「岡安学」の記事

岡安学

岡安学(おかやすまなぶ)

フリーランス・ライター

ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランス・ライターに。ゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、かかわった書籍数は50冊以上。現在は、デジタル機器を中心にWebや雑誌、Mookなどで活躍中。ゲームを中心としたアニメやマンガ、映画なども守備範囲。近著に『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。 Twitterアカウント:@digiyas
チームの環境はどう変わったか? 代表者4人が語る「eスポーツ2018-19」

チームの環境はどう変わったか? 代表者4人が語る「eスポーツ2018-19」

2019.05.17

2018年に大きく飛躍したeスポーツ業界

選手や大会だけでなく「eスポーツチーム」にも影響を及ぼした

eスポーツチーム運営に携わる4人に集まっていただき座談会を実施

チームに起きた変化や現在の環境について話し合ってもらった

2018年に大きく飛躍したeスポーツ業界。選手や大会運営だけでなく、プロ選手の所属する「eスポーツチーム」にも影響があったようだ。そこで、eスポーツチームを運営する4名に、チームの変化やeスポーツの現状、これからの展望について語ってもらった。

今回、集まっていただいたのは「よしもとゲーミング」「SCARZ」「SunSister」「DetonatioN Gaming」の4チームの代表者だ。

流入する資本。eスポーツのマネーゲーム化を懸念

――昨年からeスポーツを取り巻く環境が大きく変わったと思います。みなさんのチームにはどのような変化がありましたか? 昨年その波に飛び込んだよしもとクリエイティブエージェンシーさんは、eスポーツへの参入意図について教えてください。

よしもとスポーツ 代表取締役社長 星久幸氏(以下、星):巷で言われているのと同様に、弊社にとっても2018年は“eスポーツ元年”でした。よしもとクリエイティブエージェンシーはエンターテインメントの総合商社として、タレントに仕事を持ってくることがメインの会社です。内容は時代によって変化しますが、eスポーツはまさにこれからタレントの活躍の場の1つとなると考えたため、参入することにしました。

ただ、「よしもとゲーミング」として、eスポーツ事業に乗り出したはいいものの、右も左もわからない状態だったので、まずはすでにeスポーツチームを運営しているところにパートナーとして参加しました。プロeスポーツチームの「よしもとLibalent」がそうですね。

また、よしもとはイベント運営も行っている会社なので、興行としてのeスポーツにも注目しています。2019年からは『リーグ・オブ・レジェンド(LoL)』の国内リーグの「League of Legends Japan League(LJL)」の運営に参加しています。

よしもとスポーツ 代表取締役社長 星久幸氏

XENOZ 代表取締役CEO・SCARZ オーナー 友利洋一氏(以下、友利):これまでは、チームのスポンサーを探しに行った際、いつも「eスポーツとは」という説明からスタートしていましたが、昨年あたりからその説明が不要になりました。

また、認知度が高まっているので、プロゲーマーを目指す人も確実に増えてきていますね。ちょっと前だとYouTuberの影響などもあり、ゲームで稼ぐというとストリーマーを目指す人が多かったのですが、最近は選手志望の人が増えている印象です。20歳以下の選手も増えてきたのではないでしょうか。なので、チームとしては、資金も選手も厚みが出てきました。

XENOZ 代表取締役CEO・SCARZ オーナー 友利洋一氏

SST-GAMES 代表社員CEO・SunSister オーナー 太田桂氏(以下、太田):チーム設立当初は、ゲーム好きが集まる、いわばコミュニティの延長のようなものでした。なので、ゲームで日本一になりたい、世界に行きたいという気持ちは強かったのですが、「お金を稼ごう」とはあまり考えていませんでしたね。しかし、次第に企業から協賛の話をいただくようになり、「ビジネスとしてしっかりやっていかなければならない」と思うようになりました。

企業側も、資金提供されるようになってからは、eスポーツについて勉強されるので、選手やチームの状態なども細かく見られます。そのため、いまは「スポンサーされるチーム」と「されないチーム」がふるいにかけられているでしょう。協賛の数も増え、ご提供いただく資金も増えるなかで、昔ほど緩い感じではなくなりました。業態としても、これまでのようなPCメーカーやPC周辺機器メーカーだけでなく、PC関連以外の企業の参入も増えています。

あと、eスポーツが普及して感じる変化ではもう1つ、ファンの存在が挙げられると思います。最近では、試合後に選手を出待ちするファンを見かけるようになりました。プロゲーマーがアイドル化してきたなと思いますね。

SST-GAMES 代表社員CEO・SunSister オーナー 太田桂氏

Sun-Gence 代表取締役社長 DetonatioN Gaming オーナー 梅崎伸幸氏(以下、梅崎):最近は、Twitterのアカウントをスポンサーさんに見張られている気がします(笑)。打ち合わせのときに「梅崎さんこの前~していましたよね」と言われて、「どうして知っているんですか?」と聞いたら「Twitterで見ました」って。選手も私も下手な発言はできなくなったと感じましたね。

チームとしては、やはり2018年に大きく変わりました。以前の年と比較すると、グッズ販売などの売上が2倍以上も違うんです。数千万円クラスですね。イベントだと選手のサインがもらえることもあり、現場でグッズを購入する人が増えている印象です。

選手の給料も上がってますし、確実に市場価値は高まっているでしょう。ただ、主要タイトルではマネーゲームが始まっている感じがして、それがちょっと気がかりですね。

Sun-Gence 代表取締役社長 DetonatioN Gaming オーナー 梅崎伸幸氏

友利:大資本が入ってくるということですよね。それはまずいことなんですか?

梅崎:たとえば、中国資本が入ってきて、選手を多額の資金で集め出すと、市場はあっという間に吹き飛んでしまうでしょう。「選手1人に3000万円払います」「予算は10億あります」って言われたら、DetonatioNなんか消し飛んでしまいますよ。リアルスポーツのプロチームもeスポーツに参戦していますし、経営基盤がしっかりしているところと勝負して勝てるのかなという不安はありますね。

太田:ちょうどこの前、友利さんと話をしていたときに「数年後には、SunSisterないから」と言ったのを覚えています。「なんでそんなこと言うんですか」って言われましたけど、バックに銀行のような大資本が付いている企業と札束ゲームをしても絶対に勝てないじゃないですか。「SunSister、強くなったよね。君、いくらもらっているの? そう、じゃあ月100万出すよ」って言われたら、太刀打ちできません。

星:eスポーツの運営ノウハウがないところは、チームごと買うケースも出てくるでしょうね。

梅崎:そうですね。チーム売却まで行かず、資金力のあるところとパートナーを組んでいければいいのですが。

選手の意識は“ファンの存在”で変わる

――TwitterなどのSNSについて話が出ましたが、選手は特に注目されていると思います。そのような状況に慣れていない選手も多いと思いますが、チームとしてはどう対応していますか。また、ファン対応についてもお聞かせください。

星:うちはマネジメントの会社なので、コンプライアンスに関してはしっかりと時間をとって教育していますね。弁護士や警察OBの方に来ていただき、一人ひとりに説明します。

メディア対応についてもレクリエーションを実施しています。全員に行き渡っているとはまだ言えませんが、eスポーツ選手でも目立つ存在のジョビンには特にたたき込んでいますよ。

リーグ運営という側面からほかのチームを見ていると、そのようなことができているチームとできていないチームがはっきりとわかりますね。

友利:ファンサービスは力を入れていきたいと考えています。eスポーツの場合、会場に行けば選手に会えるという「身近さ」も魅力の1つでしょう。

実はSCARZには、「元アイドル」をしていた選手も在籍しているんですが、アイドル時代よりも、eスポーツ選手になった今のほうがファンとの距離感が近くなって、彼自身も喜んでいますね。最初はeスポーツに興味がなかった彼のファンにも、eスポーツを身近に感じてもらえるようになりました。

太田:選手の教育自体は、それこそチームの発足時からしっかり行っています。ただ、なかなか浸透するまでに時間がかかりますね。選手にコンプライアンスの大事さを説明すると、その場では素直に話を聞きますし、「わかりました」って言ってくれて。やんちゃなタイプの人は少ないのですが、それでも、トラブルを起こしてしまうことがあるんです。

そのときに「SunSister、ちゃんと教育しろよ」って言われるんですが、実際は丁寧にやっているんです。たぶん、どのチームも教育はしていると思いますが、やらかす人はやらかしてしまいますね。

ただ、ファンが増えて「自分が注目されている」と認識できれば、そこで態度が一変することが多いですね。「これは下手なことはできないな」と思うようです。コンプライアンスを説明するよりも、ファンに見られているという意識を持つほうが、大事なのかもしれません。

梅崎:チームのメンバーと焼き鳥屋さんに行ったとき、店員さんからうちのチームのファンだって声をかけていただいたことがありました。すぐに「下手なこと言うなよ」選手たちに伝えましたね(笑)。太田さんがおっしゃったように、「いつどこで誰が見ているかわからない」ことを実感しました。

DetonatioNは大所帯なので、教育自体はマネージャーに任せています。なので、その教育者、教育内容を間違ってしまうと、選手が勘違いしてしまうことはありますね。僕らの考えていることをマネージャーに伝え、それをマネージャーから選手たちにきっちり伝えられる座組を作っていかないといけないと考えています。

太田:ファン対応については、定期的にファンミーティングを実施しています。実施し始めた頃は「僕にファンなんていません」とか「そんなことやって意味あるんですか」とか、ファンとの触れ合いを怖がる選手もいましたが、実際にファンミーティングをやってみると、思いのほか人が集まって「いつも動画見ています」「試合に行きました」って言ってもらえるんです。そうすると、うれしくなるんでしょうね。ファンの存在を実感して、イベントへの参加も楽しくなってきて、ファンから見られていることに対してもポジティブに感じられるようになったはずです。

梅崎:DetonatioNでは以前、ファンが離れぎみになってしまったことがあったんです。そのときに私も含めて意識改革を行って、今まで以上にファンを大事にするようにしました。

選手も昨年の「Worlds」で、わざわざ韓国まで応援に来てくださったファンがいたことがすごくうれしかったようで、意識が変わったように思います。

友利:教育という意味でいうと、有名になって、成績も残せるようになると、選手が迷子になってしまうことがありますよね。チームではなく自分の力で勝っているとか、自分だけに人気が集中しているとか、イベントのオファーは自分に来ているとか。もちろん、選手個人の強さもあると思いますが、チームゲームの場合は1人では勝てません。目立つプレイの裏には支えてるチームメイトがいます。そうなるとチームを離れても、オファーがもらえるのではないかと思ってしまうんです。

梅崎:たしかにあります。でも実際は違うんですよね。よしもとさんは、特にそのあたり詳しいのではないでしょうか。多くの芸人さんが在籍していて、よしもとの看板で仕事がくることも多いわけですから。

星:永遠の課題ですね。オファーをいただくのは、「芸人の人気」か「よしもとの存在」か。私はどちらもあると思います。もし、芸人の力だったとしても、そこまで育てたのはよしもとですし、eスポーツであればチームなわけです。

友利:実際にチームを離れてから、チームの人気に支えられていたと気づくこともあるようです。もちろん、チームの人気は個々の選手の人気あってのこと。あと、チームは強いことで人気が出るのですが、強すぎてしまうのも弊害はありますね。

星:リアルスポーツでも一緒ですよね。1チームだけが強すぎてしまうと、試合にならないですし、実は集客もトータルでは減ってしまうんですよね。NBAなどのアメリカのスポーツリーグでは、各チームが選手に支払える給料の総額に上限を設けて、戦力のバランスを取っていますが、eスポーツでは、まだそういうレギュレーションがありません。勝つことで集客を見込めるようになったのに、勝ち続けてしまうことでお客さんが離れるというジレンマですね。「観に行かなくても、どうせ勝つんだから」って、なるんです。

梅崎:そうか! 負けるように言わなきゃ(笑)。

ドライな関係が増えた「選手」と「チーム」

――賞金やプロゲーマーという職業が話題になることも増えました。もともとゲームタイトルが好きでコミュニティからプロになった選手と、eスポーツが確立されてからプロになることを目的に始めた選手では、ゲームに対する向かい方は違うのでしょうか。

太田:特に違いはないと思います。チームのなかには、ゲームを楽しみたいと思っている人もいれば、トップを目指したいと取り組んでいる人もいます。それでも、ゲームや大会への熱量はそんなに変わらないでしょう。ただ、結果が出たときに、以前の選手は「よっしゃー、勝ったー」で終わっていたところ、今では「よっしゃー、勝ったー。結果出したからお金ください」ってなるだけだと思います。

梅崎:昔からいる人はお金を求めないことが多いですね。「強さ」や「世界での活躍」が先にきます。今の選手はお金をもらえるのが当たり前という印象です。もちろん、お金の話は重要なんですけど。面接のひと言めから「いくら出します?」はちょっと……。

友利:うちも似たような感じですね。強い選手は勝つことを最重要に考えています。「勝ちたい」「結果を出したい」と頑張っている人には、こちらからサポートしたいと思うもの。そこは情の部分になってしまいますけどね。

梅崎:情は大事です。なかなか結果を出せない選手がいると「うちと契約続けるのは難しいな」とならざるを得ないのですが、本人とその話をするときに「もう少しだけ頑張らせてください!」と懇願されてしまうと「そうかぁ」って判子を押してしまうんですよね。

太田:たぶん、梅崎さんも長いことやっていらっしゃるので、どうしても選手を切らなきゃならない場面に遭遇して、涙を流しながら契約解除した経験ってあるんじゃないですか?

梅崎:そりゃありますよ! 泣きましたね。

太田:そうですよね。私も経験があります。選手と泣きながらお別れしたことがありました。できることなら契約継続したかったですし、選手もSunSisterで続けたいって思いがあったわけですから。

もちろん、今もそのようなケースはゼロではないですけど、契約に関してはわりとドライな関係が多いですね。内容に不満があったら辞めますし、こちらから切らざるを得ない場合でもあっさりと辞めていきます。

ただ、プロとしてお金をもらえることが当たり前になった時代に生まれたので、対価を求めること自体は悪ではありません。

――今年LJLは大きくレギュレーションを変え、売上が5000万円必要であったり、資本金が1000万円以上であったりと、リーグに参加できるチームの条件も変わりました。また、2部リーグを廃止し、1部リーグのチーム数を8に増やすなど、さまざまな改革を行っています。ほかのタイトルでも一定数の資本金額や売上額を満たしていないと、リーグへの参加申請ができなくなっていますが、この状況についてどう感じますか。

梅崎:LJLに関して言えば、6チーム制から8チーム制にしたのは大賛成ですね。ただ、2部制をなくしたのは早すぎたと思います。現状でも地域密着のフランチャイズ体制がまともに機能していないなかで、2部制をなくしてしまうと、東京の一極集中になりますし、これからLJLを目指そうとする若者の活躍の場が少なくなってしまいます。

リーグとしても2部との入れ替え戦があるからこそ、成績下位チームも最後まで緊張感を持って試合できるわけです。今の状態だと優勝を見込めなくなったチーム同士の試合はただの消化試合になってしまいますから、観る方もつまらなくなるのではないでしょうか。

友利:うちのチームは1部と2部を行ったり来たりしていたので、落ちたときの悔しさ、昇格したときの感動が得られなくなったのは残念ですね。

梅崎:リーグ側からすれば、資金不足が原因でチームが解散してしまうリスクを懸念して、ある程度資金力、実力のあるチームを選定していると思います。なので、2部リーグに関しては、その売上や資本金の規定を1部よりも低く設定するなどの処置で継続していただければうれしいですね。

友利:チームの売上を求めるのであれば、エコシステムも同時に作ってほしいですね。放映権を作って、チームに分配するとか。もちろんチーム自体が考える必要もありますが、さまざまな面でリーグに協力していただけるとうれしいですね。

たとえば、海外から有力選手を招聘すると、入国管理局から「厳しい」と言われることがあるんです。なぜかというと、プロリーグとしてのシステムが確立していないケースが多いためです。LJLはそこをクリアしているので、ガンガン海外の選手が入ってきています。日本の『LoL』が飛躍的に伸びたのは、韓国人選手が入ってきたことが大きいんです。「実力がはるかに上の韓国人選手がこれだけ練習しているのに、日本人選手はそれでいいのか」という雰囲気になって、日本人選手の意識が変わってきました。

選手としての実力の高さが国内のリーグのレベルを引き上げてくれるだけでなく、海外の常識、特にeスポーツ先進国の韓国のやり方が入ると、国内の選手やチームの意識改革ができるんです。Jリーグの関係者も同じことを話していましたね。

星:LJLの2部廃止は我々の決定というわけではないのですが、まず1部リーグに注力してLJL自体を広めることが目的だと思います。もっと競技人口が増えてから、2部リーグの話が再び出てくるのではないでしょうか。

梅崎:若手発掘という位置づけであれば、参加希望者によるトライアウトの「スカウティング・グラウンズ」がありますけど、狭き門のうえ、参加するのは選手単位。即席チームでのプレイを数試合観ただけで選手の実力を判断することは無理ですよ。

友利:スカウティング・グラウンズで新しい選手を獲得したとき、現存の選手の誰かを切る必要が出てきます。2部があれば、そこでの活躍次第で1部への復帰も見込めますが、現状だと1度1部を離れてしまうと、復帰は難しいでしょうね。

2019年1月に開催された「LJL 2019 SPRING SPLIT」の様子。試合会場が中野の「Redbull Gaming Sphere Tokyo」から「よしもと∞ホール」に変更された

太田:主催者側の観点から考えると、チームが安定して運営されているかどうかの担保は必要だと思います。ただ、それをされるとうちは辛いかな。まあ、レギュレーションで出られないのであれば、それは仕方ないこと。こちらはあくまでも出させていただいている立場なので。

友利:大会自体もっと増やしてもらえればうれしいですね。せめて年間スケジュールは早めに出してほしい。スポンサーさんからスケジュールを聞かれるんですけど、決まってないから言えないんです。下手すると1カ月前にならないと出ないところもあって。

太田:IPホルダーが簡単に大会を主催させてくれない点も、なんとかしてほしいところです。権利を持っているところほど何もやらず、お金も出してくれない。それでいて、大会を開こうとしても許諾が降りないのでは、タイトルが盛り上がるわけがありません。

友利:そういう点で『カウンターストライク:GO』はすごいですね。さまざまなところが開催できるので、年間700回くらい大会がありますし。選手は休むヒマがないんですけど、今の日本のように「大会がない!」という状況よりはいいのではないでしょうか。

――今後eスポーツに求めることやチームとしての目標は何でしょうか。

星:リーグ運営はもっとしっかりしたいと思っています。選手に還元できるエコシステムの構築やスタッフの育成、また、セカンドキャリアの構築なども進めていきたいですね。よしもとクリエイティブエージェンシーはスポーツ選手のセカンドキャリアを支援しているので、eスポーツ選手にも対応できると思います。

友利:日本チームが世界を取るところを見てみたいですね。そのためにも、チームとして、選手はもちろん、スタッフの育成をしていくことが重要だと思っています。フィジカルやメンタルのケアができる環境も整えていきたいですね。ファンの方々にも選手を見て喜んでいただくためにも、大会で活躍できるだけでなく、人としてしっかりとした選手を輩出していきたいと思います。

太田:せっかく多くの人にファンになっていただいたので、もっと喜んでもらいたい。見ていて、「このチームおもしろいね」って言ってもらえるようなチーム作りをしたいと考えています。ファンが増えれば、それだけチームや選手にも還元されるわけですから。チームとしては、世界中から「SunSisterすげえな」と言われるようになりたい考えています。それが一番ファンも喜んでくれると思うので。選手の意識改革をし、ファン重視で運営していきたいですね。

梅崎:今、チームの主要タイトルは『LoL』なので、昨年以上の成績を残していきたい。また、実行するまでにしばらく時間がかかりそうですが、地方に根付いたチームにしていきたいと思っています。地盤を築き、その土地のファンや地元の企業と一緒に何かやっていければいいですね。選手中心での運営するスタンスは変わりませんが、ファンのための施策もいろいろ考えていきます。ファンクラブを作ったり、グッズを増やしていったり、そんな感じですね。

――ありがとうございました!

2018年に『ストV』で世界一になったガチくんは、いま何を考える?

岡安学の「eスポーツ観戦記」 第4回

2018年に『ストV』で世界一になったガチくんは、いま何を考える?

2019.05.16

2018年にレッドブルと契約し、プロゲーマーになったガチくん選手

同年『ストV』公式世界大会「カプコンカップ2018」で優勝

2018年の振り返りや、これから目指すことなどを聞いた

「ニコニコ闘会議2018」の「闘会議グランプリ(GP)」で『ストリートファイターV AE (ストV)』部門の準優勝を皮切りに、「カプコンプロツアー2018」のアジア地域決勝大会優勝、そして『ストV』の公式世界大会「カプコンカップ2018」優勝と、破竹の勢いで2018年のeスポーツシーンを駆け抜けたガチくん選手。同年にレッドブルと契約を結んでプロゲーマーになったことも、ガチくん選手の躍進を象徴させる出来事だったと言えるだろう。

その勢いはまだまだ衰えることなく、“世界王者”として追われる立場になった2019年も、さらなる飛躍に期待したいところだ。そこで、ガチくん選手に、昨年までの振り返りと、今年の抱負を聞いてみた。

「カプコンカップ2018」で優勝をはたしたガチくん選手

プロを目指す地方在住者は、目につきやすいアピールを

――世界チャンピオン獲得おめでとうございます。2018年2月のニコニコ闘会議2018でプロライセンスを取得されましたが、その時点では獲得賞金額もなく、スポンサーも付いていない状態でした。それを考えると、まさに大躍進の1年だったのではないでしょうか。

ガチくん選手(以下、ガチくん):2018年は本当にできすぎの1年でしたね。2017年までは、出身地の広島を中心に活動をしていたのですが、東京に出てきた時点では、まだ実力不足だったと思います。

JeSUのプロライセンスについては、カプコンプロツアーのポイントをそこそこ稼げていたので選んでいただけたのかなと。ただ、まぁそこで選ばれなかったとしても、そのうち選ばれるとは思っていましたね。早いか遅いかの問題だったと思います。

――最初に賞金を獲得したのは、そのプロライセンスが発行された闘会議でのエキジビションマッチでした。準優勝でしたが、そのとき決勝の相手は板橋ザンギエフ選手でしたね。そして奇しくも、2018年12月に行われたカプコンカップの決勝も、同じく板橋ザンギエフ選手が相手。何か縁のようなものを感じますね。

ガチくん:チームで戦う国内リーグの「RAGE」でもザンギさん(板橋ザンギエフ選手)と同じチームでした。すごく縁がありますよね。2018年はザンギさんで始まってザンギさんで終わった感じです。ザンギさんが女性だったら、もう結婚しているくらいの縁ですよ(笑)。

「カプコンカップ2018」のグランドファイナル

――2年前に上京したとのことですが、そのきっかけは何だったのでしょうか。また、上京してからオフラインで強い選手と対戦しやすくなったと思いますが、誰と練習をしていたのでしょうか。

ガチくん:後先考えないで行動するタイプだったので、とりあえず「やってみよう」と上京を決めた感じです。ただ、『ウルトラストリートファイターIV』で知り合ったハイタニさんには背中を押してもらいました。東京に来てからも、ハイタニさんや藤村さんが以前いたオフィスで練習していましたね。LINEグループに招待していただいて、「今日は空いています」というメッセージが届くんです。

あとは、やはり嫁の存在が大きいですね。「行きたいなら行ってみれば? 一緒に行くし、ダメだったら広島に戻ればいいよ」って言ってくれて。自分としては東京に出れば活躍できる自信はあったのですが、その言葉で行く決心が付きました。

――地方でプロゲーマーを目指している同じような境遇の人に対してアドバイスはありますか?

ガチくん:そうですね。僕みたいに地方でくすぶっている人はたくさんいると思います。ただ、現状ではやみくもに「東京に出ていきたい」という気持ちだけでは難しいでしょうね。

地方にいる間に配信を頑張るとか、ランクマッチ(『ストV』のゲーム内ランキング)のポイントで上位に入るとか、目につきやすいアピールをするといいと思います。

さすがに海外のイベントは行きづらいと思いますので、国内の大会に参加して、そこで好成績を出し、いろいろな人とコミュニケーションをしていけば、自ずと上京するチャンスは訪れると思います。僕も広島の大会はもちろん、関西などで行われた大会には、頻繁に出場していました。

――上京した年には「インプレスeスポーツ部」でストV攻略企画「ガチくんに!」の配信も始まりましたが、企画者であるPC Watchの若杉編集長とは元々知り合いだったのでしょうか。

ガチくん:若杉さんも広島出身なんですよ。同郷ということで僕を指名していただきました。若杉さんもeスポーツの仕事をしたいと考えていたそうなので、ちょうどいいタイミングでしたね。

――当時は一般的には無名の選手だったガチくん選手が世界チャンピオンになったわけですから、見る目があるというか、いい買い物でしたね。

ガチくん:そうですね、いい買い物だったと思います(笑)。こちらとしても何もない状態のときに使っていただいた恩もありますし、お互いに良好な関係になったと思います。

――『ストV』で、道場システムが導入されたときも、「ガチくんに!道場」ができて、ガチくん選手もメンバー入りしましたね。多くの視聴者が憧れのプロ選手と一緒の道場に入れるという喜びがあったと思います。また、多くの人たちがDiscordで連絡を取り合って対戦などをしているようです。

ガチくん:仲のいい人たちと遊ぶのはモチベーションになりますよね。1人で黙々とやるのもいいんですけど、なかなか続けるのが難しいものです。お互いに切磋琢磨したり、意見を言い合ったりできる環境は、レベルアップにも繋がると思いますし、コミュニティとしていい感じになってくれれば、僕もうれしいです。

視点を変えることで広がった戦い方の幅

――2018年の急成長した要因は何だったのでしょうか。

ガチくん:そうですね、僕は自分が正しいという価値観を重視しているところがあったんですよ。それまであまり人のプレイを参考にしていなかったんです。それでも結構勝てていたので、そのときは良かったんですが、『ストV』のシーズン2で使用キャラのラシードが弱体化したあと、大会で2回プール落ち(予選落ち)をしてしまったんです。

「これまで勝ってこれたのはキャラクターの強さだったのではないか」と悩みましたね。そこで、自分が固執していたプレイだけでなく、いろいろなプレイを見ようと思い、同じラシード使いのオイルキングやビッグバード、竹内ジョン君などのプレイを見るようになりました。

例えば、EVO Japanでジョン君が準優勝したとき、バージョンアップされたばかりで、「VトリガーII(溜めたゲージを消費することで使えるモード)」が初めて実装されたにもかかわらず、しっかりと研究してきて、使いどころを見つけていたんです。

それを見てすごく感心しましたね。ほかの人のプレイをよく見ることで、戦い方の幅が広がったように感じたんです。もちろん、そのまま真似するのではなく、自分なりに咀嚼したうえで、やってみるようにしました。あとは、難しいと思っていたことにも挑戦したり、自分のキャラクターだけでなく対戦相手についてももっと調べるたりするようになりましたね。

――今年も若干ですが、「ラシードを含む強いキャラクター」以外が強化され、かなり平坦になったと言われています。どういった対策をしていくのでしょうか。

ガチくん:たしかに、シーズン4になって、キャラクターの強さがいつになく平坦になったと思います。ただ、現状だとまだトーナメントを勝ち上がっていけるのは数キャラに絞れるので、その対策を考えています。一方で、トーナメントの下の方で負けてしまわないように、すべてのキャラクターで対策もしっかりしていきたいです。もっと視野を広くしていかないといけないですね。

――キャラクターの強さが平坦になったことにより、多くのプレイヤーが複数のキャラクターを使い、対戦相手のキャラクターとの相性も考えていくようになったと思います。ガチくん選手はラシード以外のキャラクターを使う予定はあるのでしょうか。

ガチくん:ラシードというキャラクターの強みは、圧倒的に不利になる相手がいないことなんです。シーズン4になって複数のキャラクターを使用する人も増えてきましたが、僕の場合は、ほかのキャラを練習するよりも、ラシードの練度を上げることに集中したいですね。単純にラシードというキャラクターは楽しいというのもありますが、未だに新しい発見があるので、練度はまだまだ上げられると思っています。

――今年はまだ少ししか大会は行われていませんが、実力者がプール落ちするなど、選手の実力も拮抗してきた印象があります。

ガチくん:実際に今年のツアーを参加してみて、本気で取り組んでいる人が増えたというか、記念参加やエンジョイ勢が減った印象がありますね。まだ、ツアーも初期段階なので、ポイントによるトーナメントの振り分けが行われていないという理由もあるのですが、プールで強豪がぶつかることもあります。前はプールに手練れが1人くらいのことが多かったのですが、複数いることもあって。それだけ強い人が増えたのかも知れません。この前の大会では同じプールにPunkがいましたから。

中堅として後輩を育てながら“先輩超え”を目指す

――昨今はeスポーツ自体も盛り上がってきていますが、そういった状況の変化はどう捉えていますか。また、世界チャンピオンになったことで、そういった状況に対する立場の変化などは感じますでしょうか。

ガチくん:メディアの扱い方が変わったように思えます。テレビ番組で取り上げられるようになりましたし、大会の数そのものも増えていると思います。周りの見る目というか、評価が変わってきたんじゃないでしょうか。そもそも議題にも上がらなかったですからね。「eスポーツはスポーツか」みたいな論争も起こっていますけど、それの善し悪しではなく、そもそも以前はその議論さえ起きなかったわけです。

立場に関しては、カプコンカップで優勝したものの、まだまだ強い方はたくさんいますし、業界を牽引できるほどではないと思っています。ときどさんとかウメさん(ウメハラ選手)に頼ってしまうところが多いですね。実力の面でもそうですし、知識もまだまだ足りません。今は、上にいる人たち、先輩方を超えていくことを目指していきます。

今年も、もうカプコンプロツアーがスタートしましたが、チャレンジャーの気持ちで参加しています。気持ち的には上京したときと変わらないですね。ただ、若手というほどの年齢でもなく、ちょうど中堅と呼ばれる世代なので、後進のことも考えています。

ジョンやもけ、カワノなど、若手にも注目していますし、僕にいろいろ聞いてくる人には、誠意を持って対応していますし、彼らにうまく伝えていけたらいいと思っています。対戦のこととか、大会のこととか、自分が伝えられることは伝えていますね。まあ、僕なりの回答ってことになってしまいますけど。

――スポンサーがついてからは、今まで以上にプロ意識が働いていると伺っていますが、ファンサービスなどを強化しているのでしょうか。

ガチくん:僕はプロ野球が大好きなんです。試合も観ますし、ニュースもチェックしています。各選手のSNSも見ていたりするんですが、ファンの目線でいうと、プロ野球選手のプライベートが垣間見えるオフショットがうれしいんですよ。試合時の真剣な顔だけでなく、勝負事と離れたときの表情を見るのが好きなんです。

なので、僕のファンもオフショットを期待していたりするのかなって思っていて、Instagramではオフショットの写真を投稿するようにしています。嫁に手伝ってもらって、「こっちから撮って」とか。

あとは、大会の会場など現場で声をかけられたら、できるだけ対応するようにしています。応援してくださっているのがわかると、やはり嬉しいですね。ただ、ファンの対応が完璧にできているかというと、まだまだだと思っています。

――スポンサーのレッドブルとはどのようなやりとりがあるのでしょうか。

ガチくん:レッドブルってすごくアットホームで、いろんなことを相談できたり、それを一緒に解決していこうって言ってくれたりするんですよね。僕の役割は大会で勝つことなんですが、いつもそこまで気負わなくてもいいよって言ってくれています。選手が活動しやすい環境を作ってくれていて、とても感謝しているので、少しでも役に立てればと思いますね。

ちょっと前に結婚式を行ったんですが、そのときはシャンパンタワーならぬ、レッドブルタワーを作ってみました。少しでもレッドブルの認知に繋がればと。

あと、やはり好きなゲームで生活させてもらっているので、ゲームの認知度や地位の向上にも協力していきたいです。未だに「ゲーム=悪」のイメージが残っていることもあるんですが、実際はそうではないことを理解してもらいたいですね。公共の場とかに出る機会があれば、積極的に多くの人に伝えていけたらなと思います。

格闘ゲームってゲームのなかではわかりやすいと思います。体力がなくなったら負けとか、どっちが攻撃してどっちがダメージ受けているのかとか、すぐにわかります。決着も早いですしね。

ただ、ゲームのシステムが単純なだけに、勝敗だけでなく、背景というか選手同士の気持ちというか、そういうところまで伝えていきたいと思っています。大会でプロ選手同士の戦いだと、すごい緊張感のなかプレイしているわけですよね。普段は絶対ミスらないようなコンボも、大会の決勝ではミスってしまうことがあるわけです。その試合にかかるプレッシャーは尋常じゃないんですよ。そういうところまで伝えられれば、観ているほうも楽しくなるし、深さを感じてもらえるんじゃないでしょうか。

――なるほど、では最後に今年の目標や抱負についてお聞かせください。

ガチくん:目標としては「昨年以上の成績を」と言いたいのですが、さすがにできすぎだった2018年以上の成績を残すのは厳しいとは思います。ただ、「昨年の優勝はたまたまだった」と言われないように、安定した成績を残していきたいですね。

また、カプコンプロツアーの海外大会は昨年と同じくらい行きたいと思っていますが、今年はインタビューやイベント出演といったツアー以外の仕事も増えそうなので、それらを優先しながらも、可能な限りツアーに参戦したいと考えています。そういう意味では、今年の目標は「露出を多くし、1人でも多くの人に知ってもらう」でしょうか。“プロとして存在感”を出していきたいですね。

――ありがとうございました!

強さの秘訣は共同生活? ゲーミングハウスに暮らすeスポーツチーム「野良連合」

強さの秘訣は共同生活? ゲーミングハウスに暮らすeスポーツチーム「野良連合」

2019.04.26

『レインボーシックス シージ』で世界4位の実力を持つ野良連合

選手は「ゲーミングハウス」で共同生活を送っている

オーナーと選手に、チームのことや共同生活のことについて話を聞いた

2016年発足とeスポーツチームとしての歴史は浅いながらも、その年に開催された「E-Sports Festival」香港大会にて、シューティングゲーム『レインボーシックス シージ』でアジアチャンピオンを勝ち取るなど、世界的な活躍をみせる野良連合。ゲーミングハウスを運営する「e’sPRO」とコラボレーションし、チームメンバーがゲーミングハウスで共同生活している点でも注目を集めている。

今回、野良連合のオーナー 貴族氏と『レインボーシックス シージ』のプレイヤーであるPapilia選手、ReyCyil選手、Merieux選手に、チームやゲーミングハウス、eスポーツ業界について話を聞いてきた。

舞台はあくまで世界! チーム発足5年以内の優勝を目指す

――野良連合は昨今のeスポーツブームとほぼ同時に発足しましたが、ブームとともに歩んできた立場から、eスポーツの現状についてはどう感じていますか?

野良連合 オーナー 貴族氏(以下、貴族):eスポーツという言葉が認知され、多くの人に見られるようになった印象です。オフライン大会の会場では多くのファンが来てくださるようになりました。女性の観客もビックリするくらいいらっしゃるんです。

また、いろんなところから、チーム運営についての話を聞かれるようになりました。ただ、スポンサーから聞かれるのはいいんですが、これからeスポーツに参入し、チーム運営をしていきたいって企業がタダでそのノウハウを手に入れようとしてくるのは、ちょっと話が違うんじゃないですかね。おっと、話が脱線しました。まあ、それだけ注目度が上がっているってことです。

たとえば、バトルロイヤルゲームの『PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS(PUBG)』は、ほかのゲームに比べて“観る専”の人が多い印象です。この前、韓国で試合をしてきたのですが、観客の7割くらいは女性で、手にアイドルのコンサートで使うような「選手の顔写真を貼り付けたうちわ」を持って応援している人もいました。

こういったムーブメントが起きているのは、eスポーツよりもYouTuberのおかげかもしれません。決してゲームの腕が高いわけではないですが、おもしろく紹介しているので、ゲームの認知度が上がっているのでしょう。

そして、ゲームに興味を持った人のなかで「自分でプレイしない層」が、プロプレイヤーの試合を観戦するようになったのだと思います。日本だと、野良連合のメインタイトルでもある『レインボーシックス シージ』の人気が急上昇していますが、話を聞いてみると、やはりYouTuberの動画がきっかけで知った人が多いみたいです。

野良連合のオーナー 貴族氏

――野良連合は『レインボーシックス シージ』や『オーバーウォッチ』『PUBG』などのタイトルで、世界を中心に活動していますが、拠点の日本で人気の対戦格闘ゲームへの参入は考えていないのでしょうか。

貴族:日本で流行っている対戦格闘ゲームといえば『ストリートファイターV AE』が代表的だと思うんですが、売上でいうと8万本くらいなんですよね。それに対して『レインボーシックス シージ』は300万本。日本でも一番人口が多いタイトルと言われています。

また、対戦格闘ゲームは海外でのプレイ人口も少なく、海外のeスポーツの格付けでも『レインボーシックス シージ』は“Tier1”タイトルですが、対戦格闘ゲームの各タイトルは軒並み“Tier3”のカテゴリー。この違いは、大会の数や賞金額の高さ、Twitchなど動画配信の視聴数によって決定されるわけですが、Tier1とTier3だとまったく違います。

おそらく、日本メディアもそういった状況に気づきはじめて、1~2年しないうちに流行は変わってくるのではないでしょうか。そういう観点からも、野良連合はTier1タイトルを中心に行っています。まあ、世界しか見ていない感じですね。

――野良連合を含め、日本チームの実力は世界でどの位置にいるのでしょうか。

貴族:野良連合は発足時の2016年から『レインボーシックス シージ』で日本代表として活動しており、それ以降ずっと代表です。ただ、年々代表になるのが辛くなってきていますね。今年はギリギリだったんじゃないでしょうか。そういう意味では、日本は全体的にレベルが上がっていると思います。

世界との差はそんなにあると思っていません。2018年は『レインボーシックス シージ』の世界大会でベスト4になりましたが、これも2回め。目標は発足から5年以内、つまり来年までに優勝です。選手はどう思っているんですかね。

――とオーナーがおっしゃっていますが、選手の方々はどうお考えですか? まだまだ世界との差は大きいと感じるのか、それとも敵わない部分はあるものの同じラインの延長線上のちょっと先を行っている感じなのか。

Papilia選手(以下、Papilia):そうですね、『レインボーシックス シージ』は、単純にエイム(シューティングゲームで標準を合わせること)や操作の腕などの個人技だけでなく、戦術やチームでの動きも重要なゲームです。個々のスキルは海外と大きな差がないと感じていますが、戦術面に関してはまだ足りない部分がありますね。そこをクリアできれば優勝できると思います。

今回、取材に対応してくれた野良連合の選手。左からPapilia選手、ReyCyil選手、Merieux選手

――先ほど日本で対戦格闘ゲームが流行っているという話がありましたが、その理由の1つに、日本人選手の活躍があると思います。『レインボーシックス シージ』に関しても、野良連合の活躍が日本での人気に大きく影響しそうですね。

Papilia:eスポーツタイトルは、新しいものが出てくると、一時的とはいえ、そちらに流れてしまうことがあるんです。

『レインボーシックス シージ』は、まる4年稼働していて、今年が5年目。その間にもいくつもの大型タイトルがリリースされ、『レインボーシックス シージ』の人口が減りそうなポイントはありましたが、野良連合がアジア大会で優勝したり、世界大会で活躍したりしたタイミングで『レインボーシックス シージ』のプレイ人口は伸びたと聞いています。なので、野良連合が活躍したことによって、日本の『レインボーシックス シージ』の人気が途絶えずに済んだのかなと思います。

ゲーミングハウスでの共同生活が野良連合を強くした

――2018年の“eスポーツ元年”を経て、チームにはどのような影響がありましたか?

貴族:スポンサーのオファーの数は増えましたね。以前は営業に行き、頭を下げてから話を聞いてもらっていましたが、最近は向こうから話を持ってきてくれるようになりました。

ただ、増えたのは増えたんですが、日本企業の場合だと9割くらいが「物品提供」の協賛オファー。ありがたいことではあるのですが、今は物品提供はお断りしています。

PCや周辺機器をご提供いただくことが多いのですが、選手には好きなデバイスを使ってもらいたいので、自分たちで購入しています。無料でも選手にしっくりこなければ、マイナスにしかなりません。選手やチームを健全に運営するには、やはり金銭的なご協力がありがたいです。もちろん、金銭面に関しても、以前より増えています。

――既存スポンサーからの提供資金額に変化はありましたか?

貴族:そうですね、ご提供いただく資金も増えました。まあ、僕らもスポンサーさんの商品はめちゃくちゃ売っていて、単純にユニフォームに企業ロゴを入れてるだけでもないので、スポンサーさんとしてもメリットは大きいと思います。

――スポンサー料が順調に増えているということですが、選手として満足のいく報酬はもらっていますか? さすがにオーナーの前では答えにくいですかね。

Papilia:言っても大丈夫ですか?

貴族:いいよ。

Papilia:僕は大卒なのですが、おそらく一般的な大卒の初任給よりは多くもらっていると思います。何より、この「ゲーミングハウス」に住んでいるのが大きいですね。家賃や光熱費、インターネットの通信費も自己負担する必要がないので、食費くらいしか使わないんです。月10万円ずつくらい貯金もできています。年間だと100万円超えますね。普通に会社員やっているより待遇面もいいんじゃないでしょうか。

野良連合が暮らす「ゲーミングハウス」

――ちょうどゲーミングハウスの話題が出たので、その話をさせていただきたいのですが、チームで共同生活するメリットとデメリットはありますか。

貴族:オーナー目線で言うと、チームが仲良くなれることですね。それによって成績も上がってきています。

ゲームをプレイした後には必ず反省会を行うんですが、一緒に住んでいると顔を合わせながら行うことができます。オンラインで反省会をすると、顔が見えないので、個々の選手がちゃんと反省会に向き合っているかわからないんですよね。もしかしたら、スマホをいじりながら参加しているかもしれないわけです。やはり直接話すと、反省会の濃さがまったく違います。

デメリットは、ケンカしたあとが面倒だなって思うくらいですね。とはいえ、ほとんどケンカしませんが。あ、チームとしては費用がかかります(笑)。ゲーミングハウスを使っているほかのチームは、家賃や光熱費、通信費を選手負担にしているケースが多いのではないでしょうか。おそらく、ゲーミングハウスの家賃などをチームで負担しているのは、日本では野良連合くらいだと思います。

――選手の方々はいかがですか。たとえば、共有スペースの片付けや掃除についてなど。

Papilia:掃除は最初業者が入っていたのですが、コストがかかるので、今は止めています。業者が来なくなってからは、自分たちで気がついたときに掃除をしている程度ですね。

特に当番などは決めてません。使用した人が片付けることも多く、自発的に行っています。メンバーのなかにはシェアハウスを経験した人もいますので、結構うまくいってますね。

貴族:めちゃくちゃ汚く使う人もいて、すごく汚かった時期もあったんですけどね。

Papilia:このゲーミングハウスでは、共有スペースのほかに、個室も割り当てられています。寝室とゲーム部屋の2つ。個室に関しては不干渉なので、シェアハウスといってもかなり自由があります。何時に起きて、何時に寝るというのも個人の裁量。ルールとしては、毎晩21時からスクリム(練習試合)を行うので、そこまでに揃っていれば問題ありません。そこだけは厳守ですね。だいたい夜中の1時くらいまで練習して、反省会をします。そのあと個人練習をするのか、寝るのか、何かほかのことをするのかも、選手それぞれですね。

あと、ゲーミングハウスのメリットとして、メンバーが寝坊しても、誰かが起こしてくれることが挙げられます。寝過ごして大会に遅れてしまうといった失敗がないのがいいですね。

貴族:電話で起こそうにも、電話くらいじゃ起きない人も多いので、直接起こせるのはいいことです。

ゲームだけでなくファンサービスも本気の野良連合

――野良連合はしっかりした選手が揃っている印象ですが、オーナーとして選手にはどのような教育をされていますか。

貴族:私の経験上の話ですが、タイトル問わずプロゲーマーは社会経験が乏しいことが多いので、必要であれば「社会人のあり方」を指導します。また、学生時代に部活などを経験していない人には、「チーム競技とは」をイチからたたき込むこともあります。

――プロになるとファンがつくわけですが、ファン対応についてはいかがでしょう。Twitterの発言や使い方についての指導などはあるのでしょうか。

貴族:野良連合は“ファンサービスが神”と言われることが多いんです。一応、選手にはしっかりファンサービスをするように伝えていて、選手はそれに応えてくれていますが、特に指導しなくても、ここにいる選手は問題ないでしょうね。

Papilia:Twitterについては、気をつけるようになりました。軽率な発言をしないように考えています。

ReyCyil選手(以下、ReyCyil):アマチュア時代とそんなに変化はないと思います。もともとSNSでは余計なことは言わないようにしていたので。ダイレクトメッセージをくださったファンには、全部返事をするようにしています。

貴族:ああ、選手たちはTwitterのリプライとかもちゃんと返信してますね。そこはすごいなって思っています。ただ、「選手はみんなリプライ返してくれるのに、なんで貴族さん返してくれないんですか」って、何度か言われたことありますね(笑)。ゲーム以外の仕事も忙しいので、Twitterで返信するのが難しいんですよ。

――先日、ファンミーティングを行ったようですが、そのような活動も頻繁に行っているのでしょうか。

貴族:ちょうど先日、ファンクラブ限定のファンミーティングを行いました。100名くらい集まったと思います。300人くらい来るときもありますので、先日のはこぢんまりとした感じですね。東京ゲームショウとかだと数千人来るので、「朝から夕方までサインしっぱなし」ということもあります。

――ファンミーティングではどんなことを行っているのでしょうか。

貴族:「叩いて被ってジャンケンポン」とかですね。

Merieux選手(以下、Merieux):一番いらないとこじゃないですか(笑)。まぁ、事実ですけど。質問コーナーがあったり、景品がもらえるジャンケン大会だったり、記念撮影だったり、サイン会とかだったりですね。

貴族:あとはファンに向けてグッズも作っています。野良連合のゲーミングデバイスがあってもいいかなと考えています。

また、今はアパレルにも力を入れていて、手前味噌ですが、パーカーはeスポーツチームが出しているもののなかでも飛び抜けてカッコイイと思います。

――世界で活躍するようになってから、ファンだけでなく、家族や友人の反応に変化はありましたか。

Merieux:もともと親がゲームをよくやっていたので、プロゲーマーになることについて反対されることはありませんでした。応援してくれています。海外で行われる世界大会だと、配信が早朝や深夜になるんですが、観てくれているようで、終わるとLINEとかで感想を伝えてくれたりしていますね。最初からあまり変わりません。

Reycyil:以前は働かずにゲームばかりしていたニートだったので、家族にはあまり良く思われていなかったと思います。でも、海外の大会に出場した際に、見直してくれたみたいで、そこから応援してくれるようになりました。

貴族:どんな感じで応援してくれるの? 「あの試合のプラントよかったよ」とか?

ReyCyil:うちの親、めちゃくちゃ詳しいじゃないですか(笑)。

Papilia:僕は、最初就活をしていて、内定もいただいたのですが、その道を選ばずにeスポーツの世界に入りました。それを後悔しないくらい、応援してもらっています。地元の人たちも喜んでくれていて、ちょっとした有名人って扱いになってるんです。僕がきっかけでゲームを始めてくれた人もいると聞きますね。

――選手のみなさんは、ゲーミングハウスに入居してよかったと感じていますか。

Merieux:僕は静岡出身で、地元の大学に実家から通っていたんです。野良連合に入って、このゲーミングハウスに入居することが決まったとき、大学を辞めました。活動も順調なので後悔していません。ゲーミングハウスに入れてよかったと思っています。

Papilia:僕は東京都出身なんですが、伊豆諸島なんですよ。高校進学の際に一人暮らしをはじめたので、個室があるうえに、家賃も光熱費も必要ない環境は本当にうれしいですね。住む前は「シェアハウスは嫌だな」って思っていたんですけど、今は快適に過ごせています。

ReyCyil:僕は山梨です。ゲーミングハウスに入居しなくても、オンラインで練習して、大会前だけ集まることもできますが、野良連合は海外遠征が多いので、それぞれが違う空港から現地に行くと何かと面倒なんですよね。ゲーミングハウスであれば、みんな一緒に行けるので安心です。

貴族:たしかに。ゲーミングハウスを使っていなかった頃は、「誰々は成田ね」「誰々は大阪ね」って感じで、みんなバラバラ。現地集合って感じでした。それがなくなったのは大きいですね。選手がフライトに遅れる心配もなくなりましたし。

――なるほど、本日はありがとうございました!