「諸星陽一」の記事

諸星陽一

帰ってきたホンダのSUV! 日本復活で再考したい「CR-V」の現在地<br />

帰ってきたホンダのSUV! 日本復活で再考したい「CR-V」の現在地

2018.09.10

ホンダがSUV「CR-V」を国内市場で

日本市場で味わった毀誉褒貶、当初は売らなかった5代目

日本復活は絶妙のタイミング? 「CR-V」を取り巻く状況

ホンダは先頃、しばらくは日本での販売をやめていたSUV「CR-V」を国内市場で復活させた。なぜ今、このクルマを日本に導入するのか。そもそもなぜ、このクルマは日本から姿を消していたのか。このタイミングでCR-Vの過去を振り返るとともに、その日本における可能性を考えてみたい。

日本復活を果たした「CR-V」。サイズは全長4,605mm、全幅1,855mm、全高1,680mm。価格はガソリン車が税込み323万280円~403万560円から、ハイブリッド車が378万4,320円~436万1,040円から

ライトな機構のSUVとしてデビューした初代「CR-V」

「シビック」「インテグラ」「S2000」「NSX」など、スポーティなモデルがイメージをけん引していたホンダだが、1990年代後半にはレジャーユースのクルマの開発に力を入れていく。その代表格となったのが初代「オデッセイ」だ。オデッセイは“クリエイティブムーバー”という位置づけで、「RV」(レクリエーショナル・ビークル)と呼ばれていたクルマに“走りの性能”を加味したモデルとして大ヒットを遂げた。

初代「オデッセイ」(画像提供:本田技研工業)

そのクリエイティブムーバーの第2弾として、1995年に登場したのが「CR-V」だ。初代のスタイリングを見ればわかるように、当時のクロスカントリー4WD的なパッケージングを採用してCR-Vは誕生した。パワートレインは2Lのガソリンエンジンだった。

このパッケージングでありながら、4WDシステムは非常にライトなものだった。採用したシステムは「デュアルポンプ」といわれるもの。前後タイヤの回転差を2つのポンプで検出し、このポンプを使って前後駆動力の伝達を行う方式のスタンバイ4WDだ。当時、すでにスズキ「エスクード」やトヨタ自動車「RAV4」といったSUVが登場していたが、それらに比べ、CR-Vはずっと軽微な装置で4WDを実現したモデルだった。

ライトな機構を採用していた初代「CR-V」(画像提供:本田技研工業)

当時はクロスカントリー走行が重視される傾向が強かった(といっても、日本にはそうした場所はほとんどなかったのだが)こともあり、同システムのオフロード性能は酷評を受けることもあったが、実は日本での使い勝手は非常によく、CR-Vは高い人気を得た。このクルマが登場するまでホンダは、クロカン4WD系の自社モデルを持っておらず、いすゞ自動車の「ミュー」を「ジャズ」という車名で販売したり、ジープ「チェロキー」を「クロスロード」という車名で売ったりしていたこともあって、CR-Vはホンダファンから支持された。

徐々に大きくなったボディとエンジン

大ヒットとなった初代CR-Vはその後、モデルチェンジを繰り返していくことになる。2001年に登場した2代目は、4WDシステムこそ初代同様にデュアルポンプ式だったが、そのシステムは進化していた。2代目CR-Vに搭載されたエンジンは2Lだったが、初代とは異なる型式のものであり、2004年のマイナーチェンジ時には2.4Lに置き換えている。

デュアルポンプ式という機構を引き継ぎつつ、進化も遂げていた2代目「CR-V」(画像提供:本田技研工業)

当時はSUVという言葉が根付くか根付かないかの時代で、日本国内のSUV人気はさほど高くなく、主流はミニバンだったのだが、世界的に見ると、2代目CR-Vは非常に評価され、ヒットした。初代の全幅は1,750mmとすでに3ナンバーだったが、この2代目は1,780mmにまで幅を広げた。

2006年デビューの3代目はさらに大きく、全幅は1,820mmとなった。エンジンは2.4Lのまま。このモデルチェンジの際に、デュアルポンプにワンウェイカムを組み合わせた4WD方式とすることで、後輪への伝達トルク向上とレスポンスの改善を図った。2代目までは2ボックスのクロカン4WDライクなパッケージングであったのに対し、3代目はモノフォルムとなったことも特徴だ。

横幅が1.8mを超えた3代目「CR-V」(画像提供:本田技研工業)

2011年に登場した4代目で、CR-Vは大きな転換期を迎えた。北米での販売を強く意識し、ロサンゼルスオートショーで発表を行ったのだ。ボディ全幅は1,820mmのままだったが、日本での販売台数確保のため、2Lエンジンは復活させた。

北米での販売を強く意識していた4代目「CR-V」(画像提供:本田技研工業)

現行モデルとなる5代目は、ホンダが2015年に発表したもの。しかし、日本には導入せず、北米、中国、アジア、南米、ロシアなどで販売してきた。この5代目で、ボディ全幅は1,855mmにまで広がった。

なぜ今、日本復活なのか

初代のデビュー時、CR-Vは日本でも非常に注目されたモデルだった。2代目のデビュー時も注目度は高かったように記憶しているが、3代目あたりになると、その注目度は少しずつ落ちていったような気がする。3代目のデビューは2006年で、翌2007年には「ストリーム」をベースとした「クロスロード」(前に述べたチェロキーのOEMモデルとは異なる、ホンダオリジナルのクルマ)が登場。大型化、プレミアム化したCR-Vをフォローしたのが、このクロスロードだったのだ。CR-Vが格を上げたことは、かえって注目度を落とす結果につながったのかもしれない。

ホンダオリジナルとなった「クロスロード」(画像提供:本田技研工業)

4代目のデビューは2011年だが、私の記憶では、広報活動はあまり積極的ではなく、ひっそりとしていた印象がある。ホンダの方針としても、日本でのCR-Vは、ちょっと横に置いた存在としているような感じだった。世界的にはSUVのシェアが加速度的に増えていたが、日本ではまだまだということだったのだろう。そんな流れもあり、5代目は発表当初、日本に導入されなかった。

しかし、2017年の東京モーターショーにホンダはCR-Vを展示し、日本での販売再開をアナウンスした。この背景には、日本でのSUV人気の上昇がある。2017年通年の登録車の販売台数を見ると、4位に11万7,299台でトヨタ「C-HR」が入っている。ホンダのミニバン「ステップワゴン」は4万6,457台で22位だ。すでに日本でも、レジャーユースのクルマの主流はミニバンからSUVにシフトしていると見ていいだろう。

2017年の東京モーターショーに登場し、このほど日本で発売となった5代目「CR-V」

「CR-V」を買う前に押さえておきたいポイント

CR-Vには2列シートで5名定員のモデルと3列シートで7名定員のモデルが存在する。この組み合わせのクルマは、日産自動車「エクストレイル」、トヨタ「ランドクルーザー」および「ランドクルーザー プラド」、マツダ「CX-8」、三菱自動車工業「アウトランダー」など選択肢が豊富。CR-Vは後発となるが、こうした実用性重視のモデルの場合は、じっくり選ばれることも多いので、後発で装備が充実しているモデルのほうが、販売面で有利なことも多々ある。そういう意味でも、CR-Vの売れ行きには注目していきたい。

シートは2列か3列か選べる。画像の右側に見えているのが3列目シートだ

アウトドアレジャーの盛り上がりなどもあり、今後しばらくの間、SUVが人気モデルとしてシェアを伸ばしていくことは確実だろう。ユーザーは「本当に3列シートが必要なのか?」であったり、「3列目にはどれくらいの体格の人が、どれくらいの距離ならば乗っていられるのか?」といった点を熟慮してクルマを選ぶことが大切だ。大人数で長い距離を乗るならば、SUVはミニバンに敵わない。

ただ、「ミニバンに乗っていたものの、3列目には滅多に人が乗らなかった……」という人は、SUVの良さを深く感じられることだろう。やはり、SUVの乗りやすさは、ミニバンを大きくリードしているからだ。もちろん、5名までしか乗らないなら、2列シートを選ぶのが賢い買い物だ。

荷室容量は2列シートで5人乗車時がガソリン車で561L、ハイブリッド車で499L。3列シートの7人乗車時は150Lとなる
SUVブームを読みきったBMWの最新作! 試乗で感じた「X2」の完成度

SUVブームを読みきったBMWの最新作! 試乗で感じた「X2」の完成度

2018.08.09

ブームを先読み? ますます充実するBMWのSUV

スタイリッシュな最新作「X2」に試乗

取り回しのしやすいサイズ感、走りも磐石のBMW

2017年に世界で販売されたクルマのうち、3分の1がSUVだったといわれている。SUV市場の拡大は20世紀後半にはすでに予想されていたが、ここまでシェアが広がることを予測できた人は少数派なのではないだろうか。

その少数派に含まれる自動車メーカーがある。ドイツのBMWだ。BMWは1999年に同社初となるSUV「X5」を発売。それまで、セダンやスポーツカー、コンパクトカーなどを手掛けてきたメーカーが、SUVのカテゴリーに乗り出したのだ。日本の自動車メーカーは「RV」と呼ばれるようなクルマを多く生み出してきたが、BMWがこうした方向に舵を切ったのは大きな出来事だった。

SUVラインアップは6車種に

BMWのすごいところは、その後のラインアップ充実に関する加速度的な取り組みだ。2004年には「X3」を追加し、2008年の「X6」、2009年の「X1」、2014年の「X4」と次々にSUVの新作を用意。2010年にはMINI(ミニ)ブランドにも「カントリーマン」というSUVを追加設定している。

そうした中、さらにラインアップを充実させるために追加したのが「X2」だ。BMWのセダン、クーペ、カブリオレ、ロードスターのモデルは1~8までのラインアップで構成されているが、このX2の登場により、SUVのラインアップは「X1~X6」までとなった。世の中で売れているクルマの3分の1がSUVだと冒頭に述べたが、BMWのラインアップにおけるSUV比率は、世の中のシェアを遙かにしのぐことになったといえる。

BMWが生み出した6番目のSUV「X2」

低い車高が特徴、スタイリッシュな「X2」

BMWではSUVのことをSAV(スポーツ・アクティビティ・ビークル)と呼んでいるが、X2についてはSAC(スポーツ・アクティビティ・クーペ)というジャンルだと主張している。

X2は同じSUVであるX1をベースとし、スタイリッシュなボディを与えたモデルだ。ホイールベース(前輪と後輪の車軸を結んだ距離)はX1と同じ2,670mmとなっている。ただし、X1が1,600mmの全高を持つのに対し、X2は1,535mmと車高が低め。スタイリングはもとより、機械式駐車場への入庫確率の向上などを行っているのだ。ただし、全幅は1,825mmと1,800mmを超えるので、車幅で制限を受けることもあるだろう。

この車高であれば機械式駐車場に入れられる可能性も高まるはずだ

全体のスタイリングを見ると、X1は2ボックス車を大きくしたようなシルエットだが、X2はスポーティな4ドアを大きくしたようなイメージとなる。BMWのアイデンティティでもある「キドニーグリル」(キドニーとは腎臓の意味。BMW伝統の形)には、上下の高さを抑えたクーペライクなデザインを採用。サイドウィンドウはリヤに向かって絞り込まれた形状で、翼断面を思わせるスタイリッシュなものとなっている。

キドニーグリルは高さを抑えてクーペライクに

ユーザーの若返りも大事な使命

X2はSUVのラインアップを充実するということ以上に、BMWのユーザーを若返らせるという大きな役割も担っている。スタイリッシュなSUVとしたのもその一環だし、プロモーションに香取慎吾さんを起用していることにも大きな意味がある。そして、忘れてはならないのがコネクティッド機能の部分だ。

プロモーションには香取慎吾さんを起用

X2には「BMW コネクテッド・ドライブ」が標準装着されている。深刻な事故が発生した際、クルマ側から自動的に緊急事態をコールセンターに知らせる「SOSコール」のほか、クルマの整備関係データをディーラーに発信し、的確な整備を受けられるようにする機能などが備わっており、万が一のトラブルの際にも迅速な対応が可能となっている。

さらに、オーナーはスマートフォンに専用アプリ「My BMW」をインストールすることにより、乗車前に車外から空調を作動させたり、ドアの解施錠を行ったり、パソコンやスマホで設定したドライブコースをナビに連動させたりすることができる。車内通信モジュールを利用すれば、ニュースの閲覧やTwitterのディスプレイ表示・読み上げなども可能となる。

室内・荷室は充実の広さ

SUVというジャンルである以上、ユーティリティの部分もしっかりと確保する必要があるだろう。X2を真横から見ると、リヤゲートにはそこそこ傾斜した形状が与えられている。ラゲッジルームの容量を少しでも多く確保するなら、この部分は垂直に近いほど有利なのだが、あまり垂直にしてしまうと、スタイリングを台無しにしてしまう。この傾斜したリヤゲートでありながら、ラゲッジルームの容量は470リットルと広大だ。ちょっとクラスは違うが、トヨタ自動車「C-HR」のラゲッジルーム容量が318リットルだから、かなり広いことがわかると思う。

ラゲッジルームはかなり広い

ラゲッジルームの使い勝手は容量だけでは決まらない。リヤシートをどのように倒せるかがとても重要になる。多くの国産車は、6対4でシートバックを前倒しにできるタイプのクルマが多いのだが、X2は4対2対4の3分割方式になっている。なので、右を4倒すこともできるし、そこに2を足して6倒すことも可能だ。センターの2だけを倒して長尺物を搭載することもできる。この自由度の高さは、さまざまな遊びに対応すること間違いなしだ。

シートの倒し方にも多くのバリエーションがある

室内の広さも余裕がある。フロントシートはたっぷりとしたサイズで、視界も開けているから、クルマを走らせているときも、ゆったりとした余裕のある雰囲気が伝わってくる。自分とパートナーというドライブならベストなパッケージングといえる。リヤシートも足元の広さは十分にあるのだが、シートクッションの前後長が少し短く、ヘッドルームも窮屈ぎみなので、長距離ドライブではちょっと疲れるかも知れない。

BMWなら当たり前? 走りはスポーティーで気持ちいい

試乗車は2リッターの4気筒ターボエンジンを搭載する「xDrive20i」というグレードだった。エンジンの最高出力は192馬力。トルクカーブがフラットなので扱いやすい特性だ。ミッションは8速とクロスレートなので、パドルシフトを使ってこまめにアップ&ダウンを繰り返しながら、ワインディングを走るとなかなかの気持ちよさだ。

ワインディングでは気持ちのよい走りを楽しめた

ハンドリングはBMWらしいシャープなもの。ステアリングを切ればススッとノーズがインを向いていく。しっかりした直進安定性を示しながらも、そこからのステアで機敏に向きを変えるところは、SUVの「S」の部分(スポーティーであること)を十分に表現しているというイメージだ。車高がある程度は高いので、ロールはそれなりに発生するのだが、ロールによる不安感などがない部分には、BMWのノウハウがいきているのだろう。

累計生産500万台を達成! なぜ三菱自動車はタイに強いのか

累計生産500万台を達成! なぜ三菱自動車はタイに強いのか

2018.06.08

1961年にタイに進出した三菱自動車工業は、同国における累計生産台数で500万台を突破したことを記念し、益子修CEO出席のもと式典を開催した。式典はタイからも政府要人など多数のVIPを招いた大々的なものとなった。

三菱自動車のタイ現地法人は「Mitsubishi Motors (Thailand) Co.,LTD」(ミツビシ・モーターズ・タイランド、略称:MMTh)という名称。タイで初めての自動車輸出を行うなど、同国における三菱自動車の存在感は非常に高いものとなっている。記念式典の模様をレポートする前に、まずはMMThとタイの事情をお伝えしたい。

500万台突破記念式典の模様

タイは“東洋のデトロイト”

タイは“東洋のデトロイト”と呼ばれるほどに自動車産業が盛んな国として知られる。1940年代には自動車産業が存在しなかったが、1950年代後半から1960年代にかけては政府主導で自動車メーカーの工場誘致を積極的に行った。加えて、輸入自動車の関税を高く設定し、自国生産の外国ブランド車の税金は抑えることで、タイ国内での生産車のシェアを高めた。

さらに、輸出にも力を入れたことで、タイが東南アジアにおける自動車産業の中心となり、現在の産業形態を形成するに至っている。2017年のタイの自動車生産台数は約200万台と世界第10位だが、東南アジアでは最も生産量が多い。そのボリューム感は、英国の約170万台と比べると分かりやすい。なお、社名がMMThとなったのは、何度かの組織変更などを経た2003年のことだ。

タイは東南アジア随一の自動車王国に成長した

タイで50年を超える三菱自動車の歩み

そうした歴史の中でも、三菱自動車はタイの自動車産業にとって重要な存在となっている。タイにおける三菱自動車の歴史は、1961年に卸売り会社の「シチポール・モーター・カンパニー」を設立したことに始まる。1964年には組立会社を設立し、1988年にはタイからの自動車輸出第1号となる「ランサー」をカナダに輸出した。2010年に累計200万台を記録してからは加速度的に生産台数を伸ばし、2013年に300万台、2015年に400万台、そして2018年に500万台を生産するに至った。

三菱自動車のタイ生産を支えているのは、バンコクの南東に位置するレムチャバンにある工場だ。第1工場の稼働は1992年で、第2工場が1996年に稼働している。さらに、2011年にはプレス工場が稼働、2012年には第3工場が稼働し、グローバルスモールカーである「ミラージュ」の生産を開始した。同年には日本への輸出も始まっている。

立地に優位性

三菱自動車のタイ工場は、同国唯一の輸出港で、自動車輸出のほとんどを担うレムチャバン港の近くに3つある。この地区に自動車組立工場を持つ自動車メーカーは三菱自動車のみ。ここで「ミラージュ」「アトラージュ」「パジェロスポーツ」「トライトン」の4機種を製造している。部品の現地調達率も高い。

MMThの生産工場があるレムチャバンは、バンコクから100キロ程度離れた場所に位置する港町だ。事務機能をつかさどる本社はバンコク市内にあるが、100キロという距離は渋滞を考えなければさほど遠い距離ではない。MMThの各事業所は、バンコクおよびレムチャバン周辺に集中する。レムチャバン工場の至近には、開発拠点となるR&Dテストコースや輸出向け補修部品庫を配置。本社のあるバンコク北側には、トレーニングセンターと国内向け補修部品庫を配置している。

三菱自動車がタイに持つ拠点

日本の各メーカーもタイのバンコク周辺に生産工場を設けているが、レムチャバンに工場を持つのはMMThのみだ。MMThの場合、接岸した輸送船にそのまま自走で船積みが可能だが、レムチャバン以外に生産工場を持つ他のメーカーは、同港までをキャリアカーなどで輸送する必要があり、MMThの優位性が見て取れる。

輸出港に近い立地が三菱自動車の優位性となっている

生産能力は年間42.4万台

レムチャバン工場を構成するのは、第1~第3までの組み立て工場とエンジン工場だ。ピックアップトラックベースの乗用車ラインを備える第1工場では「パジェロスポーツ」を生産。第2工場ではピックアップトラックラインで「トライトン」を、第3工場では乗用車ラインで「ミラージュ」と「アトラージュ」をそれぞれ生産している。エンジン工場ではガソリンとディーゼルの双方を作る。

2018年3月末でのMMThの本社とレムチャバン工場の従業員数は計6,114人。うち5,600人弱がレムチャバン工場に勤務する。3工場を合わせた生産能力は年間42万4,000台にのぼり、2017年は35万6,000台を生産、稼働率は84%となっている。

現地調達率も高く、「パジェロスポーツ」では80%、「トライトン」では86%を占める。「ミラージュ」と「アトラージュ」では、日本からのノックダウンパーツはECUやクランクシャフトなどわずかなものだけで、その現地調達率は94%にものぼる。

2018年6月4日(月)午前10時(タイ現地時間)に始まったMMThの生産500万台記念式典には、来賓として佐渡島史郎日本国大使、三又裕生JETROバンコク事務所長などが来場。タイからはソムキット副首相をはじめ、ヒランヤー首相府省副大臣ら政府関係者のほか、MMThのアドバイザリーボードメンバーや主要メディア関係者などが訪れた。

式典のスピーチで三菱自動車CEOの益子修氏は、タイの「電動車インセンティブ」に参加することを表明。ASEAN地域における電動車製造のリーダーへの第一歩を踏み出した格好だ。

三菱自動車CEOがタイで語ったこと

一寸木(ちょっき)守一MMTh社長兼CEOのウエルカムスピーチに続いて登壇した益子修氏は、MMThにて500万台の生産が達成できたことに対する感謝を述べた後、その背景について語った。

「当社は、タイの国内経済が成長を続け、世界的な製造拠点となることができることを確信していました。長期的に自動車産業の成長を促進する貴国の政策が、当社のビジネスを支えてくれました。これがあったからこそ、当社は1961年からタイで投資を行うことができました」

「当社は1987年に販売会社と製造会社を統合することで、ビジネス基盤を強化しました。2003年にはミツビシ・モーターズ・タイランドを設立し、累計生産台数100万台を達成しました。累計生産台数は2010年には200万台、2013年には300万台、2015年には400万台に達しました。そして、今日500万台が実現しました」

さらに、益子氏はタイが同社のグローバル生産拠点であることを強調しつつ、タイのモータリゼーションが進もうとしている道について、次のように語った。

式典に出席した益子CEO(中央、右から2人目)

「今後、タイは電気自動車へのシフトを図ろうとしており、電気自動車に関する包括的なインフラの開発を支えながら、メーカー向けの施策を実施しようとしています。このような状況は、三菱自動車のクリーンなエネルギーのための施策と合致し、三菱自動車はタイ政府およびエネルギー企業と力を合わせて、約10年前から電気自動車のインフラ開発に取り組んでいます」

「ソムキット副首相が提供する『タイランド4.0』というインセンティブ政策は、タイを環境に優しい技術を導入していく国家へと変えるものです。私たちもタイの自動車電動化についてしっかりと調査し、その政策にしっかりと対応して行きたいと思っています」

タイにおいて具体的にどういうクルマを発売するなどという発言はなかったが、電気自動車(EV)もしくはプラグインハイブリッド車(PHEV)の製造について最初の一歩を示した今回の決断は、タイ、いやASEAN地域における、三菱自動車の存在感の大きさをあらためて誇示したものとなった。

広大な研修センター設立、ASEANへの波及効果に期待

三菱自動車はバンコク北部のパトゥムタニ県に「エデュケーション・アカデミー」と呼ばれる研修センターを設立した。約8,700平方メートルと広大な敷地面積を有する同施設では、販売会社のスタッフやMMThの社員などに対し、常時100~150人体制で研修を実施することが可能だ。MMThの生産500万台記念式典の翌日には、同センターの開設記念式典を開催した。

開設記念式典には前日に続き、益子氏や一寸木氏らが参加。施設内を見学するパートでは各セクションで担当者による解説も行われたが、一寸木氏が直接、益子氏や記者たちに説明する姿や、両CEOがスタッフに積極的に声がけする姿が見られた。

約8

「エデュケーション・アカデミー」は2018年初旬にすでにソフトオープンし、その機能を発揮し始めていたが、今回のグランドオープンにより、全ての機能が使えるようになった。この施設は、タイ国内における研修機能はもちろんのこと、ASEAN地域諸国の研修ハブとしての機能も果たすものと期待されている。秘匿関係についてもしっかりとしているので、発売前の新型車の研修なども行える施設となっている。

作業の“見える化”が特徴

施設内は実際に存在するディーラーなどを想定していて、セールスフロントやサービスフロント、サービスピットなどを模した研修室で実際の業務に則した研修を受けられるようになっている。そこには三菱自動車が理想とするディーラーの姿がある。特徴的に感じたのは作業の“見える化”で、サービス作業を待つロビーを模したソファのあるスペースには、撮影所セットのようにイラストでサービスピットが描かれていた。

施設内の様子

サービスピットには最新の機器が置かれ、質の高い作業が習得できるようになっているほか、コンピュータ作業の研修なども受けられるようになっている。その規模感、設備などは一流の雰囲気にあふれていて、ここで研修を受けた経験そのものが、三菱車の品質、ディーラーマンの資質について、よい方向に影響することは間違いなさそうだ。