「土屋武之」の記事

土屋武之

土屋武之(つちや・たけゆき)

フリーライター

1965年、大阪府豊中市生まれ。鉄道員だった祖父、伯父の影響や、阪急電鉄の線路近くに住んだ経験などから、幼少時より鉄道に興味を抱く。大阪大学では演劇学を専攻し劇作家・評論家の山崎正和氏に師事。芸術や評論を学ぶ。出版社勤務を経て1997年にフリーライターとして独立。2004年頃から鉄道を専門とするようになり、社会派鉄道雑誌「鉄道ジャーナル」のメイン記事を毎号担当するなど、社会の公器としての鉄道を幅広く見つめ続けている。著書は「鉄道員になるには」(ぺりかん社)、「まるまる大阪環状線めぐり」(交通新聞社)、「新きっぷのルール ハンドブック」(実業之日本社)、「JR私鉄全線 地図でよくわかる 鉄道大百科」(JTBパブリッシング)など。
特急型電車のホームドア対応問題に、西武鉄道が出した秀逸な解答

特急型電車のホームドア対応問題に、西武鉄道が出した秀逸な解答

2019.03.08

輸送障害を防ぐためのホームドアが多くの駅に!

ホームドアが駅に設置できないとある事情とは?

通勤車両と異なる特急の乗降扉に対応するための工夫

西武鉄道の新型特急電車「Laview」の斬新な外観

西武鉄道の新型特急電車001系「Laview」は、大胆な外観や内装が驚かれ、このところメディアを賑わしている。斬新な発想に基づいてデザインされた車両であり、もちろん注目が集まるのも自然なことだ。2019年3月16日の営業運転開始が待たれる。

「未来志向」を感じさせる電車ではあるが、ただ単に見た目が素晴らしいというだけの特急ではない。最新型であるからには、現在の鉄道に要求されるあらゆる事項をクリアしていることは当たり前である。

公共交通機関に対して利用客がいちばん求めていることは、もちろん目的地までの安全かつ安定した輸送である。しかしながら首都圏においては、しばしば輸送障害が発生しているのが実情だ。その原因の多くが人身事故である。そのため、対策として「ホームドア」の整備が積極的に進められている。

特急型電車がホームドア整備のネック!?

国土交通省では「駅ホームにおける安全性向上のための検討会」が繰り返し開催され、中間とりまとめが2016年12月に行われている。それによれば、一日の利用客数が10万人を越える駅に対し、ホームドアを優先的に整備することとしている。「車両の扉位置が一定など」整備条件を満たしている場合は、原則として2020年度までに整備を完了することが目標だ。

ただ、ホームドア整備のいちばんのネックは、実は車両により一致しない扉位置。すべての電車の扉の位置がそろっている東京メトロ・丸ノ内線などでは、比較的早くホームドア整備が完了したのに対し、西武鉄道をはじめ小田急電鉄、東武鉄道、あるいはJR東海道本線などではホームドアの整備が遅れている。それは、特急型電車の存在が大きく影響しているからである。

すべての電車が同じ形式、同じ扉位置のため、ホームドアが速やかに整備できた丸ノ内線

そもそも特急型電車は、長距離旅行向けに乗降扉部分と客室とが分離している構造が一般的であり、乗降扉も車端部に極力寄せて客室を広く取るのが、どの会社でもふつうの設計であった。西武鉄道の「Laview」も例外ではない。しかしそれでは、同じ線路を走り同じホームに発着する、片側に3~4カ所に乗降扉がある通勤型電車と、扉の位置が合うはずがない。

特急型電車の扉位置を合わせる工夫

では、特急型電車を運行している各社は、ホームドア整備に際してどのような対応策を採ったのだろうか。西武鉄道の場合、既存の特急型電車10000系「ニューレッドアロー」が老朽化による取り替え時期を迎え、新型車を投入するこのタイミングで手を打った。

「Laview」については、筆者は乗降扉の位置に最初から注目していた。ホームドア対策が施されていないはずがないからだ。果たして各号車とも、もっとも車両の端になる車端部には乗降扉を配置していなかった。少し内側に寄せることによって、片側4扉の通勤型電車のいちばん車端部に近い扉に対応するホームドアの開口部に、「Laview」の扉位置を合わせたのだ。

「Laview」の乗降扉は、車端部から離されて配置されている

報道公開の際、筆者は乗降扉が車端部からどのぐらい内側に寄っているか、大まかにではあるが実測してみた。すると、車両の端から約135cmの位置に、乗降扉開口部の外側があった。乗降扉の幅自体は85cmである。

一方、すでに池袋駅に設置されているホームドア(通勤型電車のみが発着するホームにある)では、こちらも電車の車端部からホームドアの開口部まではおおむね120cm。ホームドアの開口部自体の幅は145cmである。

目立たない点ではあるが、これは重要な改良である。この特急が走る西武池袋・秩父線では、所沢駅などで通勤型電車とホームを共用することになる。将来、ホームドアが整備される際、「Laview」の扉位置が妨げになることはない。

乗降扉が内側に寄った分の車内スペースは、曲線状にデザインされた黄色い内壁だけが目立つエントランスとなっている。内壁と外壁の間には機器類が収納されているとのことだが、限られた空間の使い方としては、いささかもったいなく思えるほどだ。これも、ホームドアにより駅ホームの安全を保つために必要なスペースとして、割り切られたのである。

「Laview」では、もったいないとも思えるスペースを設けることで、扉の位置を調節した

各社が工夫をはじめた「ホームドア」設置への条件整備

こうした構造の特急型電車としては、2018年に営業運転を開始した、小田急電鉄70000形「GSE」が先鞭をつけている。この車両も車端部には乗降扉がなく、一部の号車では本来、客室内に設ければ便利なはずの荷物置場を、わざわざ客室外の車端部に置くなど、車内設備の配置を工夫して将来的なホームドア整備に対応している。

小田急の新型特急電車「GSE」も、車端部ではなく車両内側に乗降扉を設けている

東武鉄道の500系「Revaty」は2017年にデビューしたが、この特急型電車は、3両編成を組み合わせて運用することを前提にしていることから、両先頭車は運転台の直後に扉がある。中間車はトイレなどの隣に乗降扉を配して、巧みに車端部への乗降扉設置を避けている。

東武鉄道の「Revaty」も乗降扉の位置を工夫している

では、既存の特急型電車で、まだ取り替え時期に達していないものは、どう対応するのだろうか。より幅広い範囲の乗降扉位置に対応する「ワイドドアタイプ」あるいは、「昇降式(ロープ式)」のホームドアを採用することも一案だ。前者は通勤型電車でも扉の位置や幅が異なるものが走っている東京メトロ東西線、後者は片側3扉車と4扉車が混在している、JR西日本の路線で採用されている。

もっと簡単な解決方法を編み出したのが、東京メトロ・千代田線だ。この線には小田急電鉄から直通の特急ロマンスカー60000形「MSE」が乗り入れてきている。MSEは2008年のデビューと新しく、最近も増備が行われた車両である。だが、「ホームドア対策」は施されておらず、乗降扉もおおむね車端部ぎりぎりにある。

一方、千代田線も混雑が激しい路線であり、ホームドア整備は喫緊の課題だ。そこでどうしたかといえば、特急に限り、普通列車とは停止位置を少しずらして、「ホームドアと場所が一致する乗降扉のみ開ける」ことにしたのだ。一部の乗降扉、およびホームドアのみを開閉させる技術は、まったく難しいものではない。

ホームドアに合う位置の扉だけ開閉することにした、千代田線内の小田急「MSE」

MSEのこの施策は、2018年10月20日より実施された。もちろん、すべての乗降扉を開くことはできないが、通勤型電車に合わせたホームドアを設置した駅でも、10両編成の特急の場合は6カ所で乗降可能となったのである。なお、千代田線内で扉を限定した乗降方法は、乗り入れ当初から行われていた。今回は、乗り降りできる号車が変わったということだ。

こうした各社のホームドア対策を観察してみると、やはり西武「Laview」の設計が後発だけに、スマートに思えてくる。鉄道会社の看板である特急型電車と通勤型電車の共存方法は、まだこれから各社の大きな課題となってくるだろう。

ネーミングの重要性を再認識させた「京急の駅名改称」

ネーミングの重要性を再認識させた「京急の駅名改称」

2019.02.04

京浜急行電鉄が駅名変更に踏み切る4駅とは?

新駅名はどのようなプロセスで決まったのか

地域のアイデンティティともいえる駅名の重要性

2020年3月に改称される予定の4駅の駅名標(プレスリリースより)

京浜急行電鉄(京急)は1月25日、2020年3月に4駅の駅名を改称すると発表した。これによると、大師線産業道路駅が「大師橋駅」、京急本線の花月園前駅が「花月総持寺駅」、同じく仲木戸駅が「京急東神奈川駅」、そして逗子線の終点新逗子駅が「逗子・葉山駅」と、それぞれ新しい駅名を名乗ることになる。

このうち産業道路駅は、大師線の連続立体交差化事業により、2019年3月3日に地下駅となる予定になっており、駅名の由来となっていた、同駅東側で交差する「産業道路(神奈川県道6号東京大師横浜線)」との踏切が廃止されるため、地元からも改称の要請が上がっていた。大師橋とは、川崎市と大田区を結ぶ産業道路の多摩川に架かる道路橋であり、地元のシンボルである川崎大師から名前を取っている。道路にちなむ駅名という、伝統にも配慮したものと思われる。

ほかの3駅は、産業道路駅の改称計画をきっかけに2018年9月、京急が創立120周年記念事業として小・中学生から駅名改称案を募集した、「わがまち駅名募集」において集まった案を参考に決定したという。品川や横浜、金沢文庫、三浦海岸など、他社線乗り換え駅や「公共施設、神社仏閣、歴史的史跡などの最寄り駅として広く認知されている駅」だとして26駅は改称の対象外。そのほかの駅は、2018年10月10日を期限として新駅名を募った。結果、応募総数は1,119件にのぼったというが、その割には改称の規模は4駅(大師橋駅を含む)と、最小限に留まったという印象だ。

新駅名はどうやって選ばれたのか

花月園前駅は、1914年から1946年まで営業していた遊園地「花月園」にちなむ駅名で、遊園地の閉鎖後は同名の競輪場になっていた。しかし2010年には競輪場も閉鎖され、駅名の根拠を失っていたがために、改称も妥当かと思われる。地元に親しまれた花月を残し、駅近くにある曹洞宗の大本山「總持寺」にちなんで総持寺をつけた。ただし、總持寺の最寄り駅はJR鶴見駅または京急鶴見駅である。

仲木戸駅はJR京浜東北線・横浜線東神奈川駅の至近にあって、乗り換え駅(下車後、少し歩く)として機能しており、特に横浜線沿線と羽田空港を往来する客には重宝されている。JR駅と同じ「東神奈川」という文字を使った「京急東神奈川駅」としたのは、「駅名が異なることで乗り換え可能な駅としてお客さまから十分に認知されていない」ことが理由なのだという。

けれども、今はネット検索の時代である。例えば横浜線の小机駅から羽田空港への経路や乗り継ぎ時刻を検索すると、東神奈川~仲木戸乗り換えルートとその所要時間が示される。仲木戸には、羽田空港アクセス列車であるエアポート急行も停車する。ちなみに仲木戸とは、徳川将軍が宿泊した「神奈川御殿」の木戸が由来である。

京急仲木戸駅改札口からJR東神奈川駅をみる。数十メートルしか離れておらず、乗り換え客は多い

新逗子駅は1985年に京浜逗子駅と逗子海岸駅を統合して誕生した駅だが、ブランド力が高い「葉山」を付けることになった。なお、葉山町には鉄道はない。新逗子駅から葉山町の中心部までは、路線バスで10分ほどかかる。

羽田空港国内線ターミナル駅発「新逗子」行きのエアポート急行。この行先表示も駅名改称により「逗子・葉山」行きに変わる

小・中学生の意見は反映されたのか

今回の駅名改称と「わがまち駅名募集」との関連は、今のところ「参考にした」としか表明されていない。新駅名が、募集により寄せられた案にもとづくかどうかも、明らかではない。ただ、改称後の駅名は、子どもらしい発想によるものとは思えない。

一方、100年以上も地域に親しまれた駅名が維持されて、安堵している住民も多いのではなかろうか。難読駅名として改称対象となっていた雑色(ぞうしき)、追浜(おっぱま)、逸見(へみ)といったところは、現状維持となった。

10駅には「副駅名標」が付く。写真は難読駅のひとつ追浜駅の例(プレスリリースより)

もとより、今回の「わがまち駅名募集」に対しては肯定的な意見は少なく、批判が多かったように見受けられる。私自身も、地域のアイデンティティの否定につながるとして、この施策には賛成しかねており「京急の企業イメージにも影響するので慎重な対応を」と、2018年10月29日付けの記事で意見を述べた。

今回の施策において、改称対象となった駅周辺地域や自治体に対して、事前の説明があったかどうかも明らかではないが、地元にとって「寝耳に水」の改称計画であったとしたら、反発は十分に予想されるところだ。改称する4駅は、ある意味、地元の同意が得られた駅なのだということだろう。

駅名の重要性を考えてみる

改称される4駅は、旧駅名を「副駅名標」にするという。例えば鮫洲駅には「鮫洲運転免許試験場」、日ノ出町には「野毛山動物園」など近隣の著名な施設を副駅名標としており、それらと同じような駅が駅が生まれることになる。これらは駅名標の看板に、新駅名に添えて旧駅名が表示される。現在、京急鶴見駅に「副駅名称広告」として「京三製作所本社」と付いているが、これは広告の一環。だが、今回副駅名が付与される4駅は、京急鶴見駅とは異なり、無償で表記すると京急は説明している。

広告として駅名標に表示されている会社名の例

この副駅名標は「誘客促進」につながると、京急が判断した駅につけられる。誘客を優先するのなら、開業時の花月園前駅のように、施設名をダイレクトにつけた方が効果は高いと思われるのだが、そうならなかったところに「改称しづらい」理由が透けて見える。

最近では山手・京浜東北線の新駅の駅名「高輪ゲートウェイ」が物議を醸したが、新しく生まれる街と、その玄関口であるという事情をおもんぱからない、感情的な論が目立った。歴史的文化的背景を持つ、開業から100年以上を経た駅名、あるいはそれ以前から存在する地名とは、事情が異なる新駅だ。高輪ゲートウェイ駅は江戸時代が海、明治以降が鉄道施設用地で、住民はいなかった。高輪は歴史ある地名ではあるけれども、隣接する地域でしかない。

駅名とは、これほどデリケートなものである。鉄道会社にとって、商品名のひとつであるといえよう。だが、そこに住まい、毎日利用している地域住民にとっては、やはり「アイデンティティ」でもあるのだ。昨今の駅名をめぐる動きによって、そのことが再確認できたと感じる。

少子高齢化と東京膨張の狭間で、東京メトロが輸送力増強「総仕上げ」へ

少子高齢化と東京膨張の狭間で、東京メトロが輸送力増強「総仕上げ」へ

2019.01.15

巨大な鉄道網、東京メトロの大規模開発は一段落

方南町駅を6両編成に対応させ都心直結を便利に

10両編成の乗り入れで利用客増を見込む北綾瀬駅

東京メトロは巨大都市東京の大動脈であり、1日平均の輸送人員数は約742万人(2017年度)にも達している。これは、埼玉県の総人口に匹敵する。そのため、電車の編成も長大で、JR・大手私鉄の路線と相互直通運転を実施している路線の多くでは、20m級車両の10両編成で朝夕の混雑に対応している。保有車両数は、JR各社を除く私鉄では日本最多となる2,728両にも及ぶ。

西武線内を走る10000系。東京メトロは東京近郊のJR、私鉄の多くと相互直通運転も実施し、莫大な数の利用客を日々輸送している

ただし、2013年に副都心線と東急東横線の相互直通運転が始まり、2016年に有楽町線小竹向原~千川間の連絡線建設というビッグプロジェクトが完成して以来、新線の建設や編成の長大化といった、大規模な施設改良は一段落した。輸送人員数はまだ増加傾向だが、高度経済成長期のような急激な増加はもはや昔語り。むしろ「安定期」に入った感もある。 

今後、少子高齢化が進むことは間違いない状況にあって、いまだ膨張を続ける東京とはいえ、長期的には人口減少、ひいては輸送人員が減少へ転じることを見据えた経営計画が必要となるだろう。朝夕の混雑緩和を図る、ホーム増設などの工事は随所で続いているが、一方で新線建設の要望や構想は存在するものの、しばらくは具体的な着工に至ることもないと思われる。

方南町駅の改良工事が完成間近

全長200mにも達する電車が地下を行き交い、どの時間帯に乗っても混雑しているような印象がある東京メトロだが、実はわずか3両編成で運転されている線区もある。丸ノ内線中野坂上~方南町間の支線(以下、方南町支線)と、千代田線の末端区間、綾瀬~北綾瀬間(以下、北綾瀬支線)だ。

これらの線区は長年、短い編成での折り返し運転が行われてきた。東京都内であるから、決して利用客数は少なくないものの、池袋~荻窪間や綾瀬~代々木上原間(以下:本線)と比べれば、のんびりとした雰囲気がある。

しかし現在、この2線区においても本線と同じ長い編成で運転できるよう、改良工事が進捗しており、2019年に完成予定となっている。東京メトロとしては、輸送力増強のための駅改良工事は、これで当面一段落するといえよう。

方南町支線には、中野坂上・中野新橋・中野富士見町・方南町の4駅があるが、前者3駅は丸の内線本線と同じ6両編成列車の発着が可能。問題は終点となる方南町駅で、3両編成しか発着できないホームとなっている。そのため、都心部へ向かうには中野坂上駅での乗り換えが必要だった。ただ、中野富士見町~方南町の間には、東京メトロの中野車両基地が存在しており、丸ノ内線用車両の拠点となっている。この拠点を生かし、朝夕のラッシュ時のみ、中野富士見町駅発着の新宿・池袋方面直通列車を設定していた。

丸ノ内線の「本線」と方南町支線が接続する中野坂上駅。支線から本線列車にホーム対面で乗り換えでき利便性は高いが、直通列車には敵わない

方南町駅も3両編成がぎりぎりという訳ではなく、現在より多少の延長をすれば6両編成が発着できそうなホームの長さであった。そのため、方南町駅の改良工事を行い、完了すれば終点駅(方南町)から新宿、赤坂見附、銀座といった都心部へ乗り換え不要でアクセスできるようになる。

ホーム延伸が完成間近の方南町駅。1月26日までは2本の線路のうち1本を閉鎖して工事が行われている

新型車両の投入が方南町駅改良の契機

そして、方南町駅改良には新型車両2000系の投入が大きく関係していると思われる。2000系は既存の02系(1988~1996年製)をすべて置き換える新製車で、2018年度中の営業運転開始が予定されている。

方南町支線専用の3両編成も02系であるが、6両編成とは仕様が若干異なり、2本連結して本線で使うという訳にはいかない。そのため、定期検査や故障などに備えた予備車も3両編成、6両編成それぞれに準備する必要がある。方南町支線専用の3両編成は6本あり、これは1996年製の最終増備車。そのため、廃車時期はまだ先とも考えられるが、新型車両の投入が本線と支線の編成を統一する最良のタイミング。これにともない、6両編成に対応した駅に改修され、支線専用の3両編成は廃止となる。

3両から10両へ「増結」される北綾瀬支線

一方、北綾瀬支線は、わずか2駅2.1kmの路線。もとは綾瀬車両基地へ出入りする引き込み線を旅客線へ転用したもので、1979年に開業した。末端区間であるため、本線区間のような需要が見込めないとのことで、こちらも3両の専用編成(現在は東西線から改造転用された05系4本)が用意され、綾瀬~北綾瀬間の折り返し運転にだけ使われている。

綾瀬駅に停車中の北綾瀬行き。東西線から転用された3両編成によるワンマン運転が実施されている

広大な車両基地用地のため、北綾瀬駅開業当初、駅周辺は都市化がさほど進んでいなかった。だが、それだけ開発余地が残っていたということになり、しかも支線のもう一方の起点、綾瀬駅は千代田線の始発列車が多いこともあって、次第に大規模マンションなどが建った。それにともない、北綾瀬支線の利用客も右肩上がりで増えていった。

この利用客増に対応するため、本線用の10両編成列車に北綾瀬~綾瀬間の輸送も担ってもらおうという着想で、北綾瀬駅の10両編成対応工事が開始された。3月16日の千代田線ダイヤ改正と同時に10両編成運転が始まる予定だ。

10両編成への対応工事が進む北綾瀬駅。一部の改装は完了している
ホーム延伸のほか、改札口の増設工事も行われている。ホームが長くなることへの対応だ

ただ、綾瀬駅を始発終着にしている10両編成列車がすべて北綾瀬駅発着になるわけではない。現在、朝のラッシュ時間帯(7~8時台)の綾瀬駅始発は13本あるが、そのうち5本が北綾瀬駅始発に変更されるとのことだ。なお、もっとも通勤需要が高い平日朝の7時台には、北綾瀬駅始発が7本設定されている。北綾瀬支線は複線なので、もう少し本数を増やせそうだが、車両基地から綾瀬駅始発として回送される列車と共用となるため、ままならないという側面もある。

また、方南町支線とは異なり3両編成列車が廃止されるわけではない。こちらは従来通り3両での北綾瀬~綾瀬間の折り返しがそのままとなる。車両面では、新型製造といった大きな変更はなさそうである。

ただ、将来的には輸送力を強化する必要性はあるだろう。北綾瀬周辺は住宅地としての人気が高まっていているし、都心方面への始発駅として北綾瀬駅の価値は上がることになる。JR常磐線亀有駅、つくばエクスプレス青井駅、六町駅を利用している層の一部が北綾瀬へ流れる可能性も考えられる。都市開発の面でも、注目のエリアとなることは間違いなさそうだ。