「杉浦志保」の記事

杉浦志保

杉浦志保(すぎうらしほ)

NewsInsight 編集・記者

資生堂が横浜の研究所を“開けた”場にした狙いとは

資生堂が横浜の研究所を“開けた”場にした狙いとは

2019.04.12

資生堂が横浜・みなとみらいに研究所を開設

1階・2階を一般来場者向け体験施設「S/PARK」としてオープン

研究者と顧客のコラボレーションを狙う意味とは

資生堂がこの週末、4/13よりオープンする「S/PARK(エスパーク)」。同社が横浜・みなとみらい地区に新設した研究施設「資生堂グローバルイノベーションセンター」の1階と2階を、一般利用できる“美の複合体験施設”として開放する。本稿では、11日に行われたオープニングプレビューの模様をお届けする。

「資生堂グローバルイノベーションセンター」外観

都市型ラボで狙うイノベーション

企業の研究所の多くはスペース確保の都合などから郊外に設けられているが、同施設は前述の通り、横浜の一等地に位置している。このロケーションによって、同社の研究員が国内外の研究所や大学、企業とのコラボレーションに取り組みつつ、顧客と直にコミュニケーションすることで、新たな価値を生み出すという狙いがある。

セレモニーでは、港町である横浜から着想を得て、船出のテープカットを来場者全員で行う演出も

空間デザインも、そうした施設の理念を反映している。什器や照明など、館内の至る所に書類(紙)を模した形状がさりげなくあしらわれ、照明はフラスコの形だ。

空間の総合プロデュースは小山薫堂氏(ORANGE AND PARTNERS)、空間デザインは佐藤オオキ氏(nendo)が手がけた。

舞い落ちる紙片のようなオブジェ

単に洗練された空間であるだけでなく、研究の場と地続きになっていることをひそかに伝える工夫が凝らされている。

積み上げた紙束のような什器
後ほど紹介するスタジオの天井は、まるで壁紙がはがれかけたところから輝いているような照明が設置されている

自分の顔でタイムトラベル

「BEYOND TIME」

1階エントランス奥にある白い箱が、資生堂の知見を生かして作られたデジタルコンテンツ「BEYOND TIME」。カップルや親子、友人などふたり一組でブースに入ると、カメラで顔認識を行い、体験者たちは顔立ちの経年変化を追体験できる。

資生堂が培ったエイジングサイエンス研究の知見をベースに、同社インフォマティクスチームが分析したデータを、米・NYのクリエイティブエージェンシー「R/GA」がデジタルコンテンツに仕立て上げた。このコンテンツは研究に活用する相貌の情報収集も兼ねており、来場者がコンテンツを楽しむことで、同社の研究がさらに推進されるという相乗効果もある。

2階ミュージアムには、同コンテンツの技術解説コーナーが設置されていた

現地で体験してみたが、加齢による変化のほうが一目で分かりやすく、自分の30年後の「顔」には皺、シミなどがそれらしく浮き出て、なかなかの衝撃だった。ブース内では、眼前のモニタに将来のこと、過去の思い出などにまつわる問いが表示され、お互いに対話するように案内される。体験終了後、「タイムトラベル」した写真はデータでダウンロードできるので、時間内には収まらなかった話の続きをすることもできそうだ。

自分の「肌」状態からコスメを作り出す

「S/PARK Beauty Bar」

おなじく1階の「S/PARK Beauty Bar」は、好みのテクスチャや香り、パッケージを選んで「マイコスメ(化粧水と乳液)」を作成可能な「パーソナライズスキンサービス」を提供する。

肌診断やカウンセリングの結果からその人に適した成分を調合し、オープンになっているブース内で製造する様を見ることができる。料金は1万2,000円(税抜・解析とカウンセリング、化粧水170mL/乳液130mL、美容箋、お試し用コットン8枚、送料を含む)。

製造の様子を見ることのできるブース
研究員が着用している白衣には大胆なプリントが施されていた

「パーソナライズスキンサービス」は1日2名と限られた枠だけあって、すでに予約は5月末まで埋まっている。既存のスキンケア製品から肌に合う物を選ぶのではなく、自分の肌質からフィットするコスメを導きだし作り出すというコンセプトが注目を集めている証拠だろう。

体験当日は解析のためメイクを落とす必要があるが、クレドポー・ボーテからインテグレートまで、同社が展開するコスメを試用可能となっており、半個室のブースでフルメイクをすることも可能となっている。

化粧の役割や歴史を学ぶミュージアム

2階は全体がミュージアムとなっており、化粧品が果たしている役割を示す体験型コンテンツや、同社の歴代パッケージが展示されている。

「S/PARK Museum」

歴代パッケージの展示は同社の礎を築いた「オイデルミン」を起点に、平成初期のヒット商品から直近の製品まで見ることができる。化粧品や整髪料などカテゴリもさまざまなので、どれかひとつは「あの頃使った」物を見つけることができそうだ。

カラフルなパッケージが集う一角。筆者は中央のフラスコ型の化粧水「オードレシピ」を見て、学生のころ使っていたことを思い出すなどした
見慣れている商品のパッケージも、見せ方によってアートピースのようになる

体を内から美しくする「食」と「運動」

「S/PARK Cafe」

資生堂は化粧品メーカーだが、商材だけにとらわれず、「美」の土台となる肉体にフォーカスし、健康的で楽しい食体験を提供するカフェ「S/PARK Cafe」と、エクササイズプログラムを提供する「S/PARK Studio」を開設。訪れた人が美を別の側面からも体験できるようなメニューやエクササイズプログラムを用意している。

トマトの入ったハイボールやスムージーなど、資生堂パーラー出身のスタッフたちが体のことを考えて考案したメニューが充実
ランチメニューの提供例
「S/PARK Studio」
スタジオ内にはプログラムに合わせたフレグランスが香る。ヨガやランニング指導などのエクササイズプログラムは2,000~3,000円、ランステーションのみ利用800円

同施設をひととおり体験し、共通して感じられたのは「先進性」。IoT技術を活用した化粧品や肌診断アプリなど、以前から資生堂が推し進めている美のデジタル化の延長線上に、いずれのコンテンツも位置づけられているように感じられた。

一番奥のジャングルが映し出されているところ全面が、16Kの「Crystal LEDディスプレイシステム」なのだが、高精細が故に写真だと絵画のように見えてしまう

その象徴ともいえるのが、施設名の「S」を模した螺旋階段そばに設置された、世界最大(※2019年4月時点)の「Crystal LEDディスプレイシステム」。ソニービジネスソリューションが納入したもので、16K×4Kという超高解像度ディスプレイに、大自然を実物大の動物が闊歩するリアルなCG映像などを映し出す。

産業問わず、現状を打破するオープンイノベーションが叫ばれて久しいが、ここが資生堂の未来の価値を決める拠点となることは間違いなさそうだ。今後一般公開が行われることで生の声を取り入れ、どのように各コンテンツが変化していくのかも注目していきたい。

日清が「完全栄養食」パスタ発売、多忙な現代人の「救世主」となるか

日清が「完全栄養食」パスタ発売、多忙な現代人の「救世主」となるか

2019.03.27

日清がパスタに1食分の栄養素を詰め込んだ新商品を発売

働き盛りの「栄養不足」にフォーカス

販路はネット限定、どこまで市場は広がるか

食事からバランス良く栄養を摂りたい…と考えていても、共働き世帯が増加し、働き方改革が叫ばれる労働環境の中で、それを実現するのは至難の業だ。

そんな社会情勢にあわせ、主食や飲料など手軽な形態で、1日に必要な栄養素を確保できるように作られた「完全栄養食」なるカテゴリが、にわかに注目を集めている。

これまではベンチャー企業の戦場だった「完全栄養食」に、即席麺の巨人・日清食品が参入。完全栄養食「All-in シリーズ」第1弾として、本日3月26日より「All-in PASTA」を発売した。

「All-in PASTA」のパッケージはかなりシンプル。メインターゲットの30代以上の働き盛り世代を狙ったと思われるカジュアルな仕上がりだ

チキンラーメンの正統進化? 21世紀型「簡便食」

日清食品の創業者・安藤百福が戦後の食糧難をきっかけに開発した「チキンラーメン」。もうすぐ最終回を迎えるNHK朝の連続テレビ小説「まんぷく」で広く知られることになった開発エピソードの21世紀版と言えるのが、この「All-in」シリーズ。1日に必要な栄養素の3分の1の量を、1食分の麺に配合しているのが特徴だ。

連続テレビ小説「まんぷく」にあやかったプレゼンテーション。チキンラーメンから60年を経て、変化した時代に合った「簡便栄養食」を提供するというコンセプトだ
「All-in PASTA」の試食販売は、チキンラーメン発売当時に初めて試食販売を実施した阪急うめだ本店(大阪府)で行う(3月27日~31日まで)

チキンラーメン開発当時と比べれば、現代は「空腹を満たすには困らない」時代と言える。その一方で、個々人が「必要な栄養を万全に摂取する」という意味では、困っている人の割合が多いと言えるだろう。

厚労省の調査によれば、栄養素の摂取が推奨量に届いていると考えられる年代は少なく、またビタミン・ミネラル含有量の多さから健康的な食事に欠かせない野菜類の摂取は、国民全体で不足傾向にある上、40代以下では慢性的に不足していることが分かっている。

野菜不足は若年層においてより深刻になっている

そして、日清の独自調査だが、働き盛りの年代で健康に気を配る人は9割にのぼる一方、それが実現できていると感じているのは調査数のうち半数を切る。健康意識の高さと裏腹に、忙しさからか栄養バランスの良い食生活を送れていないようだ。

同社はビジネスパーソンの代表として三菱商事、伊藤忠商事、LOHACOなどの協力を得て調査を実施。働く人の意識として、「健康な食生活を送りたいが実践できていない」という大意が読み取れたという

栄養豊富だけど「ふつう」に食べられる味を追求

そうしたニーズを汲んだことで広がりつつある「完全栄養食」。だが、栄養食品やサプリメントを心底「おいしい」と感じたことがある人は、あまりいないのではないだろうか? 筆者も、飲み込み損ねたサプリメントが舌の上に残ってしまい、何とも不快なえぐみと臭いに閉口した経験がある。

開発担当者である同社 ダイレクトマーケティング課 ブランドマネージャーの佐藤真有美氏によれば、栄養そのものの味は苦み、えぐみ、酸味、さらにざらついた舌触りなど、およそおいしさとはかけ離れた特徴を持っているという。

それを一般的な食材と遜色なく食べられるようにするため、同社はビタミン・ミネラルを麺の内側に封じ込める独自製法「栄養ホールドプレス製法」を編み出した。また、その上で麺の持つ雑味をマスキングするような味付けを開発。この製法により、加熱調理による栄養価の減衰を軽減することにもつながったとしている。

製法図。開発には約1年半を費やし、試作は300回を超えた。既存商品と比べても困難の多い道のりだった、と佐藤氏
コクのある「ボロネーゼ」、香りの良い「ジェノベーゼ」、酸味と旨みを併せ持った「スパイシーアラビアータ」の3種を、湯切り調理のカップ麺形式(1食税別600円)、麺(1食税別400円)とソース(2食入税別500円)を別売する一般的なパスタの形式で展開する

会見の途中で「ボロネーゼ」と「ジェノベーゼ」2種類の味の試食が配られたが、いずれも「良薬口に苦し」といったような、栄養素独特の風味は無かった。一般的なパスタと比べると小麦の含有量が少ないためか、ポロポロと切れやすいコシの少なさは気になった。

ボロネーゼ(左)とジェノベーゼ(右)を試食

とはいえ、黙って出されたら栄養食品のたぐいとはわからない仕上がりだ。個人的にはジェノベーゼソースの風味が気に入ったが、麺の食感をカバーするにはボロネーゼソースくらいの粘度や粒感があった方が、より「ふつうのパスタ」らしくなると思われる。

発売前の「All-in PASTA」を試食したビジネスパーソンからは、ランチ時の利用や社内購買への導入など、ビジネスのオンタイムにこそ使いやすいのでは、という意見が複数見られたという。インスタント麺として調理可能なことが、既存商品と比較した際の目立ったアドバンテージと言えそうだ。

ラーメンでなくパスタから出した理由

「All-in PASTA」の販路はオンラインに限定。日清食品グループのオンラインストア、および「アラビアータ」味の開発アイデア協力も行ったLOHACOで販売を行う。公式サイト上では、パスタソース以外の味付けを紹介するアレンジレシピを掲載。ちなみに、調理の方向性としては、酸味や醤油の風味が麺の雑味をマスキングするのに適しているとのことだった。

調理前後の栄養比較表。麺の中心に栄養素を入れ込むことで流出を抑え、スペックと実態の乖離を極力抑えた

ニーズの高まりがあると言っても、一般的なカテゴリになっているとは言いがたい「完全栄養食」。まずは流通コストが低いネット通販にて提供する。

また、今夏にはラーメン(汁なしそば)タイプの新商品も発売予定。トムヤムクン風、坦々麺風の開発中の試食が会見場で振る舞われた。いずれも発売時期にあわせたスパイシーさが共通で、酸味の効いたトムヤムクン、ゴマのコクが強い担々麺と性格が異なるフレーバーだ。

21世紀の「チキンラーメン」を彷彿とさせる売り出し方の同シリーズだが、スープありの麺は試作されなかったのだろうか? そう現場で佐藤氏に尋ねたところ、スープに麺の苦味が出てしまうため、まずは汁なしで成立するパスタから開発したということだった。今後、麺の改良、あるいは雑味をマスキング可能なスープの開発など方策の目処が立てば、汁ありタイプの商品化も可能性はあるという。

会見でプレゼンテーションを行った、日清食品 マーケティング部 藤野誠 部長(左)、同 ダイレクトマーケティング課 ブランドマネージャー 佐藤真有美

発展途上のカテゴリである「完全栄養食」だが、「All-in」シリーズの販売目標は2019年通して累計100万食を目標に掲げるなど、かなり強気の姿勢を見せた。それだけ、同社は簡便な栄養摂取に対するニーズの高まりを感じているのだろう。

働き盛りの人々を悩ます栄養不足。理想は当然ながら食材からの摂取ではあるものの、その理想と現実のギャップをうめるのには取り入れやすい新商品となっている。

その一方で、自社のネット販路主体でどこまで購入に結びつけられるか、また個人差の大きい食生活の中で、同商品による栄養の充足を実感する購入者がどの程度現れるか、というのは課題といえるだろう。

昨今はSNS経由の口コミが購買を大きく左右する。試食と口コミ、その相乗効果で受け入れられれば、より一層市場が拡大が加速するのではないだろうか。

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」

ペットボトルコーヒーに対抗? キリンが目指す「午後の紅茶」"仕事のお供"戦略

2019.03.22

「午後の紅茶」に微糖のミルクティーが登場

新CMでは無糖・微糖を中心に新しい飲用シーンを訴求

ペットボトルコーヒーに対抗? 今後の戦略は

昨年まで、ビジネスマンの仕事のお供として「ペットボトルコーヒー」に注目が集まっていたが、今年は「紅茶」が主戦場になるかもしれない。

3月26日より発売されるキリンの「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」は、これまでの“ペットボトルのミルクティーは甘い”というイメージに反して、缶コーヒーでいちカテゴリを築いている「微糖」が特徴。また、同社が長らくカテゴリ内最大シェアを誇る「午後の紅茶 おいしい無糖」についても、あらたな消費イメージを打ち出す方針だ。

今春から「午後の紅茶」新CMに出演する新木優子さん、深田恭子さん、リリー・フランキーさん

ペットボトル紅茶飲料のトップブランドと言える「午後の紅茶」。この春から公開する新CMには、既存の紅茶飲料のイメージを覆す狙いが透けて見えた。

2つの軸で「紅茶」のイメージを変える

紅茶飲料のイメージと言えば、「午後の紅茶」の名前の由来となっている「アフタヌーンティー」(英国発祥の喫茶習慣)に象徴されるように、「女性の飲み物」であり、「時間的・金銭的余裕がある人の趣味」というところだろうか。それも紅茶という商品のひとつの側面だが、近年の消費者層のメインストリームではなくなっている。

今回、キリンが「午後の紅茶」新CMで打ち出したのは、大きく分けてふたつの飲用イメージだ。深田恭子さんが仕事で車を走らせ、駐車して一服するのに選んだのは微糖のミルクティー。一方、アーティスト然としたリリー・フランキーさんが飲んでいるのは無糖の紅茶。2本ともに「仕事のお供」としての訴求が挙げられる。

車を止め、「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」をひとくち飲む
絵を描く合間にのどを潤すのは「午後の紅茶 おいしい無糖」

もうひとつは、おなじくリリー・フランキーさんがカレーと紅茶飲料を一緒に味わうというCM。過去には同社の無糖紅茶が「おにぎりに合う」と訴求したこともあるが、あらためて食事中の飲料として「フードペアリング」を提案する。

カレーのような香りの強い食べ物とも合わせられる点を訴求
最年少の新木優子さんは、無糖紅茶を飲むようになった自分を「大人になった」と評するCMに出演。若者への無糖紅茶訴求を担う

紅茶を、コーヒーや緑茶と並ぶカテゴリに

カフェなどでは食後の飲み物をコーヒーか紅茶から選ぶのが定番だが、ペットボトル飲料市場では状況が異なる。コーヒーに次ぐ大規模市場は緑茶飲料で、紅茶はそこから比べるとかなり小規模だ。日本全体の清涼飲料市場で見れば、そのシェアは5%以下。仕事中の飲料としてメジャーなコーヒーが14.5%、緑茶飲料が13.3%という数字を見ると、半分以下という状況となっている。

清涼飲料市場において、紅茶はコーヒー、緑茶と比べて市場が小さい

こうした市場背景を確認した上で、今後「紅茶を、コーヒーや緑茶などの無糖茶と並ぶカテゴリに成長させたい」と意欲を示したのは、午後の紅茶を担当するキリンビバレッジ マーケティング部 商品担当 部長代理の加藤麻里子氏。世界での紅茶飲料と茶葉生産量の伸び、国内紅茶市場の回復傾向を論拠に、RTD紅茶のトップブランドとして、新しい紅茶文化を創っていきたいと語った。

「午後の紅茶」ブランド全体としては、既存の定番3種は甘さを求める若年層に対して継続投資を実施。甘さから離れる20代~30代の働く女性に向け、紅茶飲料としては珍しい「微糖」の新製品「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」を投入する。

午後の紅茶ブランドにおける年代別の主要商品マッピング

また、30代後半意以降の年代を健康意識や嗜好の変化から「糖離れ・無糖飲用層」と位置づけ、すでに市場で受け入れられている「午後の紅茶 おいしい無糖」の訴求強化を行っていく。

狙うはペットボトルコーヒーへの「対抗」ではなく…?

「2年前までコーヒーのCMをやっていたのにどのツラ下げて…というのはありますが」と茶化しながらも、自分のような「おじさん」にこそ紅茶は飲みやすいとコメントしたリリー・フランキーさん

製品ごとに異なる年齢層を狙って投入される新CM。「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」「キリン 午後の紅茶 ザ・マイスターズミルクティー」のCMでは、商品をことさらには誇張しない画面作りやキャスティング、出演者の自然体な演技とは裏腹に、「コーヒーから寝返っちゃおうかな」(リリー・フランキー出演「寝返り」編)、「ラテよりこっちかな」(深田恭子出演・「裏切られた」編)など、“コーヒー飲料からの転向”を示唆するようなセリフが目立つ。

働く大人がコーヒーから紅茶に「乗り換え」することを示唆するCMは、ここ2年でワーカー向けのペットボトル飲料の拡大を牽引し、ちょうど先日同ブランドから紅茶飲料を発売したサントリーの「クラフトボス」をはじめ、昨今増えているワーカー向けのコーヒーペット飲料に対する宣戦布告にも読める。だが、加藤氏にペットボトルコーヒー飲料のヒットに紅茶で対抗する構えかどうか尋ねると、決してそうではないという。

「今やひとつのカテゴリとなっているペットボトルコーヒー飲料も、複数社から新商品を展開し、協力して棚の広さを獲得した経緯があります。現状、紅茶飲料の棚は一段程度ですが、これを各社協力して2段へと増やしていきたいです」 

オフィス需要に対して、企業とコラボレーションし飲用機会を設ける試みも

また、「仕事のお供」需要を喚起する施策として、三菱地所に対して仕事中の飲料として「キリン 午後の紅茶 おいしい無糖」を提供。働き方改革推進企業とコラボレーションし、オフィスでの休息機会に手に取る飲料として配布する。今後、他の企業からオファーがあればそちらにも対応するとのこと。想定シーンに対して直接サンプリングすることで、需要の広がりを見込んでいる。

「午後の紅茶」は、日本国内の紅茶飲料としてはNo.1ブランドの地位を獲得しているだけに、紅茶飲用の文化を牽引して、先述の通りコーヒー・緑茶に並ぶ市場規模への拡大を狙っている。

昨今はスターバックスの「TEAVANA」、タリーズコーヒーの紅茶業態などが定着しており、タピオカミルクティーブームも依然続くなど、カフェ業界でも紅茶に追い風が吹いている。今後、午後の紅茶が「コーヒー党」や「緑茶党」をどれだけ引き込めるか、注目したい。