「石川温」の記事

石川温

5G時代にファーウェイ排除は無理筋? MWCで見せた圧倒的な存在感

5G時代にファーウェイ排除は無理筋? MWCで見せた圧倒的な存在感

2019.03.07

MWCでも最大級の注目、ファーウェイの最新動向

「折り畳みスマホ」でファーウェイはサムスンをリードした

アメリカから圧力受けども「シェア1位は目前」と力説

毎年、2月下旬に開催される世界最大級のモバイル関連展示会「MWC」。いままでは「Mobile World Congress」という名称であったが、今年からは略称のMWCが正式名称になった。5G時代はモバイルだけではなく、あらゆる産業に影響を及ぼすということから、モバイルからの脱却を図った。

そんな今年のMWCで、私が渡航前に注目していたのはファーウェイの動向だった。

昨年末から、カナダで幹部が逮捕されるなど、米中経済摩擦の発端となったファーウェイ問題。アメリカでは通信機器の締め出しが決まるなど、強烈な逆風が吹くファーウェイが、果たして、世界の通信業界関係者が集うイベントでどんな立ち振る舞いをするかが気になっていたのだ。

「折りたたみスマホ」「5G」ともに強い自信

結局のところ、MWCにおけるファーウェイは例年と何一つ変わらない「通常営業」だった。むしろ、MWCにおける存在感は増していたようにも感じた。

MWC開幕前日、ファーウェイは折りたたみスマホ「Mate X」を発表した。デバイスの詳細は既に様々な記事が世に出回っているだろうから、そちらを参考にして欲しいが、何が凄いかと言えば、すでに動くデバイスが存在していたという点だ。

会場内のファーウェイブースでは触れないようにガラスに覆われて展示されていたが、ファーウェイの幹部にインタビュー取材した報道関係者には、Mate Xを自由に触り、撮影する時間が設けられた。

「Mate X」

何度も折り曲げようが、動画を撮影しようが、何をしてもOK。発売まで3か月近くあるにも関わらず、ここまで堂々とメディアに触らせるのは、まさにファーウェイがかなりの自信を持って、製品を開発している様子がうかがえた。

折りたたみスマホに関しては、MWC開催の前週、サムスン電子も「Galaxy Fold」を発表している。しかし、MWCでは、ガラスのケースに入れられて展示されているのみ。しかも、撮影しても詳細がわからないように、ケースはガラスが何枚も重なったミラー構造になっていた。

結果、メディアへの記事、YouTubeなどの動画としての露出は、圧倒的にMate Xのほうが多かったはずだ。

また、Mate Xが凄いのが、すでに5G対応スマホとして発売するという点。折りたたみと5Gを1台で両立してきたことに驚かされた。サムスンの場合、折りたたみとは別に「Galaxy S10 5G」というモデルが存在する。つまり、折りたたみと5Gは別なのだ。

CEOはシェア1位奪取を力説、さらに存在感増す

通常、アメリカによるファーウェイ叩きがニュースになっていたら、あまりメディアの対応はしたくないというのが、企業広報の考え方だろう。

しかし、ファーウェイは今回のMWCにおいては、例年通り積極的にリチャード・ユー氏がメディアからインタビューに応じていた。

もちろん、ファーウェイとしてはMate Xをアピールすることが狙いだが、当然のことながら、メディアとしては「アメリカから圧力をどう感じるか」というところを聞きたいというものだ。

そんな質問に対して、リチャード・ユーCEOは「(アメリカから)事実に反したことを言われ、少なからず影響は出ている。しかし、これまで通り、信頼してもらえるモノを作り、ベストな製品を世に出していきたい。ユーザーの口コミによって、信頼を勝ち得ていく」と、アメリカからの圧力に屈することなく、革新的な製品を作り続け、ユーザーに支持されたいと力説した。

ファーウェイ リチャード・ユーCEO

ファーウェイは現在、世界的にはサムスン電子に次ぐ2位の販売シェアを獲得している。しかし、ユーCEOは「今年は2.5~2.6億台の販売を見込んでおり、シェア1位も目前だ」と力説する。

ハイエンドスマホがよく売れるアメリカ市場に本格的に参入できない状況にも関わらず、世界でシェア1位を獲るというのは並大抵のことではない。

だが、今年のMWCに参加した世界中の通信業界関係者が「ファーウェイ抜きでは5G時代は到来しない」と感じさせられたことも事実だろう。たとえ逆風が吹き荒れようとも、今後も、通信業界におけるファーウェイの存在感は増していくことになりそうだ。

春なのにスマホが売れない? 「通信料値下げ議論」がもたらした”異変”

春なのにスマホが売れない? 「通信料値下げ議論」がもたらした”異変”

2019.02.18

出揃ったキャリア決算、3社の戦略は?

スマホ業界の「春商戦」に異変が起きている

ドコモの値下げ発表までは「買い替え」の傾向

1月末から2月頭にかけて、通信会社各社の決算会見が開催された。

電機メーカーなどが中国経済の失速に足を引っ張られる中、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクとも堅調な数字を叩き出した。

KDDIは通信ARPA収入が325億円下落したが、これは2017年にスタートした料金プラン「auピタットプラン・auフラットプラン」の影響が出た模様だ。割引キャンペーンなどがひと段落すれば、通信ARPAは第4四半期には持ち直す見込みだ。

値下げ率先したドコモと、一転して追従姿勢のKDDI

ただ、KDDIとソフトバンクの両社が懸念しているのが、2019年第1四半期に実施されるというNTTドコモの料金値下げだ。

昨年8月に菅官房長官が「日本の携帯電話料金は国際的に見ても高い。4割程度、値下げできるのではないか」と発言。NTTドコモは官邸からの圧力により、2019年第1四半期に2〜4割の値下げを実行すると発表した。すべてのユーザーが対象にはならないようだが、NTTドコモでは4000億円規模の顧客還元になると試算する。

KDDIの高橋誠社長は当初、「官邸からの宿題は終えている」として、値下げは実施済みで、すでに3800億円程度の還元をしているとアピールしていた。しかし、NTTドコモの発表を受けて「NTTドコモが踏み込んだ値下げをしてくるのであれば、競争上、しっかりと対抗していく」との意向を示した

KDDIの高橋誠社長

KDDIではすでに端末と通信料金を分離し、端末の割引を適用しない「auピタットプラン・auフラットプラン」を導入している。NTTドコモが同様のプランを導入する程度であれば、対抗策は打たないが、さらに安くなるような料金プランを出してくるのであれば、しっかりと対抗値下げで競争していくと宣言したのだ。

ソフトバンクは「値下げはワイモバイルで対応済み」の姿勢

一方、ソフトバンクは、現在、ソフトバンクとワイモバイル、LINEモバイルという3つのブランドを展開している。

ソフトバンクは、月間50GBで動画やSNSが見放題となる「ウルトラギガモンスター+」がメイン。ワイモバイルはS、M、Lというデータ容量で低価格、LINEモバイルは家電量販店やウェブを中心に安価なプランを売っていくという棲み分けになっている。

そのため、ソフトバンクでは、大容量を安心して使いたい人向けにウルトラギガモンスター+を訴求しつつ、「格安スマホが気になる」という人にはワイモバイルやLINEモバイルを売っていくというスタイルになっている。

宮内謙社長は「NTTドコモの値下げにはワイモバイルで対抗していく」として、ウルトラギガモンスター+は値下げすることなく、ワイモバイルがNTTドコモの対抗軸として据えていくようだ。

ソフトバンクの宮内謙・代表取締役社長執行役員兼CEO

宮内社長は「できれば、(ワイモバイルの料金プランを)微調整で乗り切りたい」とも語っており、NTTドコモの値下げには対抗するが、極力、いまの料金体系を変更することなく、戦っていきたいようだ。

値下げ議論が「春商戦」に影響か

毎年2〜3月は、スマホ業界的には「春商戦」と言われ、1年間で最もスマホが売れる時期とされている。

春は進学や進級、就職など学生や新社会人にとって、スマホデビューするには最適な時期だ。各キャリアともそうした顧客を狙って「学割キャンペーン」を展開している。学生だけでなく、家族もまとめて契約すれば、さらにお得な施策を展開するキャリアもある。そのため、毎年、この時期のキャリアショップは家族づれで賑わっているのだ。

しかし、今年は店頭で異変が起きている。

あるキャリアショップ関係者は「今年は例年に比べて売り上げが落ちている。買い控えが起きているようだ」と愚痴をこぼす。なぜ、買い控えが起きているのか。

「お客さんはみんなNTTドコモが値下げをすると知っている。値下げ内容を見てから、機種変更しようか、他社に乗り換えようか判断するつもりのようだ」(キャリアショップ関係者)

NTTドコモでは2019年第1四半期に値下げの発表、実施をするとしている。同社、吉澤和弘社長は決算会見で「値下げの発表と実施は一緒のタイミングではない。第1四半期の前半で発表を行い、後半でスタートする」とコメントしている。

NTTドコモの吉澤和弘社長

つまり、今年の4月上旬に発表が行われ、6月あたりに開始という線が濃厚だ。

実際、あるドコモショップ関係者は「4月、5月は暇になりそうだから、その2ヶ月のうちに休みを増やしておけという通達があった。一方で6月は休めそうもないから覚悟しておけということだった」とささやく。

おそらく、NTTドコモの値下げがスタートするタイミングで、料金プラン変更や機種変更、料金相談などでドコモショップが大混雑するという見立てなのだろう。それだけ、インパクトのある中身になる可能性が高いというわけだ。

ドコモショップだけでなく、KDDIやソフトバンクの社長も恐れるNTTドコモの値下げ。果たして、本当に2〜4割も料金が下がると期待していいのだろうか。

アップルの落日? 中国後退の影響が不可避に、日本市場でも逆風か<br />

アップルの落日? 中国後退の影響が不可避に、日本市場でも逆風か

2019.02.01

アップルが2018年10~12月決算を発表、売上減

中国経済の冷え込みが影響、iPhoneの販売不調が続く

日本市場でも「強すぎる」逆風、アップルの勝ち筋は?

米中貿易摩擦が世界のスマホ関連企業を脅かしている。

アップルは1月29日に2018年10〜12月決算を発表した。売上高は前年同期比5%減の843億1000万ドルだった。特に落ち込みがひどいのが主力商品であるiPhoneだ。今回から販売台数は明らかにしていないが、売上高は15%減の520億ドル。売上高全体に占めるiPhoneの比率は69.2%から62%にまで下がった。

中国変調はアップルだけの問題ではない

原因は、これまでアップルの成長を支えてた中国経済の急激な冷え込みだ。

アップルの地域別売り上げでは香港と台湾を含む中華圏が27%減の132億ドルとなった。アメリカやヨーロッパ、日本などは1%増の711億ドルであることから、いかに中国市場の落ち込みがアップルに悪影響を与えているかがわかる。

ただし、中国市場の影響に巻き込まれているのは何もアップルに限った話ではない。スマホ向けの液晶ディスプレイを得意とするシャープも「米中貿易摩擦によって売り上げに影響した」として、メーカー向けのディスプレイの売り上げが伸び悩んでいることを認めた。

また、韓国LGディスプレーも営業利益96%減という有様だ。オムロン、積水化学工業などスマホ関連メーカーも軒並み、決算での落ち込みが目立つ。

各社で共通しているのは、昨年11月以降、急速に中国方面からの発注が止まったという話だ。ファーウェイの幹部が、カナダで逮捕されるなど米中の関係に緊張が走る中、中国経済が一気に後退。中国メーカーが減産に走った。また、株安により、中国での可処分所得が減り、消費マインドも冷え込んだようだ。

ソニービデオ&サウンドプロダクツとソニービジュアルプロダクツの社長でもある高木一郎氏は「中国では現在、可処分所得が変化している。年初年末の株安が顕著で、3割も可処分所得が落ちている。幸いにもソニーは数量売ることを前提にした商売をしていないので、数が売れなくても価格をキープしていくことはできるのではないか」と語っている。 

中国市場の影響はアップルのみならず、スマホや電機業界全体の問題なのだ。

アップル強固な日本市場も安泰ではない?

アップルの日本における売上高は昨年同期に比べて5%減となっている。年末には、QRコード決済サービス「PayPay」が100億円あげちゃうキャンペーンを。ビックカメラにはiPad Proなどのアップル製品を購入する人たちの行列ができたが、売上げを押し上げるほどの効果はなかったようだ。

アップルとしては、2019年の日本市場はまさに正念場と言える年になるだろう。

最も影響を受けるのは、総務省による「完全分離プラン」の導入だ。これにより、携帯電話各社は、端末に割引を適用しての販売ができなくなる。スマホの本体価格は、定価のままで販売せざるを得なくなる。KDDIやソフトバンクでは、端末を分割払いしても月々の負担が少なくなるよう、4年間の割賦払いなども提供しているが、こちらも総務省や公正取引委員会から待ったがかかりそうだ。

割引がなくなり、新品のiPhoneを買うというのが難しくなる中で、これまで使っている機種を長く使い続けるという傾向が加速していくだろう。特に最新バージョンのiOS12はiPhone 5sにも対応しており、古い機種が現役バリバリで使えるとなれば、わざわざ新機種を買う必要にも迫られない。

総務省は中古スマホの流通促進に躍起だが、仮に市場に中古のiPhoneが増え、人気が高まれば、さらに新品が売れなくなる可能性がある。

アップルにしてみれば、日本市場は、いま逆風しか吹いてないくらいだ。

ユーザーとすれば、iPhoneが大幅値下げし、手に取りやすい価格になってくれればありがたい。しかし、アップルの場合、ブランドのためもあり、大幅に値下げしてまで販売台数を稼ぐという考えは毛頭ない。

ただし、為替の変動を考慮したという建前をつけて、価格調整をしていくことになりそうだ。日本においても、すでにNTTドコモが8000円、ソフトバンクは1万円の割引をiPhoneに適用させている

本体を大幅値引きすることなく、キャリアに割引させることで、お得感を出し、機種変更を促したいのだろう。しかし、今後、こうした割引を強化すれば、総務省から指摘が入ることも考えられる。

日本市場での売上げをあげるためにも、いかにiPhoneをうまいこと総務省に怒られない程度に、割引を適用して売っていくかが、アップルとキャリアには求められそうだ。