スマホ決済サービス「PayPay」が2018年末に実施した「100億円還元キャンペーン」の影響もあってか、にわかに「スマホ決済」が盛り上がり始めている。コンビニやファーストフード店など、わずか数カ月のうちに利用可能店舗数は爆発的に増加した。

その一方で、2017年に盛り上がった「仮想通貨」は、ここのところ話題として触れられる機会が減ったように感じる。旅行業者の「エイチ・アイ・エス」や、家電量販店の「ビックカメラ」をはじめ、いくつもの小売店舗が仮想通貨決済を導入したが、一般的に普及したとまでは言えないだろう。

爆発的に利用可能店舗数を伸ばした「スマホ決済」と、未だに普及していない「仮想通貨」は、何が違うのだろうか。

わかりやすいユーザーメリットが普及の一歩目になった

両者の目立った違いは、わかりやすいユーザーメリットを提示したか否かではないだろうか。先述した「PayPay」の100億円還元キャンペーンのように、話題性のあるユーザーメリットを提供することで、多くの認知とユーザーの獲得につながったのだ。特にこのキャンペーンは支払い時に発生するものであり、「キャッシュレス決済する」という行動に直接結びついた。

仮想通貨取引所でも「口座開設で1000円をプレゼント」といったキャンペーンを実施しているところもあるが、性格は大きく異なる。そもそも、取引所で仮想通貨を購入する場合は投機目的になりがちで、決済にはつながりにくい。キャンペーンも、あくまで自社で仮想通貨の取引を促進させるにとどまる。

ビットコインなどが、スマホ決済のように民間企業の開発したサービスではないことも大きな原因だろう。三菱UFJフィナンシャル・グループ(MUFG)が仮想通貨「coin(仮称、発表時はMUFGコイン)」を開発中であるなど、民間企業も仮想通貨ビジネスに着手してはいるが、まだ実用段階には至っていないため、PayPayのようなキャンペーンを打つことができていないのだ。

システムの分かりやすさが普及率の差に関係

また、スマホ決済システムのほうが消費者にとって、より親しみ深いものであったという点も、大幅に普及した要因の1つだろう。

スマホ決済は、自分の銀行口座やクレジットカードを登録し、それらを経由して支払いが行われるというシンプルなものだ。資金の動きをスマホで容易に確認することもできる。

一方で仮想通貨の場合、自分の保有通貨がどのように動いていくのか理解している人は、そこまで多くないのが現状だろう。

そもそも、仮想通貨とは何か。仮想通貨取引がどういうもので、どんなメリット・デメリットがあるのかを一般の消費者が理解していないことは、決済の普及を阻害する要因になり得る。まずは、仮想通貨決済を普及させるために、仮想通貨に興味を持ってもらい、リテラシーを向上させるような環境づくりが必要かもしれない。

さらに言えば、スマホ決済がここまで普及したあとに、わざわざ仮想通貨取引に変えるメリットはどこにあるのか。ひと手間かけて資金を移行してまで、「仮想通貨で決済してみよう」と消費者を動機付けるのは、かなり難しいといわざるをえない。

スマホ決済加盟店の導入障壁を下げる事業者の取り組み

増殖したスマホ決済サービス

次に、加盟店の業務負担の差について考えてみよう。スマホ決済の場合、キャンペーンでユーザーが増えれば、「自店で決済できないことを理由にお客さんが去っていく」といった機会損失を防ぐためにも、小売店舗の導入意向が強くなるだろう。しかし、導入のハードルとして、現状、キャッシュレス決済ではいくつものサービスが乱立しているため、業務フローが煩雑になっていることが挙げられる。

QRコードを読み取るだけとはいえ、サービスの多さによる混乱はあるはず。特に、外国籍のアルバイトが増えているコンビニであれば、なおさらだ。

そのような課題に対して、2019年3月27日には「メルペイ」と「LINE Pay」が業務提携を発表した。内容は「メルペイ」か「LINE Pay」のいずれか一方の決済方法を導入した加盟店は、両方の決済サービスを利用できるようになるというものだ。まずは、キャッシュレス決済における加盟店負担を減らすべく、一見するとライバル関係にありそうなサービス事業者が手を組んだ形である。

仮想通貨の場合、例えばビットコインの支払いに特化した店舗であれば、ビットフライヤーが提供している特定の決済サービスなどを導入することで、QRコードの読み取りによる決済を行うことが可能だ。自動で売却し、日本円の状態で受け取れるため、店舗側が仮想通貨の価格変動リスクを負う必要はない。

しかし、仮にビットコイン以外の通貨で決済をしようと考えた場合には、店側が対応通貨の取引を行える自分のウォレット(仮想通貨の口座のようなもの)を持つ必要がある。通貨を売却して日本円に換金する手間が発生するほか、仮想通貨の価格変動リスクを負う必要も出てくるのだ。

「ペッグコイン」が仮想通貨普及のカギになるか

現状の仮想通貨では、ユーザー数がそこまで多くなっていないため、店舗側はわざわざ手間をかけてまで決済サービスを導入する必要がないと判断しているはず。キャッシュレス決済は、政府も促進させようと躍起になっていることもあり、まだまだ普及が続くだろう。

仮想通貨のメリットは、国際送金や投げ銭をする際、手間や手数料がほとんど必要ないことだ。一般的な決済手段とは利用シーンが異なる。しかし、先に述べたMUFGが開発している仮想通貨は、日本円の価格に連動するように設計されている「ステーブルコイン(ペッグコイン)」と呼ばれるもの。設計通りに実装されれば、仮想通貨ではあるが電子マネーのような感覚で使うことができるようになる。

そのうえで、PayPayのような大規模キャンペーンが打ち出されれば、消費者の仮想通貨への考え方が変わる可能性があるだろう。

課題は多いものの、まだ伸びしろのある仮想通貨。仮想通貨のメリット・デメリットが世間に広がり、適した利用シーンでのサービスが生まれ、利用者が使いたいと思えるようなインパクトのあるキャンペーンが展開されれば、スマホ決済のような波がやってくるかもしれない。