「山口健太」の記事

山口健太

山口健太(やまぐち けんた)

ITジャーナリスト

1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て2012年よりフリーランスのITジャーナリストとして独立。国内外の発表会取材や製品レビューに基づくウェブ/雑誌記事の執筆を中心に活動。著書に『スマホでアップルに負けてるマイクロソフトの業績が絶好調な件』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)。
CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

CESで大注目の「折り曲げられるスマホ」、普及の見込みは?

2019.01.18

中国メーカーが自在に折り曲げられるスマホを実現

「大画面×コンパクト」を両立する夢のデバイス、実用性は?

端末の魅力を引き出すアプリ登場が普及のカギか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」では、2019年のトレンドを先取りする新ガジェットが一堂に会した。その中でも一際大きな注目を浴びたのが「折り曲げられるスマホ」だ。商品化にこぎ着けたのは世界初という。

折り曲げられるスマホ「FlexPai」

スマホの画面サイズが大型化を続ける中、iPhone SEのような小型スマホを求める声は依然として多い。そこで登場した折り曲げられるスマホは、「大画面」と「コンパクト」を両立する夢のデバイスに見える。果たして普及の可能性はあるだろうか。

自在に折り曲げられるスマホ、中国メーカーが実現

折りたためる2画面のスマホというアイデア自体は、実はそれほど目新しいものではない。NTTドコモとZTEが共同開発した「M Z-01K」などは、現行モデルとして国内で販売中だ。

だが、従来の2画面スマホはヒンジを用いて2つの画面をつなげたものに過ぎなかった。その後、液晶とは異なる特性を持つ有機ELが登場したことで、ディスプレイを紙のように自在に折り曲げられることも夢ではなくなった。

有機ELの「曲げに強い」という特性は、多くのスマホに活用されている。サムスン電子のGalaxyシリーズが画面端を曲面にしたスマホを発売後、ソニーモバイルシャープもこの形状を採用している。

これを推し進め、開くとタブレットのような大画面、2つに折り曲げるとスマホサイズという端末の可能性が見えてきた。そして2018年10月、中国のRoyoleが、世界で初めての折り曲げられるスマホ「FlexPai」を商品化したのだ。

中国Royoleのブース。フレキシブルディスプレイを使った様々な製品が並んだ

CES 2019では韓国のLG電子が巻き取り式のテレビを発表するなど、「曲がるディスプレイ」が会場全体で話題になっていた。そうした下地もあって、Royoleの出展ブースには来場者の行列が絶えず、展示機がバッテリー切れを起こすほどの盛況となっていた。

実用性はさておき、スマホの進化の可能性を示した

FlexPaiの特徴は、開いた状態ではタブレットに近い形状になり、そこから自由に折り曲げできる点にある。従来の2画面スマホとは異なり、広げた状態でも画面の境目がないため、タブレットと同じ感覚で利用できる。

広げた状態ではタブレットのように使える

メーカーが挙げるメリットは、複数のニーズごとの端末を1台に集約できることだ。大画面が欲しい人の中には、スマホとタブレットを両方持ち歩いている人もいるだろう。だがFlexPaiなら持ち歩くのは1台で済むというわけだ。

折り曲げた状態では一般的なスマホと同じように使える

折り曲げというギミックから、耐久性に不安を覚えるものの、20万回程度の折り曲げに耐えられるという。ただ、折り曲げると厚みが出るため、スマホのようにコンパクトに持ち歩くことはまだ難しい。

アプリの対応も課題だ。FlexPaiを折り曲げた状態では「表面」と「裏面」に加え、折れ曲がった「エッジ」の3画面を利用できる。FlexPaiの魅力を引き出すには、これら3画面を活用するようなアプリの登場が待ち望まれる。

そこでRoyoleは、FlexPaiをアプリ開発者向けに1,318ドルの価格で先行販売している。まずは開発者にデバイスを手に取ってもらい、どのような活用方法が考えられるか、アイデアを募っていく段階といえる。

会場で実機を試した印象だが、現段階での折り曲げスマホは実用的とまではいえないと思えた。しかしRoyoleという会社の名前を世界に知らしめ、フレキシブルディスプレイの技術を示したという意味では、この発表は大成功を収めたといえるのだろう。

また、サムスン電子など大手スマホメーカーも折りたたみや折り曲げ端末の開発を進めており、グーグルはAndroid OSとして公式サポートを表明している。スマホの次なる進化の可能性を真っ先に示したFlexPaiを、この場の実用性で語るのはお門違いなのかもしれない。

間もなく本格始動! CESの展示から5Gスマホの動向を予測

間もなく本格始動! CESの展示から5Gスマホの動向を予測

2019.01.15

「CES 2019」の5G関連展示に注目

サムスンがリリースを予告した「Galaxy S10」に5G対応の可能性も

2019年は、5Gスマホの先行導入を目論む各社の動きが活性化?

2019年、次世代移動通信システム「5G」のサービス開始が見えてくる中、ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」には5Gに関する展示が多数登場した。

あらゆるモノがネットにつながる時代において、5Gは重要なインフラとして注目されている。その中でも、誰もが持ち歩く情報端末として身近な存在である「スマホ」の5G対応はどう進んでいるのか。CES 2019の展示から、5Gの最新動向を見ていこう。

CES 2019では出展各社が「5G」をアピール

インテル「クラウドゲーミング」でPCゲームがより身近に

日本においても2019年の先行サービス開始が予定されている5Gだが、そのメリットは単なる「通信の高速化」に限らない。例えば、多くの人が同時に通信できるようになることで、満員のスタジアムや都市部の通勤電車でも快適に通信を利用できるというメリットもある。

インテルのブースでは、5Gを利用した「クラウドゲーミング」を実演。「応答速度の向上」という5Gのメリットを活かし、クラウド上の強力なCPUやGPUを使ってゲームをすることで、一般的なノートPCでもゲーミングPC並みの快適さで遊べることを示した。本格的なPCゲームをスマホでプレイできる時代もいずれ来ることだろう。

インテルによる5Gを利用したクラウドゲーミングのデモ

相次ぐ5Gスマホの登場、「Galaxy S10」に期待

5Gスマホの姿も明らかになってきた。サムスンは5GスマートフォンのプロトタイプをCES 2019のブースに展示。本体にはケースが装着されていたものの、これまでのスマホと大きく変わらないデザインに見える。

サムスンによる5Gスマートフォンのプロトタイプ

さらに同社は、「Galaxy S10」に相当する新製品を、2月20日にサンフランシスコで発表すると予告。新製品の5Gへの対応は明言されていないものの、翌週にはバルセロナでモバイル業界最大の展示会「Mobile World Congress(MWC)」が予定されていることから、他社に先駆けた5Gへの言及が期待される。

サムスンは「Galaxy S10」とみられる新製品を2月20日に発表する

米国では、大手キャリアのベライゾンがサムスンと組み、2019年前半に5Gスマートフォンを投入することも発表されている。米中摩擦によりファーウェイが米国市場から排除されている中、サムスンが米国キャリアと組み、5G市場でリードを築けるかどうかは注目ポイントと言えるだろう。

5Gスマホに必要なモデムやアンテナモジュールを供給するクアルコムのブースには、中国メーカーによる中国市場向けの5Gスマホが展示された。

クアルコムブースに並んだ中国メーカーの5Gスマホ

クアルコムによれば、2019年には同社のモバイル向けプロセッサ「Snapdragon 855」を採用した30機種以上の5G対応デバイスが登場する見込みであるとのことだ。

まずは特定キャリア向けに登場か?

徐々にその姿を現してきた5Gスマホであるが、5G対応には一筋縄ではいかない部分も多い。その理由の1つに、周波数帯の問題がある。5Gの周波数帯には6GHz未満の「Sub6」と28GHz帯などの「ミリ波」の2種類があり、その細かい仕様は国やキャリアによって異なる。

現行のLTEにもこうした差はあり、幅広いバンドに対応するiPhoneでも地域ごとに複数のモデルを展開している。5Gスマホも同様に、まずは特定のキャリアに最適化されたモデルとして出てくる可能性が高い。

モトローラによる5G対応の拡張モジュールはベライゾン向けとなっている

日本における5Gは、大手キャリア向けの周波数割り当てが2019年3月に予定されており、ドコモは2019年9月にプレサービスを、KDDIやソフトバンクは2019年に一部エリアでサービスを開始するという。

ただし、5Gサービスが始まってもすぐに全国で5Gがつながるというわけではなく、まずはLTEを補完する形で提供すると見られている。このことから、5G対応のスマホが登場しても、5Gをフルに活用できる状況は限定的になることだろう。

他にも、アップルや毎年春にフラッグシップを発表してきたファーウェイの動向も注目される。各国で5Gが本格始動する2020年に向けて、2019年は端末メーカーやキャリアによる「先行導入」の動きが加速しそうだ。

渦中のファーウェイ、2019年も快進撃は続くのか

渦中のファーウェイ、2019年も快進撃は続くのか

2019.01.08

米中対立、CFOの逮捕、……ファーウェイはどうなってしまうのか

中国への漠然とした不安、日本市場での立ち回りは?

「分離プラン」の後押しもあり、コスパ競争では有利になりそう

破竹の勢いで成長を続けるファーウェイが、正念場を迎えている。2018年には、米中対立が深まる中、カナダでのCFOの逮捕や米国などにおける政府調達からの排除が連日報じられ、世界的な注目を浴びた。

ファーウェイの最新スマホ「HUAWEI Mate 20 Pro」

日本市場でファーウェイは、ソフトバンク向けの基地局に加え、スマートフォンやタブレットといった各種端末を展開しており、シェアを拡大している。果たして2019年はどうなるのだろうか。

日本市場に大きく食い込んだファーウェイ

世界のスマホ市場でファーウェイは、2018年第2・第3四半期にアップルの出荷台数を抜き、シェア2位に浮上。12月25日には年間出荷台数が2億台を超えたことを発表するなど快進撃を続けており、トップシェアのサムスン電子の背中が見えてきた格好だ。

国内ではSIMフリー市場でシェア1位を維持しており、大手キャリアを含めたスマホ市場全体では5位(MM総研調べ、2018年度上期)にランクインした。秋葉原に続き、梅田にもヨドバシカメラ店舗内のショップをオープンするなど、着実に存在感を高めている。

ショップ展開も拡大

ファーウェイが急速にシェアを伸ばしている背景には、端末のコスパの良さがある。価格が安いだけの製品なら悪評が広まってすぐに売れなくなるが、ファーウェイ製品は実際に購入したユーザーからの評価が高い。コストにシビアなMVNOからも品質の高さや故障率の低さが評価され、採用が相次いでいる。

さらにファーウェイは、国内大手キャリア向けにモバイルWi-Fiルーターやタブレットなどの端末を納入してきた実績がある。2018年には最上位スマホの「HUAWEI P20 Pro」をNTTドコモが、「HUAWEI Mate 20 Pro」をソフトバンクが採用したことで大きな話題になった。

「Mate 20 Pro」はソフトバンクから1月11日に発売予定

日本の消費者を相手にする国内大手キャリアは、品質への要求が非常に高いことで知られている。日本で採用されたという実績はファーウェイのブランドイメージ向上を後押しし、海外展開にプラスに働いている面もあるようだ。

だが、一連の報道ではファーウェイの名前が連呼されたことで、ファーウェイを知らない消費者にも知名度が上がった一方、中国への不信感と同様の感情をファーウェイにも抱いた人が少なくないと思われる。これが2019年にどう影響するのだろうか。

基地局インフラからは除外も、端末販売は継続か

2018年12月19日に開かれたソフトバンクの上場会見では、ファーウェイ製の「基地局」と「スマホ」の扱いについて、CTOの宮川潤一氏が説明。基地局については政府方針に従って置き換えを検討するものの、スマホについては「『消費者が選択できることもあり、政府は言及するつもりはない』と聞いている」と語った。

ソフトバンクCTOの宮川潤一氏

基地局について宮川氏は、「技術が良くて、価格も安い。使いたいのはやまやまだが、日本政府の方針に従う」と、技術者ならではの本音を漏らす場面もあった。業界内でもこうした声は多く、安い、速い、サポートが手厚いといった理由でファーウェイを評価する向きは多い。

一方、スマホについては利用規約においてユーザー情報収集をしているとの説明があり、不安の声が上がった。だが、これは他のスマホメーカーと大差ないもので、ユーザーの同意に基づき製品の機能改善やバグ修正に必要な範囲にとどまっているという。

一連の騒動を受け、ファーウェイ・ジャパンは日本市場向けにメッセージを打ち出しており、東日本大震災における復旧への取り組みや、日本企業から6700億円の部品を調達していることなどを訴えている。中国に漠然とした不安を覚える人が増えた一方で、ファーウェイには信頼感を持った人も多いようだ。

2019年のモバイル市場では、端末と回線の分離が焦点となり、スマホ本体を値引きする端末購入補助が問題視される確率が高い。その結果、iPhoneのニーズは底堅い一方、高価格帯の国産スマホは大きく苦戦する可能性が指摘されている。

端末購入補助がなくなると、スマホ本体はコスパ重視の競争になる可能性があることから、ファーウェイで日本国内のデバイス事業を統括する呉波氏は、「端末メーカーが同じスタートラインに立てる」と予測。コスパ競争ならファーウェイが有利になるとの含みを持たせた。

ファーウェイデバイス 日本・韓国リージョンプレジデントの呉波氏

2019年10月には、楽天が自前でインフラを整備する通信キャリア事業に参入する。楽天はファーウェイなど中国メーカーの基地局は採用しないと説明しているものの、スマホについてはかつてファーウェイ製品を独占販売し、成功させた実績がある。楽天とファーウェイのタッグが再び実現するかどうかも2019年の見どころになりそうだ。