壁面に1,200インチの映像を、床面に800インチの映像をそれぞれ投影した。

壁面1200インチ、床面800インチのプロジェクションマッピングを実現

品川のスタジオで演奏したのは、バイオリニストの依田彩さん。そして、パナソニックセンター東京では、音楽家の江夏正晃さんがDJとして出演。離れた場所にいる2人のミュージシャンが、見事にライブセッションを実現してみせた。

Wonder Biz Media Entertainment TOKYO 2018の様子

盛り上がるオリンピック需要、常識外の挑戦がしたい

パナソニック映像の宮城社長は、「東京オリンピック/パラリンピックの開催や、ワールドカップの開催などを通じて、パブリックビューイングやプロジェクションマッピングの需要が増大する。また、2020年以降のビジネス拡大に向けて、パナソニックグループ以外のビジネスも拡大していくことを狙っている。そのためには、これまで以上にコストパフォーマンスが高い形で、コンテンツ制作や機器の利用および運用が可能な仕組みを構築する必要がある。パナソニック独自のHDコムを活用したライブプロジェクションマッピングは、安価に、安定性のある映像の伝送を可能にするという点でも武器になると考えている」と話す。

パナソニック映像では、吹田スタジアムにおけるガンバ大阪のプロジェクションナイトや、東京・天王洲での天王洲活性化プロジェクトでのプロジェクションマッピング、大阪・門真のパナソニック歴史館/ものづくりイズム館でのプロジェクション投影などでも実績を持つ。

「イベント企業から、なぜこんなことを実現するのにこだわるのか、といわれるような常識外の挑戦もしてみたい。ライブプロジェクションマッピングは、その一例。既存の技術だけでは成し得ないものを成し遂げた。要望があれば、様々なことに挑戦をし、それを実現していきたい」と宮城社長は語る。

近い将来には映像機器だけではなく、映像コンテンツの領域においても、パナソニックが持つ技術を活用した、パナソニックらしい強さが見られるだろう。

オリンピック恐慌もなんのその「台湾・香港」がインバウンド最良顧客の理由

オリンピック恐慌もなんのその「台湾・香港」がインバウンド最良顧客の理由

2018.09.10

台湾・香港人に特化したインバウンド事業を行う企業

ターゲット設定のカギは”費用対効果”にあり

オリンピック恐慌の影響を受けない安定市場で勝機を狙う

地方でよく、アジア系訪日外国人を多く見かけるようになった。

「東京や大阪、京都といった、メジャーで人気のある観光スポットを回る『ゴールデンルート』ではなく、なぜここに?」と疑問に思った経験のある人は多いのではないだろうか。

この動きをコントロールする企業の1つが、台湾・香港人向けに日本の情報を発信するメディア「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」を運営するジーリーメディアグループだ。

ラーチーゴー!日本

(日本語での紹介サイトはコチラ)

同社では、北は北海道、南は沖縄まで計10のエリアにわたって、外国人客を呼び込んで地域の活性化につなげたい企業や自治体などと連携し、ゴールデンルートから外れた地に台湾人・香港人観光客を呼び込んでいる。

しかし、なぜ同社は市場の大きな中国や韓国ではなく、台湾、香港を主要ターゲットとしたインバウンド事業を行っているのか? 代表取締役社長の吉田皓一氏に話を聞いた。

ジーリーメディアグループ 代表取締役社長 吉田皓一氏。奈良県出身。慶應義塾大学 経済学部卒業後、朝日放送入社。総合ビジネス局にて3年にわたってテレビCMの企画・セールスを担当したのち退職。2013年、ジーリーメディアグループ創業。大学在学中に独学で中国語を習得(漢語水平考試最高級所持)し、現在は東京と台北を往復しながら、台湾のテレビ・ラジオへの出演、書籍・コラム執筆等を通じて、日本の魅力の発信につとめている

2国特化の理由は"費用対効果"と"リピーター率"

「当社が台湾・香港人に特化したインバウンド事業を行う一番の理由は、費用対効果とリピーター率の高さにある」と吉田社長は語る。

日本政府観光局が発表した2017年度における訪日客数を見ると、東アジアの訪日客数は、全体の74.2%(2,929万人)。同社がターゲットとする台湾・香港人はその内の約23%(679.6万人)を占めている。やはり韓国、中国向けのインバウンド事業の方が台湾、香港よりも大きな市場をもっていることがわかる。

2017年度における訪日外客数のシェア(訪日外客数日本政府観光局)

しかし、総人口に対する割合を考えると、台湾・香港の優位性が見えてくる。中国からの訪日客数を見てみると735万人で、これは総人口に対して0.5%程。対して、台湾・香港の訪日客数はそれぞれ、総人口に対して19.4%・30.3%と非常に高い。

単純計算してみると、1,000人に見られる記事を配信した場合、中国の場合にはそのうち0.5%の5人しか日本に来ないのに対して、台湾・香港の場合にはそれぞれ194人、303人が来ることとなる。

「たしかに中国人の訪日数は多く、1人当たりの旅行消費額も1位であるために魅力的な市場ではあるが、リピーター率は30%以下しかないということも特徴。一方、台湾・香港人のリピーター率はそれぞれ73.4%、80.4%と高い」(吉田社長)

一度「ラーチーゴー!」のファンになってもらえば、再び日本に訪れる際に、もう一度サイトを使ってもらえる可能性が高い。


このような背景のもと、同社では費用対効果の高い台湾人・香港人観光客にターゲットを絞っている。

そして、何度も日本に訪れている台湾人・香港人は、”すでに行ったことのある”ゴールデンルートから抜けて、地方に足を向ける割合が高い。そこを狙い、同社では”地方の情報”を提供しているというわけだ。

ちなみに、東京や大阪で”爆買い”する中国人のイメージとは対照的に、ゴールデンルートを外れた台湾人、香港人は、札幌で野球観戦をしたり、四国でハーレーに乗ったりと、多種多様な方法で楽しんでいるそうだ。

台湾・香港人に響く「現地目線の記事」

地方自治体と協力しながら、台湾人・香港人のニーズに合わせた情報を提供するジーリーメディアグループ。同社が運営するメディア「ラーチーゴー!」が多くのファンを掴むのは、理由がある。

その理由の1つは、記事をすべて台湾人のライターが執筆していていること。

インバウンド事業者の多くは、市場の大きな中国・韓国の観光客をターゲットとして執筆した記事をそのまま台湾・香港用に訳す、という方法をとりがちだが、同社ではそれはしない。

「当たり前のことだが、台湾人、香港人の流行りと、中国人、韓国人の流行りは異なる。当社のスタッフの9割は台湾人と香港人であり、ただ翻訳しただけの文章とは一味違った”現地目線での紹介”ができることが強み」(吉田社長)

こうした取り組みが功を奏し、今や台湾で一番読まれている日本観光情報サイトが出来上がった。

社長が「インフルエンサー」Facebook大国・台湾に強み

リピーターのニーズを満たすために、地方自治体と手を組み、その地の魅力発信を行う同社であるが、吉田社長は「自身のメディア露出」にも注力している。台湾のテレビに出演することもあり、街中で話しかけられることは少なくないそうだ。会社としてはメディアで情報を発信しながら、自身はインフルエンサーとして人を引き寄せる、同氏ならではの戦略である。

実は台湾のFacebook利用率は76%と非常に高く、「世界1位のFacebook大国」とも呼ばれている。実際に、「ラーチーゴー!」のFacebookページは67万人以上ものファンを獲得しており、記事を公開するたびに台湾のタイムラインを賑わせている。

ラーチーゴー!Facebookページ

SNSでフォロワー数の多い人物を使って商品をPRする「インフルエンサーマーケティング」を、すべて自社のリソースでやれてしまうことが、同社の強みといえる。

”オリンピック恐慌”どこ吹く風「市場に不安はない」

今後の展望について聞くと、「インバウンド事業のターゲットを横展開することは考えていない」と同氏。しかし、”リピーターの比率が多い”、”総人口における訪日客数の割合が多い”ことは、”今後の伸びしろがあまりない”ともとれる。その点についてはどう考えているのか。

「確かに、市場は成熟しきっている状況ではある。大きな成長は見込めないのが現状。しかし、大きな急落がなく安定的な市場であることは間違いない。オリンピック後のインバウンド市場の伸び悩みについても騒がれてはいるが、2国(台湾・香港)に限っては、純粋に”日本が好き”だから来ている人が多く、オリンピック後にも安定した訪日数があると見込んでいる」(吉田社長)

2013年に創業したジーリーメディアグループ。まだ設立年数は5年と若い企業であるが、同社が力を合わせる相手は、民間企業はもちろん、地方自治体が多くあるということもあり、地に足のついた事業を行っているようだ。地方に人を呼び込むためには、その地の魅力を深く知り、協力者を増やしていく必要もある。

そういう意味では、長い目で見た取り組みが求められることだろう。大きな事業の変更はせず、着々と現在の事業を強化していくことが大事なのかもしれない。

アウトバウンド事業も視野に

一方で、さらにその次のフェーズに関しては「明確な時期は定めていないが、当社ならではの強みを活かして、日本人で台湾に旅行を考えている人をターゲットとした、アウトバウンド事業も今後進めていきたい」とも語る。

昨年1年間の台湾からの訪日客数が450万人を超える半面、日本から台湾へは約190万人にとどまっている。台湾側も、リピーター確保に向けた観光地の情報発信を強化したり、鉄道会社が、駅で飛行機に載せる荷物を預かるサービスを提供したりとさまざまな工夫を凝らしている。

そうした状況の中で、台湾人ライターを多く抱えるジーリーメディアグループならではの”現地目線で魅力を発信する記事”が増えていけば、日本からの旅行客も徐々に増えていくことになりそうだ。