「インターネット業界」の記事

日本のキャッシュレス社会実現に向けたLINE Payの決済革命

日本のキャッシュレス社会実現に向けたLINE Payの決済革命

2018.08.01

2018年8月1日からLINE Payは新たな施策を開始する

利用者向けにはコード決済時に最大5%のインセンティブを付与

加盟店に向けには3年間店舗用アプリの決済手数料を無料化を実現

コミュニケーションアプリの「LINE」上で、QR/バーコードによる決済や送金などが可能な「LINE Pay」。2017年5月時点で、すでに日本国内の登録ユーザーが3000万人を超えた。LINEの月間アクティブユーザー数が7500万人(2018年3月時点)であることを考えると、約半数がLINE Payのアカウントを開設している計算だ。

順調に登録数を伸ばしているようだが、LINE Payは手を緩めるどころか、キャッシュレスを浸透させるべく、2018年8月1日から“決済革命”を本格的に開始すると発表した。はたして、決済革命とはどのような取り組みなのだろうか。

最大5%のインセンティブでキャッシュレスを促進

同社の提案する決済革命は大きく分けて2つ。1つが利用者向け、もう1つが加盟店向けのサービス強化である。

2018年6月、LINE Payでは利用実績に応じてユーザーを4色にクラス分けする「マイカラー」制度をスタートさせた。今後1年間、LINE Payを利用すると、カラーに応じて「決済額の0.5%~2%」のLINEポイントが、インセンティブとして提供される仕組みだ。

決済革命が本格化する8月からは、付与率を「固定3%+マイカラーに応じた0.5~2%」へ変更することで、コード決済時のインセンティブを最大5%に増加。ポイント付与決済の上限額も10万円/月から100万円/月に変更された。なお、マイカラーは前月20日までのLINE Pay利用度によって決まるという。

インセンティブが最大5%にアップデートされる。カラーはホワイト、レッド、ブルー、グリーンの4段階

たとえばファミマTポイントカードは、最もポイントレートの高いゴールドランクでさえ200円につき3ポイント(1.5%)。それを考えると、期間限定とはいえ、最低でも3.5%受け取れるLINE Payのレートは魅力的だといえよう。

マイカラー制度で最もポイント付与率の高い「グリーン」になるには、「決済金額10万円/月以上:月間5人以上のユーザーへ送金」という条件をクリアしなければならないが、とりあえず今のうちに3.5%のポイントだけでも受け取っておくのが賢い選択かもしれない。

手数料無料化と決済コミュニケーションでSMBを取り込む

いかに利用者が使いたいと思っても、使える店舗がなければ話にならない。そこで同社は、加盟店向けの決済革命として、店舗用アプリをリリース。初期費用が無料なだけでなく、3年間の決済手数料無料化を発表した。

LINE Pay 取締役COOの長福久弘氏は「いままで日本がキャッシュレス化できていなかった原因の1つに、コスト的な問題でSMBと呼ばれる中小規模事業者がキャッシュレス対応できなかったことが挙げられるでしょう。日本の小売りではSMBが大半を占めます。この課題を解決しない限り、おそらく日本のキャッシュレス化は進みません」と、日本でキャッシュレス決済が普及しなかった背景を分析する。

LINE Pay 取締役COOの長福久弘氏

自分の生活圏内で利用できる店舗が少なければ、ユーザーはキャッシュレス決済を使う気にならないだろう。そもそも「この店はバーコード決済を使えるのだろうか」とイチイチ考えなければならないこと自体が億劫である。考える余地もなく、「当たり前に使えることがわかる環境」を整えることが必要なのだ。

「そこで、我々はいままでコストでしかなかった決済フローを、アセットに変えていきたいと考えました。たとえば、LINE Payのメッセージ機能を使えば、決済後自動的にお店のアカウントと友だちになれるので、継続的にアプローチできるようになります。今後もショップカード機能やクーポン作成機能を提供していきたいですね」(長福氏)

たとえ手数料が無料だとしても、スタッフの作業負担が増加するだけでは意味はない。顧客とのコミュニケーションを促進できるというわかりやすいメリットを提示することで、SMBもキャッシュレス化に取り組みやすくなるというわけだ。

店舗用アプリでユーザーのバーコードを読み取る様子。ユーザーが店舗用アプリのバーコードを読み取る決済方法も可能

また、そのほかの加盟店向けの施策として、LINE Payでオリジナルデバイスを開発していることを発表した。現在LINE Payでは、店舗用アプリに加えて、印刷されたQRコードを設置する「PRINTED QR」や、ATMのような見た目の「Star Pay 端末」、既存オペレーションを変えずに済む「POSレジ改修」といった加盟店向けのサービスを展開しているが、そこに卓上の決済デバイスが新たに加わる形だ。

「まだ開発中ですが、新デバイスはPOSの改修やお店用のスマホが必要ないので、従業員が2~10名程度の小規模店舗に使ってほしいと考えています。ポートフォリオを拡大することでよりさまざまなニーズに対応していければ」(長福氏)

オリジナルデバイスのイメージ
加盟店向けサービスポートフォリオ一覧

現在LINE Payと契約している加盟店は9万4000カ所。すでに非接触型の「QUICPay」に対応することが決まっており、今後は利用可能な店舗100万店を目指す。

いまや日本で最も使われているコミュニケーションツールといっても過言ではないLINE。アプリ自体はすでに7500万台のスマホにインストールされており、ユーザーの土台はできあがっているといえよう。利用店舗の環境整備とインセンティブのようなきっかけがうまくかみ合えば、そう遠くないうちにLINE Payの決済革命がキャッシュレス社会を実現させるかもしれない。

ホテルスマホ「handy」、国内展開を加速するねらいとは?

ホテルスマホ「handy」、国内展開を加速するねらいとは?

2018.07.20

ホテルスマホ「handy」が国内展開を加速している。7月2日にはソフトバンクとの資本業務提携を、7月12日にはトラベルエージェント事業のCEOとしてエイチ・アイ・エス前代表取締役社長の平林朗氏を迎えることを発表した。

ホテルスマホ「handy」がソフトバンクと資本業務提携

観光業界では訪日観光客の急増とともに、旅行中の「タビナカ」需要や「民泊」の増加、人手不足が注目を浴びている。ホテルスマホを提供するhandyの狙いはどこにあるのだろうか。

handyがホテルのIoT化を推進

香港など世界に展開するhandyは、2017年7月に日本上陸。東京・中央区のロイヤルパークホテルを皮切りに、2018年度中には全国のホテルの3割にあたる24万室に導入されるという。筆者も出張の際にhandyのスマホを見かける機会が増えてきた。

中部国際空港近くのホテルに設置されていたhandy(2018年5月撮影)

handyが提供するスマホはホテルの客室やフロントに設置され、宿泊客はデータ通信を含めて無料で利用できる。これまでは一般的なスマホとしての利用が中心だったが、今後はIoT連携として、チェックイン/アウト業務やルームキーとしても活用できるという。

将来的には、客室の鍵やエアコン、照明などの一括管理も可能に

ルームコントロール機能では、客室内のオーディオや目覚ましといった機能もhandyで操作できるようになる見込みだ。今後は民泊のようにフロントがなく、スタッフが常駐しない宿泊施設が増えるとみられており、IoTによる省力化の需要は高まりそうだ。

handyはホテル内だけでなく、外に持ち出して観光に使えるのが特徴だ。そこでシティガイドやマップ、タクシー配車、オンラインチケットとも連携していく。これらのトラベルエージェント事業を率いるのがエイチ・アイ・エスの平林前社長だという。

動画やVRコンテンツも提供していく。すでに客室内のテレビでエンタメを提供しているホテルは多いが、スマホで楽しめるコンテンツは急速に増えている。handy端末の画面はそれほど大きくないが、テレビ出力やVRゴーグルを使えば迫力ある体験になる。

このようにhandy端末に期待される役割は増える一方だが、現状のhandyはそれほどハイスペックの端末とはいえない。この点については、VR対応などを想定した端末スペックの強化が課題といえる。

宿泊客にとっては無料のhandyだが、すでに自分のスマホを持っているという場合も多いはずだ。だが、個人のスマホがあってもhandyを活用できる場合はあるという。

たとえば大阪北部地震の際には、handy端末が緊急地震速報を配信し、約半分の端末でメッセージが開けられたという。特に日本のさまざまな災害に不安を持つ訪日外国人に心強い機能といえる。

また、handyの回線を他の端末から使える「テザリング」も、ホテル側のリクエストに応じて提供していくという。これができれば、自分が使い慣れたスマホやタブレットをhandyの無料データ回線でお得に使えるというわけだ。

ソフトバンク側はIoTの技術的な基盤を提供し、コンテンツやタクシー配車、宅配サービスなどでソフトバンクグループが協力。ソフトバンクが誇る法人営業チームがhandyを全国展開していくという。これまでhandyの導入は東京、大阪など都市部の比率が高かったが、さらに展開地域が広がりそうだ。

handyにソフトバンクグループのサービスを提供

handyのデータ通信にはドコモ系のネットワークを使っていたが、新規導入はソフトバンク回線を使い、既存のドコモ回線も順次ソフトバンクに置き換えていくという。

これまでMVNO事業に乗り遅れてきたソフトバンクだが、今後のhandyの普及を見据えれば、数十万の回線をまとめてドコモから奪える計算になる。この点もソフトバンクの狙いだろう。

Amazonがスマートスピーカーに「画面」を搭載した理由とは?

Amazonがスマートスピーカーに「画面」を搭載した理由とは?

2018.07.06

アマゾンジャパンが、スマートスピーカーの新製品「Amazon Echo Spot」を国内向けに発表した。7月26日に出荷を開始する。最大の特徴は、円形のディスプレイを搭載した点だ。

画面付きスマートスピーカー「Amazon Echo Spot」が日本上陸

スマートスピーカーへの画面の搭載は、グーグルやLINEも追従するトレンドになりつつある。なぜ、音声で使えることが売りのスマートスピーカーに画面が必要なのだろうか。

画面の搭載で分かりやすさが大幅向上

Amazon Echoシリーズは、アマゾンの音声アシスタント「Amazon Alexa」に対応したスマートスピーカーだ。Echo Spotでは、音声に加えて画面に情報を表示できるようになり、タッチ操作にも対応したことで機能や表現力が大きく向上した。

タッチ対応のディスプレイを搭載した

たとえば料理のレシピを知りたいとき、食材や調理手順を音声で読み上げられても、いまいちイメージが湧きにくい。だがEcho Spotなら、レシピが動画で再生されるので分かりやすい。音声で巻き戻しの操作もできるので、キッチンで使うのに便利になった。

レシピを動画で見られる「DELISH KITCHEN」のAlexaスキル

音声だけでアマゾンの買い物もできるが、商品を探すことは難しく、定番の商品を再注文するくらいが限界だった。だが画面に写真や星の数が表示されれば、複数の商品を比較検討しやすい。今後はフロントカメラを活かしたビデオ通話にも対応予定となっている。

ビデオ通話にも対応予定

Echoが日本上陸した当初は、「招待制」により販売数量を制限していた。その背景として、アマゾンはレビュー内容や「5つ星」の数を非常に重視しており、発売直後は日本語対応が成熟していなかったことから、レビューで低評価が集まることを恐れたようだ。

だが招待制の結果、日本では発売から3カ月で1300以上の5つ星レビューを得たという。原稿執筆時点では44%のユーザーがEchoに5つ星を付けており、まずまずの評価を得ているといえる。

今回のEcho Spotは招待制ではなく、最初から一般向けに販売する。一度に2台買うと割引を受けられるキャンペーンも展開するなど、積極的に売り込む構えだ。

米国でアマゾンは、Echo Spotだけでなく7インチ画面の「Amazon Echo Show」も販売しており、画面付きスマートスピーカーでも市場をリードしてきた。これに対して、ライバルも追従する動きを見せている。

グーグルは2018年のCESで、Googleアシスタントが使える「スマートディスプレイ」規格を発表。レノボやLG電子、ソニーなど複数のメーカーから対応製品が登場する見込みだ。独自の音声アシスタント「Clova」を展開するLINEも、今冬に画面付きモデル投入する。

その狙いは、家庭内のハブになることだ。個人で利用するスマホとは異なり、スマートスピーカーは家族で共有できる。IT機器に詳しくない子どもやシニアでも、音声操作で音楽やインターネットを楽しめる。IoT家電をコントロールする機能も集約されていきそうだ。

TATERUが展開する「IoTアパート」は家電の操作にAmazon Echoを利用

機能的にはタブレットと重複する部分もある。実際にアマゾンは、米国でFireシリーズのタブレットをEchoデバイスに変身させるドックを7月に発売する予定だ。

だがスマートスピーカーは、自然言語による音声で使える、タブレットよりも万人向けのデバイスだ。そのために高性能マイクを搭載するなど、ハードウェア面でも音声操作を主体に設計されている。

スマートスピーカーで使える「スキル」は、これまで音声だけだったが、続々と画面表示への対応が進んでいる。Echo Spotの登場に合わせて、50以上の対応スキルが提供されるほか、アマゾンはコンテストやイベントの開催など開発者向け支援も強化する構えだ。

画面を搭載することで、スマートスピーカーはもう一段の進化を遂げようとしている。アマゾン以外のライバル各社の動向も含め、次のトレンドとして注目したい。