「石井昌道」の記事

石井昌道

プラグインハイブリッドに未来はある? 三菱の新型「アウトランダーPHEV」に試乗

プラグインハイブリッドに未来はある? 三菱の新型「アウトランダーPHEV」に試乗

2018.10.12

PHEVは過渡期のクルマ? 独特な立ち位置を改めて確認

プラグインの古参「アウトランダー」がビッグマイナーチェンジ

モーターとエンジンで実現する特別な走り、改良でどうなった?

電気自動車が普及するまでの運命? PHEVとは何か

メルセデス・ベンツ「EQC」やアウディ「e-tron」など、将来的に市販される電気自動車の発表が相次ぐ中、日本ではホンダ「クラリティ PHEV」や三菱自動車工業「アウトランダーPHEV」の試乗会が続いた。

三菱自動車がビッグマイナーチェンジを施した「アウトランダーPHEV」

そこで、NewsInsight編集部から寄せられた疑問は、「PHEVって将来性はあるの?」というもの。確かにPHEVは、EVが車両価格や航続距離といった課題をクリアするまでのつなぎの技術として有望であり、「しばらくは乗用車の主流になるのでは?」といわれているが、逆に見れば、バッテリーが進化して電気自動車が本格的に普及した時、消えてしまう運命にあるとも考えられる。本当にそうなのか考えながら、「アウトランダーPHEV」と「クラリティ PHEV」を試乗してきた。

ちなみに、プラグイン・ハイブリッド車には、PHEV(Plug-in Hybrid Electric Vehicle)とPHV(Plug-in Hybrid Vehicle)という2種類の表現の仕方があるが、電気モーター駆動がメインの電気自動車に近いという理由から、前者を名乗ることが多い。

そのほか、純粋な電気自動車はBEV(Battery Electric Vehicle)あるいはEV(Electric Vehicle)、航続距離を伸ばす目的で発電用エンジンを搭載したレンジエクステンダーEVはBEVx(Range-extended Battery Electric Vehicle)またはREx(Range-extended)、普通のハイブリッドカーはHV(Hybrid Vehicle)またはHEV(Hybrid Electric Vehicle)と表記することが一般的になってきている。BEV、BEVx、Rex、PHEV、PHVは、外部充電できることから「プラグイン・タイプ」とくくられることもある。

ホンダの「クラリティ PHEV」

三菱自動車が「アウトランダーPHEV」を大幅改良

本稿ではまず、アウトランダーPHEVの2019年モデルをレポートしよう。このクルマは発売からすでに6年が経過しており、改良のたびに進化してきてはいるが、2019年モデルはフルモデルチェンジにも匹敵する内容のビッグマイナーチェンジだという。

では、なぜフルモデルチェンジではないのかというと、まずはデザインを根本的には変えていないからという理屈がある。さらにいえば、累計販売台数16万台と世界で最も売れている「プラグイン・タイプ」の同車ではあるが、ガソリン車のアウトランダーを含めても、6年サイクルでフルモデルチェンジできるほどのボリューム(販売台数の規模)を獲得できていないことも理由のひとつだ。

試乗したのはアウトランダーPHEVの「G Premium Package」と「S-Edition」。「S-Edition」については2019年モデルと2017年モデル(既存のクルマ)を乗り比べることができた(画像は2019年モデルの「G Premium Package」)

パワートレーンのシステムは、ガソリンエンジンが発電に徹してモーターで駆動する「シリーズ・ハイブリッド」を基本とするが、高速域ではエンジンが直接駆動するモードも持っている。

エンジンで発電した電気でモーターを駆動すると、エネルギーの変換ロスが生じて効率が悪そうなものだが、エンジンは0rpm(1分間あたりのエンジン回転数を示す単位)からアイドリングの1,000rpm弱までは全く使いものにならず、有効なトルクを発生するエンジン回転域に達するまでは力が足りない。だから、低・中速域では、トランスミッションによってエンジン回転を減速してタイヤに伝えて、駆動する必要がある。つまり、エンジンが回っている割にタイヤが転がらず、距離が伸びない(=燃費が悪くなる)。高速道路を走るよりも、街中の方が燃費が悪化するのはそのためだ。

一方のモーターは、0rpmから最大トルクを発生できるのが強みで、トランスミッションは不要。大抵のモーター駆動車は1ギアのみで、低速域ではその少ない仕事に比例してエネルギー消費も少なく、変換ロスを相殺する以上の効果があって燃費が良くなる。ただし、時速60km以上になってくると、エンジンもトランスミッションのトップギア相当で走らせられるようになるので効率は良くなり、モーターの優位性は薄れてくる。

マイナーチェンジを経た新型「アウトランダーPHEV」のサイズは、全長4,695mm、全幅1,800mm、全高1,710mmだ

プラグイン・タイプではないシリーズ・ハイブリッドの日産自動車「e-POWER」(ノートとセレナというクルマに日産が導入している技術)などは、エンジンが直接駆動するモードを持たないので高速域では燃費があまり良くない。日本では、それでもトータルで取り分があるが、欧州やアメリカなど、高速度域で走るシーンの多い地域ではメリットが得にくいはずだ。

シリーズ・ハイブリッドとエンジンによる直接駆動の2つのモードを持つアウトランダーPHEVのシステムは、現時点での最高効率を狙う理想的なカタチといえる。ホンダのクラリティPHEVや、プラグインではないが「i-MMD」(ホンダが“スポーツ・ハイブリッド”と表現するIntelligent Multi-Mode Driveのこと。モーターのみで走れる距離が長い)と呼ぶ技術を搭載するクルマも同様だ。

「アウトランダーPHEV」の価格は税込み393万9,840円~509万40円から。エコカー減税により自動車取得税と自動車重量税は免税となり、購入の際には「クリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金」として20万円の支給を受けることができる

燃費よりも走りを求めた改良か

アウトランダーPHEVはパワートレーンの9割を刷新した。エンジンは2.0Lから2.4Lへと排気量がアップしている。クルマの前後に2つ搭載する駆動用モーターは、リアの出力が約12%向上。バッテリーは容量を12kWhから13.8kWhへと増やし、EV走行の航続距離を60.8kmから65kmへと伸ばした上、出力も約10%高めた。ジェネレーター(発電機)の出力も約10%上がっている。

エンジンと電気の双方ともに強化されているわけだが、ハイブリッド燃費(JC08モード)が従来の19.2km/Lから18.6km/Lへと落ちていることからも推測できる通り、今回の改良の狙いは燃費よりも、走りの質感を良くすることに主眼がおかれている。具体的にはエンジンの音・振動や存在感を抑えて、EV感を強めている。

アウトランダーPHEVに限らず、HVに乗り慣れると、モーター駆動の静かで力強い走りの気持ち良さがだんだんと病みつきになってきて、エンジンがかかると何だかガッカリしてしまうようになってくるものだが、その心理を汲み取った改良と捉えることもできるだろう。

エンジンは2.0Lから2.4Lへと排気量がアップ。バッテリーとモーターのみによるEV走行の航続距離は、改良前よりも約5km伸びて65kmとなった

エンジンの排気量が上がったことによって、同じ出力を求めた時には従来よりも低回転で抑えることができるし、それなりの大出力を要求する時には、スパーンと高回転に持っていかずとも、ジワジワと上げていけば済むようになった。それらは音・振動の低減に効く要素だ。ジェネレーターの高出力化は、ハイブリッドモード走行時にエンジンをかける頻度を少なくする。エンジンがかかりづらく、かかっても音・振動が少ないから、エンジンの存在感は薄れる。それにより、EV感が高まるというわけだ。

バッテリーの充電量が十分にあって、EVモードで走行している時でも、強い加速を求めればエンジンがかかる時はある。モーターの最高出力はフロント60kW、リア70kWで、合計130kW。それに対し、バッテリーから出せるのはざっくり半分の70kW程度と推測される(スペック未公表)。アクセルを床まで踏み込んでフルパワーを求めれば、モーターの最高出力の半分しかバッテリーからは供給できないので、エンジンをかけて残りを補うことになる。今回の改良ではバッテリーの出力が上がっているので、エンジンがかかるまで粘ってくれるのだが、それもEV感の高まりを感じさせてくれるポイントの1つだ。

駆動用バッテリーの容量は12kWhから13.8kWhへと増大。リヤモーター出力は約12%、ジェネレーター出力は約10%向上している

エンジン発電・モーター駆動での走行が「シリーズハイブリッド・モード」と呼ばれるのに対し、エンジン直接駆動は「パラレルハイブリッド・モード」という。前述の通り、後者は速度域の高い欧米で戦う上で武器になる。日本でも、流れのいい郊外路や高速道路の実用燃費では、かなり効いてくる要素になるだろう。運転していても、パラレルに切り替わる時にショックを感じることなどはなくて、メーターの表示でそれと知れるだけだ。

エンジン直接駆動は、高速域で負荷が少ない領域に使用が限られるものの、ちょっとアクセルを踏んだら解除されるのではないかと経験則で推測していたのだが、そうではなかった。いったんパラレルに入れば、それなりの加速やトルクを要求しても、エンジンの力以上に応えてくれる。それは、モーターがエンジンをアシストしているからだ。だから、パラレルでもエンジンでブルブルと走らせている感覚は少なく、EV感が続いていくのだった。このクルマを実際に所有して日常的に乗れば、パラレルも頻繁に使うことになる。モードが切り替わった時のフィーリングは気になるところだが、アウトランダーPHEVは期待以上だ。

モーターアシストが効いたエンジン走行も期待以上のフィーリングだ

新設定の「SPORTモード」はどんな乗り味か

追加された「SPORTモード」も見所の1つ。こちらは、アクセル操作に対して素早いレスポンスが得られる走行モードで、確かに敏感で楽しかった。今回の改良の主目的とは反対に、このモードではエンジンがかかりやすくなるが、それも強大なトルクを素早く出すためであって、理にかなっている。

だが、タイトコーナーが続くワインディングを走っていると、これでも物足りなくなってきた。コーナーの立ち上がりでアクセルを床まで踏み込んでも、エンジンの回転数が高まって、モーターがフルパワーを発揮するまでにはタイムラグがあるからだ。

SUVのアウトランダーならこれでもいいけれど、このシステムでもっとスポーティーなモデルを作る時には、SPORTの上の「SPORT+」や「RACE」といったようなモードを設けて、常にエンジンを最高出力発生回転数にキープするようにして欲しい。アクセル操作に対して、間髪を入れずにポテンシャルを発揮することになるから楽しいだろう。これでは燃費が悪そうだが、限られたシチュエーションで使うだけだし、バッテリー容量が大きなPHEVだから、余剰トルクは発電して貯めておけば、そんなに効率が悪いというわけでもないはずだ。

同様のシステムでスポーティーなモデルを作るなら、レスポンスをさらに高めた走行モードも欲しいところ

シャシーなどもしっかり進化、内容に対して価格は割安?

そのほかにも、ショックアブソーバーの径拡大やステアリングギア比のクイック化といった改良が見られるが、中でもシャシー系の進化は見逃せない。

従来モデルでは、2017年の改良時に登場した「S-Edition」で、テールゲート開口部とリアホイールハウス周りに構造用接着剤を採用し、剛性向上を図っていたが、今回は、その範囲を前後ドア周りにまで拡大してきた。しかも、「S-Edition」のみならず、ガソリン車も含めて全車に同様の改良を施している。以前は構造用接着剤の塗布が手作業だったので、できる数は限られていたのだが、「エクリプス クロス」(2018年3月に発売したSUV)でも構造用接着剤を使いたいと考えた三菱自動車は、生産設備に投資して同工程を自動化したのだという。

基本的に、設計年次としては決して新しくないクルマであることもあって、ボディ剛性の向上は大きな効果を発揮する。路面から大きな入力があっても、ボディから安普請な音や振動を感じることがなく、サスペンションがスムーズにストロークしていた。ステアリングを通じて得られる接地感が増しており、ハンドリングが楽しくなった。とくに「S-Edition」でS-AWC(車両運動統合制御システム)をSPORTモードにすると、アクセルオンで旋回力を増していくような挙動が感じられて愉快だ。

ボディ剛性アップの効果は確かに感じられた

今回、アウトランダーPHEVが受けたビッグマイナーチェンジには確かな効果があったようだ。その内容に対し、車両価格はリーズナブルといえるだろう。PHEVの将来性については次回、ホンダのクラリティPHEVの出来栄えについてレポートするつもりだから、その後にお伝えしたい。

FFでも侮れない実力派! 日本導入が決まったレクサス「ES」に試乗

FFでも侮れない実力派! 日本導入が決まったレクサス「ES」に試乗

2018.06.28

レクサスは今秋から「ES」を日本に導入する。「LS」「GS」「IS」とレクサスのセダンはそろっているが、そこに「ES」が入り込む余地はあるのか。プレミアム・セダンでは珍しいFFを採用するクルマの出来栄えは。ナッシュビルで試乗して確かめてきた。

レクサスが2018年4~5月の北京モーターショーで世界初公開した新型「ES」。ナッシュビルで試乗した

プレミアム・セダンの主流はFRだが……

そもそもレクサス・ブランドは1989年に米国で創設され、最初のモデルはフラッグシップの「LS」と「ES」だった。プレミアム・セダンの多くがFR(フロントエンジン・リアドライブ)であり、レクサスでも「LS」「GS」「IS」はそうだが、「ES」はFF(フロントエンジン・フロントドライブ)だ。

FRは前後重量配分が50:50、もしくはそれに近く、運動性能の資質に優れるため、走りや乗り心地をハイレベルに仕上げやすい。また、前輪は駆動せず操舵だけなので、ステアリングを操作したときのフィーリングが良好な点なども高級車向きなのだ。ただし、エンジンが縦置きになること、エンジンの力を後輪へ伝えるためのドライブシャフトが必要なことなどで、室内空間が多少犠牲になる。

ハイレベルな走りを実現するため、プレミアム・セダンではFRを採用することが多い(画像は「LS」)

かつてはレクサスの“ドル箱”だった「ES」

一方のFFは、効率的に広い室内が確保され、世の中の乗用車の大半を占めるゆえ量販効果が高くてリーズナブル。「ES」は走りの質感や楽しさなどでFR系に一歩譲るかもしれないが、特に後席の広さは圧倒的で、なおかつ割安感があるなど米国で一気に人気者になった。今までの累計販売台数は218万台でレクサス内トップ。最近は人気がセダンからSUVに移っているので「RX」の方が売れているが、レクサスの“ドル箱”として長く君臨してきたのだった。

そんな「ES」が日本および欧州へ初めて導入されることになった理由は、セダン人気の陰りを懸念してデザインや走りをアグレッシブに攻めた結果、これなら日欧でも勝負になると踏んだからだという。噂では「GS」が現行世代限りで消滅するため、後継的な意味での導入ではないかとも囁かれているが、レクサスに聞くと「GSもちゃんと販売していきますよ」とのことだった。

日欧でも勝負できるレベルに仕上がったという新型「ES」

なぜナッシュビルで試乗会なのか

とにもかくにも、新型「ES」の開発には気合が入っている。最初の試乗会の地に米国はナッシュビルを選んだのも、全米で最も変革している街だからだという。

カントリーミュージックの中心地として知られるナッシュビルだが、それにとどまらず、様々なジャンルの音楽やエンターテインメントの発信地として近年、求心力を高めている。また、移民に対してウェルカムな政策がとられており、その多様性が活気につながっているようだ。

変革の街、ナッシュビルを試乗会の地に選んだレクサス

たまに米国を訪れるが、そのほとんどはロサンゼルスやサンフランシスコといった西海岸かニューヨーク近辺。そういった地域とは全く違った古き良き米国といった雰囲気をナッシュビルは持っていた。“洗練されてはいるが田舎っぽい!?”と評したら失礼だろうか。日本にいると、トランプ大統領が当選し、今でも高い支持率を保っていることをちょっと不思議に思ったりもするが、米国は広く、真の姿はなかなか見えにくい。ちなみに、トランプ大統領が尊敬してやまないアンドリュー・ジャクソン第7代大統領の地元はナッシュビルだという。

流行の先端をゆくクーペルック

「GA-K」と呼ぶ新しいプラットフォーム(車台)を導入したことにより、レクサスでは新型「ES」のデザインと走りを大幅に進化させることが可能になった。低重心化が1つのテーマでもあるGA-Kは、パワートレーンなどのユニットをなるべく低くレイアウトしているのでボンネット高も下げられる。ワイド&ローなプロポーションを造りやすいのだ。

実際に目のあたりにした新型「ES」は、想像よりも立派な体躯であり、駆動方式がFFかFRかをあまり意識させないスタイリッシュなエクステリアだった。一般的にFFは、フロントアクスル(前車軸)がFRよりも後ろ寄りになる。ロングホイールベース・ショートオーバーハング(前後輪の間は広く、車軸より外側の部分は短い形)はクルマのカッコよさの基本であり、その点ではFRの方が有利なのだが、「ES」は全長4,975mmに対してホイールベース2,870mmとまずまず。ちなみに、FRの「GS」は全長4,880mm、ホイールベース2,850mmだ。

新型「ES」は駆動方式をあまり意識させない外観だった

だが、フロントドア前方の切り欠きとフロントホイールアーチの距離はFRよりもちょっと短くて、やはりFFなんだなとうかがい知れる。もう1つ、ロングノーズ・ショートキャビン(先端が長く、人が乗る部分は短い形)もクルマの普遍的なカッコよさだが、「ES」はフロントピラー(フロントガラス横の柱)を後方寄りにすることで、ノーズを長く見せている。

加えて、リアピラーをなだらかに傾斜させ、サイドウインドーを天地が狭く横方向に伸びやかかつシャープにしてあるので、キャビンが小さく見える。一昔前まで、セダンと言えば箱を3つ合わせたような「3BOX」スタイルが主流だったが、最近のプレミアム・ブランドではクーペルックがトレンド。レクサスも昨年発売の「LS」、そしてこの「ES」が先端を走っている。レクサスにとってフロントマスクのアイデンティティとなっているスピンドルグリルは、縦フィン形状としているのがESの特徴。「Fスポーツ」というグレードでは、グリルメッシュとして差別化を図っている。

レクサスといえばスピンドルグリルだが、「ES」では縦フィン(画像)とメッシュの2種類を用意した

「ラバーバンドフィール」を覚悟していたが……

GA-Kも含め、ハードウエアはトヨタ自動車「カムリ」と共通する部分も多いが、ボディサイズは一回り大きく、ホイールベースも長い。パワートレーンは2種類で、2.5LエンジンのハイブリッドとV6 3.5Lのガソリン車。基本的には「カムリ」同様となる(日本仕様の「カムリ」はハイブリッドのみ)。

レクサスおよびトヨタのハイブリッドシステムは、20年前に市販化されてから基本的な構造に変わりないが、今でも燃費効率では他の追従を許さないぐらいに優秀。だが、運転の楽しさという点ではいまひとつだった。無段変速の電気式CVTは、アクセルをベタッと踏み込んでから然るべき加速体制に移るまでのタイムラグがあり、エンジン回転数が先に上がってあとから速度がついてくる、いわゆる「ラバーバンドフィール」がダイレクト感を削いでいたからだ。

新型「ES」のアクセルを踏み込んでみると……

一頭地を抜く「ダイナミックフォース」の完成度

ところが、「ES」のハイブリッドが搭載する2.5Lエンジンは「ダイナミックフォース」と呼ばれる新世代のもので、熱効率41%と世界トップレベルを達成するとともに、全域での高トルク化やハイレスポンス化が果たされている。

数々の新技術が盛り込まれているが、吸気ポートを真っすぐにすることで、いかにもエンジン燃焼室内に多くの混合気が、理想的なタンブル(縦渦)とともに送り込まれる形状をしているのが見どころの1つ。これは、以前からレーシングカー用などの一品モノでは採用されてきたが、量産化したことはライバルメーカーもビックリという、地味に凄い技術なのだ。

レスポンスの良いハイブリッドエンジンは新型「ES」の見どころだ

だから、従来のレクサス/トヨタのハイブリッドに比べると夢のようにレスポンスがいい。アクセルペダルをスッと踏み込めば間髪入れずに加速が始まり、背中がシートに押しつけられる感覚がある。

アクセルをいっぱいに踏み込むとエンジン回転数が高まるが、ラバーバンドフィールにならないように、4,000rpm(回転数)で時速40~50キロ、5,000rpmで80キロ 、5,500rpmで110キロと段階的に伸びていく。最近のCVTで見られる、有段ギアのようなステップギア制御的なものはないが、ハイブリッドとしては間延びがなく、伸びやかな加速感は気持ち良い。

伸びやかな加速感が気持ち良かった

とはいえ、加速の気持ち良さでは3.5L V6の8AT(8速オートマチックトランスミッション)が圧倒する。さすがは本当の有段ギアといったところで、ダイレクト感にあふれ、最高出力300PSオーバーのエンジンは、回転が高まるほどに咆哮が鋭くなる刺激的なフィーリング。V6としては世界トップクラスの官能性の持ち主だ。

上質な快適性が開発テーマ、高い自在感を実現

パワートレーンが気持ちいいので、ワインディングロードを結構なペースで駆け抜けてみたが、低重心に設計され、ボディ剛性の高さが自慢のGA-Kプラットフォームがもたらす運動性能の高さは本物だった。試しに従来型とも乗り比べたが、進化の幅は大きい。新型はステアリングを通じてタイヤの接地感がクリアに伝わってくるとともに、操作に対してクルマが素直かつ確実に動いてくれる感覚が強くて一体になれる。自在感が高いから、例えゆっくり走らせていても楽しい気分になれるのだ。

それよりも「ES」のキャラクターに合っていると思ったのが、あらゆる動きがスムーズで乗り心地がいいことだ。上質な快適性が開発のテーマだったというが、それもうなずける。静粛性の高さもさすがはレクサス。最近は欧州車も静粛性に力を入れてきているが、アドバンテージはまだある。

レクサスの静粛性は欧州勢に対するアドバンテージだ

「LS」「GS」「IS」ほどには走りにこだわるキャラクターではない「ES」だが、一世代前のFR系よりはしっかりとしていて素直に走り、何より極上の快適性がある。意外と日本でも人気が出そうなモデルだ。

狙い通り売れる? 続々と登場の“若き成功者”向けコンパクトSUV

狙い通り売れる? 続々と登場の“若き成功者”向けコンパクトSUV

2018.05.16

プレミアムでコンパクトなクロスオーバーSUVは増える一方だ。直近でもボルボ「XC40」、BMW「X2」、ジャガー「E-PACE」といった具合で新顔が日本に登場しており、選択肢の充実ぶりが際立っている。ここで疑問に感じるのは、これらのクルマが一様に全く同じ人、つまり“若き成功者”をターゲット顧客に据えているように見えるところ。これではシェアの奪い合いになりそうだし、そもそも若い成功者がそんなにたくさんいるものなのかも気になる。

クロスオーバーSUVのブームに端を発する昨今の状況

いまのクロスオーバーSUVのブームは2000年あたりから、米国を中心に始まった。

もともと、オフロードでの走破性が高いSUVは、トラックと同じ「ラダーフレーム構造」だったが、1990年代にトヨタ自動車「RAV4」やホンダ「CR-V」が乗用車と同じ「モノコック構造」のSUVをリリース。オフロード性能は少し落ちるかもしれないが、オンロードでの乗り心地や安定性が高いモノコック構造のSUVは、一般ユーザーに評判が良く、それぞれ想定以上のスマッシュヒットとなった。

トヨタがクロスオーバーSUVのパイオニアと紹介する「RAV4」は近く、5代目(画像)へとフルモデルチェンジする。米国では2018年末頃、日本では2019年春頃に発売の予定だ(画像提供:トヨタ自動車)

その後、乗用車とSUVのいいとこどりをしたクロスオーバーに、さらに高級という概念をくわえて登場したトヨタ「ハリアー」は、SUVなのに高級ホテルのエントランスに乗りつけても様になるのが新鮮だった。

そうやって泥くささを払拭し、都会的なイメージを身につけたクロスオーバーSUVの火がチラホラと見え始めていたところに、油を注ぐかたちとなったのが2000年登場のBMW「X5」。新しいモノに敏感なお金持ちがこぞって飛びつき、一気にブームに火がついたのだ。以降、様々なフォロワーが出現したが、単なる流行モノではなく、一大ジャンルになることを決定付けたのはポルシェ「カイエン」だろう。

2017年10月の東京モーターショーに展示された新型「カイエン」

ミレニアル世代がメインターゲット

最初は比較的、大きなサイズのプレミアム・カーから普及していったが、時とともにあらゆるジャンルに波及してきた。最近ではプレミアム・ブランドを超えたハイ・ブランド、その逆の大衆ブランドでもサイズにかかわらずクロスオーバーSUVのラインアップを取りそろえており、一過性のブームではなく、完全に乗用車のメインストリームになってきている。

そんな中、いま最も盛り上がっているのが、プレミアム・ブランドのコンパクトサイズ。いわゆるCセグメント(フォルクスワーゲン「ゴルフ」を代表とする大きさのクラス)のクロスオーバーSUVが続々と登場しているのだ。直近ではBMW「X2」にボルボ「XC40」、ジャガー「E-PACE」といった新規車種がそろって日本市場に上陸してきた。

CセグメントのSUVが充実してきている(画像はジャガー「E-PACE」)

高級感があって都市部で使いやすいサイズのモデル達は、道路や駐車場の事情にあまり恵まれていない日本では持てはやされることだろう。サイズ以外にも共通点はあるのだが、それはメインとするターゲット・カスタマーが「ミレニアル世代」だということだ。そこでマイナビニュース編集部から上がった疑問が「そんなにたくさん車種が、同じ客層をターゲットとしてそれぞれ売れていくものなのか? 若い世代でプレミアム・ブランドを買えるようなお金持ちが日本にそんなにいるのか?」ということ。なるほど、それは他人事ながら心配ではある。

ユーザーの高齢化に悩む自動車メーカー

ミレニアル世代とは、1980~1990年代に生まれ、2000年代に成人する人たちを指す、主に米国で使われているマーケティング用語で、たしかにプレミアム・ブランドの自動車でも最近は頻繁に使われている。少し前までは「ジェネレーションY」の方がよく耳にしたものだが、そう大きく世代に違いがあるわけではないようだ。

ミレニアル世代はデジタルネイティブであるとともに、リーマンショックで景気が悪いときに育っているなどの特徴があり、消費行動が変わってきているのでマーケティングの世界では大いに研究がなされている。ウインドーショッピングなんて面倒なことはせず、オンラインで買えるならそのまま買い、店頭にいくにしてもネットで調べてシビアに売価を見極め、一目散に決めた店に行くだけ。それ以上に賢いシェアリング・エコノミーへも移行しつつある。それは売る側にとっては脅威でもあるだろう。

米国や欧州、それに日本といった自動車成熟国の自動車メーカーは、常にユーザーの高齢化という課題を抱えている。日本でもだいぶ前から若者のクルマ離れが叫ばれており、トヨタ「クラウン」などは最たるモデル。平均ユーザーは60代超えで、次の次あたりのモデルチェンジでは免許返納の年齢に達してしまうのではないかと戦々恐々としているとも聞く。

2018年のフルモデルチェンジを予定するトヨタ「クラウン」でもユーザーは高齢化している(画像は2017年10月の東京モーターショーに展示された「クラウン コンセプト」)

近年ではメルセデス・ベンツが、ユーザーの高齢化に対応するため、コンサバだったイメージから大変革を図った。攻めのデザインにスポーティな走り、それにコンパクトカーのラインアップを充実させて見事に販売台数を増やした。

ユーザーの年齢層を下げることにも成功しているが、それ以上に、従来の高齢なユーザーにもウケがいいのがポイントでもある。今どきの50代、60代は身体が元気なだけではなく気持ちも若く、若者と同じ感覚のモノを求めているのだ。だから、ミレニアル世代がターゲットとは言いつつも、本当のヤングだけではなく「ヤング・アット・ハート」な人たち全般が対象なわけで、Cセグのプレミアム・コンパクトSUV達もそういった売れ方をしていくだろう。

ボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長は、「XC40」(画像)でターゲットとする顧客を「ヤング・アット・ハート」な人たちと表現していた

ミレニアル世代に直撃するクルマはあるのか

だいたいにして、ミレニアル世代のハートを鷲づかみにするようなクルマは、まだ現れていないような気がする。デジタルネイティブを意識してコネクテッドなどにも力を入れてはいるが、劇的に何かが変わるほどのインパクトはない。渋滞情報とリンクしたカーナビが賢いとか、周辺の美味しいレストランを案内してくれるなどは、以前からある機能の延長線上。せいぜい新しいのが、同乗者に喜ばれる“クルマのWi-Fiスポット化”あたりだが、日本はSIMの料金が高いので一部に限られる。それだったら、手持ちのスマホやタブレットをきっちり装着できるホルダーが付いているぐらいでもいいのでは? と思ってしまう。

フォルクスワーゲンが「ID BUZZ」のコンセプトカーで見せていたように、「ポケモンGO」的にARを活用し、フロントウインドーの現実風景に矢印などを映しこんだカーナビ機能、あるいはAIロボティクスぐらいまで行くと、ガラリと話が変わってくるだろう。

ただ、ライドシェアの成長をみれば、クルマを買うということ自体が廃れることもありえる。日本では規制があって、まだ守られてはいるが。

競合ひしめくコンパクトSUV市場

「日本に若者の成功者がそんなにいるのか?」という疑問に関しては、絶対的に自信のある答えは持っていない。アベノミクスが始まってから、金融緩和と財政出動が上手く機能していた2013年は、想定以上のペースでデフレ脱却方向にいったが、翌年の消費税増税がこれまた想定以上で逆に冷や水を浴びせかけることになり、個人消費が落ち込んだ。その後、財政は緊縮気味ではあるものの、景気はなんとか持ち直しの傾向で、雇用統計や給与総額などではかなりいい数値が出てきている。これで2019年の消費増税がなければ、デフレからの好ましい脱却も夢ではないというのが全体の傾向だ。

成功者となると、日本はベンチャーに優しくないのが現状なので生まれにくいのは確かだろう。金利が安い今は大チャンスだが、銀行も斜陽気味なので実績のない者には貸さない状況のようだ。

だから、若くして成功する者が続出するということにあまり期待はできないが、プレミアム・コンパクト・クロスオーバーSUVはそこまで高価ではないので、基本的には順調に売れていきそうだ。エントリー価格は400万円程度で中心が500万円前後。これはDセグメントのセダン、BMW「3シリーズ」やメルセデス・ベンツ「Cクラス」あたりと同等であり、日本でもそれなりにボリュームがある。ここが食われる可能性はあるだろう。

ただし、ジャンル全体としては大きく成長することが期待できるが、これだけ車種が増えてくると過当競争になるおそれはある。前述の新規3車種以外でも、メルセデス・ベンツ「GLA」は大人気だし、アウディ「Q3」ももうすぐフルモデルチェンジで手強い存在だ。リーズナブルなところではプジョー「3008」なども手が出しやすい。

プレミアム・コンパクト・クロスオーバーSUV市場が拡大するのは間違いなさそうだが過当競争のおそれもある(画像はメルセデス・ベンツ「GLA」)

結局のところ勝ち残るには、機能的には優秀な日本車を超える魅力がどれだけあるかどうかに尽きる。

新顔SUV3車種の評価は?

BMW「X2」はハードウェアのクオリティが期待通りに高く、FFながらハンドリングも楽しい。BMWには同セグメントの「X1」があり、そのクーペバージョンでプレミアム度をさらに増した「X2」は本来ならばニッチで販売台数は多くを望めないところだが、想像しているよりも後席の空間がしっかり確保されていて、利便性でのネガは少ない。さらに、クーペとして車体を低くしたおかげで全高は1,550mm以下。つまり、立体駐車場に入るサイズとなっており、これは都市部での購入動機に直結するから意外と人気になりそうだ。

「X2」の発表会ではBMWのブランド・フレンドに就任した香取慎吾さんが登場。若者世代へのアピールのためなのか、今までと違ってなんだかくだけた感じだなと思ったが、乗ってみればBMWらしい骨太なモデルだったことに個人的には安心している。

BMWらしく骨太なクルマに仕上がっていた「X2」

ボルボは一昨年からハードウェアもデザインも大幅に進化。中国のジーリーホールディングスの傘下になって資金力を得たことで成功を収めつつあるのだが、「XC40」も気合いが入っている。その昔のボルボといえば、安全ではあるものの、走りには面白みがないイメージが強かったが、今では全く違う。ターボエンジンはパワフルで十二分に速く、シャシー性能もハイクオリティだ。

面白いのは、いたずらにスポーティに振りすぎていないこと。自動車はスポーティとうたった方が全体的にウケがいいので、猫も杓子もそっち方向にいきがちだが、「XC40」は素直でコントローラブル。スポーティに走らせようと思えばきちんとついてくるが、普段はリラックスして走れる特性なのが、日常生活では嬉しい。

ボルボ「XC40」は素直でコントローラブルだが、スポーティーに走らせようとすればきちんとついてくる

ジャガー「E-PACE」はそれとは逆で、スポーツカー・ブランドとして只者ではない雰囲気を走りからも放っている。エンジンは高性能であるだけではなく、アクセルをちょっと踏んだだけでもグワッと加速していくような勢いがある。ハンドリングも然りで、ステアリング操作に俊敏に反応。好みは分かれるところかもしれないが、その個性の強さに勝機がある。ちなみに、現在のジャガーはインドのタタの傘下。ボルボもジャガーも、ついでにいえばマツダも元はフォード傘下だったが、リーマンショックでそれぞれ離れてからのほうが、クルマの魅力が増しているのは興味深いところだ。

ジャガー「E-PACE」はスポーツカーとしての個性を前面に押し出す

結論として、ここであげた新規3車種は、ブランドで1番の販売台数になるぐらいに魅力があり、成功を収めるポテンシャルは間違いなくある。ユーザー年齢層がどれぐらいに収まるかにも注目していきたい。