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米国の教育市場で人気が高まるChromebook、日本で普及する可能性は?

米国の教育市場で人気が高まるChromebook、日本で普及する可能性は?

2018.04.09

米国の教育市場で60%近いシェアを持つ「Chromebook」が注目を浴びている。これに対してアップルは教育市場を意識したペン対応の低価格iPadを発表するなど、教育用デバイスを巡る競争は激化している。

日本では4月26日にAcerがLTE搭載のChromebookを発売し、レノボも5月にChromebookを国内に初投入する。米国に続き、Chromebookが日本でも普及する可能性はあるのだろうか。

日本エイサーが発売する「Chromebook 11 LTE」

Chromebookが教育市場に入り込んだ理由

世界のPC市場ではWindowsが、スマホやタブレットの市場ではiOSやAndroidがシェアの大半を占めている。こうした状況の中、グーグルのChrome OSを搭載したChromebookは、なぜ教育市場で成功できたのだろうか。

最大の理由はコストの安さにある。米国でChromebookは150ドル前後で売られている。たしかにWindowsのノートPCにも格安モデルは存在し、日本で2万円前後の製品が話題になったこともあるが、同じ価格ならChromebookのほうが動作は軽快だ。

その理由はOSの方向性の違いにある。Windowsは高機能で自由度が高いものの、PC内部に多数のアプリやデータが混在し、セキュリティ上のリスクも大きい。これに対してChromebookはクラウド上のアプリをブラウザーから利用することが基本になるため、PC本体のスペックにあまり依存しないというわけだ。

教育向けの機能も充実している。グーグルは管理用のツールを提供しており、教員は多数のChromebookを容易に管理できる。クラウドの利用も、企業では従業員ごとに利用料がかかるが、グーグルは教育用のG Suiteを無料で提供している。

このようにChromebookは端末が安いだけでなく、トータルの運用コストが低いのが特徴だ。その最大のメリットは「1人1台」を実現できる点にある。高価なWindows PCは職員室の鍵付きラックに保管して運用されているが、1人1台のChromebookなら自宅に持ち帰って宿題に活用できる。

iOSやAndroidとの比較ではどうだろうか。教育市場でアップル製品の人気は高く、教育用アプリも充実している。問題は価格の高さと耐久性だ。4月に発売した第6世代iPadは価格を3万7800円に下げてきたものの、子どもが手荒に扱っても耐えられるのか、不安は残る。

アップルは9.7インチiPadの新モデルで価格を下げてきた

同じグーグルのプラットフォームとしてはAndroidタブレットもあるが、標準でキーボードを備えているChromebookは文章をタイプする高等教育に対応できる点が評価されている。だがChromebookにもタブレット型のモデルが登場するなど、両者はオーバーラップしつつある。

Chromebookが日本で普及する可能性はあるか

米国の教育市場でシェアを伸ばしてきたChromebookだが、日本ではどうなっているのか。 グーグルは2014年から日本市場にChromebookを展開しており、徐々に事例は増えているが、米国とは大きな差がついている。

その背景として、5月にChromebookを国内に初投入するレノボは「プロモーションの不足」を指摘する。Windows PCの場合、マイクロソフトやインテルがPCメーカーと組んで大規模な販促を展開するのに対し、グーグルは米国中心にとどまっている。

PC市場トップのレノボも日本にChromebookを投入する

また、Chromebookに国内メーカーが参入していないという要因も大きい。国内の教育市場で最大のシェアを持つ富士通はChromebookをまだ発売していない。東芝も数機種を発売したものの、海外市場での展開にとどまっている。

IFA 2014の東芝ブースに展示された「Chromebook 2」

Chromebookの代わりに日本の教育現場に浸透しているのは、Windowsだ。デジタル教科書はWindows対応が多く、教員はOfficeアプリを用いて教材を作り込んでいるなど、既存資産は大きい。無線LANの普及が遅れている学校では、ローカルでも問題なく動作するWindowsのほうが向いている。

だが教育用PCの普及が遅れる日本において、高価なWindows PCだけで「1人1台」を実現することは困難だ。Windows優位の状況を覆し、Chromebookの導入に向けて大きく舵を切る流れが起きるのか、グーグルを始めとするChromebookベンダーの動向に注目が集まる。

アップルの新iPad、失った教育市場でのシェアを回復できるか

アップルの新iPad、失った教育市場でのシェアを回復できるか

2018.04.04

アップルが米国時間の3月27日に発表した、新しい第6世代の「iPad」。デバイス的に見れば、Apple Pencilに対応したことを除きサプライズに乏しいものの、教育市場への販売強化を強く意識した内容となっていたことが、驚きをもたらしているようだ。なぜ、アップルはiPadで教育市場への注力を打ち出したのだろうか。

新iPadを教育市場に向け積極アピール

ここ最近、大きな注目を集める機会が少なかったアップルの「iPad」。特に、アップルがビジネスユースを意識した「iPad Pro」に力を入れるようになって以降、低価格モデルとなるiPadへの注力は日増しに弱まっていく印象さえ受けていたほどだ。

しかしながら3月27日(米国時間)、アップルはそのiPadに関する発表会を米国で実施。iPad Proではなく、iPadの発表会というだけでも驚きがあるが、その内容も異例というべきものだった。

今回発表された新しいiPad(第6世代)のスペックを見ると、チップセットが前世代の「A9」から「A10」に変更されたのに加え、従来iPad Proのみ対応していたApple Pencilに対応するなど変化を感じさせる部分は確かにある。だがデバイスのサイズや解像度が大きく変わっているわけではなく、新規性には乏しい印象も受ける。

アップルが新たに発表した第6世代のiPad。チップセットの性能向上に加え、従来iPad ProのみであったApple Pencilに対応したのが大きなトピックとなる(画像:アップルニュースルームより、以下同)

しかしながら、アップルはこのiPadを、従来通りコンシューマー向けとしてアピールするのではなく、教育市場向けのデバイスとしてアピールしたのである。実際、アップルが今回発表会を実施したのは米国・シカゴの学校だったようで、単に製品を発表するだけでなく、それを活用した授業の様子などをアピールしていたようだ。

またアップルは、新しいiPadとApple Pencilに関して、学校向けのディスカウントも用意。日本円でiPadが3万5800円、Apple Pencilが9800円で購入できるという。こうした点からも、アップルが新しいiPadで、いかに教育市場に力を入れようとしているかを見て取ることができるだろう。

伝統的に強かった教育市場でグーグルが台頭

アップルが教育市場に力を入れるのには、この市場で失ってしまった存在感を再び高めたい狙いがあることは明白だ。アップルは元々教育市場の開拓に熱心であり、かつては米国を中心としてMacの導入を積極的に進め、教育市場で高いシェアを獲得していた。

しかしながら近年、教育市場におけるアップルのシェアは大幅に縮小している。その理由の1つは、iPhoneの成功によってアップルが教育市場への関心を失っていったことが挙げられる。アップルが教育市場に力を入れてきたのには、Macのシェアが小さいが故、ビジネスユースよりも教育など、比較的ニッチながらも確実性がある市場を開拓することで、Macの販売を増やす狙いがあったといえるだろう。

だがiPhoneを提供して以降、アップルはコンシューマー市場においてMacをはるかに上回る成功を収め、現在も日本などを主体に、スマートフォン市場で高いシェアを獲得している。より大きなビジネスを重視するあまり、教育市場に向けた対応が手薄になっていた感は否めない。

2つ目の理由は、教育市場におけるグーグルの台頭である。グーグルはライセンス料金が無料の「Chrome OS」と、それを搭載した低価格のコンピューター「Chromebook」を提供しているが、てこのChromebookが、現在米国を中心として教育市場で高いシェアを獲得するにまで急成長しているのだ。

Chromebookは単に安いというだけでなく、元々ネットワークに接続して利用することを前提に設計されている。それゆえグーグルは、教育市場向けの「Chrome Education」などを用意、デバイスの集中管理がしやすい仕組みなどを提供することによって、教育市場で高い支持を得てシェア拡大へとつなげているのだ。

アップルがコンシューマー市場へ注力している間に、グーグルがChromebookで教育市場を攻め、気が付けば高いシェアを獲得するに至ってしまった。そうした状況を見て、アップルは教育市場でのシェア奪還を推し進めるべく、比較的価格が安いiPadを活用して教育市場向けのアピールを強めるに至ったといえる。

アップルが新しいiPadで狙うのは、シェアを失った教育市場での復活であり、そのためにも教育関連の機能やサービス充実が図られている

デバイスより重要となるソリューション

だがiPadというデバイス的側面だけで、教育市場で受け入れられるのは難しいだろう。そもそもiPadは、アップルの中では低価格だとはいえ、学校向けディスカウント込みで3万5800円、Apple Pencilを加えると4万5600円。Chromebookと比べると決して低価格とは言えないし、デバイスの選択肢がないのも弱みだ。

もちろん、iPadはインターフェースやアプリケーションなどの面で優位性があるが、それだけでは教育市場へのアピールが弱い。Chromebookが支持を得たのは、教育市場に向けたトータルでのソリューションを用意したからこそ。デバイスやアプリケーション、サービスなどを包括的に提供し、教師が扱いやすいソリューションを用意することこそが、教育市場で受け入れられるには重要になってくるといえよう。

それだけにアップルに求められるのは、学校側に対していかに魅力的なソリューションを提供できるかにかかってくる。この点についてアップルは、コンピューター教育というよりも、iPadを使い生徒達に楽しく学んでもらうことを重視した環境を提供することで、支持を得ていきたい考えのようだ。

実際アップルが、新iPadと同時に打ち出した教師向けのカリキュラム「Everyone Can Create」を見ると、iPadとApple Pencilを用いてスケッチや音楽、写真などのスキルを身に着ける、クリエイティブ教育を重視した内容となっている。従来のコンピューター教育とは異なる方向性を打ち出すことを重視しているようで、そうしたアップルの方針が教育の現場に受け入れられるかどうかが、シェア拡大の鍵を握るといえそうだ。

アップルが提供する「Everyone Can Create」は、単なるコンピューターの学習ではなく、iPadとApple Pencilを活用したクリエイティブ教育を重視した内容となっている

また日本がそうであるように、教育の現場ではそもそもコンピューターを使うことに慣れていない教師も多く存在する。販売を拡大していく上では、ICT教育の重要性は理解できるものの、それを教育できる人材が少ないという現状に、どのように対応していくかという課題もあるだろう。そうした課題に適切な答えを出せるかというのも、重要なポイントになってくるのではないかと感じている。

プログラミング教育の切り札は「ディズニー」

プログラミング教育の切り札は「ディズニー」

2018.03.07

岡田結実さん

「一石二鳥が三鳥、何鳥にもなる。皆さんも是非、体験してほしい」――。これは、女子高生タレントとして有名な岡田結実さんが語った言葉だ。岡田さんが興奮気味に語った"体験談"とは、ディズニーコンテンツを用いたプログラミング教材「テクノロジア魔法学校」だ。

ゲーム体験を通して学習理解度を深めるといった「ゲーミフィケーション」という言葉が広まって久しいが、この教材はまさに「コンテンツを楽しみながら、プログラミングを理解・習得する」ことを目指している。2020年からプログラミング教育が必修化されるなかで、どうこの"学び"と向き合えば良いのだろうか?

「アナ雪」とお勉強

テクノロジア魔法学校を提供するライフイズテック(Life is Tech)は、2011年から述べ2万7000人以上の中高生のプログラミング教育を支援してきたベンチャー企業。主に対面でのプログラミングキャンプやスクールを手がけてきた一方で、オンラインプログラミング学習サービス「MOZER」も体験版として提供してきた。

今回のテクノロジア魔法学校は、MOZERの知見を活かし、ウォルト・ディズニー・ジャパンとのライセンス契約のもと、さまざまなディズニー作品を教材としてプログラミングを学ぶことができる。「ふしぎの国のアリス」や「美女と野獣」といった不朽の名作から、「ベイマックス」や「アナと雪の女王」といった最新作まで、13作品を通して、プログラミングを習得する。

一般的に「プログラミング」と言われても、どういった内容を学ぶのかわかりにくい。ライフイズテックは、大きく「メディアアート」と「ゲーム制作」「Webデザイン」の3つにプログラミングを大別し、JavaScriptやHTML/CSS、Processing、Shaderを学ぶ。例えば、冒頭の岡田さんが現場でデモした内容は「塔の上のラプンツェル」における"ランタン"の打ち上げをプログラミングしようというもので、実際に岡田さんがランタンのイメージ画を当てはめるメディアアートの作業を行った。

大きく分けて3つのスキルを学べる
ランタンの画像を当てはめる作業をこなす岡田さん

コンテンツ量は、基礎編40時間、応用編60時間の合計100時間分が用意されており、週1回2時間の学習でおよそ1年間、毎日ブラウザを通して学ぶと、最短2カ月でプログラミングのベースを習得できる。対象年齢は12歳以上となっており、「子供から大人まで、すべての人に送るディズニープログラミング学習教材だ」とライフイズテック 取締役副社長COOの小森 勇太氏は語る。

利用料金は12万8000円(税別)と高額だが、ディズニーを通してスキルが身につくと考えれば、むしろ安いと感じる人も少なくないかもしれない。

オンライン学習の課題を乗り越えるためのディズニー

ライフイズテック 代表取締役CEOの水野 雄介氏は、オンライン教育の課題を「継続率」と話す。例えば、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学が提供するオンライン講義「MOOCs」の修了率(すべての講義を履行した割合)は5.5%にとどまる。世界最高学府と言っても過言ではない2校が無償で提供する講義でさえこれだ。

ライフイズテック 代表取締役CEO 水野 雄介氏(左)と岡田 結実さん(中)、ライフイズテック 取締役副社長COO 小森 勇太氏(右)
オンライン学習の課題は継続率だ

もちろん、お金を支払う有償サービスの方が身が入るといった側面もあるだろうが、やはり「足を運ぶ」「顔を合わせる」といった行動を伴うものに比べ、取り組みを継続することは難しいだろう。ライフイズテックは、MOZERの体験版を提供した際、進撃の巨人ともコラボレーションしていた。そうした知見が今回のディズニーとの協業にも生かされているのだろう。

小森氏は、継続率の改善を目指す上で、もっとも重要な要素が「学習の動機付け」と話す。ただ目の前に与えられた課題をこなすだけでなく、ディズニーのキャラクターや知っているあの物語を、自分の手で成立させていく。そういったノウハウを、会社設立から7年の中高生へのプログラミング教育を通して溜めてきた。

「ストーリーと学習を行き来することで、学習とエンタメの相乗効果が生まれる。例えば、学ぶための30分の講義は大人でも辛い。極論を言えば、YouTubeの5分動画を見ることだけでも辛い。だから私たちは『3秒ステップ・バイ・ステップ式』で、知らず知らずのうちに膨大な学習ができるようにした。基礎・応用、そして実力試しと、学習意欲を自然な形で引き出したい」(小森氏)

これまでライフイズテックが培ってきたプログラミング教育のノウハウを投入している

よく勘違いされるが、プログラミング教育の必修化はあくまで既存の科目の中で一部のコマ数を使って学ぶものだ。しかも、ライフイズテックが提供するような実践的なプログラミングではなく、あくまで「プログラミング的思考」を養うためのものとされている。もちろん、先進校などは実践的なプログラミング教育も取り入れるだろうが、「誰もがプログラマーになれる」といったものではない。

誰もが知るディズニーを通して、簡単に、楽しく、未知の領域へと一歩踏み出せる。「20年後に量産されたIT人材が上の世代を駆逐してしまう」と戦々恐々でいるよりも、むしろこのツールで学んで迎え撃つ、くらいの気構えでいることが、自分にとって、そして日本にとっても大きな財産になるのではないだろうか。