あまりにも突然に訪れたセブン&アイ・ホールディングス 鈴木敏文会長兼CEOの辞任劇。同社は数多くのM&Aによって発展してきたが、どのような沿革をたどってきたのだろうか。M&A Online編集部がまとめた同社のM&Aについての記事で振り返ってみる。

セブン&アイ・ホールディングス<3382>は、2005年にセブン-イレブン・ジャパン、イトーヨーカ堂、デニーズジャパンの3社の株式移転によって、純粋持ち株会社として設立された。グループの年間売上高は6兆円、営業利益は3000億円を超える、言わずと知れた国内最大規模の小売業である。同社のM&Aを語るにおいて、1990年のイトーヨーカ堂による米国サウスランドとの関わりは避けて通れない。

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もともと“セブン・イレブン”の屋号は、米国サウスランドのものであった。イトーヨーカ堂は子会社であるセブン-イレブン・ジャパンを通じて日本でのエリア・フランチャイザーを務めていた、いわば分家と言うべき存在であった。そもそも分家になったのも、日本国内でのイトーヨーカ堂の出店に対する地元の中小・小売店の反発を抑えるために、大型店と中小・小売店が共存共栄を図るための業態として目を付けたのが始まりである。

そのような成り行きの分家が本家に対して救済買収を行ったのは、91年。当時、サウスランドは敵対的買収から逃れるための防戦買い資金を調達する目的で、利回りの高いジャンク債を大量に発行、買収防衛には成功したものの、ジャンク債の高金利で資金繰りに窮し、倒産の危機にひんした。その救済に乗り出したのが、日本での商標使用権を担保に多額の融資もしていたイトーヨーカ堂である。

イトーヨーカ堂はサウスランドの救済に名乗りを上げるが、サウスランドの再建のためには資金繰りの正常化が急務であった。ジャンク債の処理が焦点となるも、オーナーであるトンプソン一族が大株主にとどまったことで債権者の反発を招いて調整は難航した。最終的には、債権者に大幅に譲歩するかたちで新株・新社債とジャンク債を交換し、イトーヨーカ堂は当初の想定よりも多額の出費を強いられながらも買収を成功させる。

一連の騒動は、M&Aを拒んで疲弊した企業がM&Aによって救済されるという皮肉な筋書きではあるが、それは売り手のサウスランドから見た話だ。買い手のイトーヨーカ堂からみれば、M&Aは日本におけるセブンイレブンブランドの価値を守るためでもあった。

直近の売上高構成比率は、ここ10年米国で30%の伸び、日本は68%

セブン&アイ・ホールディングスの直近の売上高構成は、日本65%、北米33%、その他2%となっている。意外なことは、ここ10年、海外売上比率が低下していることである。もちろん、米国での売上高はここ10年で30%伸びており、その他地域(主に中国)も3.4倍に売り上げが伸びているのだが、ボリュームの大きい日本が68%とそれ以上のペースで伸びたため、海外売上高の割合が低下しているのだ。

所在地別売上高構成

セブン&アイ・ホールディングスの足元のM&Aは国内外での戦略は趣を異にする。 海外、とりわけ北米では、株式譲渡・事業譲渡いずれの場合にもM&Aでまとまった数の店舗を獲得することに主眼を置く。

一方、国内では既に知名度・店舗数ともに十分であり、フランチャイズという店舗展開の形態上、ほかのコンビニエンスストアチェーン本部をM&Aで取得する必然性は薄い。むしろ、他チェーンよりも高い平均日販を武器に、日販に劣る他チェーンの加盟店にフランチャイズ契約のくら替えを促すことで足りる。北米のように一括でコンビニエンスストア多店舗を獲得することよりも、より高級路線の百貨店や、認知度の高い専門店の獲得など、業態の多様性を志向したM&Aを展開する。

営業利益の94%は、コンビニ事業および金融関連事業で生み出す

経営破たんしたそごうと西武を傘下に持つミレニアムリテイリングを06年に野村プリンシパルインベストメントから買収し、百貨店事業に進出すると同時に国内の小売業で第一位となる。

07年にはいずれも専門店であるロフト、赤ちゃん本舗を相次いで子会社化。既存店舗との連携を図る。

これらの結果、ホールディングス発足時には外部売上高が3兆8957億円であったのに対し、15年2月期のそれは6兆389億円と55%伸びている。売上構成もコンビニエンスストア事業が52%から45%へ低下。イトーヨーカドーなどのスーパーストア事業も43%から33%まで低下し、代わって百貨店事業が0%から15%と一定の存在を示しており、売上構成の面ではM&Aの効果が出ている。

業態別売上高構成比率(2006年2月期)
業態別売上高構成比率(2015年2月期)

しかし、利益面からは別の世界が見える。

コンビニエンスストア事業が順調に利益を伸ばしているのに対し、百貨店事業と通信販売事業は低収益、もしくは赤字の状況である。営業利益構成比では10年前の85%から80%まで低下しているが、これは同時期に金融関連事業の営業利益構成比が7%から14%に上昇している影響が大きい。つまり、セブン&アイ・ホールディングスの営業利益の94%はコンビニ事業と金融関連事業でたたき出していることになる。買収した百貨店事業の利益構成比は2%ほどに過ぎない。

業態別営業利益推移

さて、経営戦略としてオムニチャンネルの構想を掲げた13年から同社のM&A攻勢は目覚ましい。

オムニチャンネルとは、リアル店舗とネット販売という違いだけでなく、コンビニと百貨店といった業態の違いも超えた、あらゆる販路をもシームレスに統合し、どのような販路でも顧客に同じ購買体験を提供することを趣旨としたものだ。

ここ最近のM&Aでは13年12月のニッセンホールディングスに対するTOBが起点となった。実店舗・ネット販売の双方で顧客との接点を広げる構想の中、EC(電子商取引)分野が補完されることになる。

ニッセンのTOBと時を同じくしてバーニーズ ジャパンの株式取得を行い、15年には完全子会社化。同ブランドにおける顧客ロイヤルティーの高さ、子会社のミレニアムリテイリングが営む百貨店事業との親和性の高さを買ったかたちであり、同時にオムニチャンネルに乗せる商品としての展開も視野に入れる。

14年1月にはFrancfranc(フランフラン)で知られるインテリア雑貨店バルスの株式を48.67%取得している。

また、セブン&アイ・ホールディングスは1号店を東京都・千住で開店したヨーカ堂がルーツであることから、歴史的に関東地区に強く、地域によっては強みが十分に発揮できていない。それを補完するために、有力な地場スーパーへの資本参加も行っている。11年に近鉄子会社の近商ストアに30%出資(後に資本提携解消)、13年7月に北海道帯広に本拠地を置くダイイチに30%出資、13年12月に岡山と広島に店舗を持つ天満屋ストアに20%出資している。これらは自社店舗網が薄い地域の補完効果を持つものと期待される。

小売業に徹したM&A戦略。次に描く業態は何か

セブン&アイ・ホールディングスによる買収は、一貫して小売業をターゲットとし、その中でポートフォリオを描いている。コンビニ、スーパーを軸とし、百貨店、専門店から通信販売と多様な業態を持つセブン&アイ・ホールディングスであるが、ドラッグストアなど、まだ傘下にはない業態もある。01年に新規参入した銀行業など、金融関連も小売業を補完する位置づけとしてM&Aのチャンスがありそうだ。特にインターネットが普及したことで小売業と金融業の垣根は低くなっている。オムニチャンネルを推進していくにあたり、同社のM&A戦略を占うには「何が足りないか」がカギを握るだろう。

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この記事は、企業の有価証券報告書などの開示資料、また新聞報道を基に、専門家の見解によってまとめたものです。

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