「山口健太」の記事

山口健太

山口健太(やまぐち けんた)

ITジャーナリスト

1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て2012年よりフリーランスのITジャーナリストとして独立。国内外の発表会取材や製品レビューに基づくウェブ/雑誌記事の執筆を中心に活動。著書に『スマホでアップルに負けてるマイクロソフトの業績が絶好調な件』(KADOKAWA/アスキー・メディアワークス)。
働く人の「気持ち」を見える化する、パナソニックの働き方改革<br />

働く人の「気持ち」を見える化する、パナソニックの働き方改革

2019.05.31

パナソニックが働き方改革を支援する新サービスを発表

ノートPCのフロントカメラで働く人の「気持ち」を見える化

「働き方改革関連法」の施行や来たる東京五輪が成長を後押し

パナソニックが働き方改革を支援する新サービスを発表した。ノートPCのフロントカメラを用いて、働く人の「気持ち」を見える化できるという。

働き方改革支援サービスに「気持ちの見える化」を追加

日本企業の働き方改革が本格化する中、単に労働時間を減らすだけでなく「会社の成長」との両立を訴えるのがパナソニックだ。その中で、独自の技術で「気持ち」を見える化する狙いはどこにあるのだろうか。

働き方改革では「会社の成長」との両立が重要

2019年4月、時間外労働の上限規制などを含む「働き方改革関連法」が大企業向けに施行され、中小企業でも2020年4月から始まるなど、働き方改革がビジネスの現場に本格導入されつつある。

さらに2020年の東京五輪では、首都圏で交通機関の混雑が予想される。そこに向けて、在宅勤務やテレワークなど、働く場所を拘束しないワークスタイルに向けた動きが加速するというのがパナソニックの見立てだ。

そこで同社は2018年、パソコンの使用状況を見える化するサービスを発表した。「1日の半分以上をメールの送受信に使っていた」など仕事時間の内訳を可視化することで、時間配分の最適化や余った時間での価値創造を狙いとする。すでに1万3000台のパソコンで稼働しているという。

働いた時間を見える化する「しごとコンパス」。「申告と実績」の差も明らかになる

4月に追加した新機能では、PCの実使用時間を各企業の勤怠管理システムと比べることで、申告と実績の差異が分かるようになった。これまで勤務時間とは認められにくかったグレーな作業時間をカウントするのが狙いだ。

パナソニック社内での導入事例

こうしたツールを投入する狙いとして、単に労働時間や残業時間を短縮して従業員の健康を守るだけでなく、働き方改革を成功させるには「会社の成長」を両立させることが重要であるとパナソニックは主張している。

「会社の成長」との両立を主張する

しかし、労働時間を短くすればその分だけ業績が落ちるのではないか、との懸念を持つ企業はまだまだ多い。そこで技術による裏付けに基づき、「働き方改革を導入すれば、会社は成長できる」という道筋を示すことが、普及に向けた近道というわけだ。

カメラを用いた非接触センシング技術を活用

今回、パナソニックが新サービスとして発表した「きもちスキャン」は、従来の働き方改革支援サービスに追加できる月額制のオプションサービスだ。

具体的には、パナソニックのノートPC「Let's note」のフロントカメラで撮影した顔の映像を、独自のバイタルセンシング技術で解析することで、従業員の「元気度」を見える化するサービスになる。

フロントカメラで顔をスキャン。測定は2分程度で終わる

常にカメラに顔を監視されるわけではなく、測定は2分程度で終わる。外光など環境に左右される恐れはあり、マスクなどは外しておく必要がある。Let's noteの対象機種は限られるが、今後拡大していくという。

仕組みはこうだ。血管の容量変化から脈拍レベルを推定する技術を応用し、カメラの映像を独自技術でノイズ処理し、脈拍レベルを取り出す。毎日、同じくらいの時間に測定した記録を蓄積していくことで、気持ちの変化が分かるようになるという。

顔の映像をノイズ処理し、活動量を推定する

発表会には日本疲労学会の小泉淳一氏が登壇。電極を用いて従業員の自律神経活動レベルを測定し、疲労を推計した事例を示し、「これを非接触で測定できるのは大きな進歩だ」と評価した。

企業内での活用として、部門内で10人以上が導入している場合、管理職は個人を特定しない形で従業員のデータを閲覧できる。部門内での活動量の変化を見ていくことで、有給の取得を促すなどの対策ができるという。

技術的な背景には、パナソニック独自の「非接触バイタルセンシング技術」がある。同社はこれまで国内外の展示会などで積極的にアピールしており、専用のセンサーではなく一般的なカメラで人間の感情を把握できれば、オフィスだけでなくスポーツや医療分野など応用範囲は広い。

非接触バイタルセンシング技術。CES 2019のパナソニックブースにも出展した

働き方改革の本格化に伴い、労働時間の短縮や生産性の向上をうたうさまざまな製品やサービスが登場している。その中でパナソニックの強みは、独自のセンシング技術によりテクノロジーの力で働き方改革を後押しできることにありそうだ。

渦中のファーウェイ、スマホ新製品も発売延期が相次ぐ

渦中のファーウェイ、スマホ新製品も発売延期が相次ぐ

2019.05.24

米国政府がファーウェイを輸出規制リストに追加した

ファーウェイ製品の発売延期を決定する事業者が続出

輸出規制は世界経済の混乱を招く事態に……

米国政府がファーウェイを輸出規制リストに追加したことで、米中の貿易摩擦が加速している。5月21日には国内向けにスマホ新製品の発表会を開催したものの、発売を延期する事業者が相次ぐ事態となっている。

ファーウェイはスマホ新製品を発表したが、販路の多くで発売延期に

スマホ世界シェア2位に躍り出るなど、破竹の勢いで成長してきたファーウェイだが、果たして打開策はあるのだろうか。

世界シェアは再び2位に、国内でも攻勢に

ファーウェイはスマホ世界シェアでアップルと2位争いを繰り広げている。年末商戦シーズンにはアップルが2位に返り咲いたものの、2019年第1四半期にはファーウェイが前年比50%増となる5900万台を出荷したことで、再び2位に戻る形になった。

新製品発表会に登壇したファーウェイ デバイス 日本・韓国リージョン プレジデントの呉波氏

スマホ市場が伸び悩む中で、なぜファーウェイは劇的な成長を遂げたのだろうか。2018年後半から米中貿易摩擦が報じられる中、買い控える動きもある一方で、世界的な露出の増加によって、製品を手に取ってみる人が増えたことが背景にあるとファーウェイは見ている。

国内でも順調に伸びてきた。依然としてiPhoneはシェアの半数近くを占めるものの、直近1年間で最も売れたAndroidスマホはファーウェイの「P20 lite」だという(BCN調べ)。コスパの良さが高く評価されているのが特徴だ。

2019年夏モデルでは、NTTドコモがフラグシップ「P30 Pro」を、KDDIは「P30 lite PREMIUM」の取り扱いを発表。MVNOやオープン市場には「P30」と「P30 lite」を投入するなど、あらゆるセグメントに向けて最新ラインアップを一挙投入する予定だった。

ベストセラーの後継モデルとして期待される「HUAWEI P30 lite」

だが、こうしたファーウェイの快進撃に待ったをかけたのが、米商務省が発表した輸出規制リストへの追加だ。

複数の企業が取引を停止、国内で発売延期も相次ぐ

米商務省が5月15日にファーウェイを輸出規制リストに追加したことで、米国の製品やサービスをファーウェイに対して輸出することが同日より規制された。米国製の半導体やソフトウェアなどを利用できないのは大きな痛手だ。

その後、重要なサービスにファーウェイ製品を用いる企業向けに90日の猶予期間が設けられたものの、これからどうなるかは不透明な状況だ。グーグルやクアルコムなど米国企業をはじめ、米国技術に大きく依存している英Armもファーウェイとの取引を停止すると報じられている。

国内では早いものでは5月24日からP30シリーズのスマホが販売される予定だったが、大手キャリアやMVNO、量販店などが相次いで発売延期や予約停止を発表。既存のファーウェイ製品については販売が続いている状況だ。

NTTドコモが今夏発売予定の「HUAWEI P30 Pro」は予約受付を停止
KDDIの「HUAWEI P30 lite PREMIUM」の発売を延期した

ファーウェイは米国に頼らず必要な部品を調達する構えも見せているが、ファーウェイ包囲網は世界的に広がりつつある。OSであるAndroidはオープンソース版を自由に利用できるものの、グーグルのサービスがなければ海外展開は困難だ。

独自のKirinプロセッサーを有しているとはいえ、Armのライセンスがなければ開発継続は不可能とみられる。スマホ以外にも基地局などの通信インフラでファーウェイのシェアは高く、輸出規制が長引けば世界的に混乱を招きそうだ。

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

ドコモがQR決済に本気、「d払い」の全国普及なるか

2019.05.22

NTTドコモがスマホ決済の「d払い」を強化する

競合ひしめくなか、ドコモはどこに勝機を見出したのか?

NTTドコモは、夏モデル発表会においてスマホ決済の「d払い」の強化を発表した。送金やミニアプリなど新機能を追加し、ドコモの会員基盤をベースにキャッシュレスを普及させるビジョンを示した。

ドコモがスマホ決済「d払い」を大幅強化

PayPayを始めとするスマホ決済各社は、還元キャンペーンや加盟店開拓などで競争を繰り広げている。ドコモはどこに勝機を見出したのだろうか。

「d払い」が送金やミニアプリに対応

電子マネー「iD」やクレジットカード「dカード」を展開するドコモが、2018年4月に始めたスマホ決済が「d払い」だ。FeliCaの搭載が必要だったおサイフケータイとは異なり、バーコードやQRコードを用いるd払いはほとんどのスマホに対応できる。

d払いアプリのダウンロードは2019年5月に500万DLを達成し、2019年度は1000万DLを目標に掲げた。利用箇所はiDとdポイント、d払いの合算で2019年4月に100万箇所。2021年度末の目標は200万箇所とした。

d払いの強みは、「dポイント」との連携だ。ドコモの利用料金やdカードからの還元だけでなく、キャリアに関係なく持てる「dポイントカード」でポイントが貯まる。2018年度の利用総額は1年間で1600億ポイントに達し、d払い利用者の53%が支払いにdポイントを利用しているという。

さらにドコモはd払いに新機能を追加してきた。9月末に提供する「ウォレット」機能では、ドコモ契約者向けだった「ドコモ口座」を誰もが使えるようキャリアフリー化し、チャージや送金の機能をd払いアプリに統合する。

ドコモ口座をd払いに統合する「ウォレット」

複数の加盟店アプリを1つにまとめた「ミニアプリ」は、秋以降に展開する。d払いアプリから加盟店のサービスを呼び出すことで、「ハンバーガーの事前注文」や「タクシーの配車」が可能になる。加盟店の専用アプリを入れる必要がなく、d払いで決済もできるのがメリットだ。

「ミニアプリ」はローソンとマツモトキヨシから開始予定

QRコードの読み取りも強化する。これまでd払いは利用者がスマホ画面のQRコードを店舗側に見せる「CPM」方式に対応しており、コンビニのようなPOS連携が必要になるなど中小店舗にはハードルの高い仕組みだった。

コードを「見せる」「読み取る」の両方式に対応

そこでd払いは、顧客がスマホのカメラで店舗のQRコードを読み取る「MPM」方式への対応を発表。PayPayなど多くの事業者に続き、d払いも6月末には両方式に対応することで、大型店舗だけでなく中小店舗に展開していく体制を整えたというわけだ。

アプリを大幅強化、「マルチQR」にも対応

次々と新機能を追加するd払いでは、アプリも大きく変わることになる。開発中のアプリ画面には、ドコモ口座への入金と送金、ポイント送付、割り勘、ミニアプリなどの機能が所狭しと並んでいた。

d払いアプリを大幅強化

参加企業が増えればミニアプリには多くのアイコンが並ぶことになるが、これにはカテゴリ分けなどで対応していく考えだ。ミニアプリの仕組みは、既存システムとのAPI接続や専用パッケージの提供など、さまざまな方式を検討するという。

また、増え続けるQRコードへの取り組みも発表した。1つのQRコードで複数の決済サービスに対応できるデジタルガレージの「クラウドペイ」に、d払いも対応する。

1つのQRコードで複数の決済サービスに対応

クラウドペイでは、店舗側が支払う決済手数料は一律3.24%(税込)となるものの、固定費や機器の導入は不要で、複数の決済サービスをワンストップで契約できるなどのメリットがある。

全国のドコモ代理店が加盟店開拓へ

今後は全国のドコモ代理店の営業リソースを活用し、加盟店を拡大していくという。最近ではソフトバンクの営業部隊がPayPayの加盟店を次々と開拓する快進撃を続けており、そこにドコモが勝負を挑む構図になりそうだ。

d払いは、スマホアプリを中心にさまざまなサービスにポイントを循環させるビジョンを描いている。ドコモの発表からは、これまで以上にアクセルを踏み込む姿勢が感じられた。dポイントを絡めた「20%還元」など、新たなキャンペーンにも期待したい。