「大河原克行」の記事

大河原克行

大河原克行(おおかわら かつゆき)

ジャーナリスト

1965年、東京都生まれ。IT業界の専門紙「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年フリーランスジャーナリストとして独立。電機、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を行う。著書に「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)など。
あくまでプリンター中心に成長描くブラザー、2021年に向け再始動

あくまでプリンター中心に成長描くブラザー、2021年に向け再始動

2019.03.01

ブラザーが次の3年間に向け中期経営計画を発表

改めてプリンティング領域での勝ち残りを目指す

佐々木社長はブラザーらしさを強みとしたいと強調

ブラザーグループは、2021年度を最終年度とする中期経営戦略「CS B2021」を発表した。2021年度に、売上収益で7,500億円(新計画の為替レートを反映した2018年度見通しは6,650億円)、営業利益が750億円(同645億円)、営業利益率は10.0%(同9.7%)を計画する。また、今後3年間に500億円の成長投資枠を設定。産業用領域のさらなる拡大、新規事業の創出および育成などに投資する。

ブラザーグループが新中期経営戦略を発表した。会場になったのは愛知県名古屋市のブラザーミュージアム

中長期の計画、改めてプリンティング勝ち残りを打ち出す

ブラザー工業の佐々木一郎社長はCS B2021について、「会社の成長を中長期的に捉え、次の成長に向けた経営基盤に作り直すことが大切だと考えた。それが、今回の中期経営戦略の基本的な考え方になる」と説明する。「TOWARDS THE NEXT LEVEL(次なる成長に向けて)」をテーマに、まずは「プリンティング領域での勝ち残り」、そして「マシナリー・FA領域の成長加速」、「産業用印刷領域の成長基盤構築」、「スピード・コスト競争力のある事業運営基盤の構築」をあわせた計4項目に取り組むとした。

ブラザー工業 代表取締役社長の佐々木一郎氏

佐々木社長はCS B2021の計画にあたり、社員に「ブラザーの強みはなにか」と聞き取りをした。社員の答えは、「時代の変化に対応してきた柔軟性、きめ細かいニーズに対応する小回り力、コストパフォーマンスに優れた製品によるコスト競争力だという声が多かった」というが、一方で、「ブラザーの弱みはなにか」と聞くと、「スピードが落ちてきている。危機感が欠如している」という声があがったという。佐々木社長は、「これまでの強みが、弱みになっている。大企業ではないのに、社内に大企業病がはびこっている。もう一度、巻き直して、本来の強みを研ぎ澄まさないといけない」と危機感を感じたという。

そして、「あれもこれもやるのでなく、大事な課題に絞り、取り組んでいく」という決断をした。具体的には、「事業基盤の整備と、プリンティング事業での勝ち残り戦略をきちっとやっていく」ことを柱に据えた。そして、その先を見据え、「産業用領域を次世代の柱になるように伸ばしていく」ことを盛り込んだ計画とした。

CS B2021の骨子。計4項目に取り組む

プリンティング中心から複合事業企業への転換は?

ブラザーではかねてより、グループ全体に向けて「グローバルビジョン21(GV21)」という経営ビジョンを掲げており、その目標として、「グローバルマインドで優れた価値を提供する高収益体質の企業」、「傑出した固有技術によってたつモノ創り企業」、「“At your side.”な企業文化」の3つを掲げている。

今回発表した「CS B2021」は、同ビジョンの実現に向けたロードマップに位置づけられている。

CS B2021は、ブラザーの経営ビジョン「グローバルビジョン21」の実現に向けたロードマップの役割をはたす

このひとつ前の計画、2018年度を最終年としていた「CS B2018」では、プリンティング領域中心の事業構成から、複合事業企業体への変革を目指していた。それとともに、事業、業務、財務の3つの変革に取り組み、プリンティング領域での大幅な収益改善、産業用領域での売上げ成長を達成している。

CS B2018で掲げていた目標

だが佐々木社長は、「プリンティング事業領域では、デジタル化の進行によって、印刷機会が減少。これからもインク、トナーの純正率の減少が進む。また、所有から利用へと購買行動の変化、サービスニーズの多様化などが変化が見込まれる。産業用領域においても、省人化や自動化、トレーサビリティやカスタマイズ需要が高まっている。GV21の達成のためには、これまでに以上に踏み込んだ改革が不可欠であり、もっとスピードをあげて取り組み必要がある」と、事業環境の変化がいっそう著しいなかで、改革の手を緩める余裕は無いことを強調する。

顧客とつながるブラザーらしいビジネスモデルを提供

CS B2021における「プリンティング領域での勝ち残り」では、「ブラザーらしい新たなビジネスモデルへの転換を加速する」として、「売り切りではなく、顧客とつながるビジネスモデルモデルへの転換」を進めることで、ブラザーらしい価値を提供し続けながら勝ち残りの実現を目指すという。

個人およびSOHO向けには、大容量インク/トナーモデルや、消耗品のバンドルといったTCO(Total Cost of Ownership: 総所有コスト)に優れた製品提案により、本体収益を向上させる。消耗品を手軽に購入できるサービスを拡充することで、顧客が気をつかわずに済む自動発注サービスや、月額定額モデルの導入を推し進める。さらに、プリンターに連携するスマホアプリの充実など、新たな用途提案も行っていくという。

「ファーストタンク」搭載の大容量インクプリンター

また、中小企業向けには、チャネル・パートナーとの緊密な協業により、本体、サービス、消耗品を対象とした契約型ビジネスモデルを強化する。中小企業の顧客が求めるカジュアルなソリューションを提供することで、顧客とのつながりを強化するとした。佐々木社長は、「競合各社が強固な直販体制を敷いており、いまからそこで対抗していく必要はない」という考えから、「パートナーによる販売体制をさらに強化していく」と説明する。

上記のような新規ビジネスモデルによるプリンター販売台数の比率は、2018年度には15%ほどというが、これを3年間で倍増させて、2021年には30%に高める考えだ。

新ビジネスモデルの割合を倍増させる計画だ

そのほか、高付加価値を持った上位機種へのシフトも促す。A4が主力のプリンターメーカーというユニークなポジションを最大限に活用したOEM供給も拡大する。さらに、通信・電気配線用マーキングや製造業向けラベルプリンター事業の拡大など、特殊業務用途へのビジネスにも拡大の余地があるという。売上増加施策を出す一方で、事業コストを削減するため、生産設備の自動化を推進し製造原価を低減するとともに、生産拠点を最適化し、加えてバックオフィス業務の効率化にも取り組むとした。

ところで2021年度のプリンティング領域の売上収益は、計画では3,880億円を目指している。ただ2018年度の見通しが既に3,820億円であり、つまり売上規模では大きな成長を見込んでいない。これについて佐々木社長は、「いまのプリンティング事業は出来すぎている。プリントボリュームの減少や、互換インクの広がりを考えると、これ以上の増益は見込めない」と説明する。通信・プリンティング機器の市場が縮小するなか、売上規模は維持したい考えだ。ラベルプリンターなどの電子文具は、高いプリントボリュームの業務用途が見込まれることから「売上拡大を目指す」としている。

2021年度計画、プリンティング以外の3領域は?

「マシナリー・FA領域の成長加速」では、自動車や一般機械市場の強化による産業機器分野の大幅な成長と、省人化や自動化ニーズを捉えたFA領域の拡大を目指す。

「ボラタリティの高いIT市場では大きな成長を見込まず、自動車および一般機械市場で高い成長を見込む。ここでは、リソース増強や拠点拡充を計画している」(佐々木社長)という。

2018年度見通しでは550億円の売上収益を、2021年度には810億円に拡大させたい考えだ。

「産業用印刷領域の成長基盤構築」でも成長を再加速する。ブラザーはこの領域の事業に参入するため、ペットボトルやワインボトルなどのラベル印刷などに実績を持つ、産業用印刷の英国ドミノ社を買収、子会社化している。ドミノ社の製品およびサービスでの競合優位性を最大限生かし、新製品の投入と販売やサービスの強化、チャネル投資の強化を行い、大幅な成長を目指す。

英ドミノのインクジェットプリンター

特に、食品の賞味期限などを印刷するモノクロプリンティングのC&M(コーディング&マーキング)は、既存顧客とのつながりを基盤に、市場全体の成長を上回る伸びを目指す。物流分野でも、荷物に貼付するラベルを高速で印刷するといったニーズが広がっているほか、ダンボールへの直接印字や、印刷したラベルの自動貼付といった二次梱包領域でのニーズも生まれているという。

産業用印刷の市場規模は巨大で、成長にかける期待も大きい

一方で佐々木社長は、「ドミノでの開発が遅れているのが実態」という懸念もあるというが、「ブラザーとのシナジーによる開発体制の強化によって、開発スピードを向上させるほか、顧客のもとに出向いて、ニーズに則した開発を行うブラザーの手法も導入していく」と改善を目指す方針だ。

2018年度には680億円だったドミノ事業の売上収益は、2021年度には880億円を目指す。

そして最後に「スピード・コスト競争力のある事業運営基盤の構築」では、グループ全体の業務プロセスを抜本的に見直し、業務を効率化させるとした。RPAやAIの活用により、定型業務の自動化も進めるという。佐々木社長は、「より少ない人数で、短期間に、低コストで開発できるようにする。これにより人員を最適化し、新たな領域への人員を捻出していく。業務生産性を10%向上させ、総業務時間の10%にあたる約70万時間の創出を目標とする。これは原点回帰の取り組みとして重要なものになる」話している。

また、収益管理を強化し、きめ細やかにテコ入れや立て直し施策を実行していく姿勢もみせた。「利益が出ていないビジネスは、利益が出ているビジネスに隠れてしまって見えない。サブ事業単位で損益管理をすることで、不採算事業や低収益事業の収益改善につなげ、80億円の営業利益改善を目指す」とした。

ブラザーらしさへの原点回帰、成長につながるかに注目

2021年度の成長計画を発表する一方で、売上収益では約600億円の未達に終わった2018年度までのCS B2018を、佐々木社長は次のように総括する。

「600億円の未達は、為替影響でマイナス400億円、事業の落ち込みでマイナス150億円、会計制度の変更の影響でマイナス50億円という要因があった。プリンティング事業、産業機器事業、ドミノ事業は計画を上回ったが、他の事業により下回った」

「CS B2018では、できたこともあるが、積み残したこともある。積み残したことは、産業領域での成長加速、新規事業の仕込み、事業の選択と集中の徹底のほか、抜本的な業務プロセスの変革によるスヒード、コスト面での競争優位の確立だ。さらには、育成や成長機会の提供を通じたグループ全体での人材の底上げ、全社的な筋肉質化に向けた組織横断での最適人材体制の実現などもあげられる」

これらを新たな中期経営戦略のなかで解決していくことになる。

佐々木社長は、「新たな中期経営戦略は、成長を中長期的に考え、この3年間は、次の成長のために会社を強くしていく期間だと捉えている。そのためには、改革を、もっと早く、もっと踏み込んで進めていきたい」と意気込む。

ブラザーを取り巻く環境が厳しいのは確かだが、それを生き抜くためのCS B2021の中身は、ブラザーらしさへの原点回帰が柱だ。

基盤強化を前面に打ち出した中期経営戦略ではあるものの、売上収益および営業利益は3年間で2桁増を見込む、高い成長目標を組み込んだものになっている。果たして成長と基盤強化を同時に進めることができるかが、この3年間の注目点になりそうだ。

東芝「白物家電」の現在地、再スタートから2年半… 新社長が語る2019年

東芝「白物家電」の現在地、再スタートから2年半… 新社長が語る2019年

2019.02.12

立ち直りつつある東芝「白物家電」の決算

マイディア効果が大きかった2018年の成長

新体制で改めて挑む白物家電の成長戦略

「中国マイディアグループ傘下で再スタートを切ってから約2年半を経過し、2018年から、いよいよ成果が出てきたというのが実感である」--。

東芝ブランドの白物家電事業を行う東芝ライフスタイル(TLSC)が、2018年度の成果と、2019年度以降の事業方針について説明した。同社の小林伸行社長にとっては、2018年4月に社長に就任してから初の方針説明の場となった。その内容は、初の通期黒字化や製品ラインアップの拡充など、統合の成果が生まれていることを示すものであった。

2018年度は初の通期黒字化を達成

中国マイディア効果が寄与した2018年の成長

東芝ライフスタイル 取締役社長の小林伸行氏

同社の2018年度(2018年1月~12月)の売上高は2,620億円。新体制がスタートする以前の2016年度の売上高である約2,400億円からは約220億円、同2017年度からは100億円強の増収となり、2年間で約10%の成長を遂げた。

また、税引前利益は、2016年度および2017年度はいずれも赤字だったが、2018年度はそこから約60億円改善して、「わずかだが、黒字になった」(小林社長)という。

黒字化の要因について、小林社長は、「コスト削減効果が大きかった。また、マイディアグループの調達力が寄与している」とマイディアとの連携効果をあげる一方、「これまでに一時休止していたカテゴリーの製品を強化したり、新たなカテゴリーの商品を投入したことが大きかった」とも説明する。

そこでは、商品力、開発・設計力の強化や、コスト競争力強化、市場・商品ラインアップの拡充がポイントであり、「グループ製造拠点の相互乗り入れによる効率運用、大規模調達力によるコスト競争力強化による効果が出ている」という。

たとえば、冷蔵庫を例にあげると、東芝ライフスタイルが持つ中国の工場の生産性は、2016年に比べて、80%も向上したという。また、400リットルクラスの冷蔵庫では、生産コストを20%も削減できたともいう。

マイディアとの連携がコスト競争力強化に繋がった

小林社長はこれを、「中国の工場の生産キャパシティは約100万台。だが、統合前は稼働率が半分に留まっていた。現在は、東芝ブランドの冷蔵庫を、マイディアの中国の販売ルートに乗せたり、マイディアブランドの冷蔵庫を生産するといったことで、フル稼働しており、それが生産性を高めることにつながった」と説明する。

今の東芝ライフスタイルの強みとは?

世界第2位の家電メーカーならではの調達力は、とても大きな要素だ。

かつての体制では、中国向けには、年間100万台の冷蔵庫を生産しているにすぎなかった。だが、マイディアグループでは、年間2,500万台の冷蔵庫を中国向けに生産している。これが「圧倒的な調達力が強みになり、冷蔵庫以外の様々な製品で生かされている」という。

そして、新たに12カテゴリーの製品を投入したことが、売上げ拡大に貢献した。

実際に同社はマイディアの生産力、コスト力を活かし、これまでカバーできていなかった日本市場向けの150リットルクラスの小型冷蔵庫、16リットル以下の電子レンジや、単機能の電子レンジ、4.5kgの洗濯機などの製品を矢継ぎ早に追加した。

一方で小林社長は、意識改革、成果主義の徹底も、成長につながるポイントになったと振り返る。

権限を委譲する代わりに、責任を持たせ、利益を配分する成果主義の手法を徹底した。小林社長は「これで、従業員の意識は大きく変化した」とし、これが、「自分たちの会社、あるいは自分たちのブランドを継続し、発展させていくという意識につながった」と話す。さらに、組織体制の効率化、プロセスの見直しによるコスト改善、評価制度の見直しなど、直接的な数字に表れていない部分での改善も進め、これが、「成長を支えるバッググランドになった」とも話す。

小林社長は、この変革を「自分ゴトの会社風土の熟成」と表現した。他人ゴトではなく、自らが率先して取り組み、自立した組織風土に作り替えている。大企業の意識から脱却し、スタートアップ企業のような文化を作ろうとしている。

意識を変え、「自分ゴトの会社風土の熟成」を進める

小林社長は、「事業を継続するためには、すべてのステイクホルダーから、東芝ライフスタイルという会社が必要であると認めてもらわなくては成り立たない。そうしなければ自立ができたとはいえない。その中心にいるのがお客様である。お客様を中心に置き、将来に向けて成長に向けて、自らが投資をしていく。そのためには、利益を自分たちで生み出す必要がある」とし、「まだ少しだけの黒字ではあるが、それが自信につながり、これからやっていけるという確信につながる。私自身もそうだし、従業員もそうである」と、意識改革の重要性を重ねて強調する。

立ち直りつつある状況、残る課題は?

だが、その一方で、「スピードもまだまだ遅く、やらなくてはならないことも多い」と、手綱を締める。

たとえば、モノづくりにおいては次のように語る。

「東芝ブランドの白物家電は、お客様中心のモノづくりがDNAではあるが、ここ数年、それが少し足りなくなっていたという反省があった」

小林社長自身、東芝時代に約30年間に渡り、家電事業一筋で携わってきた経験を持つ。洗濯機以外の家電は、すべて担当したことがあると話す。

そうした経験から見た反省点を解決するため、2018年には社内に企画、デザイン、研究開発を一体化したコンシューマーイノベーションセンター(CIC)を設置した。

「(CICで)横串をさして、先行開発、デザイン力、商品力、そして、マイディアの技術を取り込んだグループ連携によって、総合力を生かせる体制を整えた。多様化している日本の消費者のライフスタイルにあわせた商品、サービスの提案を目指している。そうした製品やサービスを提供することが、大切であると認識しており、それをしっかりと評価していただくことが、今後の成長に直結する」

東芝の白物家電事業が持つDNAをしっかりと復活するため、土台づくりにも余念がないというわけだ。

東芝「白物家電」の2019年、どうやって成長する?

2019年以降の成長戦略も意欲的だ。

今後3年間の売上高の年平均成長率は10%、ROSは3年で5%を達成する目標を掲げた。

3年間で売上高を年平均10%成長、ROSは5%達成を目標とした

ここでは、製品ラインアップの拡大に加えて、継続的な効率化、コスト削減への取り組みを進める一方で、グローバル展開も視野に入れる。小林社長は、「現在の海外売上げ比率は約3割。まずは、4割程度にまで引き上げたい」と、海外事業を成長戦略の軸に据える考えだ。

2019年には、欧州市場に新たに参入し、2020年にはインド市場への参入を目指す。インドでは、電子レンジ、洗濯機、エアコンなどの製品投入を想定しているという。

だが、「白物家電としての東芝ブランドは、これから新たに作り上げていかなくてはならない」というハードルもある。インドや欧州では、東芝ブランドが知られてはいるが、それはテレビやPC(パソコン)によるものだからだ。

小林社長は、「東芝ブランドの白物専業メーカーとして、日本発のブランド戦略をグローバルで展開し、さらに成長し、グローバルで輝く東芝ブランドを作り上げていく」と意気込む。

日本からグローバルに展開し、再び「輝く東芝ブランド」構築へと意気込む

わずかとはいえ、2018年に黒字化したことは、東芝ライフスタイルの復活という意味では、大きなステップとなった。

「東芝時代から変わらないモノづくりのDNAの向こうに、我々の未来を見たい。スピードをあげて、意識を変えて、環境変化のスピードに置いていかれず、さらに、先回りできるように、変化を続け、事業を発展させたい」

マイディアグループの売上高は、2017年度実績で約4兆1,000億円。そのうちの8割が白物家電事業という内訳だ。

「主力事業が白物家電という会社のなかで事業を進めている。それが、東芝時代とは違う点。成長のチャンスを掴むことができた」

マイディアを後ろ盾に、新たに描かれた東芝「白物家電」の成長戦略。目に見えるかたちで、これをこれから新体制がどう推進していくのかが注目される。

主要各社の「8K」戦略、日本の3メーカーは姿勢が大きく分かれる

主要各社の「8K」戦略、日本の3メーカーは姿勢が大きく分かれる

2019.01.15

シャープ、ソニー、パナソニック、大きく異なる8K戦略

オリンピックせまるも、8K家庭普及の見通しに温度差

米ラスベガスで開催された家電見本市「CES 2019」では、主要各社から「8K」テレビが展示されたが、日系メーカー3社の8K戦略には大きな差が出た。

個人向け8Kビデオカメラも投入し、積極的なシャープ

世界初の8Kテレビを2018年11月から日本で発売しているシャープは、CES 2019の展示においても、自らが8K分野のリーディングカンパニーであると改めて訴求する。

8Kディスプレイを一堂に展示したシャープブースの様子
シャープは8Kエコシステムを前面に打ち出した
シャープの石田佳久副社長

4年ぶりにCESのメイン会場であるセントラルホールに出展したシャープの石田佳久副社長は、当日の会見で「シャープは、中期経営計画において、『8KとAIoTで世界を変える』ことを掲げている」と話す。ブース内に数多くのBtoB向け8Kディスプレイを並べた一方、5Gによる8K画像の配信提案や、サードパーティーによる8Kデータ管理サーバーなども展示。ほかにも、8Kテレビの心臓部となるイメージプロセッシングSoCも参考展示していた。8Kの技術や製品、パートナーシップにおいても先行していると強調した内容だ。

8Kテレビの心臓部となるイメージプロセッシングSoCも参考展示
シャープがパートナーシップ戦略のもとに展示した8Kデータ管理サーバー

中でも特に注目を集めたのが、参考展示したコンシューマ向け8Kビデオカメラである。

「8Kの映像を手軽に撮影する提案が重要になる。今回、プロフェッショナル用の8Kカメラに加えて、プロシューマ向けのカメラを新たに用意した」とする。形状はデジカメのようだが、8K動画の撮影に対応。2019年上期には発売する予定だという。価格は3,000~4,000ドル程度を想定している。

石田副社長は、「将来的には、8K映像もスマホで撮影するようになり、そこまでくれば、8Kが幅広く認知されることになる。だが、そこに至るまでにはまだ時間がかかる。シャープは、8Kを普及させるために、8Kに関して、様々な製品を用意して行く考えであり、今回の8Kビデオカメラもそのひとつ。多くの人に使ってもらいたい」と説明する。

シャープが参考展示した8Kビデオカメラ

また同氏は、「シャープは8Kにおけるリーダーとして、8Kディスプレイテクノロジーによりデジタルエクスペリエンスを向上させ、エンターテインメント、放送、教育、ヘルスケア、セキュリティ、製造業など、広範に8Kの価値を提供することになる。8Kエコシステムを通じて、パートナーとともに8Kの価値を十分に引き出した提案を行っていきたい」と述べた。

シャープはCES 2019会期中の1月11日(現地時間)に、マレーシアでASEAN市場初のコンシューマ向け8Kテレビも発表している。画面サイズが大きめの60型、70型、80型の3つの製品を投入し、マレーシアで行われた会見では、「ASEAN市場においても、AQUOS 8Kワールドの幕開けを宣言する」とコメントした。

ただ、主力となる北米市場における8Kテレビ戦略には懸念材料がある。シャープは鴻海グループ傘下に入る前に、北米市場におけるシャープブランドのコンシューマ向け液晶テレビの販売に関して、中国ハイセンスにライセンスを供与している。シャープは、北米でAQUOSブランドのテレビを販売できない。

石田副社長は、「北米には8Kテレビの市場ポテンシャルがあると考えている。いい技術といい製品が完成している。これを米国で販売できないのは残念。できるだけ早く販売を再開したい」と話している。北米市場での今後の協議の行方は注目だろう。

大画面に絞り、8Kテレビを初めて投入するソニー

ソニーはCES 2019において、同社初となる8Kテレビ「Z9Gシリーズ」を出展してみせた。販売地域や価格については追って今春に発表する予定だという。

ソニーの8Kテレビ「8Kテレビ「Z9Gシリーズ」
ソニーの高木一郎専務

ソニーのホームエンタテインメント&サウンド事業担当の高木一郎専務は、このタイミングでの8Kテレビ投入を、「ソニーは、顧客に対する”感動価値”を感じてもらえる製品ができあがったら、8Kテレビをしっかり提案すると話してきた。他社が発売しているような8Kテレビのレベルでは、感動価値を与えられず、製品として出せないと考えていた。今回、ソニーのBRAVIAとして発売できる水準まで到達した」と説明する。

日本では、NHKが8Kの衛星放送を開始しているが、まだまだ8Kコンテンツは少ないのが現状だ。だが、そこにソニーがいう感動価値を提案できるという言葉の背景がある。

「8Kのコンテンツがないという現状で、8Kの感動価値を実現するには、4Kや2Kを8Kにアップスケールできる技術が肝になってくる。それを実現するアルゴリズムとデジタルプロセッシングが完成したことで、他社には実現できない感動価値を提供できることができた」(高木専務)とする。

Z9Gシリーズでは、次世代の高画質プロセッサ「X1 Ultimate」に、8K超解像アルゴリズム用の専用データベースを内蔵する。これにより、あらゆるコンテンツを8K解像度にアップコンバートする「8K X-Reality PRO」を実現できたという。

また、8Kテレビの画面サイズを98型および85型の大型モデルに絞った。高木専務は「8Kテレビは、大画面こそが魅力を発揮すると考えている。北米や中国では、大画面の価値が高まっており、そこに8Kテレビを訴求していくことになる」と話す。

技術の有用性は認めるも、パナソニックは8Kに慎重

一方、パナソニックは、8Kテレビの投入には慎重な姿勢をみせる。

パナソニックの津賀一宏社長

パナソニックの津賀一宏社長は、CES 2019で行った会見で、「8Kテレビは、パネルを買ってきて、回路をつければ製品化できる。だが、放送のソースが限られているなかで、そのソースだけで商売をすることはできない。いまは意味がないと考えており、様子見である」とする。

また、「チューナーを搭載しない8Kモニターは、プロフェッショナル向けやBtoB向けにマーケットが存在するが、ここはニッチなマーケットであり、パナソニックが直接それをやることはない」と、この分野においても、製品投入の可能性を否定する。

しかし津賀社長は、「8Kそのものは使い方によっては、いい技術になると考えている」と話しており、「8Kは、大画面で、多くの人が見られる点にメリットがあると考えている。ここにおけるパナソニックの強みは、高輝度プロジェクターである。高輝度プロジェクターを8K対応していくことは重要視している。東京オリンピック/パラリンピックのパブリックビューイングなどでの活用が想定され、パナソニックは、そこを、がんばる領域に位置づけている」とする。

自らパネルを生産し、8Kの世界を積極的に広げようとしているシャープ。今回のCES 2019では、「クリエイティブエンタテインメントカンパニー」という新たなメッセージを打ち出し、ソニー・ピクチャーズなどが持つコンテンツを最大限に楽しむことを目的に8K戦略を推進するソニー。そして、テレビやモニターでの8Kビジネスには消極的だが、プロジェクターによるBtoB提案に活路を見いだそうとするパナソニック。CES 2019で見せた8K戦略は、三者三様となった。