「杉浦莉起」の記事

杉浦莉起

杉浦莉起(すぎうらりた)

ブランド価値プロデューサー/ワーク&ライフ エッセンシャリスト

光るブランドと人財の育成を2本柱に活動。ダイバーシティ&女性活躍の企業研修や講演や、大手企業~スタートアップ企業へプレミアムブランディング&PR戦略のサポートを行う。私生活では、2児のママ。

上智大学外国語学部卒後、LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)にてCELINEのリブランディングを行い、宣伝広報に従事。その後P&Gジャパンに転じ、マーケティング部、広報渉外部にて、SK-II、パンパース、ブラウンジレットなどブランドコミュニケーション戦略&PRに携わり、インフルエンサーマーケティングの確立にも尽力。最優秀社員賞など多数受賞。

著書に『いつでも最良を選べる人になる~後悔しない選び方レッスン』(ディスカバー21)、『1年で成果を出す P&G式10の習慣』(祥伝社)、『賢妻に学ぶ結婚生活を幸せにする技術 イケダン育成術』(文藝春秋)ほか、多数。
Slackの働き方は、意外にも「日本的」だった? 【経営者対談】

働き方革命!人生を豊かにする「選び方」 第2回

Slackの働き方は、意外にも「日本的」だった? 【経営者対談】

2019.04.12

Slack Japanカントリー・マネージャーに「働き方」について聞いた

Slackが社員に求める「ハードワーク」の考え方って?

人生を豊かにするための「働き方」のコツとは

ブランド価値プロデューサーの杉浦莉起さんが、「選択」と「働く」をテーマに、ビジネスの一線で働く方と対談する本連載。第2回目のお相手は、Slack Japanカントリー・マネージャーの佐々木聖治さんです。

グローバル化にダイバーシティ(働き方の多様性)、女性活躍、働き方改革――。働き方や生き方が自由に選択できる昨今、ワークライフバランスという言葉では足りない、「ワークとライフのカスタマイズ」が必要とされています。 

起業家と、外資企業の日本代表。それぞれの道を歩む2人は、現代の「働く」をどう捉えているのでしょうか。

キーワードは「選択」。2人の考え方を紐解いていくと、我々の人生を豊かにする働き方のヒントが見えてきました。

「Slackは世の中を変えると思った」

杉浦莉起さん(以下、杉浦)
はじめまして。Slack、いつも使わせてもらってます(笑)。Slackは、多くの人の「働き方」を変えるツールだと思っており、今回は是非佐々木さんの「働く」に対する考え方を聞きたくて伺いました。よろしくお願いします。

デリィス 代表取締役社長の杉浦莉起さん。上智大学卒後後、LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)グループにて宣伝広報に従事。その後P&Gジャパンに転じ、SK-Ⅱ、パンパース、ブラウンジレットなどのブランドコミュニケーション戦略/PRに携わる。その後ブランド価値プロデューサーとして独立し、現職。著書に『いつでも「最良」を選べる人になる』など

佐々木聖治さん(以下、佐々木)
ありがとうございます。なんでも聞いてください。

Slack Japanカントリー・マネジャーの佐々木聖治さん。2018年2月よりSlack Japanのカントリー・マネジャーに就任し、日本の事業責任者としてSlack Technology Inc.の地域事業統括及び日本での拡大展開を指揮する。Slack入社以前は、米SuccessFactors Inc.の日本法人社長を経て、SAP Japanにて、人事人財ソリューション事業統括本部長としてSAP SuccessFactorsビジネスの日本市場における急成長を牽引した。また、米セールスフォース・ドット・コムの日本法人にて、エンタープライズビジネス部門の戦略アカウントマネジャーとして営業の経験も有する。米ワシントン大学にて国際経営学の学士号を取得

杉浦
Slackの日本代表になられたのは、昨年(2018年)の2月でしたよね。

佐々木
はい。それまではSAPでクラウド関連の事業をしていました。現在は、Slackの4つのビジネス領域(北米、ヨーロッパ、日本、アジア・パシフィック)の1つである、日本でのオペレーションの責任者をしています。

杉浦
ちなみに、Slackに移ったキッカケはなんだったんですか?

佐々木
「縁があったから」というのが一番でしょうか。ある日、前職のチームメンバーからSlackというツールを教えてもらったんですが、初めて使ったときに「これは世の中を変える! 」と、右脳的に感じて。ちょうどその頃Slackから声を掛けてもらったので、「これも巡り合わせかな」と思い、参画することにしたんです。

Slackが求める、社員の生き方・働き方って?

杉浦
この連載企画の第1回目で、フェイスブック ジャパンの方にも同じことを聞いたんですが、Slackでは社員にどういう「働き方」、もしくは「生き方」をして欲しいと考えているのでしょうか?

佐々木
それは、当社の「Playfulness(遊び心)」や「Solidarity(チームワーク)」などからなる「6つのコアバリュー」が示しています。それらの価値観をもとに、プロダクトを生み出し、提供する――。まずはそんな「働き方」をして欲しいと考えていますね。

もちろん、日本で事業を拡大するためには、これらをローカライズしていく必要があると思いますが、こういった価値観を会社全体で共有していくことで、社員の「自己実現」にもつなげていきたいと思っています。

Slackの6つのコアバリュー。「Empathy、Craftsmanship、Courtesy、Playfulness、Thriving、Solidarity(共感、匠の精神、思いやり、遊び⼼、向上⼼、チームワーク)」

杉浦
プロダクトの成長はもちろん、社員の自己実現も重要視しているんですね。

佐々木
はい。それに加えて、社員の評価指標として「4つのアトリビュート」というものも用意しております。それが、「Smart、Hardworking、Humble、Collaborative(賢く、勤勉で、控え目で、協力的)」というもの。

これら合計10の指標をもとにした「働き方」「生き方」をしてもらいたい、というのが当社の考えです。まだ5歳ほどの駆け出しの会社ではありますが、これらの価値観は、徐々に会社全体に浸透してきています。

Slackは意外にも「ハードワーク」推奨!?

杉浦
アトリビュートの1つに「Hardworking」があるのが意外です。ハードワークと聞くと、残業して遅くまで働くのが良し、という今の「働き方改革」の流れに逆行するような、マイナスなイメージが浮かぶ人も多いのでは? と思うのですが。

きっと、先進的IT企業でのハードワークの意味合いはそれとは違いますよね。ぜひ、その言葉の意図するところをもう少し詳しく教えてください。

佐々木
当社の考えるハードワークは、「残業をしろ」という意味ではありません。むしろその逆で、「Work Hard and Go Home(良い仕事をして、終わったらきちんと家に帰ろう)」という考え方なんです。

杉浦
なるほど。つまり「就業時間内にぎゅっと集中して生産性高く仕事して、定時になったら帰りなさい! 」ってことなんですね。

佐々木
その通りです。例えば、アメリカにあるSlack本社には社員が集まるカフェテリアがあるのですが、そこでは「食事に時間をかけるよりも、集中して短い時間で、成果を出そう、生産性にこだわろう」という考え方の基、あえて食事を出さない日もあるんですよ。

カリフォルニア州サンフランシスコ市にあるSlack本社

杉浦
え、それは意外です! アメリカのIT企業って、自由にいつでも好きなように飲食が楽しめる、リフレッシュ環境が充実しているイメージです。前回お話を伺ったFacebook社でも「軽食コーナーがあったり、夕方からはビールが飲めたり」といった感じでした。

佐々木
そうなんですよ。ほかにも、当社には社員全員にそれぞれ「固定のデスク」があることも特徴かと思います。

もちろんオープンスペースもありますが、フリーアドレスではなく、あえて固定席を用意しているんです。私も皆の隣に机を並べています。これは日本だけではなく、グローバルのSlackオフィスにも共通することで、本社の役員も全員、そういった環境で働いています。

杉浦
それも意外です……! さっきから「意外」しか言ってない気もしますが(笑)。

佐々木
よく当社のCEO兼共同創業者であるスチュワート・バターフィールドが言うんですが、Slackは、「高度経済成長期の日本」の働き方をヒントにしているんです。

日本の高度経済成長期、まるで”うなぎの寝床“のように、人が集まって狭い空間で仕事をして、そこでさまざまな情報が行き来していた――。インテル創業者の1人であるアンディ・グローブ氏は、自身の著書で「それが日本の強み」と分析していました。

つまり、固定の机があって、皆が横並びになって「なるべく顔を合わせて仕事する」ことが、良いチームビルディング、ひいては企業の成長につながると考えているんです。

Slack Technologies.Inc CEO 兼 共同創業者 スチュワート・バターフィールド氏

働き方は「受動的」から「能動的」に

杉浦
今、Slackを個人的に使っていて、プロジェクトマネジメントがしやすい! と感じています。外部の人とも1チームでコミュニケーションをとりやすく、スピードも上がり、プロジェクトが皆で回せる感覚があるのですが、その良さを使っていない人に伝えるのが難しくて。

導入を検討される企業も、まずは「メールやほかのコミュニケーションツールと何が違うの? 」と疑問を持つと思うんです。それに対して、どのようにお応えされているのでしょう?

Slackは個人とのやり取りをする「ダイレクトメッセージ」と、グループでやり取りをする「チャンネル」で分けられている (画像はSlackホームページより)

佐々木
コミュニケーションをスムーズに行えるようになるだけでなく、仕事を「能動的に」進められるようになることが、Slackを選んでいただいている理由の1つだと思います。

メールから始まる仕事って、基本「受け身」なんですよね。届いたメールに書かれている内容は、それを開かないと確認できません。そして、開くとタスクが生じ、さばかなければいけない。

でもSlackは、「複数のチャンネル」ごとにメッセージがやり取りされているため、優先度の高い仕事を選択して「仕事をしに行く」感覚で作業することができるんです。例えば、プロジェクト単位でチャンネルを作っていたら、そこではその仕事についてのやり取りしかなされていないわけです。

メールと同様にメッセージもたまっていくのですが、別に「埋もれている」という感覚がないのはSlackの特徴だと思います。私自身、かなりの量のメッセージが届くんですが、複数のプロジェクトがチャネル分けされているので、流れをつかみやすく、優先度の高いものから順に仕事をこなすことができます。

杉浦
なるほど。メールの文章を作るための"不要な時間”を減らすだけではなく、ユーザーが積極的に仕事に関わっていく姿勢によって「スピード感」が生まれるわけですね。

佐々木
そうですね、仕事に埋もれていく感覚で仕事をするよりも、オーナーシップをとって、能動的にチャレンジする環境を作れる。それによって生産性が向上する。これが、Slackが選ばれる理由だと思っています。

杉浦
まさに、「働き方改革」が実現できるツールですね。

Slackはコミュニケーションと「組織」を変える?

杉浦
最近、Slackを導入している日本企業も多くあるようです。具体的に「働き方が変わった」事例があれば、教えていただけますか?

佐々木
好例の1つが武蔵精密工業さんです。創業から80年の歴史の長い企業なんですが、経営陣は、組織の構造上「情報が途中で分断してしまう」「停滞してしまう」といったことに課題を感じていました。

そこで、それまで会議やメールで情報をトップダウン式に伝達・共有していたところを、「より情報共有スピードをあげ、もっと意見を言いやすい環境を作ろう」と、組織変革に乗り出したんです。その施策の1つとして、Slackを導入していただきました。

杉浦
Slackがただのコミュニケーションツールではなく、「組織変革」や「職場の風通しを良くする」という目的にも使われているんですね。

佐々木
そうですね。よく、「IT系の先進企業が多く利用している」と思われがちなSlackですが、歴史の長い製造業でも使われていますし、活用の場が幅広いことは多くの人に知ってもらいたいと思っています。

選択上手のコツは、「ブレないこと」

杉浦
Slackを使うようになって、そしてSlackで働くようになって、佐々木さん自身の働き方は変わりましたか?

佐々木
感覚的な話ですし、数値的な話はできませんが、仕事のスピード感は上がりましたね。仕事の総量は増えたはずですが、週末にやり残した作業をすることは減りました。

これは、Slackを用いることで効率よく働けるようになっただけでなく、意図的に「体力を温存するため」に行動するようになったこともあります。

夜は自分の時間を作れるようにしたり、朝早く起きてジムに行くようにしたり。そのために、仕事を効率よく終わらせることを意識しています。

杉浦
自分の時間を作るために、効率よく仕事をする。それが佐々木さんが働く上での「マイルール」なんですね。

最後に、この連載のテーマでもある「選択」についてお聞きします。自分の経験や、同僚の働き方を見て、なにかほかの人が真似できるような「人生を豊かにするための『選択上手』になるコツ」はありますか?

佐々木
そうですね、ザクっと言うと「ブレないこと」でしょうか。

もし、仕事をするうえで大きな選択をすべき時がきたら、その考え方が大事だと思っています。例えば僕の場合、Slack Japanからの誘いが来たときには、そのキャリア選択が、これまで自分が辿ってきた道から大きく外れていないか、ということを考えました。

また、日常の場面でも、何かを選択するにあたって、「自分がやってきたこと、考えていることとブレてないか? 」ということは意識するようにしています。僕は自分がこれまでやってきたこと、これからやろうとしていることを筋道立てて説明できるようにしていますし、Slackの社員にもそうなってほしいと思っていますね。

何か迷ったときには、歩んできた道を振り返りながら「自分の強み」を理解する。ブレずに、その方向で進んでいくことで、少しずつ、経験や強みを「積み上げていく」という姿勢を持っていくことが重要だと思っています。

杉浦
選択上手のコツは「ブレないこと」。未来のことは、これまで自分がやってきたことの延長上にある――、ということですね。非常に参考になりました。ありがとうございました!

選択上手のコツは、「ブレない」こと

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Facebookの「自由すぎる働き方」はなぜ成り立つのか【働くママ対談】

働き方革命!人生を豊かにする「選び方」 第1回

Facebookの「自由すぎる働き方」はなぜ成り立つのか【働くママ対談】

2019.02.20

子どもを育てながら社会で活躍する2人の「ママ」が対談

Facebookが社員に求めている働き方って?

仕事とプライベートを上手に回すために必要な考え方とは

「選択」と「働く」をテーマに、ビジネスの一線で働く2人に対談してもらった。

2人は、かつて共にP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)でPR戦略に携わっていた同僚であり、共に子を持つ「ママ」でもある。1人はフェイスブック ジャパンの執行役員である下村祐貴子さん、もう1人は株式会社デリィスを起業し、「ブランド価値プロデューサー」として、企業の課題解決に取り組む杉浦莉起さん。

フェイスブック ジャパン 執行役員 広報統括 下村祐貴子(左)、デリィス 代表取締役社長 ブランド価値プロデューサー 杉浦莉起(右)

杉浦さんの近著『いつでも「最良」を選べる人になる』では、全体を通して「選択」が大きなテーマになっている。グローバル化にダイバーシティ(働き方の多様性)、女性活躍、働き方改革……。私たちは今、働き方、さらには生き方を自由に選択したいと求めている。ワークライフバランスという言葉では足りない、「ワークとライフのカスタマイズ」が必要だ。

かつて共に働き、今ではそれぞれの道をつくった2人は、これまでにどういった「選択」をし、そして現代の「働く」ということをどう捉えているのだろう。そこには、我々の人生を豊かにする働き方のヒントがあるかもしれない。

Facebookが求める、社員の生き方・働き方って?

杉浦莉起(以下、杉浦):
久しぶり……、ていっても、よく近所の公園で会うけどね(笑)。

杉浦莉起:上智大学卒後後、LVMH(モエヘネシー・ルイヴィトン)グループにて宣伝広報に従事。その後P&Gジャパンに転じ、SK-Ⅱ、パンパース、ブラウンジレットなどのブランドコミュニケーション戦略/PRに携わる。その後ブランド価値プロデューサーとして独立し、現職

下村裕貴子(以下、下村):
仕事で向き合うのは久しぶりですね(笑)。今日はよろしくお願いします。

下村裕貴子;神戸大学発達科学部卒業後、P&G入社。「パンテーン」などの広報・渉外を担当、日本市場におけるヘアケアブランドのPRに従事。2010年、家族とともにシンガポールに転勤、ヘアケア部門やプレステージ香水などのアジア地域広報、「SKⅡ」のグローバル広報としてPR戦略をリード。帰国後、2016年12月より現職

杉浦:
今、Facebookではどんなことをされているの?

下村:
コーポレートや自社製品の広報。あとはFacebook、Instagramを広告プラットフォームとしてマーケターに認知してもらうための広報。それと広報とは別に、社内外にダーバーシティの推進をするチームの活動もしています。

杉浦:
ダイバーシティ推進って、具体的にはどういうことを?

下村:
「無意識のバイアス(偏見)」という言葉がありますよね。人はさまざまな属性に対して、無意識のうちに人に偏りを持って見たり接したりしてしまいます。そんなそんな考え方を無くすためのトレーニングを行っています。

Facebook社員は年に1度、そのトレーニングを受ける必要があります。私は、その内容をしっかりかみ砕いて、わかりやすくするとか、社員全員がトレーニングを受けるよう、促したりしています。

あとは、育休取得を検討している女性社員、男性社員に対して「休暇を取ってもいいんだ、休むとこんなことがあるんだ」って思えるようにベネフィットを伝える活動です。実際に育休や産休を取った人に自身の体験談を話してもらったり。「無意識のバイアス」への取り組みは社外に向けても研修プログラムを提供しています。

杉浦:
なるほどね。それでは、Facebookについて教えてください。そういう取り組みは社員の働きやすい環境のためだと思うのですが、そもそもFacebookという会社は、社員にどういう働き方、生き方をして欲しい、と考えているのでしょう?

下村:
Facebookでは「コミュニティづくりを応援し、人と人がより身近になる世界を実現する」というミッションを掲げています。そして、その世界を実現するために、いくつかの「コアバリュー」というものを設定してます。

コアバリューは5つあるんですが、特に私が「いいね! 」と思っているのは、「Move Fast(早く動くこと)」「Be Bold(大胆に行動すること)」「Build Social Value(社会的価値を生み出すこと)」の3つ。こういったバリューを達成するような働き方をしてほしい、というのが会社の想いです。そして、そのためにオフィス環境や福利厚生が整えられている、というイメージです。

男性役員の育休取得は仕事に役立つ?

杉浦:
Facebookの育児休暇は、男女ともに有給扱いで4か月も取得できると聞きましたが、それもコアバリューを達成するためかしら?

下村:
ですね。似たような制度を取り入れている企業もあるかと思いますが、Facebookは男性の育児休暇の取得率が高いのが特徴です。「子育ては母親のものだけではない」という考え方はもちろん、男性が実際に子育てを経験することで、それが組織作りにも活きてくる、という考えです。

育児休暇を取得した人がマネージャーになったときには、考え方が変わることでしょう。例えば、女性の部下や同僚ができたときに、やっぱり実際に自分が経験しているのとそうでないのとでは、接し方が全然違うと思うんです。

あと、上司が休暇を取ることで部下がそこに続きやすくなります。一昨年には男性の役員が育児休暇を取得したんですが、その後、休暇取得率が一気に増えました。特にそのチームは、男性の育児休暇の取得が続いたこともありました。

でもそのチームは、それぞれが育児の大変さを知って、自分が周りにサポートしてもらったという考えも持ったから、お互いにサポートし合ったんです。「前に助けてもらったから、次は自分の番だ!」って。

杉浦:
そういう制度って、確かに用意している企業は多いけど、なかなか上手く活用できないところも多いですよね。上が取らないから続かない。それは、その男性役員の方に「あなたが休暇を取れば、みんなが取りやすくなるから」って働きかけをされたの?

下村:
少し(笑)。テクノロジー企業って、ただでさえ休みが少ないイメージじゃないですか。でも今、優秀な若い人に来てもらうには、働きやすい環境を整える必要があると感じています。だから、その方が休暇を取ったあとに、「男性の役員ですらとってるんだから、全然心配しなくていいんだよ」というコミュニケーションを取るようにしました。

とても良かったのが、その方が自身の体験談をもとに、「育児休暇を取ったことで、自分にとって良かったこと、奥さんにとって良かったこと、会社にとって良かったこと」を社内に共有してくれたんです。

育児って、体験してみないとわからないことが多いじゃないですか。それこそ、オムツを変えるだけでも。彼も、「まさか男の俺がオムツを変える事態になるとは」と言っていました。でも、その経験があるから、子どもを持つ部下のマネジメントにつながるし、チーム内のサポート体制の強化にもつながったんです。

Facebookで働く上での「いいね!」ポイントは

杉浦:
ほかにも、Facebookならではの取り組みや制度で、これは「いいね!」というものはあります?

下村:
少しテーマから逸れ気味ですけど、やはりテクノロジーの会社なので、テクノロジーで業務をサポートする下地があるのがいいですね。

例えば、Facebookが提供している「Workplace」がそうで、当社でもグローバルを通して使っています。これ、簡単にいえば、”ビジネス向けのFaceBook“なんですが、この上でいろんな仕事を進めています。基本的にUIはFaceBookと同じで、使い勝手も変わりません。ここでいろんなグループを作り、コミュニケーションを取っています。

Workplace

Workplaceのいいところは、「みんなが知らない情報はない」という状況を作り出せること。メールを送る際に「誰をCCに入れるのか、Toにするのか」とかを決める手間が省けたり、Workplace上で情報を流すことで、誰でも簡単に情報の発信・受信ができるというメリットがあります。

そこから情報を得た人が、すぐに発信者にチャットして、そこからビデオ会議を始める……みたいな感じで、非常に短時間で仕事を進められる。これがリモートワークの促進にもつながっていて。このあたりはFacebookで働く上で、いいところだと思います。

コアタイムすら曖昧? 自由すぎる社風はなぜ成り立つ

杉浦:
そういえば、Facebookは「業務の開始・終了時刻のほとんどを社員自身に任せている」って本当? 自由すぎて心配になる(笑)。

下村:
そんなこともないんですよね。なんででしょう……。一応、コアタイムは設定しているんですが、特に誰も気にせず、自由な時間で働いていますね。いつ会社に行っても、いつ帰っても、誰も何も言いません(笑)。

実際に私も、先日、息子がインフルエンザにかかっちゃって。2日間会社を休んでたんですが、家で働いていたので、まったく問題なく。極端な話、子どもが寝たあと、夜から働く、とかでも問題ないんですよ。ほかにも、「PTAの集まりがあるから早めに帰ります」とか、チーム内で事前に共有しておけば特に問題になってないですね。

杉浦:
本当に自由ね。日本企業や、日本人が多いような外資企業からも良く聞きますが、未だに「残業する方が偉い」って思ている人も多いですよね。だから、自由な働き方といっても、ほかの企業が真似しようと思ったら、企業側も従業員側もどの程度まで自由に、と疑問に感じそう。

下村:
査定が厳しい、というのは影響しているでしょうね。Facebookでは1年に2回の人事評価制度があって、そこで周りの同僚や上司、部下などから360度評価を貰う必要があるんです。上下関係にとらわれずにあらゆる角度から評価されるため、もし仕事がうまく回っていないようだったら、的確なフィードバックが来るんです。「ここはもっとこうした方がいいね」とか。さっき言ったコアバリューの面で、「ここが欠けてるよね」とか。

だから結論としては、「仕事さえちゃんとできていれば、働き方は個人の自由」というのがFacebookの働き方です。

杉浦:
査定がしっかりしているから、自由な働き方が成り立ってるのね。でも、実際に仕事をしていても、会社以外の場所で仕事の頻度が高いと、罪悪感のようなものも生まれそうですが。

下村:
私も少々の罪悪感を覚えつつ、でもコアな部分をしっかりやっていれば、周りも納得しているのかな、と思ってますね。

杉浦:
しっかりと、会社が「あなたは何をする人で、こういう責任がある」というところを明確にしているから、そうした自由な働き方が成り立っていくのかもしれないね。

アフター5はビールも飲める? 先進的なオフィスの秘密

杉浦:
「自由な働き方」と言えば、このオフィス(フェイスブック ジャパン)はオープンスペースが多かったり、飲み物も自由に飲めたり…… この空間は、何か考えがあって設計されてるの?

下村:
オフィスには「Open & Innovative」というテーマがあって、特にオープンスペースが広いのが特徴です。動線も工夫されていて、ディスカッションや会話が、いろんなところで起こるようにしています。

いつもの同じ人ではなくて、たまたま横に座った人との会話がキッカケで、新しいアイデアが生まれるんです。私も、1週間に2日くらい、あえて場所を変えて仕事をしてます。そこで、「最近こんなことをしているんだけど」なんて話をすると、「あ、じゃあ一緒にこれしようよ」ってなることがよくあります。

オフィスに用意されたオープンスペースの一部

杉浦:
意識的に場所を変えて仕事するって面白い考え方ね。

下村:
私の場合は「これだけ素敵なオフィスだから、楽しまなきゃな」と考えているので(笑)。もちろん、ずっと同じ場所で仕事をする「この場所が好きだから」派の人もいますよ。ほかにも、小さなキッチンもあって、軽食が用意されたり。ビールもあって、夕方には飲みながら仕事している人を見たこともあります(笑)。

マイクロキッチン

杉浦:
え!! 大丈夫? 生産性とか心配だわ(笑)。

下村:
自分に厳しい人が多いから、特に何も問題があると感じたことはないですね。飲みすぎて仕事ができない、という人も見たことありませんし。一応17時からはアルコールOKという決まりだから、さすがに昼から飲む、とかいうことはないんですが、夕方になると、プシュっとお酒を開ける音が聞こえてきます。

杉浦:
本当に自由ね……。会社の雰囲気が秩序を保ってるのかな。そもそも、自由な環境の中でも活躍できる人を上手く採用しているから、大丈夫なのかしら。

下村:
両方あると思いますね。採用の際にも、平均4~5人はFacebook社員と面談する必要があって、コアバリューに沿った行動をできる人、自律して仕事できる人、というのは見極めています。

杉浦:
でも、「自律する」って難しいですよね。自由すぎるってことは、自分でいろんなことを「選択」して行動する必要があるわけで。みんながそこを上手く「選択」できているのは何故でしょう?

下村:
コアバリューに共感しているから、そして、ミッションに呼応して入社している人が多いから、というのはあると思います。

「24時間オンライン」の中、自分の時間はどう作る?

下村:
悪いことも言わせてもらうと、メッセンジャーとか、テクノロジーで24時間すべてが仕事につながってしまうから、それが結構辛いこともあります。時差があるため日本が夜中でも、日中に仕事をしている海外の社員から連絡がきて、起きちゃうこともある。

そこから早急に対応しなきゃってこともあります。テクノロジー企業で良かったという反面、悪い面はあります。休む時間は自分でしっかりと作らないと、すごく体力を消耗するんですよね。

杉浦:
なるほどね。自身が「ママ」でもあるから、上手く時間を使わないと、バランスも保てなくなりますよね。そのためにも、働く上で「こういうところは大事にしている」という、優先順位付けやマイルールみたいなものってあるの?

下村:
パーソナルな部分で言うと、私はできるだけ家族と一緒にいたいから、「平日は早く帰る」「休日は家族を優先する」といったルールを決めています。だから、土日は本当にオフにさせてもらう代わりに、平日の朝は早く起きて、5時ころから仕事をするようにしていますね。

そうすると健康的というのと、あとは本社がサンフランシスコなので、ちょうど日本が朝のタイミングで本社の人と一緒に仕事を進められる。こっちが朝5時の時、向こうが昼12時なので、起きて3時間くらいは家で働いて、そこから出社しています。その代わり帰るのは早めにして、18時には帰ってますね。

杉浦:
時差の問題もあるから、終わらせるべき仕事はそこで終わらせていると。そうやって工夫して、ワークライフバランスを保っているのね。

下村:
ほかには、仕事で関わる人たちに、「私はこれからこういう働き方をしたい、こんなことをしたい」ということを共有しています。例えば「午後18時に帰宅する」となったら、チームが意識的にミーティングなどの対面での作業が必要になる仕事を、早めの時間に設定してくれるようになりました。

仕事でも、「来週はこれが第一優先だから、ほかの仕事よりもこれを優先してね」みたいなのを言うようにしていて。

杉浦:
素晴らしい。そうすると、周りもやるべきことに集中できるから、生産性も上がりそう。

「強み=好きなこと」 迷ったら、好きなことを選ぶ!

杉浦:
Facebookで働きはじめて、いろんな悩みや葛藤があったと思いますが、その中でマイルールを決めて働き方を上手く舵切っているのが素晴らしい!と思いました。最後に、教えてください。自分の経験や、同僚の働き方を見て、なにかほかの人が真似できるような「選択上手になるコツ」はありますか?

下村:
Facebookは、個人の強みを「得意なこと」ではなく、「好きなこと」だと捉えています。得意な仕事ばかりせず、自分が本当に好きな仕事をするように推奨してます。だから、選択上手になるコツは、「自分の直感と好きなことに従った行動をすること」ではないでしょうか。

杉浦:
強みは得意なことではなくて、好きなこと……。実は私もそう思っていて、この本(注:前述の『いつでも「最良」を選べる人になる』)でも似たようなことを書いています。本当ですよ(笑)。

「強み=自分の得意なこと」と捉えている人は多いけど、それを仕事で続けていると、いつのまにか消耗して、疲れてしまう。でも、「好き」って一番エネルギーになるから、たとえ失敗しても、また挑戦できるからね。

迷ったら「直感」と「好きなこと」を考えて行動すればいい――、最後にいいことを聞けてよかった。今日はありがとうございました。

「迷ったら、直感と好きなことに従って、選択する」