「石川温」の記事

石川温

アップルが口酸っぱく「ユーザーのデータは守る」と言い続けるワケ

アップルが口酸っぱく「ユーザーのデータは守る」と言い続けるワケ

2019.04.03

アップルが実施したスペシャルイベントを振り返る

新サービスで「プライバシー」を強調した理由とは?

アップルは「GAFA」からの脱却を望んでいる

アップルは3月25日(現地時間)、アメリカ・クパチーノにある本社敷地内のスティーブ・ジョブズ・シアターにてスペシャルイベントを開催。4つのジャンルで新サービスを発表した。

同社がハードウェアの新製品を発表することなく、サービスに特化してイベントを開催するのは異例のことだった。ティム・クックCEOは「ハードウェア、ソフトウェア、サービスの3つをすべて手がける会社は我々アップルしかいない」と明言。今後は、iPhoneなどのハードウェアだけでなく、サービスを収益源として強化していく方向性を示した。

アップルのティム・クックCEO

各種サービスでは一貫してプライバシーを重視

発表されたのはニュース・雑誌の読み放題サービス「Apple News+」、クレジットカードサービス「Apple Card」、オリジナル動画配信サービス「Apple TV+」、100本以上のゲームが遊び放題となる「Apple Arcade」となる。
 アップルが2時間弱のイベントで、一貫して主張していたのが、新サービスでもセキュリティ面に配慮し、ユーザーのプライバシーを徹底的に守るというポリシーだ。

例えば、クレジットカードサービス「Apple Card」ではiPhoneにバーチャルなクレジットカードが発行されるのだが、Apple Payで利用しているセキュアエレメントチップにカード番号を書き込むだけでなく、支払い毎にセキュリティコードを生成し、送信して決済する。

また、今回、アップルはApple Payが使えない店舗で支払えるように、チタン製の物理カードも用意するのだが、クレジットカード番号や有効期限などの記載が一切無く、店舗で利用する際、悪意のある店員にカード番号を覚えられる心配が無いものとなっている。

Apple Card

また、発表会では「アップルはユーザーが購入したものを知らない」「アップルはユーザーがどこで買ったか知らない」「アップルはユーザーがいくら支払ったか知らない」とアピール。アップルはユーザー購入データに興味はなく、さらに、提携先であるゴールドマンサックスも、ユーザーのデータをマーケティングツールとして、第3者に共有したり販売したりしないと宣言した。

「アップルはユーザーがいくら支払ったか知らない」

昨今、日本ではQRコード決済が盛り上がりを見せているが、いずれの決済事業者も大盤振る舞いなキャンペーンでユーザーを獲得しようと躍起になっている。いくつかのQRコード決済サービスは、クレジットカードであれば店舗側から徴収する決済手数料が無料だったりする。こうした手数料が無料な背景には、ユーザーの購買データなどをマーケティングツールとして活用するという別の収益源があるからだ。

その点、アップルはユーザーの個人情報を徹底的に守るという考えのもと、こうした購買データをアップル自身が知ることもないし、ゴールドマンサックスが第3者に転売するということもない、とハッキリと宣言しているのだ。

また、ニュース・雑誌の読み放題サービス「Apple News+」においても、「アップルは「ユーザーが何を読んだか知らない」「ユーザーを追跡して広告を出すことは許さない」としている。ウェブのニュースサイトをいくつか回っていると、同じジャンルの広告が出続けることがあるが、これはユーザーの興味を判断し、動きを追跡しているからこそ実現できているものである。

「ユーザーを追跡して広告を出すことは許さない」

アップルでは、こうしたユーザーを追跡して広告を出し続ける仕組みを徹底的に嫌っている。そのため、新サービスでも、こうした動きを排除しようと躍起になっているのだ。

また、ゲームプラットフォーム「Apple Arcade」では、広告やアイテム課金などは提供されない。月額課金制のサブスクリプションモデルであるため「ユーザーからお金をもらうからには広告は出さない」というスタンスのようだ。

また、Apple TV+においても、同じく月額課金制であるため、広告は表示されない。 

「GAFA」からの脱却を図るアップル

アップルが口を酸っぱくして「ユーザーのデータは守る」「広告ビジネスはしない」と力説するのは「GAFAとして一括りにされたくない」という焦りがあるからだ。

GAFAとはGoogle、Amazon、Facebook、Appleという4社の頭文字をとっている。特にGoogleとFacebookはユーザーのデータを元に広告を表示するのがビジネスモデルの中心だ。アップルのティム・クックは「ユーザーの個人情報で商売をしている」と両社を糾弾したこともあった。

アップルでは他の3社とは一線を画し「GAFAではなく、GAFにすべき」という主張を繰り返している。

今回のイベントはアップルが「ハードウェアだけでなく、サービスでも収益を上げていく」という戦略のアピールに加えて、その節々には「グーグルとは全く考えが異なることを世間に広く理解して欲しい」というメッセージが込められていたのだ。

5G時代にファーウェイ排除は無理筋? MWCで見せた圧倒的な存在感

5G時代にファーウェイ排除は無理筋? MWCで見せた圧倒的な存在感

2019.03.07

MWCでも最大級の注目、ファーウェイの最新動向

「折り畳みスマホ」でファーウェイはサムスンをリードした

アメリカから圧力受けども「シェア1位は目前」と力説

毎年、2月下旬に開催される世界最大級のモバイル関連展示会「MWC」。いままでは「Mobile World Congress」という名称であったが、今年からは略称のMWCが正式名称になった。5G時代はモバイルだけではなく、あらゆる産業に影響を及ぼすということから、モバイルからの脱却を図った。

そんな今年のMWCで、私が渡航前に注目していたのはファーウェイの動向だった。

昨年末から、カナダで幹部が逮捕されるなど、米中経済摩擦の発端となったファーウェイ問題。アメリカでは通信機器の締め出しが決まるなど、強烈な逆風が吹くファーウェイが、果たして、世界の通信業界関係者が集うイベントでどんな立ち振る舞いをするかが気になっていたのだ。

「折りたたみスマホ」「5G」ともに強い自信

結局のところ、MWCにおけるファーウェイは例年と何一つ変わらない「通常営業」だった。むしろ、MWCにおける存在感は増していたようにも感じた。

MWC開幕前日、ファーウェイは折りたたみスマホ「Mate X」を発表した。デバイスの詳細は既に様々な記事が世に出回っているだろうから、そちらを参考にして欲しいが、何が凄いかと言えば、すでに動くデバイスが存在していたという点だ。

会場内のファーウェイブースでは触れないようにガラスに覆われて展示されていたが、ファーウェイの幹部にインタビュー取材した報道関係者には、Mate Xを自由に触り、撮影する時間が設けられた。

「Mate X」

何度も折り曲げようが、動画を撮影しようが、何をしてもOK。発売まで3か月近くあるにも関わらず、ここまで堂々とメディアに触らせるのは、まさにファーウェイがかなりの自信を持って、製品を開発している様子がうかがえた。

折りたたみスマホに関しては、MWC開催の前週、サムスン電子も「Galaxy Fold」を発表している。しかし、MWCでは、ガラスのケースに入れられて展示されているのみ。しかも、撮影しても詳細がわからないように、ケースはガラスが何枚も重なったミラー構造になっていた。

結果、メディアへの記事、YouTubeなどの動画としての露出は、圧倒的にMate Xのほうが多かったはずだ。

また、Mate Xが凄いのが、すでに5G対応スマホとして発売するという点。折りたたみと5Gを1台で両立してきたことに驚かされた。サムスンの場合、折りたたみとは別に「Galaxy S10 5G」というモデルが存在する。つまり、折りたたみと5Gは別なのだ。

CEOはシェア1位奪取を力説、さらに存在感増す

通常、アメリカによるファーウェイ叩きがニュースになっていたら、あまりメディアの対応はしたくないというのが、企業広報の考え方だろう。

しかし、ファーウェイは今回のMWCにおいては、例年通り積極的にリチャード・ユー氏がメディアからインタビューに応じていた。

もちろん、ファーウェイとしてはMate Xをアピールすることが狙いだが、当然のことながら、メディアとしては「アメリカから圧力をどう感じるか」というところを聞きたいというものだ。

そんな質問に対して、リチャード・ユーCEOは「(アメリカから)事実に反したことを言われ、少なからず影響は出ている。しかし、これまで通り、信頼してもらえるモノを作り、ベストな製品を世に出していきたい。ユーザーの口コミによって、信頼を勝ち得ていく」と、アメリカからの圧力に屈することなく、革新的な製品を作り続け、ユーザーに支持されたいと力説した。

ファーウェイ リチャード・ユーCEO

ファーウェイは現在、世界的にはサムスン電子に次ぐ2位の販売シェアを獲得している。しかし、ユーCEOは「今年は2.5~2.6億台の販売を見込んでおり、シェア1位も目前だ」と力説する。

ハイエンドスマホがよく売れるアメリカ市場に本格的に参入できない状況にも関わらず、世界でシェア1位を獲るというのは並大抵のことではない。

だが、今年のMWCに参加した世界中の通信業界関係者が「ファーウェイ抜きでは5G時代は到来しない」と感じさせられたことも事実だろう。たとえ逆風が吹き荒れようとも、今後も、通信業界におけるファーウェイの存在感は増していくことになりそうだ。

春なのにスマホが売れない? 「通信料値下げ議論」がもたらした”異変”

春なのにスマホが売れない? 「通信料値下げ議論」がもたらした”異変”

2019.02.18

出揃ったキャリア決算、3社の戦略は?

スマホ業界の「春商戦」に異変が起きている

ドコモの値下げ発表までは「買い替え」の傾向

1月末から2月頭にかけて、通信会社各社の決算会見が開催された。

電機メーカーなどが中国経済の失速に足を引っ張られる中、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクとも堅調な数字を叩き出した。

KDDIは通信ARPA収入が325億円下落したが、これは2017年にスタートした料金プラン「auピタットプラン・auフラットプラン」の影響が出た模様だ。割引キャンペーンなどがひと段落すれば、通信ARPAは第4四半期には持ち直す見込みだ。

値下げ率先したドコモと、一転して追従姿勢のKDDI

ただ、KDDIとソフトバンクの両社が懸念しているのが、2019年第1四半期に実施されるというNTTドコモの料金値下げだ。

昨年8月に菅官房長官が「日本の携帯電話料金は国際的に見ても高い。4割程度、値下げできるのではないか」と発言。NTTドコモは官邸からの圧力により、2019年第1四半期に2〜4割の値下げを実行すると発表した。すべてのユーザーが対象にはならないようだが、NTTドコモでは4000億円規模の顧客還元になると試算する。

KDDIの高橋誠社長は当初、「官邸からの宿題は終えている」として、値下げは実施済みで、すでに3800億円程度の還元をしているとアピールしていた。しかし、NTTドコモの発表を受けて「NTTドコモが踏み込んだ値下げをしてくるのであれば、競争上、しっかりと対抗していく」との意向を示した

KDDIの高橋誠社長

KDDIではすでに端末と通信料金を分離し、端末の割引を適用しない「auピタットプラン・auフラットプラン」を導入している。NTTドコモが同様のプランを導入する程度であれば、対抗策は打たないが、さらに安くなるような料金プランを出してくるのであれば、しっかりと対抗値下げで競争していくと宣言したのだ。

ソフトバンクは「値下げはワイモバイルで対応済み」の姿勢

一方、ソフトバンクは、現在、ソフトバンクとワイモバイル、LINEモバイルという3つのブランドを展開している。

ソフトバンクは、月間50GBで動画やSNSが見放題となる「ウルトラギガモンスター+」がメイン。ワイモバイルはS、M、Lというデータ容量で低価格、LINEモバイルは家電量販店やウェブを中心に安価なプランを売っていくという棲み分けになっている。

そのため、ソフトバンクでは、大容量を安心して使いたい人向けにウルトラギガモンスター+を訴求しつつ、「格安スマホが気になる」という人にはワイモバイルやLINEモバイルを売っていくというスタイルになっている。

宮内謙社長は「NTTドコモの値下げにはワイモバイルで対抗していく」として、ウルトラギガモンスター+は値下げすることなく、ワイモバイルがNTTドコモの対抗軸として据えていくようだ。

ソフトバンクの宮内謙・代表取締役社長執行役員兼CEO

宮内社長は「できれば、(ワイモバイルの料金プランを)微調整で乗り切りたい」とも語っており、NTTドコモの値下げには対抗するが、極力、いまの料金体系を変更することなく、戦っていきたいようだ。

値下げ議論が「春商戦」に影響か

毎年2〜3月は、スマホ業界的には「春商戦」と言われ、1年間で最もスマホが売れる時期とされている。

春は進学や進級、就職など学生や新社会人にとって、スマホデビューするには最適な時期だ。各キャリアともそうした顧客を狙って「学割キャンペーン」を展開している。学生だけでなく、家族もまとめて契約すれば、さらにお得な施策を展開するキャリアもある。そのため、毎年、この時期のキャリアショップは家族づれで賑わっているのだ。

しかし、今年は店頭で異変が起きている。

あるキャリアショップ関係者は「今年は例年に比べて売り上げが落ちている。買い控えが起きているようだ」と愚痴をこぼす。なぜ、買い控えが起きているのか。

「お客さんはみんなNTTドコモが値下げをすると知っている。値下げ内容を見てから、機種変更しようか、他社に乗り換えようか判断するつもりのようだ」(キャリアショップ関係者)

NTTドコモでは2019年第1四半期に値下げの発表、実施をするとしている。同社、吉澤和弘社長は決算会見で「値下げの発表と実施は一緒のタイミングではない。第1四半期の前半で発表を行い、後半でスタートする」とコメントしている。

NTTドコモの吉澤和弘社長

つまり、今年の4月上旬に発表が行われ、6月あたりに開始という線が濃厚だ。

実際、あるドコモショップ関係者は「4月、5月は暇になりそうだから、その2ヶ月のうちに休みを増やしておけという通達があった。一方で6月は休めそうもないから覚悟しておけということだった」とささやく。

おそらく、NTTドコモの値下げがスタートするタイミングで、料金プラン変更や機種変更、料金相談などでドコモショップが大混雑するという見立てなのだろう。それだけ、インパクトのある中身になる可能性が高いというわけだ。

ドコモショップだけでなく、KDDIやソフトバンクの社長も恐れるNTTドコモの値下げ。果たして、本当に2〜4割も料金が下がると期待していいのだろうか。