「インバウンド」の記事

JapanTaxiとソースネクストが提携、インバウンド需要獲得へ

JapanTaxiとソースネクストが提携、インバウンド需要獲得へ

2019.03.29

全国1万台のタクシーで「ポケトーク」が使えるように

拡大するインバウンド需要の獲得目指す

「タブレット搭載車両」の多さが提携の鍵?

JapanTaxiとソースネクストが業務提携を発表した。

6月よりJapanTaxiが全国1万台のタクシーに提供するタクシー車載タブレット「広告タブレット」および「決済機付きタブレット」に、ソースネクストが展開するAI通訳機「POCKETALK(ポケトーク)W」をSDK化して、標準の通訳機能として搭載する。これによって、たとえ日本語がわからない乗客であっても、乗務員と相互にコミュニケーションがとれるようになる。

全国1万台のタクシーに搭載されたタブレット上で、ポケトークが使えるようになる

ナビゲーションアプリ「NAVITIME」「Yahoo!乗換案内」との連携や、キャッシュレス降車体験を提供するマルチ端末「決済機付きタブレット」の独自開発など、精力的にサービスの利便性向上を図っているJapanTaxi。同社が新たにソースネクストと提携した背景を探る。

JapanTaxi 代表取締役社長 川鍋一朗氏(左)とソースネクスト 代表取締役社長 松田憲幸氏(右)

勢い止まらぬインバウンド需要の獲得へ

今回の提携で目指すのは、急成長するインバウンド需要への対応だ。

インバウンド客の数は、2010年の679万人から右肩上がりで増加しており、2018年には3119万人を突破し、なお成長を続けている。東京オリンピックを控える2020年には、政府はインバウンド客数を4000万人にまで伸ばす考えで、今後もその需要の拡大が見込まれている。

オリンピック後のインバウンド客目標数値は6000万人

インバウンド客の増加は、交通インフラの利用者の増加につながり、おのずとタクシーの利用者も増える。そこでJapanTaxiが目を付けたのが、「運転手と乗客の相互コミュニケーション」であった。

同社の川鍋一朗代表取締役社長は、「JapanTaxiのタブレットは文字ベースでしか多言語対応(日本語/英語/韓国語/中国語)できていなかったことが(日本語を話せない)乗客の不安につながっていた」と説明する。

これまで、乗客は同社のタブレットを使用することで、降車前にタクシー車内でQRコードやICカード、クレカなどでの支払いができた。ただ、「今どこを走っているのか」といった情報をタブレット上で見ることはできず、日本語が話せない乗客にとっては、それを確認する術がなかった。今回の提携は、その部分の改善を狙ったものだ。これは一方の運転者にとっても、「ちょっと混んでるんで違う道から行ってもいいですか? 」といった確認がとれるようになるというメリットもある。

また、ポケトークは2018年12月時点で世界74言語に対応しているため、言語の幅を広げることもできることが運転手・乗客の双方のメリットなる。

乗客はポケトークを起動し、タブレット下部に搭載されたマイクに向けて話すと、運転手側のタブレットに日本語が表示され、音声も流れる

提携の背景に「タブレット広告」

今回の提携で特筆すべきは、「タブレット」がすでにタクシーに搭載されていたために、単にポケトーク本体をタクシーに乗せるのではなく、SDK化して端末に組み込む、という方法をとれた点だ。

そもそもこのタブレットは「広告コンテンツ(CM)の放映、決済」を目的として設置されたもの。現時点で「広告タブレット」と「決済機付きタブレット」の2機種が運用されており、すでにこれらの端末は、全国1万台のタクシーに搭載されている。

ちなみにそれぞれのタブレットの違いは対応している決済手段で、広告タブレットで対応しているのは、Japan Taxi Wallet、Origami Pay、Alipay、WeChatPay、LINE Pay、d払いといった決済アプリによる支払いのみ。一方の決済機付きタブレットは、アプリに加えてクレカ、交通系IC、電子マネーにも対応している。

JapanTaxiの「広告タブレット」と「決済機付きタブレット」

最近の潮流から「キャッシュレス」に対応している点に目が行きがちではあるが、単に「キャッシュレス化を進めたいから、タブレットを設置してください」というだけでは、なかなか普及させるのは難しい。こういった機器を設置するにあたっては、ある程度の初期費用が発生してしまうためだ。

しかし、JapanTaxiでは2020年までにこれらのタブレットを搭載したタクシーを5万台にまで計画だという。その計画を実現させるための手段が「広告」だ。

川鍋氏によると、タクシーを使用する人は部長クラスや役員クラス、経営者などといった「決裁権を持っている人」が多い。つまり、そこをターゲットに情報を届けたい事業者からすれば、このタブレット上で広告を打つメリットは大きいというわけだ。

広告費を得ることでタブレット採用にかかる初期費用を抑え、かつ広告収益の一部をタクシー会社に分配する。さらに、その端末によってキャッシュレス化も推進できる。こんな青写真を描けるのであれば、タブレット導入のコストパフォーマンスは案外、良好なのかもしれない。

混沌の配車市場で存在感示すJapanTaxi

近年、UberやLyft、DiDi、Grabといったライドシェア企業の誕生で、タクシー業界はその地位を脅かされつつある。

まだまだ日本でライドシェアは厳しい状況に置かれており、成長は行き詰っている状態だとはいえ、規制が緩和されたらすぐに、その使いやすさに飛びつくユーザーは少なからずいることだろう。実際、筆者もアメリカでUberを使ってみて、その便利さに感動した1人だ。

タクシー業界を取り巻く環境が急激に変化する中で、JapanTaxiはアプリでの簡単な予約、キャッシュレスの推進、広告端末の設置など、複数のサービスを展開している。今回のソースネクストとの提携も、インバウンド需要の獲得に貢献することだろう。

混沌とする市場の中で、さまざまな新サービスをローンチし、存在感を示し続けるJapanTaxi。2020年東京五輪・パラリンピック時にはインバウンド客が増加し、ライドシェアの部分解禁はやむを得ないとの見方もある。タクシー業界にとって避けては通れない「ライドシェアの解禁」がちらつく中、今後の動向からも目が離せない。

「中華×イタリアン」競争激しい飲食店市場に生まれる新機軸

「中華×イタリアン」競争激しい飲食店市場に生まれる新機軸

2019.03.29

食の垣根を越えた飲食店が目立ち始めた

7,000万円の資金を集め、ようやく開業に!

「和食」や「中華」「フレンチ」「イタリアン」など、日本では世界中の料理が楽しめる。多国籍な料理が味わえるという点で、日本は世界屈指だという声はよく聞かれる。こうした日本の食文化から派生して、新たなトレンドが生まれつつある。

それは、和食・中華・イタリアンといった垣根を越えた飲食店だ。特に最近のトレンドは中華×イタリアン。例えば、恵比寿で営業しているイタリアン風中華バル「京鼎樓バル」や、新横浜の「チャ“伊”ナバル」、「飯田橋GRATO」など、中華×イタリアンという業態をウリにしているレストランが増えている。

そして、1月に「LOTO BLU」という店が、築地市場至近にオープンした。このレストランも中華×イタリアンというのがコンセプト。では、実際にどういう料理なのか取材してみた。

東京・汐留にあるLOTO BLU
ベビーピュア 代表取締役社長 渡邉敏行氏

まず、LOTO BLUを運営するベビーピュアの渡邉敏行氏の話をうかがってみよう。渡邉氏は、一言でいえば「苦労人」。若い頃は、中華街の料理店で洗い場を担当していたという。そして大学卒業後に大手製薬会社のMR(医薬情報担当者)として活躍した。

真意はうかがっていないが、やはり独立したかったのだろう。一念発起して、飲食店を経営することに決め、「青蓮」という中華料理店を開業した。当時の自己資金は900万円ほど。こぢんまりとした店舗を開くには十分な資金だが、それでは満足できず、資金をかき集めて7,000万円を用意。そして横浜を中心に青蓮を30店舗ほどに広げたそうだ。

少し変わったコンセプトの飲食店を目指した

幸い、青蓮の経営は順調に進んだ。そして新しい取り組みとしてLOTO BLUを開業した。このキッカケは三井ビルディングのお声がけ。「イタリアンのお店を開業してみては?」という話を持ちかけられ、それに乗ったカタチだ。だが「単純にイタリアンでいいのか」という疑問もあり、中華を掛け合わせてみればという発想にたどり着いたという。

さて、実際の料理だが、中華×イタリアンということもあって、多国籍な感じが色濃かった。コース料理が参加した記者に提供されたが、最初は中華、そして徐々にイタリアンになっていくというイメージだった。正直、中華×イタリアンと聞いて、ピザの上に餃子がトッピングしてあるみたいな料理を想像していたが、そんな突拍子もないものではなかった。単品単品がしっかりと中華、イタリアの国籍を主張するメニューだった。

LOTO BLUで提供される料理の一部

近年、日本にワインブームが起こっている。ワインといえばフレンチやイタリアンと合わせるものと思いがちだが、そうした常識はすでに崩れ始めている。餃子にワイン、お刺身にワインといった取り合わせも珍しくなくなった。このLOTO BLUもメインで提供するお酒はワインだ。その意味でも料理、そしてお酒の多国籍といえるだろう。

実はここに渡邉氏の真意が垣間見える。中華は中華店、イタリアンはイタリアンレストランという、これまでの感覚に縛られない飲食店で勝負をかけていきたいのだろう。前述したとおり、苦労人だからこそアイデアを絞っているのかもしれない。

激化する飲食店業界。こうした、特色を打ち出す飲食店は今後も増えていくだろう。どのようなレストランが誕生するのか、楽しみである。

東京五輪控えた宿泊施設の枯渇危機、切り札は地元共生型ホテル?

東京五輪控えた宿泊施設の枯渇危機、切り札は地元共生型ホテル?

2019.03.06

東京オリンピックで宿泊施設が枯渇、野村不動産がホテル参入

安田不動産がホテルとレジデンスを共有する施設を開業

立地地域の産業・文化をホテルと結びつける新たな流れ

2018年、インバウンド訪日客が3,000万人を超えた。東京五輪を控え、ますますインバウンドの増加が見込まれる。そうしたなか、懸念されているのが宿泊施設の枯渇だ。この問題を少しでも解消するべく、デベロッパーの動きが活発になってきた。

客室数130のノーガホテル上野

まず、野村不動産。同社はこれまでホテル事業には参画していなかったが、2018年11月に「ノーガホテル上野」を始動。東上野という、少しニッチな場所にホテルをかまえた。だが、上野地区は観光資源が豊富。上野駅の西側には上野恩賜公園を中心に、パンダを飼育する動物園や世界文化遺産となった国立西洋美術、藤堂高虎や天海僧正による上野寛永寺がある。そして少し足を伸ばせば、浅草寺にもアクセスしやすい。

特に浅草寺はインバウンドに人気のスポットで、連日、雷門の前で外国人が写真撮影を行っている。さらに、もう少しするとサクラの季節だ。上野恩賜公園や隅田川のサクラを目指して来日する外国人であふれることは間違いない。以前、上野公園で花見をするという同僚たちに合流する際、まったく身動きが取れなかったのを憶えている。

ここに野村不動産のねらいが見え隠れする。前述したように、同社がホテル事業に参入するのはこれが第一弾だ。失敗はしたくないだけに、観光資源が豊富で、インバウンドの集まりやすい地でノウハウを蓄積するというのは自然な流れだ。なお、今後もノーガホテルブランドを各地で展開する予定だ。

ホテル・レジデンス・スモールオフィスからなる複合施設

客室数170室のHAMACHO HOTEL&APARTMENTS

一方、安田不動産はコンセプトのユニークさで勝負をかける。東京・日本橋浜町にオープンした「HAMACHO HOTEL&APARTMENTS」は、その名前のとおり、ホテルとレジデンス、スモールオフィスが一体化した施設だ。

ホテル・レジデンス・オフィスが一体化した複合ビルは東京の中心地に集まっているが、その多くは高層ビルによる高級路線だ。だが、HAMACHO HOTEL&APARTMENTSは地上15階と、高層ビルに入居する高級路線のホテルに比べれば若干見劣りする。そしてオフィススペースも少人数で利用する規模のものが中心。ただ、そのぶん敷居が低く、利用しやすいというイメージが強い。

そして何よりも、ホテル客とレジデンスに住む客とのコミュニケーションを重視しているのが特徴だ。ホテルのエンタランスは共用で、宿泊客とレジデンスの住人が交流できるようになっている。さらにチョコレートショップ「nel CRAFT CHOCOLATE TOKYO」を設け、このスペースでチョコレート職人による「手しごと」を見学できる。そしてチョコレートショップに併設されるカフェでは、ワークショップが開催され、宿泊客と地元住民のコミュニケーションを図る。

共通するのは地元産業との連携

そして両ホテルには共通する特徴がある。それはホテル立地付近の地域との連携を大切にしていること。ノーガホテル上野は、東上野に立地していると前述したが、この地域は職人の街でもある。江戸切り子や銀食器といった職人の手によるプロダクツをホテルで利用・購入できる。

またHAMACHO HOTELも地域住民とゲストの交流の場とすることを掲げている。nel CRAFT CHOCOLATE TOKYOのほか、宿泊客や街の人に提供するパンの工房も備えている。こうした食品により「日本橋浜町自家製」を掲げ、特色にしているのだ。

インバウンド観光客による「爆買い」はひとまず落ち着いた。その頃に売れたのは家電製品やブランド品だった。家電は日本製品の性能が高いことが彼らの消費を促し、ブランド品は日本のショップに対する信頼性が高かったため売れた。それが少しずつシフトし、「地元でしか買えないもの、地元でしか食せないもの」が外国人に受け始めている。

ノーガホテル上野で売られている木本硝子の江戸切り子
HAMACHO HOTELで手作りされているnel CRAFT CHOCOLATE

さらに言えば、両ホテルには宿泊料金にも共通点がみられる。例えばダブルルームの場合、だいたい15,000~30,000円だ(シーズンやプランによって変動、スイートルームはのぞく)。つまり、2人で宿泊すれば、1人あたり10,000円を切る宿泊費で済ませることもできる。

旺盛なインバウンド需要によって、今やビジネスホテルでさえ1泊1部屋10,000円以上ということも珍しくはない。そう考えると狭いシングルのビジネスホテルよりも、ミドルクラスのダブルに泊まるという選択肢も悪くはない。もっとも、伴侶や恋人、友人などと宿泊し、宿代を折半しないとコストパフォーマンス的にはビジネスホテルに劣るが……。

いずれにせよ、両ホテルは客室数100~200とそれほどの規模ではない。ただ、訪日外国人を刺激しそうな“地元の産物”などと連携することで、特色を打ち出そうとしている。宿泊施設の枯渇を見据えたホテル開業は続くだろうが、訪日客のニーズの変化もはじまっているなか、地域密着型を特徴とした今回の両ホテルのように、コンセプトを際立たせた宿泊施設が増えていきそうに思われる。