「御堀直嗣」の記事

御堀直嗣

御堀直嗣(みほりなおつぐ)

モータージャーナリスト

1955年東京東京都出身。玉川大学工学部機械工学科を卒業後、「FL500」「FJ1600」などのレースに参戦し、モータージャーナリストに。自動車の技術面から社会との関わりまで、幅広く執筆している。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員。電気自動車の普及を考える市民団体「日本EVクラブ」副代表を務める。著書に「スバル デザイン」「マツダスカイアクティブエンジンの開発」など。
2019年秋に日本上陸! ボルボ「S60」が再考させるセダンの魅力

2019年秋に日本上陸! ボルボ「S60」が再考させるセダンの魅力

2019.02.19

ボルボが2019年秋発売予定の新型「S60」をメディアに公開

「ポールスターエンジニアード」の特徴とは?

「S60」が持つドイツ車にも日本車にもない魅力

ボルボ・カー・ジャパンは、今秋の発売を予定するセダン「S60」を「スニーク・プレビュー」(sneak preview、事前内覧)と称してメディアに公開した。

ボルボ・カー・ジャパンが2019年秋に発売する予定のセダン「S60」

走りへの情熱と親しみやすさが同居するデザイン

展示車両は米国仕様の左ハンドルで、「T8 ポールスターエンジニアード」と呼ばれる最上級車種である。黒の車体色が全体を精悍に見せ、室内も走行性能の高さを示すようなグレー基調の色遣いで、ポールスターであることを表す黄色のシートベルトが走りへの情熱を伝える。

北極星をモチーフとするポールスターのロゴが入っていた展示車(テールランプのところ)。1996年にモータースポーツチームとして設立されたポールスターはボルボの傘下に入り、現在は同社のハイパフォーマンスモデルを手掛けるブランドとなっている
シックなグレー基調の室内に黄色のシートベルトが映える

少しクルマから離れて眺めると、タイヤに組み込まれたホイールの内側に見えるブレーキキャリパーが金色に塗装されている。広報の説明によれば、「ボルボがキャリパーを塗装するのは今回が初めて」とのことだ。

ボルボがキャリパーを塗装するのは今回が初めてとのこと

内外装とも、北欧生まれであるボルボを印象づけてきた、心を和ませるような明るい色づかいとは趣が異なる。とはいえ、例えばドイツ車のスポーティセダンなどと比べると、“いかにも”といった感じというか、高性能であるが故の威圧感はなく、ごく普通に運転を楽しみたい人に対し、当たり前に使えそうと感じさせる親しみやすさをたたえた造形でもある。

「S60」の価格は現時点で不明。サイズの詳細も非公表とのことだが、全長、全幅、全高は同社のステーションワゴン「V60」と大体同じくらいになるらしい

“セダン離れ”の影響は?

近年のボルボ人気を支えているのは、「XC90」や「XC60」、そして、人気沸騰中の「XC40」といったSUVだ。ちなみに、XC40は今なお、注文から納車までに約9カ月を要する人気ぶりである。しかし、ボルボといえば、ステーションワゴン(エステート)の印象が強い人は多いだろう。1970年代のボルボ「240」の時代から親しまれてきた車種だ。

ステーションワゴンの歴史を振り返ると、幅広い人気を得た車種として、1989年に発売となったスバル「レガシィ ツーリングワゴン」が思い浮かぶ。このほかにもステーションワゴンは存在していたが、それらはワゴンとしての実用性を重視する一部の消費者に選ばれる存在であった。国内のステーションワゴンの発端は、商用バンを基にした例もあり、ステーションワゴンを「バン」と呼ぶ人も当時は根強くいた。

輸入車では、メルセデス・ベンツ「Cクラス」やBMW「3シリーズ」、あるいはアウディ「A4」などがステーションワゴンを販売し、こちらも人気を集めてきた。

メルセデス・ベンツ「Cクラス」最新型のステーションワゴン

1つの流行としてステーションワゴンが増える一方で、4ドアセダンの人気は下がっている。それは日本のみならず、世界的な傾向でもある。とはいえ、欧米市場における4ドアセダンの売れ行きは、日本に比べ堅調なのが実態だ。

ステーションワゴンの印象が強いボルボではあるが、今も旧車愛好家の間で人気のある1950年代のボルボ「アマゾン」といえば、4ドアセダンの姿を思い浮かべる人が多いだろう。エステートの人気を高めた「240」の時代にも、安全性の高いクルマとしてセダンを選ぶ消費者があった。その後のボルボは、ステーションワゴンの車名に「V」(ヴァ―サティリティ=多様性の意味)、セダンの車名に「S」を付け、車格を示す数字の前にアルファベットを置く命名を行っている。セダンも永年、作り続けてきたのである。

そんなボルボが今年、4ドアセダンの魅力を改めて発信する1台として日本に導入するのが「S60」だ。

「S60」の「S」はセダンの「S」だ

4ドアセダンの魅力を再考

ここで、4ドアセダンの魅力とは何かを考えてみたい。まず、大人4人が快適に移動できることに加え、高さのある荷物は別としても、荷室容量が十分に確保されているので、かなりの荷物が積み込める。スポーティなクーペやスポーツカーは乗車人数に限りがあったり、後席が窮屈だったりするし、荷物がほとんど積めない車種もある。4ドアセダンなら実用性が高い上、運転した際の操縦安定性も優れた水準にある。そうした総合力が、4ドアセダンの好まれる理由の1つである。

一方、ステーションワゴンは荷室の天井が高いままなので、後輪側の重心が高くなる。クルマの走行安定性は後輪が担っているので、重心が高ければ不安定要素を抱えることになる。ましてやSUVともなれば、車体全体の重心が高くなり、操縦安定性の確保と乗り心地の両立が難しくなる。

しかし、4ドアセダンは荷室が低いので、後輪による走行安定性を確保しやすく、前輪が操舵された際の俊敏な動きと、安心を与える安定性の両立が叶えられる。つまり、4ドアセダンは安心かつ運転の楽しいクルマに仕立てることができるのだ。

サーキットを走行したり、山間の屈曲路を楽しんだりするほど運転に執着しないが、日常の運転や高速道路を使った遠出などで、快くクルマを走らせたいと思う人にとって、4ドアセダンは最高の選択肢となるのである。

十分な荷室容量を確保できる上、クルマを走らせる喜びも感じられるのが4ドアセダンの魅力だ

では、SUVやステーションワゴンに人気の集まる日本市場において、4ドアセダンの売れ行きはどうなのだろうか。

日本車では昨年、トヨタ自動車「クラウン」がフルモデルチェンジした。日本自動車販売協会連合会によれば、2018年の乗用車ブランド通称名別順位で、クラウンは年間5万台以上を販売し、19位という成績をおさめている。ベスト10入りこそしていないが、クラウンより上位の車種は、5ナンバー車か5ナンバーに近い小型の3ナンバー車ばかりで、ほかにセダンの名はない。特異なのは、15位に3ナンバーミニバンの「アルファード」がいる程度だ。50位以内に入ったセダンとしては、このほかに「カムリ」「プレミオ」の名がある。「シビック」の中にもセダンは含まれるだろう。

こう見ると、確かに販売台数で上位にランクインする4ドアセダンの数は少ない。一方で、クラウンの強さが目立っている。

では、輸入車の状況はどうだろうか。2018年に最も販売台数の多かったメルセデス・ベンツのうち、最量販車種だったのは「Cクラス」で、その内訳を見るとセダンとステーションワゴンの比率は大体2:1である。またBMWも、最量販車種である「3シリーズ」におけるセダンとステーションワゴンの内訳は7:3であるとのことだ。どちらも、販売の60~70%ほどは4ドアセダンということになる。Cクラスも3シリーズも、S60の競合車種と目されるクルマだ。

新車販売の全体的な傾向としては“4ドアセダン離れ”とでもいうべき動向が見られるが、その中身を見ていくと、今なお4ドアセダンを愛用し続ける消費者が少なからずいることが分かってくる。そうした中、ボルボはS60を市場投入し、改めて4ドアセダンの販売に力を入れようとしている。

近年はSUVの魅力で人気を高めているボルボ。セダンでも多くの顧客に訴求できるか

まだ試乗することは叶わないが、S60米国仕様の内覧会では、クラウンでもなくドイツ車でもない、独自の存在感や魅力が伝わってきた。また、今回の「T8 ポールスターエンジニアード」に見られるように、プラグインハイブリッド車(PHEV)が車種構成に含まれることも分かった。CクラスとクラウンにPHEVの設定はなく、3シリーズにPHEVがあったのは前型までだ。

4ドアセダンが好きで、環境と走行性能を含めた電動化時代を意識する人にとって、さらには巷にあふれるドイツ車とは違った趣を求める人にとって、S60は注目すべき4ドアセダンの1台となるに違いない。

自動車業界は「100年に1度」の大変革、100年企業のヤナセはどう向き合うのか

自動車業界は「100年に1度」の大変革、100年企業のヤナセはどう向き合うのか

2019.02.13

ヤナセの吉田多孝社長にインタビュー

新車販売中心からバリューチェーンでの収益創出へ

クルマは「所有」から「利用」へ、輸入車販売に影響は

自動車業界は今、「CASE」と「MaaS」をキーワードとする激変の只中にある。電動化や自動化などでクルマそのものの在り方が変わりつつあり、人とクルマの付き合い方が「所有」から「利用」へと移行するとの未来予想は、いまや規定路線であるかのように語られている。「100年に1度」ともいわれる大変革に、輸入車販売の老舗であり100年を超える歴史を持つヤナセはどう立ち向かうのか。吉田多孝(よしだ・かずたか)社長に話を聞いた。

東京・芝浦のヤナセ本社。三井物産の機械部にいた梁瀬長太郎(やなせ・ちょうたろう)氏が独立し、「梁瀬商会」(後のヤナセ)を設立したのは1915年(大正4年)のことだ

吉田氏がヤナセの第8代社長に就任したのは2018年6月のことだ。伊藤忠商事出身の社長は、現会長の井出健義(いで・たけよし)氏に続き2人目となる。伊藤忠はヤナセに66%を出資する親会社だ。

吉田氏は、伊藤忠への入社後、すぐに自動車部門に配属となった。その後は海外勤務などを経験しながら、執行役員として自動車・建機部門長、機械カンパニープレジデントなどを歴任した。その過程で、ヤナセの社外取締役を務めたこともある。

自動車関連の仕事で長い経験を持つ吉田氏だが、ヤナセの社長として直面するのは、自動車業界に押し寄せる大変革の荒波だ。この先、どのような舵取りを見せてくれるのか。ここからはインタビューの模様をお伝えしたい。

ヤナセの吉田社長

ヤナセの顧客像に変化の兆し

――ヤナセの社長に就任することをどのようにお感じになりましたか?

吉田社長:足掛け38年伊藤忠に在籍し、振り出しが自動車で、2003年に伊藤忠がヤナセに出資した後の2010年には、自動車・建機の部門長を担当しました。社外取締役を数年経験するなど、ヤナセとは浅からぬ縁を感じています。伊藤忠でのサラリーマン生活を卒業するにあたり、縁のある会社で仕事をさせていただけるよい機会と感謝しています。

伊藤忠時代に自動車部門を経験したといっても、ビジネスはB to B(企業間取引)が多かった。ヤナセはB to C(企業対消費者取引)の企業です。伊藤忠でもいくらかの経験はありますが、自然体でいけたらと思います。その中で、何かヤナセに深く根付いたものとは違う、新しい空気や風も送り込めるかもしれません。

ヤナセ本社ビルの1階にあるメルセデス・ベンツのショールーム

――ヤナセの社長に就任して8カ月ほどですが、社内に入っての実感はいかがですか?

吉田社長:ヤナセには、お客様第一主義を深く掘り下げてきた歴史と伝統があります。一方で、消費者の志向や年齢層は時代とともに変化しているので、これまでの伝統と、これからの変革をどう融合していくかを考えています。永年お付き合いいただいている既納客の中にも、「セールスには家まで来てもらわなくてもいい」という感覚が出てきているかもしれません。ましてネットの時代では、事前に情報を収集し、店へは実車の確認に訪れるだけという買い方も増えてきています。

例えば、メルセデス・ベンツをお求めになるお客様に、以前はある一定の顧客像がありましたが、今日では、メーカー側もより若いお客様に向けた商品を供給するようになり、販売の仕方や、お客様との接し方にも多様性が求められるようになっています。

ヤナセ本社ビルの1階にあるアウディのショールーム

――ヤナセは2010年に策定した中長期ビジョンで「筋肉質で収益性の高い企業への体質転換」を掲げました。その成果についてはどのように評価していますか?

吉田社長:バリューチェーンのなかで、収益の「面積」を広げようとしていますが、その意識は定着したと思っています。

かつては「いいものだけを世界から」のスローガンのもと、新車販売を中心としたビジネスを展開していましたが、一方で「売ったら終わり」といったような発想もありました。しかし、20年ほど前からは、クルマを下取りして中古車を販売し、さらにサービスにもつなげるビジネスを行うことで、お客様との関係を強化する意識が芽生えてきました。

販売店において大切なのは、新車販売以外でどれだけ固定費をまかなえるかということです。そこをもっと追求できれば、ヤナセには成長の余力があります。

自動車ディーラーは新車販売の成績が注目されがちだが、中古車販売、保守を行う点検整備や修理(サービス)、自動車損害保険の取り扱いなどが、実質的には販売店を支える事業であるともいわれている。クルマを売るという「点」で収益をあげることにとどまらず、バリューチェーン全体の「面」で稼ぐという姿勢が重要と吉田社長は語る

クルマは「所有」から「利用」へ、ヤナセの対応は?

――「所有」するものだったクルマは、「共有」して「利用」するものへと変わってきたともいわれています。この点については、どう対処していきますか?

吉田社長:「所有から利用へ」という動きは、常に考えています。一方で、登録車の国内販売台数が約300万台に落ち着いた状況の中、輸入車はその10%前後の30万台規模で、販売自体は伸びています。輸入車が伸びている理由は、国産車と違う味があるなど、周りと違うものを求めるお客様に支えられていることです。その傾向は、例えばドイツ車だけでなく、フランス車も増えているといったところにも表れています。

日本の輸入車市場は堅調。ヤナセの販売台数は2017年度実績で新車3万4,305台、中古車4万3,340台だ。2017年度までの5年間の推移を見ると、新車販売は微減している一方で、中古車販売は右肩上がりで増えている

吉田社長:ほかとは違うものが欲しいという嗜好に応える輸入車は、国産車に比べると、必要な時だけ「利用」するというより、「所有」したいと考えるお客様の割合がまだまだ高いだろうと考えています。ヤナセが扱うプレミアムブランドのクルマは、すぐに「利用」中心の需要には移行しません。今の時点で大騒ぎして混乱する必要はないという思いがあります。

しかしながら、「所有から利用へ」の動きを想定した手を打つ必要はあります。例えば販売店は、「利用」の際のコネクティングポイント(接点)になる可能性があるのではないでしょうか。販売店は立地がよく、駐車する場所があり、整備や修理といったサービスを提供できます。個人のお客様同士がクルマを貸し借りする拠点になるかもしれません。この先、販売店をどのように活用できるかは考えています。

ヤナセ本社ビルの道路を挟んで向かい側にあるフォルクスワーゲンのショールーム

――ヤナセは今、“クルマはつくらない。クルマのある人生をつくっている。”というコーポレートスローガンを掲げています。

吉田社長:クルマのある豊かな生活を提供することに、今後も変わりはないと思います。例えば2015年には「ヤナセ プレミアムカー レンタル」をトライアル事業として北海道で開始し、2017年には47都道府県で本格稼働しました。

2017年には福祉車両分野に参入しました。2018年には『ヤナセ クラシックカー センター』を開設し、幅広い年代の旧車の修復と復元を始めています。日本でもクラシックカー文化が根付くといいと思っています。

フォルクスワーゲンのショールームには、輸入第1号車「ビートル」が展示されていた

――今秋の消費増税を機に、自動車関連税制が改訂される動きがあります。税制改訂の内容はまだ固まっていませんが、ヤナセにとってどのような影響があると見ていますか?

吉田社長:前回は5%が8%に上がったわけですが、今回は8%が10%へということですから、消費者心理がどのように働くかについては、見通せないところがあります。とはいえ、自動車税が下がれば、クルマを所有する際の税負担が軽減されるので、所有しやすくなるという意味で追い風にはなりそうです。いずれにしても、今回の改訂が負の要因になることはないはずなので、期待しています。

――2019年年頭の挨拶で吉田社長は、社員の皆さんにスキルアップと社内コミュニケーションの活性化を求めると同時に、社内ではITを使った業務の効率化を進めるとの考えを表明されています。その真意は。

吉田社長:ヤナセでは、従業員の年齢構成がややいびつになっているところがあります。従来、ヤナセは海外自動車メーカーから輸入販売権を取得し、正規販売を行ってきましたが、各メーカーが日本法人を設立したことで輸入権を移行し、販売専門となりました。その際に経営が厳しくなり、新入社員の採用を絞ったことがあり、年齢構成に差が開いたのです。

今は、30代前半から40代前半の“働き盛り”といえる人数が少なくなっています。一般的に、若い社員は少し年上の先輩から仕事を教わることが多いはずですが、先輩が10~15歳も年上ということが多く、従来よりコミュニケーションが減っている拠点もあります。

ヤナセ本社ビルから程近い場所にあるGMのショールーム

吉田社長:一方で、仕事の効率化の面ではITを導入し、タブレットを使った販売も始めていますが、ベテランになると、そういった機器の扱いに不慣れな部分もあります。また、ヤナセは独自でIT化に取り組みましたが、今日では自動車メーカーのシステムと統合することによるシステムの効率化も求められています。こういったIT化をさらに進め、業務の無駄を省くことができれば、空いた時間の使い方を工夫することで、働き方改革につなげることも可能です。

伝統に裏打ちされたヤナセのよさは、上意下達での推進力にありましたが、今後は、上意を受け取った若手から「こういうのはどうですか」とか「こうすればできます」といった話が出てくるようなことも必要でしょう。年齢構成に大きな差がある社員構成であれば、なおのことです。ヤナセのDNAを継承していくという観点からも、相互の意思疎通はより密接であることが大切だと思っています。そして、もっと能率的に働ける人材が、まだたくさんいるとも感じています。

創業から100周年(2015年)までのヤナセの歴史を記したパネル。同社の輸入車販売は「キャデラック」と「ビュイック」からスタートした

――2019年は社長就任から2年目です。抱負は。

吉田社長:バリューチェーンの追求を、もっとやっていきたいと思います。新車以外のところを、どう深掘りしていけるか。そこを具現化していかないと、収益は伸びていかないでしょう。というのも、ヤナセグループには約5,000人の社員(2019年1月現在)と約200の販売店、また100~150のサービス拠点網があり、すべてが国内の事業です。日本というホームグラウンドでしっかり収益を確保できる分野を作っていかなければなりません。バリューチェーンを耕し、整備していきます。

梁瀬次郎さん(梁瀬長太郎氏の次男でヤナセの第2代社長)が作られたヤナセのステッカー(黄色に青字で「YANASE」と書かれたもの)は我々の誇りであり、ヤナセの象徴です。そのステッカーを見たり、社名を聞いたりすれば、多くの人が輸入車販売の会社だと当社のことを認識してくれます。社名を聞いて何をやっているか分かる企業は、実はそんなに多くありません。そういう会社に誇りを持って働くことで、もう一段、強くなれる社員もいます。社員には「自分たちはやれるのだ、ここまでやったんだ」と感じてもらいたい。2019年は結果を出せる1年にしたいと思っています。

社名を聞いただけで事業内容が思い浮かぶ企業は案外少ないと吉田社長は語る

新車累計販売200万台を達成したヤナセのこれから

ヤナセは2018年に創業以来の新車累計販売台数200万台を達成した。これはつまり、輸入乗用車の4台に1台がヤナセのステッカーを貼っているということになる。

クルマの輸入販売権を持ち、「いいものだけを世界から」というビジネスを展開してきたヤナセは今、「クルマはつくらない。クルマのある人生をつくっている。」と語り、バリューチェーン全体での収益創出を図りつつ、次世代に向けた準備を進める企業に変貌を遂げている。ただ、自動車を取り巻く環境に変化はあっても、クルマのある豊かな人生を開拓していく同社の姿勢に変わりはないだろう。

環境問題だけではない! 電気自動車の普及を急ぐべき理由とは?

環境問題だけではない! 電気自動車の普及を急ぐべき理由とは?

2019.01.04

2019年は中国で「NEV規制」開始、世界で加速するEVシフト

高まる市販EVの重要性、日本メーカーの本気度はいまいち?

環境対策だけではないEV普及の恩恵

2019年は中国で「NEV規制」が導入される。「NEV」とは「ニュー・エナジー・ヴィークル」の意。この規制は、米国のカリフォルニア州が主導してきた「ZEV規制」を習ったものだ。

「ZEV」が「ゼロ・エミッション・ヴィークル」であることからも分かる通り、これらの規制は「排ガスゼロ」(ゼロ・エミッション)のクルマを積極導入しようとする政策であり、強制力も伴う。ZEVと規定されるのは電気自動車(EV)、燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHV)の3車種で、米国では2018年から本格的な規制が始まっている。対象車種はNEVも同じだ。

世界一の新車販売台数を誇る「NEV規制」が始まれば、EVの普及も加速しそうだ(画像はジャガーのEV「I-PACE」)

中国市場攻略にEVは不可欠、日本メーカーは消極的?

ZEV規制は自動車メーカーに対し、販売するクルマの一定程度をZEVにすることを求める。2018年はその比率が4.5%だったが、それが2019年には7%、2020年には9.5%となり、2024年には19.5%と20%近くに拡大する。それに対し中国のNEV規制は、2019年から10%という比率を設定し、2020年には12%に強化する。中国の並々ならぬ意欲が感じられる数値だ。

さらにZEV規制では、年を追うごとにPHVの比率が減っていくことになっている。というのも、PHVはエンジンを搭載していて、長距離移動やバッテリーへの充電に際してはエンジンを使うので、排ガスを出してしまうためだ。それでも、PHVがZEVに含まれるのは、家庭などで充電をきちんと行うことにより、日常的にはバッテリーとモーターのみで走行することが可能だからである。

このような事情を受けてか、先日の「広州モーターショー」では、中国の国内自動車メーカーが相次いでEVを発表した。それと同時に、日本のホンダも同社初となる市販EVを公開している。

ホンダが2018年11月の「広州モーターショー」で世界初公開した中国専用EV「理念 VE-1」(画像提供:本田技研工業)

ホンダはこれまでも「フィット EV」などを限定的にリース販売してきたが、日本では見かける機会が少なかった。また、PHVの「クラリティPHEV」は発売したものの、EV版の「クラリティ エレクトリック」は国内販売を予定していないという。クラリティPHEVでさえ、販売計画は年間わずか1,000台という消極的な内容だ。しかし、中国では小型車クラスのEVを公開したのである。この点からも、EVが中国市場において戦略的商品の一翼を担う存在になろうとしていることがうかがえる。

ホンダの「クラリティPHEV」。販売計画は年間1,000台と消極的だ

一方、日本国内では、自動車メーカーのEV販売はホンダに限らず消極的な状況が続く。日本メーカーの中で、EVに積極的と見られている日産自動車や三菱自動車工業においても、車種の拡充は遅々として進まない。

また、マスメディアにおいては、相変わらず「1回の充電で走行可能な距離」に対して懸念を表明する報道が多く、それを飛躍的に伸ばすと期待される固体電池などの次世代バッテリーや、短時間での急速充電が可能な技術への期待をうかがわせる記事が目立つ。それらに対する期待は分かるが、こういった報道が、現状のEVの性能を正しく伝えきれているとは思えない。

EV化で高まるクルマの予防安全性能

EVとセットになる話題は、環境やエネルギー問題などが多い印象だが、他にも語るべきことはある。それは、EVの安全性だ。改めてEVに乗ってみると、この点においても、EVにはエンジン車を超えるポテンシャルがあると思わされるのだ。

モーター走行の特徴として、EVではアクセルペダルを戻すとモーターによる「回生」が働き、惰性で走るときの力を利用して発電すると同時に、エンジンブレーキが掛かったような減速が起こる。これを「回生ブレーキ」と呼ぶこともある。

その強さは制御によって調整できて、たとえば日産の「e-Pedal」(イーペダル)では、アクセルペダルの操作のみで加速、減速、停車の全てが可能となっている。これは、エンジン車では真似できない機能だ。

また、日産のハイブリッド車である「e-POWER」(イーパワー)は、EV「リーフ」の技術を応用した技術であるため、EVと同じようにイーペダルが使える。これが、「ノート」や「セレナ」に採用され評判になっている。

日産のEV「リーフ」

モーターによる回生をいかしたワンペダルでの加減速は、アクセルペダルを戻すと同時に回生による減速が始まるため、アクセルからブレーキへのペダル踏み替えを行う場合、「空走時間」をなくすことができる。

空走時間とは、アクセルからブレーキへとペダルを踏み替える際、速度が落ちずにそのまま前へ進んでしまう時間をいう。一般的には0.75秒といわれているが、1秒以上掛かっているとの見方もある。

仮に空走時間が0.75秒だとしても、徐行速度といえる時速10キロで走っていてさえ、ペダルを踏み替える間に2m強はクルマが移動してしまう計算になる。万一の緊急事態には、例え数メートルの空走でも結果を左右しかねない。少しでも早く減速を始められるかどうかが、衝突するかしないかの分かれ目ともなるのだ。そういう意味で、EV化はクルマの予防安全性能を高めるかもしれない。

日産の「セレナ e-POWER」

日本では経済産業省や国土交通省が「セーフティ・サポートカー」と呼んで自動ブレーキ搭載車の普及を後押ししているが、この施策とEVの親和性も高そうだ。カメラやセンサーを使っていても、衝突の危険性を認識してからブレーキを作動させるまでにはコンマ何秒かの時間が必要になる。その間に回生が働けば、より安全なクルマができあがるはずだ。

ZEV規制やNEV規制には対応しても、電動化自体には否定的な自動車メーカーがまだまだ多いのが実際のところかもしれないが、安全という視点に立てば、一刻も早いEVの市場導入が求められるのではないだろうか。