有料チケットで成功したLJL、日本eスポーツイベントのお手本になれるか?

岡安学の「eスポーツ観戦記」 第3回

有料チケットで成功したLJL、日本eスポーツイベントのお手本になれるか?

2019.04.23

よしもと∞ホールで開催された「LJL SPRING SPLIT 2019 Final」

リーグが進むにつれて増えていったチームや選手の固定ファン

有料チケットにも関わらずリーグでは会場がほぼ満席状態

4月13日、よしもと∞ホールにて、『League of Legends(LoL)』の国内プロリーグ「League of Legends Japan League(LJL)」の王者を決めるプレイオフ決勝、「LJL SPRING SPLIT 2019 Final」が行われた。

対戦カードは2019年春季シーズンのリーグ戦を20勝1敗の圧倒的な強さで勝ち上がった「DetonatioN FocusMe」と、プレイオフのセミファイナルにてリーグ2位の「Crest Gaming」を3連勝で下し、リーグ3位からファイナルに勝ち上がった「Unsold Stuff Gaming」だ。Unsold Stuff Gamingのリーグ成績は12勝9敗と、DetonatioN FocusMeと比べると見劣りするが、チーム状態は上り調子なので、成績差以上の拮抗した試合が期待できそうだ。

20勝1敗の好成績で1位抜けしたDetonatioN FocusMe
リーグ戦3位からセミファイナルを勝ち抜き、ファイナルに進出したUnsold Stuff Gaming

観戦が前提のeスポーツリーグとして成功を収めたLJL

ファイナルの形式は「BO5方式(5戦3勝勝ち抜け)」だ。Unsold Stuff GamingがDetonatioN FocusMeをあと一歩まで追い詰めるシーンがあったものの、結局はDetonatioN FocusMeがリーグ戦の強さをそのままに、3連勝で優勝を果たした。

LJLで優勝したことで、DetonatioN FocusMeは、5月1日から19日にかけて、ベトナムと台湾で行われるMSI(Mid-Season Invitational)に日本代表として出場することが決まった。DetonatioN FocusMeは、昨年のWorldsでプレイインステージで初勝利をあげ、強豪C9をあと一歩のところまで追い詰めるなど、大活躍しただけに、MSIでもそれ以上の成績を期待したいところだ。

決勝に相応しい熱戦を繰り広げたが、結果は3-0でDetonatioN FocusMeで優勝した

今回の「LJL SPRING SPLIT 2019」は、よしもとクリエイティブエージェンシーが運営に加わったこともあり、会場もよしもと∞ホール。観客席が常設されている劇場を使用することにより、観客が観戦することを前提に行われたリーグ戦となった。試合はすべて有料(2500~3500円)で、日本のeスポーツイベントとしては画期的なリーグ戦と言える。

しかも、多くの試合でほぼ満席状態。もっとも少ない日でも6割以上の席は埋まるそうだ。開幕戦と今回のファイナルに限れば、立ち見席まで埋まるほどの人気ぶり。“観るeスポーツ”の先駆けとして、大きな成功を収めたのではないだろうか。

ファイナルは立ち見が出るほどの人気。チケットもあっという間に完売した

徐々に増えていったチーム/選手の固定ファン

観客についても、最初のうちは『LoL』のプレイヤーがプロの試合を観に来るという印象だったが、終盤になるにつれ、選手を応援するファンが増え始め、まさにスポーツ観戦やライブ観戦に近い状態になっていた。観客席を見回すと、誰がどこのチーム、どの選手のファンかひと目でわかるほど、応援が本格的になっていた。

DetonatioN Gamingのユニフォームを着て応援する観客もちらほら。Ceros選手やEvi選手を応援する手作り応援グッズを携えた人も

リーグ戦では、試合終了後にロビーでファンとチームの「ファンミーティング」が行われる。これは昨年も行われていたが、ファンにとっては選手と近づける貴重な場になっていた。

今回のファイナルでも、試合の終了後にフォトセッションやファンミーティングが行われた。死力を尽くした試合後に1時間以上立ちっぱなしでファンに対応するのは、選手にとって決して楽なことではない。しかし、それでもファンを楽しませるのが「プロ」である。

ただ、今後、さらに観客が増え、会場が大きくなった場合は、アイドルの握手会のように、1人あたりの時間を設定する、「はがし」と呼ばれる係員を配置するなど、多少の対策は必要になってくるかもしれない。

試合終了後、ロビーでファンミーティングを行うUnsold Stuff Gaming

今回のSPRING SPLITは、全試合をよしもと∞ホールで行っていたが、今後セミファイナルとファイナルは、もう少し大きな会場で実施してもよさそうだ。

今回は初めてリーグを通して有料チケットでの開催だったこともあり、どれだけの人が訪れるか未知数な状態で席数を増やすのは難しかったかもしれないが、SPRING SPLITを通じて運営の見通しもある程度できたはずだ。2年前のSUMMER SPRITのファイナルは、幕張メッセの幕張イベントホールで開催しており、その席数は固定席だけで3888席。このときもほぼ満席となっていたので、さらに大きな会場での開催も見込めそうである。

日本のeスポーツのなかでは、もっとも観客を集められるプロリーグの1つであるLJL。SPRING SPLITをさらなる飛躍のステップとして、SUMMER SPRITの成功も願いたいところだ。LJLがほかのeスポーツタイトルへも大きく影響することは間違いなく、日本のeスポーツの発展のきっかけとなるのは言うまでもないだろう。

eスポーツ部の発足を促進させた「全国高校eスポーツ選手権」の功績

岡安学の「eスポーツ観戦記」 第2回

eスポーツ部の発足を促進させた「全国高校eスポーツ選手権」の功績

2019.04.10

毎日新聞社は「全国高校eスポーツ選手権」の決勝大会を開催

全国規模で行われる高校生対象のeスポーツ大会は初

通信高校でも活動できる「eスポーツ部」の発足に大きく貢献

3月23・24日に、幕張メッセにて、「全国高校eスポーツ選手権」のオフライン決勝大会が開催された。同大会は、全国の高校生が『ロケットリーグ』と『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』で競い合う、いわばeスポーツのインターハイ。主催者は、選抜高校野球大会(センバツ)を手がける毎日新聞社だ。

最近ではテレビ東京と電通が高校生対象のeスポーツ大会『STAGE:0』の開催を発表したり、ルネサンス高校新宿代々木キャンパスがeスポーツコースを開設したりと、高校生とeスポーツとの接点が増えている。

なかでも、全国高校eスポーツ選手権は今回が初の試み。高校生が対象のeスポーツ大会としても初の開催だ。伝統的なメディアの新聞社が行うことでも話題になった。

通信高校では難しかった「部としての活動」を実現

今大会にエントリーしたのは、LoL部門が93チーム、ロケットリーグ部門が60チームだ。最終的に、ロケットリーグ部門は佐賀県の佐賀県立鹿島高校「OLPiXと愉快な仲間たち」が、LoL部門は東京都の学芸大附属国際「ISS GAMING」が優勝した。

予選はすべてオンラインの試合だったので、オフラインで、しかも大勢のオーディエンスの前で試合するのは決勝大会が初。物怖じしない生徒もいたが、場慣れしていない生徒も多く、緊張した面持ちで大会に参加している様子が見受けられた。

優勝した学芸大付属国際「ISS GAMING」

同大会の予選は12月で、本戦は3月。受験シーズンと重なるので、本選出場が決まったチームの3年生は受験勉強をしながら練習しただろう。また、過去に例のない試みということもあり、学校側への申請や参加表明など、慣れないことも多かったはずだ。高校生にとって、それらは決して簡単なことではない。それでも延べ150チーム以上が参加したことを考えれば、今回の取り組みがいかに高校生から受け入れられたかがわかる。

プロのeスポーツイベントさながらの豪華なステージで対戦。会場は大いに盛り上がった

なかでも、注目したいのが、通信制高校の参加の多さだ。通信制高校には、通学制と通信制があり、通信制の場合、基本的に学校へ通うことはない。『LoL』の決勝大会に進出したN高校は心斎橋キャンパスからの登録だったが、大阪近辺に住んでいる生徒ばかりではなく、全国からオンラインで授業を受けている生徒もいる。

したがって、高校に通っていても、同級生と出会うことは少なく、1つの場所に集まって行う部活も基本的にできない。特に運動系はそうだろう。しかし、eスポーツであれば、基本オンラインで集まり、一緒にプレイすることができる。

つまり、通信制高校では諦めることの多い部活動を、eスポーツが実現させてくれたと言ってもいいだろう。そして、部活をする以上、ほかの高校と競い合うという大会は大きなモチベーションになるものだ。

N高校の生徒たちも会場に駆け付けた。多くの生徒が選手たちと顔を合わせたことがないなかで、横断幕を掲げて応援していた

今回の大会はeスポーツ部の発足にも寄与

今回参加したチームは、パソコン部など、普段はほかの活動をしている部であったり、大会のために急遽集まった有志であったり、同好会的なものであったりと、正式な「eスポーツ部」でないケースも多い。

『LoL』の決勝大会に進出した岡山共生高校はeスポーツ部としての参加だったが、大会が開催されるまでは「同好会扱い」で、大会出場に際して、学校側へ交渉した結果、部として認めてもらったのだという。

岡山共生高校の応援団。岡山から応援に駆けつけた

最近、公費でゲームやパソコンを購入したり、部活でゲームをしたりすることに嫌悪感を抱く教師がいるというニュースを耳にする。しかし、高校生がこれだけ自主的に行動し、そして通信制の場合は諦めることの多かった部活に参加できる喜びがあるのであれば、後押ししたいと思うものではないだろうか。

全国高校eスポーツ選手権は次回の開催も発表されている。学校でeスポーツ部を発足させるハードルが高い学校もあるかもしれないが、今年のがんばりを見せた参加校のおかげで、そのハードルは多少なりとも低くなっていくはずだ。

最初に述べたが、全国高校生eスポーツ選手権は毎日新聞社が主催の大会。つまり、センバツや全国高校ラグビー、全国高校駅伝競走大会、全日本学生音楽コンクールなど、高校生のためのスポーツ、文化事業を支えるイベントであるということは変わりないはずなのだ。

次世代eスポーツ選手の育成に必要なのは、同ランクプレイヤーとの切磋琢磨

岡安学の「eスポーツ観戦記」 第1回

次世代eスポーツ選手の育成に必要なのは、同ランクプレイヤーとの切磋琢磨

2019.04.02

グランドファイナルを終えた「ストリートファイターリーグ」

トライアウトやオーディションで参加プレイヤーを募った

各チームのビギナークラスはオーディションで初めて『ストV』をプレイ

ランクごとの新リーグも発表、次世代スター誕生に期待

3月21日、秋葉原にて「ストリートファイターリーグ powered by RAGE」のファイナルセクションが行われた。同リーグは、『ストリートファイターV AE(ストV AE)』を使って3人1組で戦うチームの大会だ。

昨年は参加者すべてプロ選手だったが、今回は「エクストリームクラス」と呼ばれるクラスに分類されたプロ選手6人が、全国からトライアウトで選抜された「ハイクラス」と、オーディションで選ばれた「ビギナークラス」から、それぞれ1名ずつドラフト指名してチームを組成する。なお、ビギナークラスの選手は、オーディションで初めて『ストV AE』に触れたというレベルだ。

リーグの試合形式は、同じクラスの選手が対戦する星取戦。勝利チームには対戦ごとにポイントが与えられ、ポイント獲得上位3チームがファイナルセクションへ進出する。ポイントはクラスによって異なり、ビギナークラスは1ポイント、ハイクラスは2ポイント、エクストリームクラスは3ポイントだ。

ファイナルセクションの大会前の様子。開場前には入場待機列ができていた
司会はRAGEでお馴染みのタレント・八田亜矢子さんと、お笑いコンビ「ノンスタイル」の井上裕介さんの2人。ゲストは自身もストVをプレイする「ゴールデンボンバー」の歌広場淳さんだ

出場チームは全6チーム。リーグは10節まで行われ、それぞれのチームと2回ずつ対戦する。10節終了時点で、板橋ザンギエフ選手率いる「イタザン オーシャン」が1位抜けし、ネモ選手率いる「ネモ オーロラ」が2位、マゴ選手率いる「マゴ スカーレット」が3位で、ファイナルセクションへの進出を決めた。

ファイナルセクションはこれまでのルールと異なり、10ポイント先取で勝ち抜け。同クラスでの対戦やクラスによるポイント数は変わらない。

1位通過の「イタザン オーシャン」。リーダーの板橋ザンギエフ選手(写真中央)と、ハイクラスのもっちゃん選手(写真右)、ビギナークラスの木村圭汰選手(写真左)
2位通過の「ネモ オーロラ」。リーダーのネモ選手(写真中央)、ハイクラスのあんまん選手(写真右)、ビギナークラスの奥村茉実選手(写真左)
3位通過の「マゴ スカーレット」。リーダーのマゴ選手(写真中央)、ハイクラスのさかがみ選手(写真右)、ビギナークラスの国定凉介選手(写真左)

まずは、2位通過と3位通過のチームによるセミファイナルが行われた。2位には2ポイントのアドバンテージが付与されるが、3位のマゴ スカーレットのビギナークラス・国定選手が勝利すると、ハイクラス・さかがみ選手が続き、ポイント差をひっくり返す。しかし、エクストリームクラスの対戦でリーダのマゴ選手がネモ選手に連敗してしまい、マゴ スカーレットは敗退。ネモ オーロラがグランドファイナルに進出した。

グランドファイナルは、リーグ戦1位通過のイタザン オーシャンと、セミファイナルを勝ち上がって意気揚々のネモ オーロラとの対決だ。ネモ オーロラの奥村選手は今大会唯一の女性プレイヤー。リーグ中は未勝利だったが、回を追うごとに動きにキレが出てきていた。グランドファイナルでは、「初勝利も目前」といったところだったが、イタザン オーシャンの木村選手の前に敗れる。ハイクラスのもっちゃん選手、あんまん選手の対戦では、2回の対戦機会で1勝1敗と好勝負を見せるも、リーダー対決を板橋ザンギエフ選手が制し、イタザン オーシャンが優勝を勝ち取った。

さかがみ選手にアドバイスするマゴ選手。基本的に個人戦が多い対戦格闘ゲームにおいて、仲間同士でアドバイスできるのがストリートファイターリーグのいいところだろう
奥村茉莉選手を指導するネモ選手。残念ながら未勝利で終わった奥村茉莉選手だが、唯一の女性参加者として気を吐いていた
木村圭汰選手の試合を暖かく見守る板橋ザンギエフ選手。1位通過の余裕を感じさせる

ビギナーが躍動を見せた3カ月間

今リーグの見どころは、なんと言ってもビギナークラス。『ストリートファイター』シリーズはもちろん、対戦格闘ゲームにほぼ触れたことがない選手が、短期間でどれだけ成長できるかにも注目が集まった。

そもそも対戦格闘ゲームは、ほかのゲームに比べてテクニカルな操作が必要で、最初は基本的な必殺技の「波動拳」ですら、まともに出せない人が多い。しかし、同リーグに参加したビギナークラスの選手たちは、必殺技のコマンドを使いこなすだけでなく、「コンボ」や「Vリバーサル」などの特殊なアクションまでしっかりと使いこなしていた。

フィジカルに依存するリアルスポーツを始めようとした場合、普段から体力トレーニングを行っている人を除き、まずは体力づくりを行う必要があるだろう。テクニック面を磨く前に、ある程度基礎を身につけなければならないのだ。

その点、基礎体力を必要としないeスポーツは、3カ月程度の短期間でも成長することができる。今回はそれを実証したのではないだろうか。また、ビギナーで参加した選手は、立派に成長した大人でもある。ある程度、年を重ねてから新たにタイトルをプレイし始めた場合でも、十分成長を期待できるのがeスポーツならではの魅力と言えよう。

次世代スターに期待したい『ストV AE』の新リーグ

今回の大会終了後には、小野プロデューサーから新たなリーグの構想が発表された。

新たなリーグ構想を発表する小野プロデューサー

新たなリーグでは、トッププロまでの道のりとして「ルーキークラス」「ビギナークラス」「ハイクラス」「トップクラス」とクラス分けし、多くの人が参加しやすいように門戸を開いている。

ビギナークラスからトップクラスまでを「ストリートファイターリーグ:トライアル」とし、今回のエクストリームクラスにあたるプロ選手向けを「ストリートファイターリーグ:Pro-JP」とした。また、プロ選手となれば、これまでと同様に「カプコンプロツアー」や「カプコンカップ」など、トップリーグツアーにも参加できる。つまり、プロの活躍の場を増やすとともに、プロへの道をより明確に示したと言ったところだろう。

5つのクラスに分けられ、それぞれのクラスで好成績を残すことで、上のクラスは進出できる

これまで対戦格闘ゲームでは、熟練者と初心者のマッチングが行われることもあり、初心者は入りにくい環境だった。その結果、対戦格闘ゲームのプレイ人口は激減し、ある種選ばれた人のみがプレイできる場となってしまっていたのだ。明確なクラス分けをすることで、実力の近いプレイヤーと戦えるうえに、成長とともに上のクラスを目指せるようになれば、初心者がプレイするハードルを下げることができるだろう。

eスポーツでは、プロを中心としたトップ選手の競い合いに注目しがちだが、初心者、中級者が活躍できる場を作ることも重要だ。それによってプレイ人口は増加し、未来のプロ選手やスター選手が生まれる土壌が育まれるのである。

「ストリートファイターリーグ:トライアル」から、次世代のスターが誕生することに期待したいところだ。