「早川厚志」の記事

早川厚志

早川厚志(はやかわあつし)

ライター・写真家

フリーライターとして活動する傍ら、フォトグラファーとして依頼撮影をこなし、Getty Imagesでの作品販売も行っている。写真コミュニティ「500px」に投稿した北海道の風景写真が、Pulse 99.9で1位を獲得して以来、旅写真の魅力にハマる。専門はApple製品、アプリ、デジタルガジェット、音楽製作、旅行など。現在はマイナビニュース、MacFan、gooなどで執筆。1996年から20年以上続けているMac用新着ソフト情報サイト「新しもの好きのダウンロード」(個人運営)は、90年代後半から2000年代のMacユーザーの定番サイトとなった。一方で、シンガーソングライターとしても活動しており、月2〜3回のライブ(ピアノまたはギター弾き語り)を実施。さらに、アーティストへの楽曲提供(主に作曲、ストリングスアレンジ)も手がける。昭和57年、高2の時に「いい旅チャレンジ20000km」全線踏破を達成。
タニタ、

タニタ、"生涯現役社会"に向け新サービス立ち上げ 国の健康政策への組み込み視野に

2018.10.02

タニタ、健康寿命の延伸狙う「健康プラットフォーム」立ち上げ

官民ファンドのINCJから多額の増資、いずれは政策へ活用か

パートナー企業4社と連携し、2019年より実証実験

タニタとタニタヘルスリンクは9月28日、INCJ、イトーキ、SBI生命保険、日立システムズの4社を引受先とする総額35億円の第三者割当増資を実施し、契約締結が完了したことを発表した。

タニタらは「健康プラットフォーム」を構築し、パートナー企業とともに新たなヘルスケア事業を2019年度中に展開する予定だとしている。ここでは、同日、マンダリンオリエンタルホテル東京にて開催された記者発表会の模様をお伝えする。

「いずれは国の健康政策に貢献したい」

タニタ代表取締役社長の谷田千里氏

今回、タニタらが展開する新しいヘルスケア事業は、各社が持つヘルスケア関連情報やサービス、システムなどを融合させ、東京大学と連携して、誰もが利用できる新たな健康プラットフォームの創出を目指すもの。その第一弾として、2019年度に岡山市で実証実験を始める。

発表会の冒頭では、タニタ代表取締役社長の谷田千里氏が登壇し、今回の増資にあたっては官民ファンドのINCJから多大な支援を受けたことを明かし、「国内における健康サービス産業を創出せよとの大きな期待の表れである」と強く認識したという。

そして「国が推進する公的保険外の領域におけるヘルスケア分野の産業化やデータヘルス計画の受け皿となるべく、産・官・学が連携し、誰もが参加できる健康増進のインフラ作りに取り組んでいく」と意気込みを語った。

「健康プラットフォーム」によって生まれる新たな健康サービス

また、「国内のあらゆる企業、団体、アカデミアなどその垣根を越えて連携するオープンプラットフォームによって健康課題を解決できれば、この分野で世界を大きくリードすることができる」と断言。「今回構築する健康プラットフォームは、国民の健康データをビッグデータとして、健康寿命延伸に向けた多くの方々のさまざまな取り組みに活用できる可能性がある」とも述べた。

さらに「この健康プラットフォームが日本の公的資産として国の健康政策に役立てていただくことを視野に入れている」と展望を語り、「"生涯現役社会"の実現へ向けた大きな挑戦がいよいよスタートします」と挨拶を締めくくった。

タニタヘルスリンク代表取締役社長の丹羽隆史氏

次に、タニタヘルスリンク代表取締役社長の丹羽隆史氏が登壇。今回構築を目指す健康プラットフォームは、検診やレセプト、健康情報などから疾病リスクを可視化し、個々人の生活スタイルや趣味嗜好から簡単・楽しい・続けたいと思えるコンテンツで行動変容を促し、利用者を健康にしていくものであると説明した。

自分に合ったかかりつけ薬局、保険、服、食事などによって、利用者自身の健康を守れるような情報をワンストップで提供するプラットフォームを目指すという。

 

「平均寿命」と「健康寿命」の差は男性で9年、女性では約13年。

また、同プラットフォームを作ろうと考えた要因のひとつに、日本国民がこのまま不摂生な生活をし続けることで医療費が増え続け、健康保険制度を維持することが難しくなるであろう状況に危惧を抱いたことを挙げた。

さらに「平均寿命」と「健康寿命」の差(病気や寝たきりの期間=介護を受け生活する期間)が、男性で9年、女性では約13年もあるとし、医療費適正化や健康寿命の延伸のためにはさまざまな世代での生活習慣病予防に向けた取り組みが重要だと述べた。

「健康無関心層」にも満足を得られる健康づくりサービスを提供

従来の健康サービスでは、健康診断の結果をもとに指導されるが、楽しくなかったり続かなかったりして、成果が出ないといった課題があった。今回、タニタが提案する健康サービスは、約3割いると言われる「健康関心層」の人々には成果をさらに伸ばしてもらい、残り約7割の「健康無関心層」の人々にはゲームや園芸、旅などのコンテンツ群を入り口にし、楽しみながら健康になる行動をとってもらう。その結果として、自分の体形や体組成は変化し、いつのまにか健康になれるという仕組みだ。

次に、健康プラットフォームの参画法人やアカデミアの役割についての説明に移った。

タニタヘルスリンクは、体組成計や活動量系などのハード、WEBサイトやアプリを用いた健康管理サービスおよび専門家によるセミナーなどのソフト、そしてタニタ食堂の企画・運営などの食事といった側面から、人々の健康づくりを促進する健康サービスをトータルで提供する。

タニタヘルスリンクの役割

丹羽氏は「健康プラットフォームの解析エンジンやコンテンツを、既に提携している150以上の自治体や企業にに加えて、自治体、健康経営を進める企業など計300以上の団体に提供したいと考えている。地方創生推進交付金を活用したモデルによって、自治体だけで200以上を目指す」とし、「裾野の広い健康領域をひとつの企業集団でカバーすることは不可能だが、多くの企業の賛同を得て手を携えることで領域全体をカバーし、無関心層にも届くサービスを構築していく」と述べた。

最後に「タニタヘルスリンクは"日本をもっと健康に"を目的に、思いを共有いただける企業をつなぐハブの役割を、この健康プラットフォームにおいて担っていく」と説明した。

パートナー企業・大学、参加の動機は

東京大学COI 自分で守る健康社会拠点 機構長の池浦富久氏

次に、タニタヘルスリンクも参画している、東京大学COI 自分で守る健康社会拠点の機構長・池浦富久氏が登壇。人生100年時代でいちばん大事な"健康の自分ごと化"を達成するために、同機構では自分のリスクをしっかり把握し、それを可視化し、何をすればいいのかをアドバイスするような一連のアプリケーションを開発しているという。

池浦氏曰くこれは「"ドラえもんの健康ポケット"のようなもの」で、「健康の考え方は人によって千差万別で色んなサービスを用意しなければいけないが、健康プラットフォームでこのアプリケーションの"健康ポケット"をさらに増やしていただき、国民の一人ひとりに適したアプリケーションにしていきたい」と述べた。

将来の生活習慣病リスクを可視化し、生活習慣や趣向に基づいたアドバイスを自動化するアプリケーション「カラダ予想図」

続いて、東京大学大学院工学系研究科 特任助教・医師の岸暁子氏から、同機構が開発しているプログラム「カラダ予想図」に関しての説明があった。

東京大学大学院工学系研究科 特任助教・医師の岸暁子氏

これは、検診データやレセプトデータ、健康情報から個人ごとの現在・将来の生活習慣病(メタボ、脂質異常症、糖尿病、高血圧症、慢性腎臓病、虚血性心疾患など)のリスクを可視化するとともに、本人の生活習慣や趣向に基づいたアドバイスを自動化するものだ。

同プログラムによってリスクが可視化されることで、自らの気づきによる自発的な動機付けとなり、行動変容を促進するとのことだ。今後はこの健康プラットフォームによってデータ連携の充実を図り、個別化された保健医療サービスの実現を目指すという。

最後に「データを集めることは非常に大変なことなので、健康プラットフォームには期待しています」とエールを送った。

INCJ マネージングディレクター・板橋理氏

そして、健康プラットフォームに資金・経営面でサポートするINCJのマネージングディレクター・板橋理氏が登壇し、今回出資に至った経緯について説明した。

同社は経済産業省(以下、経産省)と連携して投資活動を行っている。新産業構造ビジョンでは、健康寿命について、2020年までに1歳以上、2030年頃に5歳の延伸を政策目標のひとつとして掲げている。

その実現のために「個人が生涯にわたり健康関連データを経年的に把握できるリアルデータプラットフォームの構築」や「行動変容を促すためのインセンティブ設計」が含まれているとした。

さらに官邸から発表された未来投資戦略の中に、「次世代ヘルスケアシステムの構築」が掲げられ、「自らの健康状態や服薬歴等を把握できる仕組みの構築」や「ビッグデータを個人のヒストリーとして連結・分析できる基盤の構築」が含まれている。

INCJは、今回の健康プラットフォームが政策的な課題に合致していることから、23億円を出資

政府の方針において健康寿命の延伸は戦略分野となっており、個人の健康データを活用したプラットフォーム構築の社会的重要性が増加している認識を持ったということだ。今回、タニタヘルスリンクが構築する健康プラットフォームが、政策的な課題に合致していることから今般、23億円の出資を決定した。

日立システムズ 代表取締役 取締役社長 北野昌宏氏(左)、イトーキ 代表取締役社長・平井嘉朗氏(右)

続いて、SBI生命保険の代表取締役社長・飯沼邦彦氏が、同社が健康プラットフォームへ参画した理由について説明した。同氏によれば、顧客に対し疾病リスクや生活スタイルから最適な保険商品の提案が可能になること、将来の疾病リスクや顧客の生活スタイル、趣向に応じた保険商品の開発、未病、予防の提供機会を得られることから、同プラットフォームを活用した保険商品やサービス展開を目指せるのが最大の理由だとした。

SBI生命保険はプラットフォームを活用した保険商品・サービスを展開

次に、日立システムズの代表取締役 取締役社長 北野昌宏氏が登壇。同社の役割は、健康プラットフォームの解析エンジンを共同開発するとともに、その拡大にも協力するとのこと。北野氏は「ITの会社なので、ITを使って貢献したい」と述べるとともに、多くの企業では人材不足に悩まされていることから、「大事な社員が病気になると企業としても非常に厳しくなるため、できるだけ多くの社員に健康でいていただきたい」というのが、今回参画したもうひとつの理由であることを明かした。

イトーキはWebアンケートサービス「はたらきかた検診」の分析結果を提供

最後に、イトーキの代表取締役社長・平井嘉朗氏が登壇した。同社は一日の大半を過ごすオフィスでの日常の行動がどのように健康に影響しているのかを、長年研究しており、働き方改革や健康経営の課題分析、効果検証に活用できるWebアンケートサービス「はたらきかた検診」をスタートした。

これは、働き方改革や健康経営をしたいが何から実施すればよいのか知りたい、実施した施策の効果を定量的に測りたい、といったニーズに活用できるという。今回、健康プラットフォームに参画した理由は、「これらの分析結果を提供するとともに蓄積データを我々なりに活用することで、さらに高精度なデータを顧客に提供し、日本の健康に貢献していきたい」からだと語った。

健康プラットフォームの第1号案件は岡山市

健康プラットフォーム事業の第一号案件には、岡山市が選出された。同市をフィールドに、国保や協会けんぽ、組合健保に所属している岡山市民で、個人同意に承認した人を対象にリスク解析を行っていく。

そして、それらの人々が健康改善に取り組みやすいように個々人の生活スタイルや趣味嗜好に寄り添ったレコメンドを出し、保健士や専門職の人々と連携するサービスを開始する。全国健康増進協議会に加盟する淳風会(岡山市)を軸に、全国440万人が受診する検診機関を通じて、全国に広めていく計画だ。

なお、サービス開始時期については、まず2019年4月から岡山にてトライアルを開始し、2019年10月に今回のプラットフォームの一部コンテンツが加わる形となり、そして2021年度には本格サービスの提供開始を目指しているということだ。

「健康プラットフォーム」を構築するタニタおよびパートナー企業

今回、タニタらが発表した新たなヘルスケア事業の展開は、経産省が掲げた政策目標のひとつである「健康寿命の延伸」に向けてのインフラとして、大きな目玉となりそうだ。加えて、働き方改革および生涯現役生活の実現に向けた狙いもあるという。同プロジェクトによって、多くの人々がそれぞれの健康増進のための取り組みに活用できるようになることを期待したい。

クリーンな進化系カプセルホテル「ナインアワーズ」が浅草に

クリーンな進化系カプセルホテル「ナインアワーズ」が浅草に

2018.09.25

カプセルホテルのイメージを変えた「ナインアワーズ」が浅草に

同じビルにノルウェーカフェ「フグレン」2号店が入居

気鋭の建築家が手がけたビルと内装を写真で紹介

「カプセルホテル」と聞くと、主に中年男性が泊まる安宿、あるいはサウナに併設された仮眠場所という印象を抱いている人は多いことだろう。そんなイメージを覆し、女性や若者でも気楽に入れるクリーンで現代的な空間を提供しているカプセルホテルが「9h ninehours(以下、ナインアワーズ)」だ。

すでに東京や大阪、仙台などで8つの店舗を展開しているが、9月21日、東京の下町・浅草に9番目となる新店舗「ナインアワーズ浅草」がオープンする。ここでは、19日に開催されたプレス内覧会の模様をレポートする。

浅草を「巻き取る」ユニークな建築

「ナインアワーズ浅草」の外観。ブロックを組み合わせたようなユニークなデザインが印象的。1階と2階にはノルウェー・オスロに本店を構えるカフェ「Fuglen(フグレン)」がある。日本では、渋谷区富ヶ谷の1号店に次ぐ国内2号店だ。

「ナインアワーズ」は、シャワー・睡眠・身支度といった宿泊時の基本行動に特化し、それぞれの機能性と品質を追求する考えで開発されたカプセルホテルだ。施設名は1h(シャワー)+7h(眠る)+1h(身支度)=9hという想定から出した滞在時間からきている。

今回、新たにオープンする「ナインアワーズ浅草」の建築・設計は、気鋭の建築家・平田晃久氏が手がけた。

ユニークな外観は、「歴史ある浅草の風景を、立体的に巻き取る」ようなイメージでデザインされた。岩山のような凹凸感と、14種類の異なる屋根が取り付けられたことで、浅草の街に溶け込みながらも、景観に新たな表現を加えるものとなっている。

まずは、同カプセルホテルを展開するナインアワーズ代表取締役の油井啓祐氏が、「ナインアワーズ浅草」の設計を平田氏に依頼した理由を説明した。ナインアワーズのブランド全体において、総合的なディレクションをプロダクトデザイナーの柴田文江氏が、サインやグラフィックは廣村デザイン事務所の廣村正彰氏が担当しているものの、実は建屋に関しては、毎回手がける建築家が変わっているという。

ナインアワーズ代表取締役の油井啓祐氏

その原則に反して、竹橋(2018年3月開業)、赤坂(2018年5月開業)に引き続き平田氏が"三連投"している。その理由として、「アイデアの段階で毎回感動する」ことと、「設計プランを作るまでの間に、とてつもない思考力を発揮していることが伝わってくる」からだと語った。

また、浅草に出店した理由について質問したところ、浅草は宿泊需要が旺盛でマーケットとして成立するのではないかという判断によるものだという。もちろん、インバウンド需要が高いエリアであることも理由とのことだ。

 

浅草の昼飲みスポットとして有名な「ホッピー通り」から続く道にあり、目の前が「浅草西参道商店街」の入り口という、外国人観光客にとっては堪らないロケーションだ。

続いて、平田氏が登壇し、これまでの竹橋、赤坂、そして今回の浅草に続き、今後オープン予定の浜松町や水道橋、麹町、新大阪でも設計に携わっていることを明かした。

ナインアワーズ浅草のデザインを手がけた、建築家の平田晃久氏。同カプセルホテルの設計は、竹橋、赤坂(ともに東京)に続いて3店舗めとなる。今後オープン予定の浜松町や新大阪などの設計も手がけているそうだ。

平田氏が最初に手がけた赤坂では、周りに雑多な建物や超高層ビルがあり、街の色々なレイヤーが一気に見えるような場所であったため、カプセルが街に投げ出されたようなコンセプトで設計したという。

「カプセルは一見するとニュートラルなものだが、それを通じて街を見ると新鮮に見えることに気づいた」(平田氏)

そして、今回の浅草では、浅草寺や花やしきがみえる眺望の良さを活かし、浅草独特のフィーリングをいかに絡み合わせるかをテーマに設計したということだ。

 

凸凹したデザインがユニークなナインアワーズ浅草の模型。カプセルの塊でできた岩山のようなものに、浅草の周辺の店が三次元に巻き上がったようなものをイメージしたそうだ。

平田氏は、「角地で細長い敷地なので、カプセルを効率よく並べようとしても凸凹ができてしまう。それを逆手に取り、カプセルの塊でできた岩山のようなものに屋根が所々に掛かったイメージを描き、周辺のさまざまな店をそのまま三次元に巻き上げたようなものを作ってはどうか?という提案をした」とのこと。

5階にある「ジム」には、2台のジョギンググマシンとヨガマットなどが用意され、浅草のシンボルでもある「浅草寺」を眺めながら汗を流すことが可能
7階「ラウンジ」は男女共有スペース。このほか、6階には男性専用のこぢんまりとしたラウンジがある。どちらも飲食可能となっている
8階にはノートパソコンなどで作業できる「デスク」が用意され、コンセントも備わっている

また、宿泊階を中心に3階から8階には共有スペースが用意され、それぞれの階あるいは階をまたいでくつろいだり、ヨガをしたりできる。

平田氏は「立体的な街のようなスペースがカプセルと結合し、カプセルと浅草の街をつなぐ間のような場所になっている」と述べ、「東海道五十三次のように、テーマは共通しているものが、異なる場所に出会うことによって建築が生まれていく。それが面白い」と語った。

宿泊客は建物の北側にあるエレベーターで9階に上がり、9階にあるフロントでチェックインし、支払いを済ませる

日本2店目のノルウェーカフェで朝食も

続いて、「ナインアワーズ浅草」のシステムが説明された。宿泊客はまずエレベーターで最上階の9階へ上がり、フロントにてチェックイン。男性は9階、女性は8階にあるロッカーに荷物を入れ、シャワーを浴びる。その後、各階に降りて自分のカプセルに入る――という流れだ。

シャワールーム(男女別)。シャンプー、コンディショナー、ボディソープ、バスタオル、フェイスタオル、館内ウエアは用意されている

各階に設けられたラウンジに関して、3階と4階、および6階は女性専用または男性専用となっているが、その他の階は男女共用。これは、ラウンジから浅草の街が一望できるため、宿泊客全員にその眺望を味わってもらうため。その一方で、専用エリアへはカードキーがないと入れない仕組みなので、セキュリティ面は安心という。

エレベーターは男女兼用と女性専用の2機が用意され、男女の動線が分かれるように停止階が異なる
カプセルルームの外観は黒を基調としたデザイン。フロア毎に男女別となっている
3階と4階(女性用カプセルルームのフロア)には「温室(サンルーム)」が用意される。眠れないときのくつろぎタイムなどに

なお、ナインアワーズ浅草の価格は、宿泊が4,900円~(13時チェックイン、翌10時チェックアウト)、仮眠は最初の1時間が1,000円、以降は1時間毎に500円加算~(13時から21時の間で利用可)、シャワーは1回700円(1時間以内、24時間いつでも利用可)となっている。

ノルウェーカフェ日本2号店が階下に

同じビルの1階と2階には、ノルウェー・オスロに本店を構えるカフェ「FUGLEN(フグレン)」が入居。代々木公園の1号店に続く、日本第2号店だ。

ナインアワーズ浅草の1階・2階に入るカフェ「Fuglen」

ビジネスホテル階下の飲食店では、ホテル利用者向けの割安なモーニング提供などが行われる場合もある。「ナインアワーズ浅草」とフグレンの連携があるか訪ねると、現在のところ、宿泊者の優待価格などは設定されていないが、今後検討していくとのことだった。

同店では「ノルウェージャンワッフル」やノルウェーの小麦を使った「カルダモンロール」など、ノルウェー発祥のカフェならではのメニューが用意される

2020年が近づくにつれ、急速に都市圏での出店を拡大しているナインアワーズ。外国人観光客が多く訪れる浅草の地に、既存店舗にはない有名コーヒーカフェとの同居店舗を構えたことで、どのような相乗効果が生まれるか期待したい。

「ライフ」の中に「ワーク」がある オカムラ、働き方改革の現在地

「ライフ」の中に「ワーク」がある オカムラ、働き方改革の現在地

2018.09.20

時代に即したワークスタイルを提唱するオカムラ

自社の「働き方改革」はどのように行ったのだろうか?

ワークとライフを「同列」にとらえない働き方を推進

無機質で効率重視の「昭和型オフィス」から脱却することで、働き方は変わっていく――。インタビュー前編では、オカムラが働き方改革に関する情報を発信するプロジェクト「WORK MILL」エバンジェリストの遅野井宏氏から、既存のオフィス空間から脱却し、時代に即したワークスタイルを実践するために必要なマインドセットについて伺った。

では、オカムラ自身は、長時間労働をはじめとした働き方にひそむ問題を、どのように解決しようとしているのだろうか。後編では、同社マーケティング本部 フューチャーワークスタイル戦略部 戦略企画室 室長の薄良子氏に、同社が取り組んでいる社内向けの「働き方改革」についてお話しを伺った。

オカムラ マーケティング本部 フューチャーワークスタイル戦略部 戦略企画室 室長の薄良子氏

──御社内の働き方改革について、いつごろ開始されたのか教えて下さい。

2018年6月に、これまでに実施していた働き方改革の取り組みを整理し「WiL-BE(ウィル・ビー)」と総称し、代表取締役社長の中村雅行を推進リーダーとして、さらに積極的に活動を展開していくことを発表しました。「WiL-BE」は、オカムラが提唱する「ワークインライフ(Work in Life)」から名付けました。

ワークインライフは、「Life(人生)にはさまざまな要素があり、その中のひとつとしてWork(仕事)がある」という考え方です。働く環境を提案する企業として、従業員自らがワークインライフの観点から、従業員自らがそれぞれどう生きどうありたいかを自律的に計画し、働き方改革を推進することで、いきいきと働き、思い描く生活を実現し、それを各業務を通して社会へ還元していくことを目的としています。

「WiL-BE」には多様な働き方の選択を実現する人事制度改革や、業務プロセスを見直す業務改革など現在6活動が位置付けられています。中でも、現場から1つひとつを改革していく活動が「働き方カエル!プロジェクト」と「ソダテルプロジェクト」です。今回はこの2つを中心にお話しします。

スモールスタートで働き方を「カエル」

まずは「働き方カエル! プロジェクト」からお話しします。2016年にスタートした、元々はボトムアップによる取り組みです。会社の管理部門では、パソコンを18:30にシャットダウンしたり、出退勤を自動的に管理したりできるシステムを導入したりしていたのですが、重要なのは「従業員の意識」であって、いくらハード面を整備しても、ドラスティックに改革するのは難しいと気づきました。

そんな現場と会社の思いが一致したことに加え、働き方改革を推奨する行政や社会の後押しもあって、2017年に「働き方カエル! プロジェクト」として全社展開されるようになりました。

──「働き方カエル! プロジェクト」の全社展開というのは、2017年から全国の拠点で開始されたということですか?

いいえ、そうではありません。社内から18拠点を選んで、限定的にプロジェクトに着手しました。こうしたプロジェクトは、はじめから全社で展開してもうまくいきません。「小さな成功」を少しずつ広げていく方針でスタートしました。

まず各拠点の課題を洗い出し、それに優先順位を付けた「重要度」や「緊急度」を割り振って、それが高い順にひとつずつ進めていくということを地道に行いました。拠点ごとのやり方を明確にし、研修にも参加してもらってスキルを浸透させました。

初年度のスケジュールは、かなり密に組み込みました。なぜなら、「いつまでに何を」という期限を設定していないと、経験のないプロジェクトのために動くのは大変難しいからです。

スケジュールには、進捗シェアや中間発表の時期を決め、「自分たちの拠点だけで戦っている」と感じさせることなく、事務局側も本気になって一緒に頑張っているんだということが伝わるようにしました。また、やはりインセンティブも重要ですので、最終の発表会で「良い取り組みをし、結果が出た」という拠点は表彰するなどして、盛り上げていきました。

──18カ所という数はスモールスタートの取り組みとしてやや多いように感じるのですが、各拠点の進捗はどのように把握されていたのでしょうか?

基本的に、各拠点は2週間に1度のミーティングを実施するのですが、Microsoft Office365の「Teams」を使って、ミーティングの日程が決まったらシェアしてもらうようにしています。「Teams」を見れば、各拠点の取り組みが進んでいるかどうかがわかります。

また、実際にミーティングで何を話したかという内容を、アジェンダという形でTeams上でシェアするようにしています。これにより、その拠点の進捗度合いが一目瞭然になりますし、別の拠点が同様の施策をしていた場合に、横のコミュニケーションを取ることができるといった副次的なメリットもあります。

このように拠点の課題を洗い出し、それらを「各拠点でできること」と「各拠点ではできないこと」という2つにわけました。前者は各拠点で解決できますが、後者は会社の制度や仕組みに関連することが多いので、各拠点では解決できません。そこで、会社の制度に関する質問や相談を拠点から吸い上げる仕組みを作りました。

2017年度に大阪の拠点が取り組んだ「早帰り意識カード」

2017年度、大阪の拠点で行われた取り組み例が「早帰り意識カード」で、帰宅時間の目標を社員自身で設定し、「◯時に帰る」というカードを掲示するものです。全員がメンバーの帰宅時間を把握できるため、今日すべきタスクなのか、手伝える人はいるかなど、業務上の判断を促進するのが目的です。

このカードを使うことで、「帰宅時間を意識して仕事の調整をするようになった」「声がけによってコミュニケーションが増えた」といった成果がありました。この施策は非常に効果が高いため、2018年から全社展開となっています。

また、別の拠点では「Teams」を活用し、朝礼に参加できない人でもその内容を音声で共有する施策も行われました。そもそも、朝礼で連絡事項だけを話すような場合、直接話を聞かなくても、掲示板のようにTeamsに記載しておけば済む話ですよね。それ以外にも、さまざまな立場の人が時短を目指してやっている工夫を見える化するなど、このTeamsというツールを情報プラットフォームにして有効活用しているのが、この拠点の素晴らしいところです。

「ライフ」の中に「ワーク」がある

──続いて、WiL-BEのもうひとつのプロジェクトである「ソダテルプロジェクト」についてもお教え下さい。

2016年の8月に「ダイバーシティ推進プロジェクト」が設置されたのですが、当社は女性比率が他社と比べて低いため、女性従業員比率の向上などの目標に掲げて取り組みを進めているのが「ソダテルプロジェクト」です。このプロジェクトはドラスティックな変革を起こしました。たった3年でここまで変わるの?と、(プロジェクト運営の立場である)私も驚いたほどです。

象徴的な変化として、「在宅勤務」ができるようになったことが挙げられます。出産や介護といったライフイベントに行き当たった時、たとえ働く時間が少なくなったとしても、その人らしく働き続けられるように、2017年に作られました。

また、働く時間が多様化すればもっと働きやすくなることから、例えば育児などの理由で時短で働いている方向けのフレックスタイムが制度として適用されました。元々、ほかの従業員に対してもフレックス制度は用意されていたのですが、コアタイム(出勤義務のある時間帯)が長めに設定されていたため、使いづらかったのです。そこでコアタイムを撤廃し、育児中でも働きやすくなったことが大きな変化だと思います。

──コアタイムの撤廃はどのようなメリットを生んだのでしょうか?

当社では30年ほど前から取り入れているのですが、社員みんながフレックスタイムを活用すると、互いに顔を合わせづらくなりますよね。コアタイムは、社員同士がリアルに顔を合わせてコミュニケーションを取るために作られたのではないかと思うのですが、その存在が制度そのものを使わない理由になってしまえば、そもそもの意味がなくなってしまいます。

制度は、時代とともに変化していいと思います。コアタイムを撤廃したことで個々人が自分にあった働き方をするきっかけになりました。

──実際にこの3年で女性従業員の比率は高くなっているのでしょうか?

増えてきています。2020年までに社員の20%を女性に、という目標も掲げているのですが、まずは今いる従業員がこの先もずっと当社で働けるようにするため、どうすればいいかということを優先して考えています。そうすれば、結果的に今後入社する人のためにもなると考えています。

──その流れで「テレワーク・デイズ」(働き方改革の運動であるテレワーク国民運動プロジェクト)にも参加されたわけですね?

はい、そうです。

──確かに、在宅勤務とテレワークはニアリーイコールではありますよね。

そうですね。我々は「サテライトオフィス」の設置も推進しています。これも時間の効率化を目指しての施策ですが、色々な所に支店を置くことで、その近くの取引先などに行った場合は自分の本拠地ではない支店で働くことができるので、移動時間の短縮につながっています。

──なるほど。必ず自席のあるオフィスに行かなければいけないという縛りから解き放たれるわけですね。

はい。どこでもいつでもストレスなく働けるという環境を、全社で実現しようとしています。

──最後に、「WiL-BE」プロジェクト全体で働き方改革に取り組む中で、従業員から好評だった、あるいは効果が著しく上がった制度がありましたら教えてください。

先ほど述べた「在宅勤務」や「サテライトオフィス」は非常に効果があり、好評です。ただ、働き方改革というのは、生産性を向上させるための「手段」ですよね。単に「早帰りのため」と勘違いしている従業員もいますが、それはあくまでも副次的な効果です。やはり個々がスキルアップして効率よく働けば仕事以外にも時間を回すことができ、結果的に家族や趣味などに時間を費やせるというわけです。

さきに述べた、働き方改革を包括するプロジェクト名の「WiL-BE」のWiLは、「Work in Life(ワークインライフ)」の頭文字です。ワークとライフという2つの要素を同列に捉えるのではなくて、「さまざまな要素からなるライフ(人生)があって、その中のひとつとしてワーク(仕事)がある」という考え方です。

つまり、ライフを構成する要素はワークだけではなく、ファミリーであったりホビーであったり…。そういった環境に従業員がいられるためにフォローしていこうという思いから、WiL-BEという名前が付けられました。

Work in Lifeというのは、どのような人生を過ごしたいかを自分で描くのが重要ですので、自律的にキャリアをデザインしていく必要があります。生産性の向上というのは、各々が自身のキャリアを考慮して自律的に働き、その上で成し遂げられるものですよね。「WiL-BE」はそういったところを目指しています。

──ありがとうございました。