「岡安学」の記事

岡安学

岡安学(おかやすまなぶ)

フリーランス・ライター

ゲーム情報誌編集部を経て、フリーランス・ライターに。ゲーム誌に寄稿しながら、攻略本の執筆も行い、かかわった書籍数は50冊以上。現在は、デジタル機器を中心にWebや雑誌、Mookなどで活躍中。ゲームを中心としたアニメやマンガ、映画なども守備範囲。近著に『INGRESSを一生遊ぶ!』(宝島社刊)。 Twitterアカウント:@digiyas
地域とeスポーツチームの関係に可能性を感じた「シャドバ」チャンピオンシップ

地域とeスポーツチームの関係に可能性を感じた「シャドバ」チャンピオンシップ

2019.03.20

スマホアプリ『シャドウバース』の年間王者を決める大会が開催された

みごと王者に輝いたのは北海道のレバンガ☆SAPPORO

eスポーツに力を入れ始めた北海道、地域活性化にもつながるか?

3月10日、品川グランドホールにてスマホアプリ『シャドウバース』のプロリーグ「RAGE Shadowverse Pro League 2018 League Championsip」(以下、チャンピオンシップ)が開催された。

チャンピオンシップは、年間を通じて開催されたプロリーグの「ファーストシーズンチャンピオン」と「セカンドシーズンチャンピオン」が争い、2018年の年間チャンピオンを決定する大会だ。ファーストシーズンは「レバンガ☆SAPPORO」が勝利し、セカンドシーズンは「au デトネーション」が優勝した。

会場は品川グランドホール。常設の席もあり、観覧しやすい施設だ

勢いに乗るレバンガが年間チャンピオンに

ファーストシーズンを勝ち抜いたレバンガ☆SAPPOROは、北海道を拠点とするプロバスケットボールチーム「レバンガ北海道」が母体のeスポーツチームだ。ファーストシーズンでは、5連敗というどん底から、怒濤の7連勝で奇跡の逆転優勝を成し遂げた。

セカンドシーズンで優勝したauデトネーションは、エースのミル選手を中心に安定した強さを見せる老舗eスポーツチーム。圧倒的な強さでセカンドシーズンを優勝した。

しかし、今回のチャンピオンシップでは、4対1の大差でレバンガ☆SAPPOROが勝利。2連勝で先行したレバンガ☆SAPPOROに対して、auデトネーションはミル選手が3戦目を取り返すも、4戦目を落としてしまう。そして、レバンガ王手で迎えた5戦目、レバンガ☆SAPPOROのリーダーきょうま選手が、これまで勝てていなかったミル選手に圧勝し、レバンガ☆SAPPOROの優勝に花を添えた。

auデトネーションのミル選手が一矢を報いるが、結果は4-1の大差でレバンガ☆SAPPOROが年間チャンピオンに輝いた

北の大地でeスポーツを根付かせる動きが活発化

今回の大会では、単にシャドウバースのリーグチャンピオンが決定しただけではなく、地方に根付いたeスポーツチームが結果を出したという点が大きかった。

実は、北海道はeスポーツに力を入れ始めている地方の1つ。2月28日には、任意団体だった北海道eスポーツ協会が、「一般社団法人 北海道eスポーツ協会」として組織変更しており、北海道新聞社、レバンガ北海道、産業技術学園北海道ハイテクノロジー専門学校、凸版印刷北海道事業部、電通北海道、クラウドキュレーションという6つの企業、教育機関で構成されるようになった。北海道を拠点とする企業と教育機関が、eスポーツを北海道に根付かせようと活動を始めているのである。

その矢先で、今回のレバンガ☆SAPPOROの年間チャンピオン獲得は、北海道のeスポーツ普及に大きく後押しすることとともに、日本各地の地方都市にも大きな影響を与えたようにも感じた。

レバンガ☆SAPPOROのオフィシャルパートナーは、北海道の企業であるサッポロビールであり、メンバーのさわさき選手は北海道出身だ。eスポーツはオンラインでの対戦なども多く、場所に依存しない反面、まだまだ地域との関わりが強いとは言いがたい。それだけに、北海道をアピールするこのチームの優勝は、地方でeスポーツ事業の展開を考えている企業やコミュニティにとって追い風となったのではないだろうか。

試合前から用意していた年間チャンピオンを記念したTシャツを着込み、優勝の盾を掲げるレバンガ☆SAPPORO

試合後の会見では、各選手も北海道への想いを語ってくれた。

「チームのある北海道とは、いろいろと協力をしていきたいです。また、地元が石川県なので、石川にもeスポーツ文化を持って帰りたいですね」(真春選手)

「北海道のeスポーツ専門学校とも提携しているので、そこと協力ができたらと思います」(Tatuno選手)

「各地方からeスポーツのことを発信できれば良いですね。もちろん、北海道からも発信していきたいです」(きょうま選手)

「北海道もまだまだやるというところを見せられたのではないでしょうか。北海道の人たちにも東京のイベントに行きたくなるように、eスポーツやシャドウバースをアピールしていきたいです」(さわさき選手)

会見で喜びを伝えるきょうま選手
イベント終了後はロビーにレバンガ☆SAPPOROのメンバーがお見送り。来場者は一緒に写真を撮影し、勝利を分かち合った

eスポーツには、地元出身の選手や地元企業、自治体との連携など、地方活性化の一翼を担うことができる。今回の大会は、その可能性を示してくれたのではないだろうか。

ソニックシティで埼玉ゲームシティ! 自治体×eスポーツで市民に浸透なるか

ソニックシティで埼玉ゲームシティ! 自治体×eスポーツで市民に浸透なるか

2019.03.11

ソニックシティ30周年を記念して開催された「埼玉ゲームシティ」

子連れのファミリー層を中心に2万5000人が訪れる

自治体が開催するeスポーツイベントの可能性が見えてきた

埼玉県にある「ソニックシティ」オープン30周年を記念して、埼玉県産業文化センターとデジタルSKIPステーションは共同で、体験型ゲームイベント「埼玉ゲームシティ」を3月2日と3日に開催した。

絶妙なクオリティの巨大マリオがお出迎え

イベントは基本的に入場無料で誰でも参加できたが、「あそぶ!ゲーム展」やプログラム体験ができる「ゲームワークショップ」など、一部のコーナーは有料。新作ゲームの体験コーナーやゲーム実況の生配信、ARゲームの『HADO MONSTER BATTLE』体験に加え、ステージイベントではeスポーツプレイヤーによるエキシビションマッチやゲーム音楽のコンサートも行われた。総来場者数は2万5800人に上ったという。

「あそぶ!ゲーム展」コーナーで『平安京エイリアン』に興じる人々
ARマシンを使用し、ドラゴンなどと対決する『HADO MONSTER BATTLE』

企画者の狙いは市民へのeスポーツ浸透

最近は、最近は、プロ選手トーナメントなどの派手な取り組みが目立ったeスポーツイベントだが、埼玉ゲームシティはeスポーツを身近に感じる内容のイベントだ。リアルスポーツで言えば、「ファン感謝デー」のような内容に近いものだったのではないだろうか。

今回のイベントを企画したソニックシティ 総務企画部 事業企画課の田中康士郎氏は「いばらき国体でも採用されたように、eスポーツは多くの自治体が感心を持っています。行政からも注目を集めるようになってきました。私たちもeスポーツの広がりを感じていますが、多くの県民や市民にはまだまだ認知されていないとも感じています。そういった方々、特にファミリー層に向けて、eスポーツとは何かという情報を発信できればと思っています」と話す。

ソニックシティ 総務企画部 事業企画課の田中康士郎氏

ゲームやeスポーツのイベントを開催するうえで、県民や市民への認知度の拡大を狙うのは、自治体や県などの外郭団体ならではと言ったところだ。

「eスポーツの認知度を高めるために情報を発信したい」という田中氏の言葉通り、今回のステージイベントでは『ぷよぷよeスポーツ』『ストリートファイターV アーケードエディション』『シャドウバース』の3タイトルでデモンストレーションなどが行われたが、どれもいわゆる“eスポーツ大会"としての趣はなく、プロ選手の存在やeスポーツタイトルとしてのゲームを知ってもらおうという意図が見られた。

ステージは満員御礼。立ち見まで出るほどの大盛況だった
『ぷよぷよeスポーツ』のプロ選手の3名。左からあめみやたいよう選手、kuroro選手、ぴぽにあ選手
シャドウバースステージ。昨年の世界大会で優勝し賞金100万ドルを手にしたよしもとLibalentのふぇぐ選手と握手をするファンの小学生
『ストリートファイターV アーケードエディション』では、FAVゲーミングのsako選手とりゅうせい選手が登場

来場者の多くは子連れのファミリー層で、ほとんどがeスポーツにはじめて触れる人たち。扱われているタイトルも「名前だけ聞いたことがある」という人が多かった。

しかし、そんな状況でも、プロ選手のデモンストレーションで高い技術が必要な「スーパープレイ」が出たときには、自然と拍手や歓声が起きたのが印象的だった。

プロ選手のアドバイスを聞きながら『ぷよぷよ』を操作する声優の飯田里穂さん。みごと5連鎖を達成した

自治体だからこそできる地域密着のeスポーツイベント

やはりeスポーツは、「実際に見てみないとわからない」というのが正直なところ。それを気軽に体験できる「埼玉ゲームシティ」は、自治体が行うイベントとして正しい立ち位置だったのではないだろうか。

「今後は地域と協力し、eスポーツイベントの開催なども前向きに考えています。また、埼玉にはリアルスポーツのプロチームがあるので、大宮アルディージャや浦和レッズ、埼玉西武ライオンズとの連携も考えています。すでに大宮アルディージャとはストレッチ教室を開いており、市民とサッカーをつなげる取り組みをしています。eスポーツも同様に、地域と市民と結び付けたていきたいですね。また、大宮駅に隣接している商業施設大宮アルシェに設置されている大型ビジョン『アルシェビジョン』で、埼玉ゲームシティのCMを2週間流していただきました。今度はこのビジョンを使ってeスポーツイベントを開催してみたいなんて話も出てきていますし、ほかの商業施設の方もeスポーツに関心を持ち始めております」(田中氏)

急遽来場が決まった埼玉西武ライオンズのBOW川選手。昨年行われたプロ野球ゲーム『実況パワフルプロ野球』のプロリーグ「eBASEBALL」で日本一を獲得したチームの選手だ

自治体がeスポーツやゲームのイベントを開催する利点は地域と連携しやすいこと。そう話す田中氏の考え通り、地域での旗振り役がいれば、さまざまなオフラインイベントの開催などを通じて、eスポーツが多くの人々の生活に溶け込むきっかけになるかもしれない。

埼玉ゲームシティは、ソニックシティオープン30周年のイベントとして開催されたため、次回があるかは未定の状態。しかし、ソニックシティを使ったイベントとして、毎年秋に開催しているアニメやマンガ関連のイベント「アニ玉祭」は、すでに6回を数えており、もはや「埼玉の定番イベント」となりつつある。そのため、埼玉ゲームシティも定番化する可能性はあるだろう。

埼玉ゲームシティが定番化して「地方自治体のeスポーツによる地域振興の好例」となり、ほかの自治体へもこの流れが波及することで、さらなるeスポーツの広がりに期待したいところだ。

ウメハラ選手の考える「プロになりやすい状況」が生んだeスポーツの弊害とは

ウメハラ選手の考える「プロになりやすい状況」が生んだeスポーツの弊害とは

2019.03.07

日本初のプロゲーマー・ウメハラ選手にインタビュー

昨今のeスポーツを取り巻く環境について話を伺った

プロになりやすすぎる今のeスポーツに警鐘を鳴らす

2018年は“eスポーツ元年”と呼ばれるほど、eスポーツ関連の話題がさまざまなメディアで取りあげられるようになった。動画配信を見たり、会場で試合を観戦したりと、最近初めてeスポーツに触れたという人も多いのではないだろうか。

しかしながら、名称としての「eスポーツ」が世間で通じるようになっただけで、いわゆる「ゲーム大会」自体は20年以上も前から開催されている。そこで、黎明期からゲーム大会に参戦しているプロ格闘ゲーマーのウメハラ(梅原大吾)選手に、昨今のeスポーツムーブメントについて話を伺った。

今回のeスポーツブームは1~2年では終わらない?

――昨年は流行語大賞にランクインするほど、eスポーツが多くの人の目に触れました。長年ゲーム大会に出場し、結果を出してきたウメハラ選手は、このeスポーツのムーブメントをどう捉えているのでしょうか。

ウメハラ選手(以下ウメハラ):“eスポーツ元年”という言葉はよく聞きます。ただ、僕は2010年にプロゲーマーになったので、急に変わった印象はないんですよね。たしかに、右肩上がりで拡大しているのはわかりますが、「ここが境目」というのを感じたことがありません。むしろ、昨年って、何か変わったりしたのでしょうか?

――2018年は日本eスポーツ連合(JeSU)の発足に加えて、eスポーツのプロリーグがいくつか発足しました。クラロワリーグモンストプロツアーぷよぷよカップ、さらにパワプロのeBASEBALLも昨年からプロ選手によるeスポーツリーグが始まっています。ウメハラ選手がプレイしている『ストリートファイターV AE(ストV)』も、RAGEの団体戦が昨年から開始してますよね。

ウメハラ:ああ、なるほど。いろいろ始まったんですね。

とはいえ、「ブーム」というものは長続きしないので、日本のeスポーツが単なるブームであるとすれば、いつまで続くのか興味もありますね。自分自身としては、世間的にまったく注目されていなかった頃からやっていたので、もし、このまま廃れてしまっても、元に戻るだけでしょう。

プロゲーマーのウメハラ(梅原大吾)選手。15歳で日本を制し、17歳で世界チャンピオンのタイトルを獲得。2010年4月、米国企業とプロ契約を締結して日本初のプロゲーマーになると、同年8月「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロゲーマー」としてギネス記録に認定される。2016年、さらに2つの認定を受け、3つのギネス記録を持つ。現在、レッドブル、Twitch、HyperX、Cygamesの4社によるスポンサード・アスリートとして世界で活躍中。著書に『勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」』(小学館)、『1日ひとつだけ、強くなる。』(KADOKAWA/中経出版)など

――最近では、ゲーム業界以外の企業もeスポーツに参入してきています。ただ、投資の観点では、結果が出ないとあっという間に手を引かれてしまう可能性があるでしょう。そのような状況についてどうお考えですか。

ウメハラ:現状、人気選手の出場する大会は集客ができていますし、イベント自体が人気の場合は会場が大盛り上がりです。ですが、すべてのイベントがそうではないので、eスポーツ全体で考えると「そこまでではない」という印象ですね。マンガの『ワンピース』が売れているからといって、マンガ業界全体が潤っているわけではないのと同じです。

成功している例だけを取りあげて「業界がアツい」と錯覚し、「eスポーツが流行っているみたい」程度の考えで参入すると、なかなかうまくいかないのではないでしょうか。その結果、「収益が出ないので撤退する」ことはあると思います。そうなったときに、このeスポーツのムーブメントがどのように変化していくのか気になりますね。

ただ、心配はしてません。メディアに取り上げられなくなって注目度が下がっても、元々あった格闘ゲームコミュニティの核となる部分は変わらないので。eスポーツが生まれる前からあった僕らのコミュニティは、eスポーツがあってもなくても存在し続けますからね。

――ゲーム大会が世間的に注目されたのは、ウメハラ選手が活躍した『ストリートファイターII(ストII)』や『ストリートファイターZERO』の頃が最初で、次に『バーチャファイター(バーチャ)』が社会現象になったときでした。そして今回が3回めになるわけですが、このムーブメントは、以前と比べてどのように感じていますか。

ウメハラ:規模は回を追うごとに大きくなっている印象です。関わっている企業も多くなっているでしょう。例えば、『ストII』や『バーチャ』が盛り上がったときは、単純にそのゲームが流行っていたので、タイトルをリリースしているメーカーが利益を得る構造だったわけです。つまり、1社しか得しない。ですが、今のeスポーツブームは、いろいろなゲームがeスポーツとして関わっているので、その点で様子が違います。

『ストII』ブームが終わったところで、他のメーカーはなんとも思わないでしょうが、今回はeスポーツという世界が注目されているので、「ゲームを使って競い合う」ことが廃れたら困る企業、団体はたくさんいます。そう考えると、以前のように1~2年で終わってしまうブームではないのかもしれません。

プロの決心がつけば、ファン対応は自然と身につく

――eスポーツが急速に広まったことにより、選手だけでなく観戦者も増えてきています。プロとして、オーディエンスやファンへの対応も必要になると思いますが、そのあたりはいかがでしょうか。

ウメハラ:ファンの方々はもちろんですが、応援してくれるお客さんですよね。飲食店だろうが、なんだろうが、お客さんがいないことには成り立たないので大切です。その方たちへの感謝は忘れたことはありません。感謝の意は言葉よりも行動や態度で示すべきだと思っていますので、サインや写真撮影などは100%行うようにしています。

――eスポーツブームによって、いきなりプロ選手として扱われてしまうような人は、そういう意識を持ちにくいのではないでしょうか。

ウメハラ:僕もプロになる前、若い頃は、話しかけられても「ぶっきらぼうな対応」をしてしまうことがありました。その頃は、結果を出せているのは自分の努力のたまものだと思っていたので。

若い頃って、自分のことばかり考えがちなので、誰かにちゃんと教育してもらわないと、周りで支えてくれている人たちのありがたみが分からないものです。今の若い人たちも、特にこの業界でやっていくかどうか決めかねているのであれば、周囲への対応がおざなりになってしまうかもしれません。ただ、長くやっていく決心ができれば、徐々に身についていくのではないでしょうか。

もう1つ懸念しているのが、ブームのときに入ってくることの大変さですね。

僕は昔から、成功しては天狗になり、失敗しては卑屈になりを繰り返してきて、今があります。人間って、成功だけでも失敗だけでもダメで、そのような経験を積み重ねることが大事なのではないでしょうか。その結果、今では成功しても失敗しても気持ちの揺れ幅が小さくなって、軸がブレなくなりました。

今のブームで入った人は、規模が大きくなって注目されている分、失敗したときに受けるダメージが大きく、その揺れ幅も大きくなっている気がします。そういう意味で、今のブームで入ってきた人は大変なんだろうなと思いますね。

――ウメハラ選手がプレイしている『ストV』も、eスポーツブームによって多くの若手が入ってきましたが、その大変な時期に入ってきた彼らに対して、何かアドバイスなどをするのでしょうか。

ウメハラ:相談されれば、自分の考えを共有していますが、僕が彼らの年齢だった頃とは状況も環境も違うんですよね。それぞれ個性があって、キャラクターも違うので、適切なアドバイスができているかはわかりません。よく、「プロゲーマーの先駆者として自分の考えを伝えるべきだ」と言われますが、10年、下手したら20年違うわけですし、考え方も違いますから、一方的な意見は言いにくいですね。

今のeスポーツには、プロになりやすいがゆえの弊害がある

――昨年の盛り上がりを受けて、今年のeスポーツには何を期待しますか。

ウメハラ:一般的なプロ競技と比べると、現状のeスポーツはプロになるのが簡単なんですよね。もちろん、なりたい人が誰でもなれるものではないですが、リアルスポーツとは違って、新作ゲームが出てから死にもの狂いで1年プレイしたらプロになれる可能性があるんです。ただし、1年くらい活躍できても、それを維持するのが難しい。プロになりやすいというのは、裏を返せば代わりがすぐに見つかるってことですから。

リアルスポーツの世界は、プロになるのが本当に大変ですが、大変だからこそ、プロになればある程度の収入を得られますし、育成してもらえる環境があります。もちろん、プロになったからといって全員が大成するわけではないですし、結果が出なければ数年で引退という厳しい現実もありますが、eスポーツもリアルスポーツのように「かなり難しい、だけど、プロになれればある程度の待遇がある」ほうが好ましいと思います。

趣味で少しやってみて、それでちょっと上手かったらプロになれるのは、やはり違うような気がします。リアルスポーツとの根本的な差が、こういった質の面で現れているのではないでしょうか。

僕はゲーム業界の発展を願っていますし、そのために努力を惜しまない覚悟はできています。決して業界の縮小化を説いているわけではありません。ですが、世の中にはバランスがあり、今のeスポーツブームはそれが明らかにおかしいと感じています。ブームの裏にeスポーツの抱える不安定さがあるように思いますね。安定した業界の成長のためには、たとえプロへの門戸が狭くなってしまったとしても、その辺の歪みは見直したほうがいいのではないかと思います。

現状には満足しているが、ガイル以外の新キャラも使いたい

――次に、ウメハラ選手個人のことをお聞きしたいのですが、選手として成績や活動など、2018年を振り返ってみていかがでしたか。

ウメハラ:『ストV』が発売された2016年、そして翌年の2017年はカプコンカップ出場に必要なポイントを稼ぐため、毎週のように海外の大会に出場し、それこそ十数カ国まわりましたが、2018年はそれに比べると早い段階でポイントを稼げたので、そこまで海外遠征に行かずに済みました。例年よりは、体力的にも精神的にも楽な印象でしたね。

――海外遠征が少なかったことに加えて、RAGEの開催などがあったので、日本での活動が増えた印象です。

ウメハラ:そうですね。そもそも海外へ遠征できるのは、大手スポンサーがついていたり、プロチームに入っていたりと、ある程度環境が整っている人たちなんですよね。日本での活躍の場が増えたことで、そこまで環境を整えられない若手でも、実績を積んで注目されて、スポンサーが付いたり、チームに入ることができたりという好循環が生まれている気がします。

先ほど「プロになりやすすぎる」と話しましたが、アメリカはeスポーツが早くから盛んになって日常化しているので、もっと簡単にスポンサーがつくこともあり、プロが身近な存在なんです。日本の格闘ゲームプレイヤーは、レベルが高い割には見返りを得られるようになるまでの道が遠いんですよね。プロになるための基準は高く設定されるべきだと思いますが、そこまでの道筋がまったくないのも困るわけです。そういう意味では、日本で活躍の場が増えたのは喜ばしいことです。

――では2019年の目標はいかがでしょうか。

ウメハラ:プレイヤーとしての目標は毎年変わらないですね。練習をして本番でそれを活かして、結果を残せればいいと思っています。ただ、「現状の課題」や「これからの目標」といったものが、実はもうないんですよ。個人的にやりたいことはすでに達成して、ひと段落した感じです。2016年からTwitchグローバルアンバサダーとして行ってきた「Daigo The BeasTV」での動画配信も、自分なりのスタイルができてきた感じもしますし。

あえて言うのであれば初心に返って、目の前のことを一所懸命やる、ですね。毎年こういう話がでると、「こういうことをしたいです」という具体的な目標があったんですが、今年は本当にそういうのが浮かばないですね(笑)。今の僕にとっては、プレイヤーとして地道な活動を続けることが大切のような気がします。

――『ストV AE』がシーズン4に入り、バランス調整や新キャラの登場がありますが、そのあたりはいかがでしょうか。配信動画では「影ナル者」や「是空」を使っていましたが、ガイルから使用キャラの変更は考えているのでしょうか。

ウメハラ:理想を言えば、新しいキャラクターを使って今年1年活動したいですね。それは是空とは限りませんが。僕はプロである前にゲーマーなので、キャラクターに新たな発見を見出したり、新鮮味を感じたりしながら楽しみたいんです。もちろん、ガイルが楽しくないわけではないですよ。

――例年通りであれば、シーズン4もあと5キャラ追加されると思いますが、その中から強さとおもしろさのバランスがいいキャラクターがいたら、そちらを使う可能性があるわけですね。

ウメハラ:もちろんありますよ。というか、そうなって欲しいです。ただ、新しいキャラクターはじっくり育てる時間がないのも事実なんですよね。1年って短いんです。ほかのプレイヤーの練度も上がっていますし、それに追いつくだけで精一杯になってしまい、トーナメントで上位に入るのはかなり難しい。そうなると、やはりガイルになっちゃうのかな(笑)。

――最後にeスポーツがまだよくわかっていない人や、ゲームをあまりプレイしない人に向けて、ひと言いただけますでしょうか。

ウメハラ:eスポーツと聞いて、「なんじゃそりゃ」って思う人は多いと思います。業界的に盛り上がってきているので、新しい何かが始まっている雰囲気のなかで、ちょっと気になっている感じではないでしょうか。僕の専門とする格闘ゲームは、特にそれぞれの個性が輝くフィールドなので、対戦する様子を見て、僕らの独特の個性や魅力を少しでも楽しんでいただければなと思います。

――ありがとうございました!