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野山靖代

ソニーが次に期待する2つの分野

ソニーが次に期待する2つの分野

2016.06.30

2016年5月で創立70周年を迎えたソニー。東京通信工業としてスタートした同社は、トリニトロンカラーテレビやウォークマン、PlayStationなど、これまで数々のヒット商品を世に送り出してきた。

そんなソニーが6月29日、2016年度経営方針説明会を開催。ソニー 代表執行役 社長 兼 CEOの平井一夫氏自らが登壇し、2017年度中期経営計画の進捗、2018年度以降の布石として取り組んでいる施策について説明した。

ソニーは経営方針説明会を開催

痛みを伴う構造改革から、成長への投資に舵を切ったソニー。本稿では主に、ソニーが何を見据え、どのような手を打っていくのか、将来に向けた取り組みをみてみたい。

調子が上向いてきたソニー

2015年度の連結営業利益が前年度より2,256億円増の2,942億円を記録、PS4が歴代のPS史上最速で普及拡大するなど明るいニュースが続くソニー。つまずいていたテレビ事業とモバイルコミュニケーション事業含め、2015年度にはコンシューマー向け製品が盛り返してきた。この勢いのまま、2017年度の経営数値目標である、ROE(株主資本利益率)10%以上、営業利益5,000億円以上を達成したい考えだ。

2015年度の連結業績
2017年度の経営数値目標

ちなみに、連結営業利益が5,000億円以上となったのは、5,257億円を記録した1997年度の一度きり。「(連結営業利益5,000億円という数値は)チャレンジングな目標。20年ぶり2度目となるこの数字を達成できたら、ソニーが現在目指している高収益企業へ変容するための重要なマイルストーンとなる」(平井氏)と説明する。

2016年度は、4月に発生した熊本地震の影響(CMOSイメージセンサーなどを生産する「熊本テクノロジーセンター」が被災。徐々に復旧しており、2016年8月末をメドにフル稼働する見込み)を差し引いても、2015年度と同水準の連結営業利益3,000億円に達する見込みだ(2016年5月時点)。

コンシューマー向け製品が少しずつ勢いを取り戻したことで、平井氏は「新たなチャレンジを加速するべき時が来た」という。そして今後の注力分野として言及されたのが「VR(バーチャルリアリティ、仮想現実)」「AI・ロボット」だ。

VR事業は大きなチャンス

ソニーのVR事業といえば、先日予約開始とほぼ同時に完売となった「PlayStation VR」が思い浮かぶ。2016年は「VR元年」といわれるほど盛り上がりをみせているが、それを牽引していくくらいの影響力を持つのがまさにPS VRだ。

ソニーのゲーム事業は好調で、2017年度の経営数値目標についても上方修正した。従来の、ディスクを販売するビジネスモデルからネットワークサービスへ移行し、コンテンツプラットフォームになったことが、PS4人気の理由のひとつ。今後も「ハードとしての進化を忘れず、プラットフォームとして」(平井氏)ユーザーを囲い込んでいく考えだ。ゲーム事業が今後数年間のソニーを引っ張っていくことはまちがいないだろう。

過去最速で普及拡大していくPS4。ゲーム事業は好調
2016年10月発売のPlayStation VR

そんな重要なゲーム分野において、今もっとも注目を集めているのがVR。そして、そのVRはソニーの強みを存分に発揮できるジャンルでもありそうだ。平井氏は「まずはゲームから参入するが、カメラやコンテンツ制作といったノンゲームでもソニーは資産を持っており、これはアドバンテージ。ソニーグループ全体として、VRに取り組みたい」と意欲的な姿勢をみせる。

ソニー 執行役 副社長 R&Dプラットフォーム エナジー事業 ストレージメディア事業担当の鈴木智行氏は「PS VRはヘッドマウントディスプレイ(HMD)型だが、360度の多視点映像を大画面のもの、ドーム型のものへ展開することも考えている。映像の撮影、コンテンツ制作、データ伝送、出力まで、ソニーが培ってきた技術を生かせる」と述べた。たしかに、これまでの技術を幅広く生かせる分野ではありそうだ。

ソニーはどんなロボットを作るのか

続いて、AI・ロボットについて触れた平井氏。ソニーは2016年5月に米AI企業のCogitai(コジタイ)社へ出資を発表していた。Cogitaiとソニーは「自らが経験から自律的かつ継続的に学び、より広範の領域に適応可能な人工知能」の開発を目指す。実は提携に先がけて、2016年4月、AI・ロボットを事業化するための組織を社内に立ち上げているという。

平井氏のほか、ソニー 代表執行役 副社長 兼 CFO 吉田憲一郎氏(写真左)と執行役 副社長 鈴木智行氏(写真右)が質疑応答に応じた

ソニーがロボットを作るのは、犬型ロボット「AIBO」以来のこと。再参入というかたちになる。2006年、AIBOが生産終了の憂き目をみたのは、ソニーのエレクトロニクス事業を立て直すため。AIBO事業は当時、"不採算事業"という判断が下された。

今回検討しているロボットについて具体的な話は出なかったが、開発しているもののひとつは「お客様と心のつながりを持ち、育てる喜び、愛情の対象となりうるようなロボット」(平井氏)だという。ロボット掃除機など「生活に直接的に役立つ」ものではなく、シャープの「RoBoHoN」やソフトバンクの「Pepper」といったロボットたちと同じようなジャンルとなるのだろうか。「感動」を重視するソニーらしい選択だ。

しかし、AIBOの反省もあってか、「将来的には、製造工程や物流といった広範な領域での事業展開も検討」(平井氏)と付け加えた。単にAIを搭載したプロダクトを作るだけでは終わらない、という意気込みのあらわれとも受け取れる。

ハードウェアを重視

VRとAI・ロボットを今後の注力分野に据えたソニー。今後、どんなVRシステム、あるいはロボットが飛び出すのか。残念ながら、詳細な計画は明かされなかった。

平井氏は「ハードウェアこそソニーの新しい成長の源泉」と述べた。ハードウェアはユーザーとの接点であり、もっとも近いところで感性に訴えかけるものだからである。そうした意味で「ラスト・ワン・インチ」というテーマを掲げる。物流業界などでよくいわれる「ラスト・ワン・マイル」をもじったもので、"最後の1インチ"でユーザーに新たな価値を提案することを目指すという意味だ。

「Last One Inch」が今後のテーマ

「感動とリカーリング型ビジネスの追求」をミッションとして掲げる平井氏。リカーリング型ビジネス(特定のユーザーと継続的に付き合っていくビジネス)は持続的な収益を得るために重要な考えだ。リカーリング型ビジネスを追求し、VR、そしてAI・ロボットでソニーが収益を得るには、ソフトウェアもきわめて重要になってくるのではないだろうか。平井氏はSCEI(ソニー・コンピュータエンタテインメント。現在のソニー・インタラクティブエンタテインメント)のトップを務めた人物。その重要性も十分わかっているはずだ。

何でもアリ? 「米」を売るアイリスオーヤマの本気度

何でもアリ? 「米」を売るアイリスオーヤマの本気度

2016.06.28

プラスチック製の収納ケース、物干し竿、植木鉢、掃除機、ホットプレート、LED電球、マットレス、ペット用のトイレ……何の脈絡もないようにみえるが、これらはすべてアイリスオーヤマが実際に扱っている製品である。すでに「何の会社なの?」と思わなくもないが、筆者がこれまででいちばん驚いたのは「米」だ。

アイリスオーヤマが販売する米のラインナップは大きく分けて、2合 / 3合の小袋パック「生鮮米」シリーズ、5kg / 9kgの低温製法米、レンジで温めて食べるパックご飯の3種類。宮城県のひとめぼれのほか、ゆめぴりかやななつぼし、つや姫、あきたこまちなど、北海道と東北の銘柄を扱う

米を売り始めたキッカケ

アイリスオーヤマは宮城県に本社を構える企業。2011年3月11日に発生した東日本大震災では、角田I.T.P.などアイリスオーヤマの施設も被害を受けた。東北の企業として、どうしたら東北の復興に貢献できるか。たどり着いた答えのひとつが、農業ビジネスを興し、競争力を高めることだった。そこで、農業生産法人 舞台ファームと共同出資で舞台アグリイノベーションを2013年4月に設立。かくしてアイリスオーヤマは精米事業へ参入した。

今回話を伺ったのは、アイリスオーヤマ 食品事業部 事業部長 山田次郎氏

アイリスオーヤマが販売している米の特徴は何といっても低温製法。加えて、精米したての米を密封するパッケージだ。酸化や虫の侵入も防げるうえ、米の鮮度が落ちにくい。一般的な米に比べると、割高感があるものの、そのおいしさで好評を博している。

低温製法を実現するための工場を、宮城県南部の亘理町に建設。2014年7月から稼働している。亘理町は東日本大震災の際、津波で甚大な被害を受けた地域だ。

この亘理精米工場の特徴は、先述の「低温製法」と「倉庫」の2つ。低温製法とは、保管から精米、包装まで15℃に保つというもの。精米時に発生する摩擦熱をできるだけ抑えることで、おいしさをキープできるというわけだ。

低温製法を実現する亘理精米工場

もちろん、低温製法を実現するには相応のコストがかかる。それが米の価格にも反映されているのだが、米の仕入れ値を抑えるなどして価格を下げていく方針だ。仕入れ値を抑えるといっても、農家から安く買い上げるわけではなく、農協を通さずに直で買い取るだけ。そして、それを可能にするのが亘理精米工場の2つめの特徴である「倉庫」だ。

亘理精米工場は42,000tを収容できる倉庫を持つ。一般的に、農家は出荷用の米を自身で保管しておけないので、収穫したら農協に買い取ってもらう。この倉庫の役割もアイリスオーヤマが担うことで、農家と直で売買できるというわけだ。

流通に革命をもたらしたパッケージ

通常、米の袋には空気穴があいている。しかし、アイリスオーヤマの販売する米はすべて密封パッケージ。さらに脱酸素剤まで同梱している。賞味期限が1年と長く、新鮮さをキープしたまま置いておけるので、店頭に並べておける期間も長くなるというわけだ。

これによって実現したのは、販路の拡大。米を売っているというとスーパーをイメージするが、アイリスオーヤマではホームセンターを中心にコンビニエンスストアなどにも米を展開している。グループ会社としてホームセンターのダイシンやユニディを抱えており、ホームセンターとのつながりももともと強かった。

アイリスオーヤマ 食品事業部 事業部長 山田次郎氏によれば、ホームセンターではこれまでも米を売っている店舗があるにはあったが、オマケ程度に置いてあるくらいのものだったという。「ホームセンターで米を買う」のが消費者の間で定着しておらず、なかなか売れないからだ。一定期間売れなかった米は品質劣化にともない、価格を下げて販売せざるを得ない。そのため、ホームセンターとしても積極的に売っていきたい類のものではなかった。

もちろんWebでも販売。写真はアイリスオーヤマ公式通販サイト「アイリスプラザ」。米の販売量は日本全体で減少傾向にあるが、唯一Webは伸びているチャネル

一方で、アイリスオーヤマの米は1年ほど店頭に出しておけるため、価格を維持したまま販売できる期間が長い。コンビニでの展開も同様だ。コンビニでは2kgの小容量パックを販売し、管理のしやすさで受け入れられているという。このように、密封パッケージはおいしさだけでなく、流通面でもメリットをもたらしたといえる。

山田氏いわく、米事業は「毎年2倍くらい成長している」とのこと。急激に成長しているのは製品の魅力はもちろんのこと、売場からトータルに手がけるアイリスオーヤマ独自の方法論があった。

餅も麺も!? 売場作りまで参加

「米ぐら売場」の展開例。写真は「ユニディあざみ野ガーデンズ」

アイリスオーヤマは2013年に米事業へ参入して以降、「毎年2倍くらい成長している」とのことで、まさに飛ぶ鳥を落とす勢いだ。2016年度の販売計画は150億円。これも現時点では、ほぼ計画通りの売上を記録しているという。

ここまで来たのは製品自体の魅力のほかに、それをたくみに周知してきたからだ。テレビCMなどのほか、ホームセンターではめずらしい試食販売を行っている。山田氏は「食べないとおいしさが伝わらない。まだ割高だが、試食をすれば2~3割の人が買っていく。そのくらいおいしさが違う」と自信たっぷりだ。試食販売はなかなか手間のかかる方法ではあるのだが、「米事業を長い目でみており、今は投資の段階」(山田氏)というアイリスオーヤマにとっては、出会いを作る好機といえる。

冒頭でアイリスオーヤマの手広さについて紹介したが、売場の什器も手がけている。パッと目を引く「米ぐら売場」を展開しており、通年で米を販売。米の売上が落ちる夏にはそうめんなど乾麺(2016年から導入)、冬には季節柄よく売れる餅を売るなど、売場作りにもイチから参加しているのがアイリスオーヤマの強みだ。米ぐら売場を設けることで、ホームセンターで米を買う習慣を徐々に定着させていくねらいもあるのだろう。

米以外の商品も米ぐら売場に置く。餅についてはレシピ提案なども含めて需要創造を図っているところ。冬だけでなく通年で消費拡大をねらう

今後は生鮮米を海外にも

現在の売上は小袋パックと大袋パックでおよそ3:7といったところ。小袋パックはそんなに多く米を食べないシニア世代、大袋パックはファミリーから支持されている。ただ、山田氏は「今後は小袋パックが伸びていきそうだ」と予測。さまざまな品種を少しずつ食べ比べできる「生鮮米 食べ比べギフトセット」などが好調なことも理由のひとつとして挙げられる。

成長してはいるが、山田氏は「まだまだこれから」という姿勢をみせる。ホームセンターやコンビニ、スーパーなどで販売するほか、社員食堂などでの採用に向けてアプローチしている最中だとか。日本だけでなく、マレーシアやアメリカではすでに販売しており、今後も海外への展開を進めていく。

もとは復興支援で始まったアイリスオーヤマの米事業。ここまで拡大してきた"本気度"に舌を巻く。米を売ると発表されたときにも驚いたが、夏に乾麺を売り出すと聞いたときもまた驚いた。しかし、その"何でもアリ"というチャレンジングな姿勢こそが、これまで市場を切り開いてきた。米事業についても、「突拍子もないことを始めた」ではなく、「これまでの経験を生かせる新たなフィールドを見つけた」ととらえたほうが良さそうだ。

インバウンドを夜に呼び込め! - 明治座が取り組む日本橋活性

インバウンドを夜に呼び込め! - 明治座が取り組む日本橋活性

2016.06.27

訪日外国人旅行を指す「インバウンド」、もはや目にしない日がないほど浸透したこの言葉。日本政府観光局によれば、2015年の訪日外国人旅行者数は前年47.1%増の1,974万人と、2,000万人に迫る勢いだった。これを受けて政府は「2020年に4,000万人」という目標を掲げる。

ここに来て、インバウンドの代名詞でもあった「爆買い」が減速気味。詳細な背景については6月21日掲載の記事に説明を譲るが、観光客数の増加も鈍化、買い物単価も下落、円高進行となかなか厳しい状況になってきた。インバウンド消費が「モノ」から「コト」へ移行したと指摘されるなか、魅力的な「コト」作りが急務だ。

その答えのひとつとして、明治座が打ち出したのが「SAKURA -JAPAN IN THE BOX-」(以下、SAKURA)だ。明治座は日本の伝統芸能とアニメ、最新のテクノロジーを融合させた新たなエンターテインメントと謳う。特徴的なのは公演が20時30分からと、夜遅い時間帯に設定されていることだ。

明治座の新しい取り組み、その名も「SAKURA -JAPAN IN THE BOX-」 (C)2016藤ちょこ/明治座

なぜ明治座が夜の時間帯に、インバウンド向けの公演を行うのだろうか。どうやら、SAKURAは日本橋の活性化において、重要な役割を担うことになりそうだ。

なぜ「夜」だったのか

明治座があるのは東京都中央区。日本橋駅まで約2kmの距離はあるものの、日本橋エリアに属する。日本橋エリアといえば、日本橋三井タワーやコレド日本橋、コレド室町など三井不動産が意欲的に再開発を行う地域だ。

日本橋エリアに限った話ではないが、実は夜間に外国人観光客が楽しめるような取り組みはまだまだ少ない。明治座 代表取締役社長 三田芳裕氏は「20時を過ぎると、日本橋の一帯は人通りが寂しくなってしまう」と話す。

明治座はもともと「夜の時間帯を使って新しい取り組みをしたい」と構想していた。というのも、「来場者は50代以上のシニア層が多い」「団体客と個人客の割合がおよそ7:3である」「ひとつの興行の回転数が落ちてきている」といった事情があるから。そこで、20時30分以降の「第3部」を行い、インバウンドを夜の時間帯に呼び込もうという作戦へ打って出た。

公演自体は9月7日からスタートするが、それに先がけて6月に内覧会を開催した。前列左から2番めがイープラス 取締役副社長の倉見尚也氏、3番めが明治座 代表取締役社長 三田芳裕氏、4番めが三井不動産 日本橋街づくり推進部長 上田隆康氏
エグゼクティブプロデューサーを務めた福原秀己氏

そのコンテンツとして今回お披露目されたのがSAKURAだ。「日本橋ナイトプログラム」と表現していることからもわかるように、日本橋から発信する夜間市場活性化のための催しとなる。伝統的な"日本らしさ"を詰め込みつつ、アニメやプロジェクションマッピングの手法を用いた観客参加型のプログラム。内覧会に参加した三田氏は「インバウンドだけでなく、日本の若い層を呼び込むキッカケになったら」と期待を寄せる。

エグゼクティブプロデューサーを務めた福原秀己氏は、クールジャパン戦略推進会議有識者メンバーでもある。「昼の時間帯はもはやトレードオフの状態。一方で、夜の時間帯は+αにしかならない。東京を観光都市にするには、夜も楽しめるショーが必要だ。SAKURA以外にも"夜間市場"を盛り上げてくれる取り組みが今後出てくることを期待している」と福原氏はいう。

東京にエンターテインメントを

チケット販売という"流通"を担うのはイープラス。共催というかたちで名を連ねる。舛添要一元都知事が「ブロードウェイのような劇場街を東京に作りたい」と表明したことは記憶に新しいが、イープラス 取締役副社長の倉見尚也氏は「ニューヨークを訪れる外国人観光客の目的は、ほとんどがブロードウェイでの演劇鑑賞。その経済効果は年間1兆円ともいわれている。現在、東京を訪れる外国人観光客は食事や買い物目的が多く、演劇鑑賞などのエンターテインメント目的はきわめて少ない」と指摘する。

本稿冒頭でインバウンド消費がモノからコトへ移行している、という視点を紹介したが、明治座がSAKURAという"コト"で狙うのはファン作り、さらにはリピーターの獲得である。

SAKURA上映中の一幕。桜の木を表現している(内覧会にて撮影。ダイジェスト版につき、本公演とは異なる可能性がある)

ファン作りはともかく、リピーターの獲得に向けてキラーコンテンツとなりうると考えているのがアニメだ。SAKURAでは、サクラ役をオーディションで決定し、「2.5次元」コンテンツとする。

2.5次元とは、2次元と3次元の間のこと。紙面や画面上のマンガやアニメといった2次元コンテンツを原作とし、実在の人物が演じるミュージカルといった3次元へ持ち込んだ形式のものだ。SAKURAの主人公であるサクラも、アニメとリアルが融合したかたちで登場する。

最近では『KING OF PRISM by PrettyRhythm』、通称「キンプリ」の応援上映が話題だが、SAKURAも観客参加型を謳う。参加型のプログラムが受け入れられている現状を鑑みると、日本の若い層へもアプローチできるかもしれない。

外国人の反応は?

内覧会でSAKURAのダイジェスト版を筆者も観てきたが、日本の四季折々の風景を、音楽とダンス、プロジェクションマッピングを駆使して表現していた。日本に生まれ育った筆者からすると、少し"お腹いっぱい"な感じもしたが、琴や和太鼓、篳篥(ひちりき)の生演奏は臨場感たっぷり。外国人の参加者数名に感想を聞いたところ、「着物や浴衣、忍者のコスチュームなど衣装がかっこいい」「ブレイクダンスやプロジェクションマッピングといった新しい要素を採り入れているのがおもしろい」「桜吹雪は自国にない演出で、驚いたけど楽しかった」と総じて好評だった。一方で、長いこと日本に滞在している外国人参加者は「日本の伝統芸能はゆっくりしたテンポで魅せるものが多い。今回のSAKURAは少しスピード感がありすぎたかも」と、また違った感想を持ったようだ。

日本といえば桜、というイメージは根強いらしく、桜が咲いていない時期にあたる2016年9月7日から2017年3月31日という公演日程はちょうどいいかもしれない(2017年度以降の予定については調整中とのこと)。

土産物店では桜の塩漬けなど、SAKURAにちなんだ商品が並ぶ予定だとか

相乗効果を狙う

三田氏によれば、今後は旅行代理店などを通じて現地でもPRしていく。そのほかにも、国内の鉄道会社などと協業していく話も出ているそうだ。SAKURAが軌道に乗れば、開演前に近くで食事をする観光客なども増え、地域一帯の活性化につながる。

空白の夜間市場に挑戦する明治座。他社に先がけて成功するか、まずは7月12日正午(国内外問わず)のチケット予約開始に注目したい。