「原アキラ」の記事

原アキラ(はら・あきら)

自動車ライター、フォトグラファー

トヨタがトレンドに逆行してまで「スープラ」を復活させた理由

トヨタがトレンドに逆行してまで「スープラ」を復活させた理由

2019.05.23

大変革の自動車業界でトヨタが復活させた「スープラ」

新型「スープラ」に結実した“師弟関係”

スポーツモデルの共同開発には歴史があった

トヨタ自動車はスポーツカーの新型「スープラ」を発売した。先代モデルの生産終了から、実に17年ぶりの復活だ。自動運転や電動化、若者のクルマ離れ、SUVブームなどが自動車の目下のトレンドである中、なぜトヨタは2シータースポーツモデルを再び作ったのか。新車発表会の会場に掲げられた「Supra is Back」の文字をキーワードに考えてみた。

トヨタ自動車は5月17日、東京・お台場にある同社の体験型テーマパーク「MEGA WEB」にて、FR(フロントエンジン・リアドライブ)の新型スポーツカー「GR スープラ」を発表。会場の大画面には「Supra is Back」の文字が映し出されていた(撮影:原アキラ)

今は亡きマスターテストドライバーへのオマージュ

多数の報道陣と旧型スープラオーナー、そして一般客を集めた発表会場では、大画面に映し出された真っ赤な「Supra is Back」の文字が目を引いた。この文字を書いたのは、トヨタ自動車のマスタードライバーであり現社長でもある“モリゾウ”こと豊田章男氏。新型車のテスト走行やレース会場に出向き、自らステアリングを握る同氏の姿は、業界人ならずとも知るところだ。

テスト走行やレースで自らもステアリングを握る豊田章男社長の姿はおなじみだ

ドライバーとしての豊田社長の師匠にあたるのが、300名に及ぶトヨタのテストドライバーのトップに位置していた成瀬弘マスターテストドライバーである。1960年代後半のトヨタ製スポーツカー「2000GT」やレーシングカー「トヨタ7」が、日本グランプリなどのレースで活躍していた当時、主要メカニックとして活躍していた成瀬氏。その後はテストドライバーとしての腕を磨き、独ニュルブルクリンクなど、海外で行われた数々の高速走行テストを担当した。成瀬氏の豊富な経験は皆が認めるところとなり、「ニュル・マイスター」の称号が与えられた。

初代「セリカ」をはじめ、「レビン・トレノ」(カローラのスポーツモデル)、「アルテッツァ」(4ドアセダンのスポーツモデル)、「スープラ」(先代)、スーパーカーのレクサス「LFA」など、トヨタ製歴代スポーツモデルの開発に成瀬氏が関わっていたのはいうまでもない。その彼は2010年、LFAの試作モデルをニュル近郊でテスト走行中、対向車と衝突して即死した。

成瀬氏が以前、売り上げ重視でテスト走行を軽視するトヨタのクルマづくりに対し、「ドイツのメーカーを見てみろ。開発中の新型車でニュルを走っている。それに比べて、トヨタがここで勝負できるクルマは、中古のスープラしかない」と語っていたのは有名な話だ。その言葉が忘れられなかった豊田社長は、いつか必ずスープラを復活させようと決意した。そして昨年10月、ニュルで新型スープラの最終テストに臨んだ“モリゾウ”は、心の中で「成瀬さん、ついに新型スープラでニュルに来ました……」とつぶやいたのだという。

豊田社長のトップダウンで復活が決まった新型「スープラ」

「直6」と「FR」はスープラの伝統

先月、50周年記念モデルの登場がニュースとなった日産自動車のスポーツカー「フェアレディZ」。その初代モデルは、排気量2.8リッターの直列6気筒(直6)エンジンを搭載した2シーターFRで、ポルシェ「911」に対抗できる性能の高さと安価さもあって、北米のスポーツカー好きの間で一気にブレークした。その後、「Zカー」のニックネームで呼ばれる大人気モデルになったのはご存知の通りだ。

それを黙って眺めているわけにはいかなかった彼の地のトヨタディーラーから強い希望を受け、フェアレディZの対抗馬としてトヨタが送り出したのが、当時のスペシャリティカーであったセリカに2.8リッター直6エンジンを搭載した1978年の「セリカ スープラ」(A40型/A50型、日本では「セリカ XX」の名称)だったのである。角目4灯ヘッドライトにトヨタの頭文字である「T」字型グリルを配したハッチバックスタイルは印象的だった。

スープラの初代となった「セリカ XX」(画像提供:トヨタ自動車)

1981年の2代目スープラは、当時流行のリトラクタブルヘッドライトを搭載した直線的なボディラインを持つ「A60型」。1986年に登場した3代目「A70型」は、“3000GT”の愛称の通り、排気量が3.0リッターに拡大していた。1993年にデビューした4代目「A80型」(先代モデル)は、最高出力280ps、最大トルク44.0kg(最終モデルは46.0kg)という強力な3.0リッター直6ツインターボエンジンを搭載。成瀬氏が語っていた中古のスープラとはこのモデルのことだ。

今回の発表会に登壇したトヨタ副社長でGAZOO Racing Companyプレジデントの友山茂樹氏は、現在もA80型のスープラを所有している。ホワイトボディのボンネットにエアインテークを設けたフルチューンの実車は、ご覧の通り会場内に展示されていた

そして、直6エンジン+FRレイアウトという歴代モデルの伝統を引き継ぐ新型2シーター「GR スープラ」(国土交通省への届け出名は「トヨタ・スープラ」)が、先代モデルの生産終了から17年の時を経て誕生した。かつてライバルだったフェアレディZの現行モデルは登場から11年が経ち、内外装のデザインや安全面で多少の古さを感じる。それに対し、最新装備で固めた5代目スープラは、多くの面でフェアレディZに対するリードを広げることになったのだ。

スポーツモデルの共同開発には前例あり

エンジンやシャシーなど、新型スープラのプラットフォームがBMWとの共同開発であることは、すでに報道されている通りだ。スープラの最上級グレード「RZ」が搭載する「B58型」3.0リッター直6エンジンの性能は、最高出力340ps(250kW)/5,000~6,500rpm、最大トルク500Nm/1,600~4,500rpm。BMW「Z4」の「M40i」が搭載する直6エンジンと型式もスペックも全く同じだ。

ボンネットを開けると、エンジンカバーの意匠やメーカーロゴこそ異なるものの、補機類のレイアウトやデザインが完全に一致しているのが分かる。インテリアも、センターコンソールのコマンドダイヤル部分のレイアウトがそっくりだ。

左が「Z4」、右が新型「スープラ」

スポーツモデル開発におけるトヨタと他社との協業は、古くはあの名車「2000GT」から始まっていた。150PSを発生した3M型2.0リッター直6エンジンのDOHCヘッド部分や、ダッシュボードの美しいウッドパネルはヤマハ発動機が担当していたのだ。直近では、2.0リッター水平対抗エンジンを搭載したトヨタ「86」とスバル「BRZ」という兄弟モデルの例がある。

今回の兄弟モデルでは、スープラがクローズドのクーペボディであるのに対し、Z4はオープンボディであることから、両者の用途や走行特性は異なるものになるだろう。シャシーのチューニングについても、それぞれのメーカーが持つノウハウが注ぎ込まれているはずだ。

BMW「Z4」がオープンボディであるのに対し、新型「スープラ」(画像)はクーペボディだ

先日乗ったZ4は、直6エンジンのフィーリングとサウンド、そして、BMWらしい俊敏なステアリングさばきが「さすが」と唸らせる出来だった。また、インテリアのフィニッシュレベルが高く、そのあたりは今回のスープラ6気筒モデルに比べて一日の長があるように感じた。

こちらがBMW「Z4」。インテリアの仕上げはBMWに一日の長があるように感じた

ただし、6気筒モデルの価格を見ると、Z4の835万円に対してスープラは690万円なので、145万円の差があることを考えると、“お買い得感”ではスープラに軍配が上がる。モリゾウが乗り味を決定した新型スープラの走りを一刻も早く試したいものだ。

ランボルギーニでオフロード? 乗って試した「ウルス」の実力

ランボルギーニでオフロード? 乗って試した「ウルス」の実力

2019.05.14

ランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」をオフロードで試乗!

でこぼこ道や曲がりくねった道…「ウルス」なら大丈夫!!

ありえないシチュエーションを体験させるランボルギーニの意図

3,000万円を超えるランボルギーニのスーパーSUV「ウルス」で、オフロードを走ってみたらどうなるのか。通常では、ほぼ100%使用しないと思われる状況だが、ウルス本来の性能は発揮してみたい。こうした疑問と希望にしっかりと答えてくれるのが、このメーカーの良いところだ。栃木県にある自動車走行試験施設「GKNドライブライン ジャパン プルービンググラウンド」で開催されたウルスのオフロード試乗会に参加し、その実力を探ってみた。

ランボルギーニ「ウルス」のオフロード試乗会に参加!(撮影:原アキラ)

2018年に日本デビューしたウルス。スペインの闘牛に非常に近い外観を持つ大型牛「ウルス」から採られたその車名は、闘牛の世界に由来するという同社の伝統を引き継ぐ。ボディーサイズは全長5,112mm、全幅2,016mm、全高1,638mm、ホイールベース3,003mm、最低地上高158mm~248mmという堂々たる体躯を誇り、乾燥重量は2,200キロに達する。

フロントに搭載する4.0リッターV型8気筒ツインターボエンジンは、最高出力650ps(478kW)/6,000rpm、最大トルク850Nm/2,250~4,500rpmを発生。8速ATを介して4輪を駆動し、停止状態から時速100キロまではわずか3.6秒で加速する。最高速度は時速305キロ、時速100キロからの制動距離は33.7メートルという高性能車だ。

今回の試乗メニューは、オンロードで加減速やハンドリングをテストした後、オフロードでうねり路、登降路、水路、砂利の一般道走行を行うというもの。スタッフによるインストラクションを終えると、直ちにプログラム開始となった。

まずはオンロード、猛然たる加速と水際立った制動力を堪能

まずは全長1,800メートルの舗装された外周路を使用したオンロードだ。急加速・急減速のテストでは、200メートルほどの直線で時速130キロまで加速し、フルブレーキをかける。重さ2トンを超えるウルスのボディが、わずかなノーズダイブを伴って平然とストップする様は圧巻。前440mm、後370mmという、世界最大級の直径を持つカーボンブレーキがいい仕事をしている。

オンロードでの急加速とブレーキングは、さすがランボルギーニといったところ(撮影:原アキラ)

次は裏手の直線に移動し、ストップ状態からアクセルペダルを床まで踏みつけて全開加速を試した。650psのV8が炸裂し、目の前のデジタルメーターは、スピードを表示する数字が読みきれないほどの速さで増え続けていく。たった500メートルほどの間で時速215キロを超えるという、まさに圧倒的な加速力を確認してブレーキを踏んだ。

続いて走ったのは、18~85R(「R」とは曲率のこと)の大小のコーナーが連続する全長1,036メートルのハンドリング路。講師を務めるレーシングドライバーの高木虎之介氏がスーパースポーツカー「アヴェンタドール SVJ」を駆り、それをウルスで追っかけるという趣向だ。

ハンドリング路では高木虎之介氏が駆る「アヴェンタドール SVJ」を「ウルス」で追いかけた(撮影:原アキラ)

高木氏はこちらの腕を見極めながら車速を調整してくれるものの、かなりのハイペースでグイグイと進んでいく。ここでは、高い着座位置による視界のよさ、低速域からの圧倒的なトルク、カーボンブレーキによる車速コントロールのしやすさ、後輪駆動(4WS)を備えた4WDシステム、ロールをほとんど発生させないアクティブエアサスなどの相乗効果により、スポーツカーに負けない速さを十分に体験できた。

急坂も水路もいとわない超高級車「ウルス」

次は「Tamburo」(タンブーロ、クルマの設定を変更するための装置)で設定を「TERRA」(イタリア語で「大地」の意)に合わせ、オフロードコースに侵入する。高さ15センチメートルのでこぼこが連続するうねり路をウルスは、きしみ音など一切出さずにさらりと通過し、ボディの堅固さをきっちりと示してくれた。

「タンブーロ」で砂利道などに適した走行モード「TERRA」を選び、オフロードへ(撮影:原アキラ)
うねり路をさらりと通過する「ウルス」(画像提供:ランボルギーニ)

次は、滑りやすい土の急坂の上り下りだ。50%勾配(約30度)という壁のような斜面の途中で、一旦停止した後に再スタートするのだが、その際、タイヤは空転することなく、ジワリと車体を押し上げる。また、下りでは「ヒルディセントコントロール」(急坂を下る際、速度を自動で抑制してくれる機能)が効くので、ブレーキを踏むことなく、一定速度を保って降下できた。大きなボンネットのせいで直前の路面が見えなくても、コンソールのボタン1つでフロントカメラが作動する。その画面を見れば、自分の行きたい方向が確認できる。

壁のような斜面で一旦停止後に再スタートしても、タイヤが空転することはなかった(画像提供:ランボルギーニ)

最後は深さ30~40センチメートル、長さ30メートルの水路へ突入する。3,000万円のピカピカの新車でジャブジャブやるのは少し気が引けたが、めったに体験することのできないシチュエーションだ。波を蹴立てて、ウルスはあっという間に走破してしまった。

少し気が引けたが、「ウルス」で水路に突入した(画像提供:ランボルギーニ)

手の込んだ試乗会を開催するランボルギーニの考えとは

その後は施設外の一般道へ移動。イタリア人スタッフたちは、どうしたら面白い試乗ができるのかを常に考えていて、そのルートは近くを流れる思川の堤防道路や、田畑の中を抜けるあぜ道などが用意されていた。普段なら農作業の軽トラックなどが利用するような道路を、土煙を上げながら大型SUVのウルスが編隊を組んで駆け抜けていくのだからたまらない。運転する我々もそうだが、それを見た地元の人たちもびっくりしたはずだ。

一般道でも走りは全く安定していて、不自然な車体の動きは一切感じられなかった。「ここを曲がるの?」とちょっと心配になるような狭い右左折時でも、後輪操舵の4WSが効果を発揮して、一発で曲がり切ってしまうほど小回りが利くのには感心した。

一般道を疾走する「ウルス」。狭い道の右左折時には意外なほど小回りが利いた(画像提供:ランボルギーニ)

走り終えたウルスは当然、ホコリで真っ白け。ボンネットを開けてみると、エンジンルームまでもがそんな状態だった。それを全く気にせず、走りを楽しませてくれたランボルギーニのスタッフには大感謝だ。

オフロード試乗会を終えた「ウルス」のエンジンルーム(撮影:原アキラ)

同社はユーザー向けにこうしたイベントを随時開催している。例えオーナーになったとしても、普段は絶対に走らない今回のような場所を体験すれば、クルマに対する信頼度も一気に高まる。そして、メニューをこなした後は、修了証まで手渡されるのだ。

修了証まで用意してあるのには感心した(撮影:原アキラ)

ウルスの価格はスタンダードで2,779万9,200円。荒れ地を走るための走行モードである「TERRA」や「SABBIA」(イタリア語で「砂」の意)がオプション装備となっているほか、ボディカラーをはじめとするオプション品は数限りない。購入する場合、好みを100%反映すると、車両価格は3,000万円を大きくオーバーするだろう。それでも、ウルスは世界中で人気車種になっている。ランボルギーニは生産拠点のサンタアガタ工場(イタリア)を2倍の16万平方メートルに拡大し、新たに従業員を500人規模で雇い入れたそうだ。

50周年の「GT-R」と「フェアレディZ」で考える、日産スポーツカーの今と未来

50周年の「GT-R」と「フェアレディZ」で考える、日産スポーツカーの今と未来

2019.05.10

日産スポーツカーの2枚看板は誕生から半世紀が経過

「GT-R」は高性能に、「Z」は名作をオマージュ?

なかなか登場しない新型モデル…次は電動化の可能性も

日産自動車は先頃、スポーツカーの2枚看板である「GT-R」と「フェアレディZ」の生誕50周年記念モデルを発表した。近年は電気自動車(EV)と運転支援システムに注力している印象の日産だが、同社にとって重要なヘリテージでもあるスポーツカーを今後、どのように取り扱っていくのか。これを機に考えてみたい。

日産は4月17日、同社の情報発信拠点である東京・銀座の「NISSAN CROSSING」(ニッサン クロッシング)にて、「GT-R」「GT-R NISMO」の2020年モデルと「GT-R」「フェアレディZ」の50周年記念モデルを報道陣にお披露目した(手前が「GT-R」、奥が「フェアレディZ」の50周年記念モデル、撮影:原アキラ)

レースの知見で高性能化を果たした「GT-R NISMO」

発表会場でアンベールされたのは、ホワイトカラーに身を包んだ高性能な「GT-R NISMO」。最新モデルで日産は、レースの現場からのフィードバックを反映し、ターボの改良、カーボンパーツの拡大、カーボンブレーキの導入という3点の改良を行った。

レースで磨いた技術を応用した「GT-R NISMO」の2020年モデル

新型のターボチャージャーは、日産がGT3のレースカーで使用しているもの。どんな車速でも、より素早く加速できるエンジンレスポンスを実現することを目指して採用した。具体的には、タービンの羽根の枚数を11枚から10枚に減らして慣性重量を抑えるとともに、流体力学のシミュレーションにより羽の形状を変更することで、流量の減少を防ぐことにも成功したそうだ。

ターボチャージャーはレースカーと共用する

また、エンジンフードとフェンダー、ルーフはカーボン製とし、車両の重心位置から遠い位置にあるパーツを軽くすることで、ハンドルの動きに対する車体の反応を向上させた。この改良により、コーナーでのスピードが向上。合計で10.5キロの軽量化も達成した。

新開発のカーボンセラミックブレーキは、世界最大級の直径410mmを誇る。1,000度の高温にも耐えられるイエローカラーの高剛性キャリパーも新たに採用した。エクステリアでは、フロントフェンダー左右にエアアウトレット(空気の排出口)を設けることで、時速250~300キロという超高速域でのダウンフォース(車体を下向きに押さえる力)を増やし、タイヤのグリップと接地感を向上させている。

フェンダーにあるサメのエラのようなものがエアアウトレット。イエローのブレーキキャリパーがアクセントになっている

このように、さらなる高性能化を果たした「GT-R NISMO」の2020年モデル。先行予約は2019年5月に始まる。価格は未発表だ。

新色「ワンガンブルー」をまとう「GT-R」

一方の基準車(NISMOではないGT-R)は、匠が1台ずつ手で組み上げる排気量3.8リッターのV型6気筒ツインターボエンジンに、NISMOモデルで使用してきた「アブレダブルシール」を採用したターボチャージャーを搭載。吸入した空気の漏れを最小限にすることで、ドライバーの加速意図に即座に応えるレスポンスを実現した。また、コーナリング中のシフトスケジュールをさらにアグレッシブに設定したほか、確かなブレーキの効きを感じるよう、ブースターの特性をチューニングしたという。

「GT-R」の2020年モデル(画像提供:日産自動車)

青く輝くチタン製のエキゾーストフィニッシャー(マフラー)は、職人が1つずつ手作りで加工する。ホイールには新デザインを採用。ボディカラーには青色の透明ベースに光干渉顔料を追加し、ベイエリアでの日没の余韻を感じさせる新しいボディカラー「ワンガンブルー」を設定した。

職人が1つずつ手作りで加工するエキゾーストフィニッシャー

「GT-R」の2020年モデルは2019年6月に発売となる。価格は1,063万1,520円~1,253万9,880円だ。

「GT-R」のルーツとなった“伝説のクルマ”

GT-Rのルーツといえば、プリンス自動車が日産と合併する前にデビューさせた、あの“伝説”のモデルから話を始めないといけない。それは、1964年の第2回「日本グランプリ」に登場した「スカイラインGT」だ。

プリンスは、「S50型」という1.5リッターの4気筒エンジンを搭載していた標準モデルのボンネットを約20センチ延長し、そこに上級モデル「グロリア」の2.0リッター直列6気筒エンジンを無理やり押し込み、レース用モデルとして「スカイラインGT」を生み出した。グランプリでのライバルは、絶対性能に優れる独ポルシェのスポーツカー「904」。結果的にレースでは敗れたものの、その周回中に1周だけ、生沢徹がドライブするスカイラインGTが先頭を奪い、ポルシェを従えて走った姿は、鈴鹿サーキットに詰め掛けた大観衆を沸かせた。それが、“スカG”伝説の始まりというわけだ。

スカイラインは1969年にフルモデルチェンジし、そのトップモデルとしてデビューしたのが初代「スカイラインGT-R」(PGC10型)だった。このクルマは、日産が純レーシングカー「R380」用のGR8型エンジンを市販車向けに改良したS20型2.0リッター直列6気筒エンジン(最大出力:210ps)を搭載し、数々のレースに参戦。わずか2年10カ月のうちに50勝という“GT-R”伝説を作り上げた。雨中のレースとなった1972年の「富士300キロスピードレース」では、白×青、白×赤ボディのGT-Rが水煙を上げながら、富士スピードウェイの第1コーナー「30度バンク」を時速200キロで駆け抜けたが、このシーンは発表会場のスクリーンにも映し出されていた。

「スカイラインGT-R」のPGC10型(画像提供:日産自動車)

GT-Rの生誕50周年を記念した今回の「GT-R 50th Anniversary」は、そのレーシングカーをモチーフとしたツートンカラーが特徴だ。ベースとなっているのは、「GT-R」2020年モデルのプレミアムエディション。新色のワンガンブルーに高品質ホワイトステッカーを組み合わせたモデルは、ボディカラーとコーディネートしたブルースポークホイールを標準装備し、走行中は全体が青く見えるという。ボディカラーはこのほか、ブリリアントホワイトパール×レッドステッカー、アルティメットシルバー×ホワイトステッカーの組み合わせを用意する。

ワンガンブルーにホワイトステッカーを組み合わせた「GT-R 50th Anniversary」

リアには「GT-R 50th Anniversary」の文字をあしらったバッジとステッカーを装着。インテリアは上品なミディアムグレーの専用内装色とし、センターコンソールやメーター、シートなどに50周年を記念するロゴが入る。

「GT-R 50th Anniversary」の発売は2019年6月。2020年3月末までの期間限定モデルとなる。価格は1,319万2,200円~1,351万6,200円だ。

リアには50周年記念モデルであることを表すバッジとステッカーを装着

「フェアレディZ 50th Anniversary」は、伝説のレースカーデザイナーである米国のピート・ブロック率いるBRE(ブロック レーシング エンタープライズ)が製造した1970年の「Datsun 240Z BRE」を彷彿させるモデルだ。

エクステリアはブリリアントホワイト×バイブラントレッド、ブリリアントシルバー×ダイヤモンドブラックの組み合わせとし、50周年を記念するフロントフェンダーのステッカー、リアのバッジ、ホイールリムにレッドラインが加えられた19インチアルミホイールなどを装備する。

ブリリアントホワイト×バイブラントレッドの「フェアレディZ 50th Anniversary」

インテリアを見ると、センターストライプ入りアルカンターラ表皮のステアリングホイールがレーシングカーをイメージさせる。このほか、専用カラーのシフトノブ、キッキングプレート、ステッチが配されたシートやドアトリムを採用。シートやシフトノブ周り、メーター内には50周年のロゴが入る。

「フェアレディZ 50th Anniversary」の発売は2019年夏頃。こちらも2020年3月末までの期間限定モデルだ。価格は未定となっている。

アルカンターラ表皮のステアリングホイールがレーシングカーを想起させる

モデルチェンジから10年超、待たれる次世代モデル

発表会で車両の概要を説明したGT-R 2020年モデルの田沼謹一開発主管は、「GT-RもフェアレディZも、日産自動車のブランドシンボルであり、技術の日産の証です。半世紀もの長い間、多くの皆様にご支持いただいているこのブランドの、新たな歴史を積み上げたいと考えています」とコメント。また、あいさつのため登壇した日産の星野朝子専務執行役員は、「若い頃、GT-R(R32モデル)が買いたくて買いたくて、貯金通帳を散々にらんだ結果、残念ながら買えなかったんです」というエピソードを披露しつつ、GT-RとフェアレディZの2台は日産の情熱の極みであり、世界が憧れる存在だと胸を張った。

日産の星野専務(左)と「GT-R」2020モデルの田沼開発主管

ただし、現行のGT-Rは登場からすでに12年、フェアレディZは11年が経過している。インテリアのデザインなどを見ると、ひと時代前のモデルであることは明白な事実で、次世代モデルの登場が待たれることはいうまでもない。会場から質問のあったGT-Rの電動化について、田沼氏が「あらゆる可能性を探っている」と答えたのに対し、星野氏は「大いにありうる」と答えていたのは印象的だった。