「藤田真吾」の記事

藤田真吾

藤田真吾(ふじたしんご)

NewsInsight 編集・記者

日野自動車が大型トラックのハイブリッド発売、燃費向上の鍵はAI?

日野自動車が大型トラックのハイブリッド発売、燃費向上の鍵はAI?

2018.07.18

日野自動車は大型トラック「プロフィア」にハイブリッド(HV)システムを搭載し、2019年夏に発売する。主に高速道路で仕事をする大型トラックは従来、HVに不向きなクルマと見られていたが、日野は日本の高速道路に特有のある特徴を活用し、人工知能(AI)も用いて燃費向上を図った。

日野自動車は大型トラック「プロフィア」のHVを開発。2019年夏に発売する

「HVには不向き」の常識を覆す日野

HVは減速時のブレーキエネルギーを電気としてバッテリーに回収し、それでモーターを回して発進・加速をアシストすることでエンジンの仕事量を減らし、燃費の向上を図る仕組みを持つクルマだ。日野の調べによると、走行の57%が高速道路上だという大型トラックは、一定の速度で長い距離を走るので、減速による電力回収というHVの機能を存分に使えない。HVのシステムを積めばエンジン車より車重が重くなるので、かえって燃費が悪くなる可能性すらあった。

そこで日野が着目したのは、日本の高速道路に“勾配”が多いというポイントだ。クルマに乗っていて下り坂に差しかかった時には、アクセルから足を離してエンジンブレーキをかけるが、その減速エネルギーを回収して使えば、大型トラックでも燃費の向上が可能なことに日野は気づいた。下り坂で生み出した電力を使って、プロフィアのHVは平坦な道でモーター走行を行ったり、上り坂のような負荷の高い場面ではモーターのアシストを受けたりする。

日野は羽村工場(東京)で環境技術説明会を開き、「プロフィア」のHVを発表した。左は同社取締役・副社長の遠藤真氏、右は参与の山口公一氏

AI×電気で進化する大型トラック

もうひとつ、燃費向上に役立つのがAIを用いた電力マネージメント技術だ。まずAIは、ドライバーの運転の仕方や渋滞など道路状況を判定し、モーターアシスト量の最適化を図る。さらには100キロ先までの道路の勾配を読んで、バッテリー使用の「シナリオ」をあらかじめ作成することで、電気のやりくりを行う。この先読み技術は世界初だという。

勾配を先読みして電気をやりくりするシステムを具体的に説明すると、まずクルマは「ロケーターECU」という装置を使って、GPS、ジャイロセンサー、車速センサーなどから自車位置を特定し、内蔵地図情報から「標高」「勾配」「位置」を出力する。これにより得られた100キロ先までの標高情報を使い、バッテリー使用に関する概略シナリオを作成したあとは、10キロごとに概略シナリオを補正して細かいトルク配分シナリオを作り出し、それに沿って走行する。

“勾配”と“AI”の活用で大型トラックの燃費向上を図る日野。同社の調べによると、2013年度のデータで国内商用車の燃料消費量を比較すると、大型トラックが全体の約6割を使用していたそうだ。商用車メーカーとして、この車種で燃費を改善することは「最優先」(山口参与)との思いが日野にはある

日野は工場のある東京都羽村市から静岡県焼津市までのルートで燃費計測を実施。往復で一般道が90キロ、高速道路が360キロという行程で、燃料14リットルを削減できたそうだ。ディーゼル車に比べ、燃費は15%向上したことになるという。大型トラックは年間12万キロを走るというから、この結果を当てはめると年間4,700リッターの燃料を削減できる。軽油がリッター120円だとすると、燃料費は同56万円の節約になる。

プロフィアHVの価格は現時点で非公開とのことだが、これであれば大型トラックも、最新のエアコンや冷蔵庫の説明でよく耳にするように、「買い替えた方が結局は得」ということになるのかもしれない。

四角くなった理由は? スズキ新型「ジムニー」のデザイナーに聞く

四角くなった理由は? スズキ新型「ジムニー」のデザイナーに聞く

2018.07.07

スズキ「ジムニー」が20年ぶりのフルモデルチェンジを果たした。一見して感じるのは、「四角くなっている!」ということ。メルセデス・ベンツ「Gクラス」をも思わせるような造形にたどり着いた「ジムニー」だが、スズキのデザインに関する考え方とは。新型ジムニーのデザインを担当したスズキの高羽則明氏(エクステリア担当)と辻村隆光氏(インテリア担当)に話を聞いた。

新型「ジムニー」の四角くなったデザインについてデザイナーに話を聞いた

不易か流行か、スズキ「ジムニー」のデザイン哲学

そもそも20年もの間、モデルチェンジを行わなかった、あるいは行わずに済んだ理由が、まずは気になった。クルマのデザインにも流行はあるはずだが、この点について高羽氏は「ジムニーが、かなり特殊なクルマというか、他にライバルがいないクルマであったことが大きい。このクルマでなければできないこと、機能に特化した部分があるから、あまり変える必要がなかった」とする。

そんなジムニーではあるが、今回のフルモデルチェンジでは造形が大きく変わっている。なぜ四角くなったのか聞くと高羽氏は「造形・カラーは前のモデルから大きく変えた。現行モデル(3代目)は非常に好評だったが、あのクルマが出た当初は、『(2代目に比べて)丸くなったね』とか『Aピラー(フロントガラスの横の柱)が寝たね』といったように、ジムニーが好きなお客様からは若干、批判もあった」とし、「今回は、もともと持っている機能・性能に原点回帰しようということで、このデザインが生まれてきた」と新しいデザインの方向性が決まった背景を説明した。

こうして並べてみると、先代=3代目(左側、2014年8月に発売となった「ジムニー ランドベンチャー」)と新型=4代目の違いがよく分かる。ちなみに、ジムニーは初代も2代目も四角かったので、3代目だけがデザイン的に異質の存在と見ることもできる(ジムニー ランドベンチャーの画像提供:スズキ)

「Gクラス」に似ているとの声は届いている?

昨今のSUVブームで多くの新型車が市場に登場しているが、新型ジムニーをデザインする上でトレンドはどの程度、意識したのだろうか。「ベンチマークすることはあるが、デザインを提案する上で『トレンドがこうだから、こうしよう』という考え方は、今回は一度もない」と高羽氏は断言した。「このクルマでなければ行けない場所で仕事をしている人に、しっかり使ってもらえるという事を訴求する必要あったので、原点回帰でデザインすると、必然的に四角くなった。小型車で言うと、(スズキには)『イグニス』や『クロスビー』があるので、今っぽいというか、そういうSUVが欲しい人は、そちらに行くのでは」

新型「ジムニー」のデザインを担当したスズキの高羽則明氏(エクステリア担当、左)と辻村隆光氏(インテリア担当)

スクエアで水平基調のボディは、視界のよさもあいまって、ドライバーからするとクルマの姿勢・状況が確認しやすい。森に入ったりオフロードを走ったりして、大きく傾いたりタイヤの一部が宙に浮いたりする可能性もあるジムニーが、このような形になるのも必然というわけだ。

では、Gクラスを意識した部分はあるのか。「ちょっと似ているという話は聞く」とする高羽氏だが、「もともと、プロユースで機能に特化していこうという話で進めているので、例えば、どんな天候でも使うクルマとして、ドリップレール(ボディの屋根から雨がたれてくるのを防ぐパーツ)などは必須になる。そういうものをちりばめていくと、機能に特化したクルマは似てくる傾向にはある。例えばフェンダーも、丸ではなくて台形にしてあるが、これは隙間を空けることで、パンクの時などに手を入れやすくするため。『ジープ』なども台形になっている。機能に根ざした考え方をしていくと、その方向性にいくのかな」との認識を示した。

全く違う価格帯ではあるが、「Gクラス」(左側)と「ジムニー」(画像提供:スズキ)は共通の価値観を分有する2台のクルマなのかもしれない

美しさや格好よさを求める場合、クルマのデザインは多様になり、その範囲は放射状に拡がっていくが、機能を追求すれば、クルマのデザインは中心点に向かって集約していく。そんなイメージなのかもしれない。

オーバースペックの格好よさ

インテリアも虚飾を排し、シンプルで使いやすいことを追求したというが、ラグジュアリーとは別の意味で、質感を上げることにはこだわったと辻村氏は話す。例えば、インパネにシワ模様を施す「シボ加工」は、新型ジムニーで3種類を新たに開発したそう。具体的には、ドライバーがスピードなどを確認するメーター回りには、ツヤを落として太陽光の反射を抑えるシボ加工を採用するなど、気配りは細かい。1つのクルマで3種類のシボ加工を開発することは滅多にないそうだ。

エクステリアカラーの選択にもプロの考えを反映。例えばハンターが森に入るとき、単独で行動する場合は目立たない色が好まれるが、大勢で行動する場合は逆に、安全の観点から色で目立つ必要がある。画像は「目立つ性能」を追求した「キネティック・イエロー」(左)と「隠れる性能」にこだわった「ジャングル・グリーン」(画像提供:スズキ)

プロが使う道具として、機能美にフォーカスしたデザインとなっている新型ジムニー。その無骨さが、かえって魅力的だと考える顧客もいるとスズキは見ている。「デザインとして考えているのは、ミリタリーブーツや本格的なアウトドアジャケットだ。10万円もする高価なジャケットを街で着ている人がいるが、そういう感覚でジムニーを買ってもらってもいい。そうすると、見せかけの“SUV調”ではなく、本格的な機能を持ったクルマ、それに乗る格好よさが増すのでは」というのが高羽氏の言葉だ。あえて、都会では不必要なまでにオーバースペックなアイテムを身にまとう格好よさ。こんな魅力が確かに、ジムニーにはある。

唯我独尊の本物感! スズキ「ジムニー」が20年ぶりのモデルチェンジ

唯我独尊の本物感! スズキ「ジムニー」が20年ぶりのモデルチェンジ

2018.07.05

スズキは軽自動車「ジムニー」と小型車「ジムニーシエラ」をフルモデルチェンジして発売した。SUVでありつつブームとは一線を画し、トレンドに右顧左眄することなく無骨に進化を遂げた新型「ジムニー」は、“クルマのコモディティ化”とは対極にいる存在なのかもしれない。

フルモデルチェンジを果たした「ジムニー」(左)と「ジムニーシエラ」

軽で唯一の本格四輪として誕生

「『スズキといえばジムニー』といわれるほど」。新型の開発を担当したスズキの米澤宏之チーフエンジニアは、ジムニーの愛され具合をこのように語り、このクルマを「スズキの顔の1つ」と位置づけた。

1970年に登場した初代ジムニーは、360ccのエンジンに16インチの大径タイヤを履く、軽自動車で唯一の本格四輪駆動車として誕生した。当時の四駆は高価格で、産業用と法人向けに需要が限られていたこともあり、市場規模は年間5,000台程度だったそう。そこに廉価で手軽な四駆という個性を備えて登場したジムニーは、機動性を売りとして建設、土木、林業などの産業で活躍しつつ、山間部や積雪地帯で暮らす人々のパーソナルユース需要に応え、レジャーに使えるコンパクト4WDという新たな市場も開拓したという。

個人ユーザーの存在を強く意識し、居住性の向上と乗り心地の改善を図った2代目は、1992年にオートマチックトランスミッション(AT)を導入した効果もあってか、1993年には同シリーズで国内過去最高となる年間3万台の販売を達成した。3代目は「軽自動車で唯一のクロスカントリー4WD」という独自の価値を継承しつつ、乗用的な付加価値を取り入れながら、20年にわたり改良を繰り返してきた。今回の新型はジムニーの4代目となる。

4代目となる新型「ジムニー」。サイズは全長3,395mm、全幅1,475mm、全高1,725mmだ

プロユーザー狙いで開発した理由

新型ジムニーの開発は、国内外で蓄積した知見を集約し、ジムニーとして継承すべき点と進化させるべき点を明確化することから始めたという米澤チーフエンジニア。どんな顧客がいて、どんなニーズがあるかを徹底的に検証した結果、ジムニーには「プロユーザー」「日常ユーザー」「一般ユーザー」の3つの顧客グループがあるとの考え方にたどり着いたそうだ。

「プロユーザー」は林業や電設業など、道具としてジムニーの性能を最大限に活用する層、あるいは、オフロード走行や本格的なアウトドアレジャーでジムニーを相棒とする層だ。それに対し「一般ユーザー」は、プロの道具など「本物」に憧れ、街乗りが主体でありながら、本格四輪駆動やタフさを感じるデザイン、その“本物感”に惹かれるとスズキは見る

そういった顧客の中で、新型ジムニーがメインターゲットに据えたのがプロユーザーだ。この層に響けば、当然ながらピラミッドの下の方に位置するユーザーにも魅力的なクルマに仕上がる、というわけだ。開発コンセプトは「本格的な4WD性能と無駄のない機能美を併せ持つ、世界に認められるコンパクト4×4」(4×4は四駆のこと)とした。

「プロの道具」としての条件

日本および欧州の森林組合を訪ねたり、実際にジムニーを使っているハンターに話を聞いたりして、スズキが開発を進めた「プロの道具」である新型ジムニー。過酷な使い方を想定した走行性能や仕事で使う際の利便性など、このクルマにはさまざまな観点から工夫が盛り込まれている。

新型「ジムニー」開発にあたり、スズキはプロユーザーの話を聞き込んだ

例えばクルマの構造は、「エンジン縦置きFRレイアウト」を採用している。エンジンを前輪の後あたりに置く手法で、これによりアプローチアングル(クルマ先端の最下部と前輪の設地面が作る角度のこと)を広く取ることが可能になる。この角度が大きいとデコボコ道を走りやすい。つまり、悪路走破性が向上するのだ。

「エンジン縦置きFRレイアウト」が悪路走破性を高める

駆動方式は「副変速機付きパートタイム4WD」というもの。市街地などのオンロードでは後輪駆動の2WD、雪道やぬかるんだ道では4WDという具合に、路面の状況に合わせて駆動方式を変えられるのが特徴だ。

サスペンションは接地性能に優れた「3リンクリジッドアクスル式」を採用

ハンターはライフルを積むし、林業に従事するユーザーはチェーンソーを積むであろう荷室についても、スズキはシンプルで使い勝手のよい作りにこだわった。乗用ニーズを意識した先代ジムニーでは、後席にアームレストやカップホルダーなどの装備を付けていたそうだが、新型では荷室の広さにこだわり、そういった装備を取り外して床もフラットにした。後席を倒すと、新型ジムニーの荷室容量は352Lに達する。

荷室開口高・荷室高は850mm、荷室開口幅は上部が1,030mm、下部が1,015mm、荷室幅は1,300mm(画像はジムニーシエラ)

激戦のSUV市場で唯一無二の存在感

このように、実用性に特化したジムニーではあるが、その“本物感”こそ、スズキが「一般ユーザー」に分類する顧客層に人気を博す理由でもあるだろう。ブームに乗じて新規参入が相次ぐSUV市場にあって、ジムニーの佇まいと性格は唯一無二だ。

独特の存在感を放つ「ジムニー」(画像はジムニーシエラ)

生き馬の目を抜く自動車業界だが、今回のジムニーも先代と同じく、長く売れ続けていくのではないだろうか。なぜなら、このクルマを必要とする顧客層は、日本では減っていったとしても世界では増えていきそうだし、どんなに都市化が進んだとしても、こういったクルマの需要は必ず残りそうだからだ。

ライドシェアや自動運手が普及し、人々がクルマを所有しなくなる“クルマのコモディティ化”が進展しても、最後の方まで生き残るのはジムニーのような存在なのかもしれない。「コモディティ化の対極にあるクルマだと個人的には思う」と新型ジムニーのデザイナーは話していた。