「佐伯朋嗣」の記事

佐伯朋嗣

ソーシャルリスク対策に必要な

企業に刻々と忍び寄る「炎上」ダメージ 第4回

ソーシャルリスク対策に必要な"体制構築と事前準備"

2017.03.28

今回は、我々が考える企業ができる具体的なソーシャルリスク対策の2つ目、「体制構築と準備」について具体的に触れていきたい。

責任者不在が一番危険!事案がたらい回しに!?

最も危惧を感じるのは、炎上事象の当該業務を担う担当者・責任者の不在である。炎上事象発生時にその場に「居ない」という意味ではない。判断を下す担当者・部署があやふや、もしくは未確定であるということである。

炎上という事象自体が企業経営を脅かすに至ったのは、ここ数年の出来事である。そのため、炎上に対する社内体制が整っていない、知見や知識のインプットにまだ着手していない企業も多くみられる。

その場合、炎上内容に関わる各部署・各担当者がそれぞれ違った動きをすることになり、対応が遅れ、必要以上に炎上が拡散してしまうという事態に陥る。 炎上という問題に対し、企業内の各部署で「管轄外」であると認識されることもある。責任を押し付け合うような形になり、さらに対応が遅れることになるだろう。決して各部署は、責任回避を望んでいるわけではなく、炎上事案に対する社内体制の構築がなされていないことがそもそもの原因なのである。

社内体制の構築をしていく上で、最低限必要とされるのは、日々の情報収集からデータ蓄積を担う部署、いわば「チーム」である。炎上事象が発生した際に即座に判断を担う責任者を明確にすることにより、各部署との連携も容易になる。

各部署の中でも、プレスリリースの配信を想定した「広報」。また顧客からの問い合わせを想定した「お客様相談室」。この2つの部署は、炎上事象対策において重要視されなければならず、連携に必要不可欠である。

特に「お客様相談室」は、重篤な炎上事案が発生した場合において、重要なポジションとなり得る。顧客との対応(会話・内容・態度)がソーシャルメディア上に投稿されることが多いからである。

「お客様相談室」のオペレーションスタッフ(中には外部委託しているケースもある)自体が、「企業の考え」と受け取られるケースもある。その為、顧客からの問い合わせが入ることを事前に予測した上で、社内の対応方針を早期に決め必要がある。これは、炎上を回避する1つの手法になる。

その「炎上」事象は、企業にとって「インシデント」?

現状、多数の企業がさまざまな事業リスク(SNS上の炎上を除く)発生時の対応策をある程度構築していると考えている。SNS上の炎上事象も基本的には同様のリスクであると考え、その内容が企業にとっての「インシデント」であるか否かを見極める必要がある。つまり、社内体制の構築の後、企業側は、どのような事案・状況に対して「炎上」と位置付けるのか水準や基本を整えなければならない。

企業の判断軸が不明確である場合、経過観察や無問といった根拠無き判断が発生してしまう。いつか、沈静化するであろうという安易な考えは、炎上対策では対応の遅れを招き、さらに拡散され、結果、取り返しのつかない自体になりかねない。

炎上事案の取扱水準・基準とは?

「炎上」事案の取扱水準・基準においては、各企業様によって日々変化するべきものである。ここで、我々が考える判断軸について述べていきたい。

SNS上における「炎上」の判断軸は、大きくわけて「定量的な事象」「定性的な事象」の2つに分けられる。1つ目の「定量的な事象」は、言葉の通りクチコミの件数である。

通常時(何も問題が起きていない、広告活動を実施していないなどの状態)におけるクチコミの投稿量を把握し、各企業が定量水準とする。それぞれの事案により投稿量が変動するため一概には言えないものの2倍、3倍など急激に増大した場合は炎上事象と取られ、緊急体制に移行するべきである。

2つ目の「定性的な事象」は、投稿の内容のリスクを捉える基準である。1件の投稿が、先々炎上事象に繋がることもありうる。よって、定量的な判断だけを重視してはならない。このたった1件の投稿を見つけ出すには、これまで説明している「目視パトロール」が活きてくるのだ。

一例として、異物混入の投稿である。たった1件の投稿であったとしても安易に見過ごしてはいけない。未拡散事象として放置するのではなく、企業リスクになりうる投稿であると判断し、日々投稿の動きを目視パトロールしなければならない。その中で、企業側の対応策を練っておくことが重要で、先々の企業評価に影響してくると言っても過言ではない。

炎上の引き金は年々変化している

「定量的な事象」、「定性的な事象」を把握した上で企業体制構築の準備ができていれば、炎上事象発生時の対応判断速度にスピード感が出る。

炎上事例の引き金になる投稿は年々変化しており、今後も変化すると考えている。企業側は、今までに発生した「炎上事例」や、その後の対策方法の情報をインプットしておくことが非常に重要である。ただし、サービス内容や自社で抱えている顧客の性質は企業によって大きく異なる。同様な炎上事例であっても、自社では「初めて発生した問題」といて捉えるべきである。他社の対応と同様にすれば解決に至る訳ではない。炎上事象の担当部署は、日々の動向の変化を把握し、蓄積していくことが求められる。

炎上の訓練も必要?

炎上事象発生時の準備として、「訓練」を自社で実施、または委託している企業もある。目視パトロールをしているチームから炎上発生を「緊急事案」として社内に通知し、情報の連携がスムーズに行われるかを訓練するのだ。訓練を行うことで、自社の弱い部分が見え始め、見直しを図ることもできる。そのようにして、炎上事象発生時の整備を実施していくことが重要であると考える。

訓練を実施する企業は、まだ少数ではあるが、今後の体制整備の準備として1つの有効な手段になるであろう。次回は、2017年の炎上の動向予測について触れていきたい。

佐伯朋嗣

大手IT広告代理店にて100名規模のSEM部署、特にSEO領域の責任者やジョイントベンチャーによる子会社の営業統轄を歴任。その後クラウド業界を経て2011年イーガーディアン入社、2015年に取締役就任。 現在はイーガーディアングループ全体の営業責任者として、監視、SNS、広告BPOなど数多くの大型案件に関わる。 企業のSNS使用方法や炎上のメカニズム、その対策などのソーシャル対応や分析を得意とする。

企業ができる具体的なソーシャルリスク対策とは?

企業に刻々と忍び寄る「炎上」ダメージ 第3回

企業ができる具体的なソーシャルリスク対策とは?

2017.03.08

これまでは、「炎上の定義」や「2016年の炎上の傾向」について述べさせていただいた。今回は、弊社が考える具体的なソーシャルリスク対策の手法についてご紹介したい。

炎上した後の対応ではもう遅い!?

実際にSNS上で企業絡みの「炎上」事象が発生した場合、ユーザーや世間は、企業側の対応のスピードや内容、さらに誠意に着目する。それらの対応によって、その後の炎上の広がり方、企業イメージや、経営のインパクトなどに影響を与えると言っても過言ではない。対応次第で、企業評価は大幅に左右されることになる。「炎上」発生から、その解決に至るまでの対応が重要になってくるのだ。

より的確な対応をするには、炎上が発生してからの事後対応では遅い。企業側は、「炎上」事象が発生することを前提とした企業対策を講じておかなければならない。

2つのソーシャルリスク対策とは?

「炎上」事象発生前に取れる対策はどのようなものがあるのか。ここからは、その手法について、具体的に述べていきたい。

弊社では、大きく2つのソーシャルリスク対策があると考える。1つは、「自社」を知ることである。これは、自社がSNSユーザーや、世間からどのようなイメージで捉えられているかを把握することだ。2つ目は、体制構築と準備である。「炎上」事象が発生した際に即対応できる社内体制を構築しておくことだ。

これらは、「炎上」事象の「事後対応」であってはならない。あくまでも「事前」に対応・実施できているかが重要だと考える。今回は、1つ目の「自社」を知ることについて、具体的な対策例をあげていきたい。

蓄積があるからこそ変化に気づく!?

まずは、口コミのパトロールである。口コミのパトロールは、炎上事象の早期発見という目的が主ではあるものの、それ以上に企業側がSNSユーザーや世間に「どのような評価を得られているか」を見出すことができる。

企業のイメージや評価を可視化させることは重要である。口コミを追うことで、企業イメージの評価水準を知ることができ、さらには変化も迅速に察知することができる。今現在、ユーザー様や世間から企業側がどのような評価を得られているのか、日々の変化を追うことは重要であると考える。

以前の連載で記載した通り、「炎上」事象には「ネガティブ」・「ポジティブ」の様々な意見が飛び交うバイラル型が多くなっている。さまざまなユーザーの意見が飛び交う中で、「ネガティブ」な口コミや意見だけを重視し対応することは、危険である。「ポジティブ」な意見を寄せてくれているユーザーを軽視した判断になりかねないからだ。

口コミの中に点在する「ネガティブ」「ポジティブ」を重要度順に配分することで、自社の評価水準を知ることができる。評価水準に変化が起きた際、今までとどのように違うのか、どんな口コミにより変化が起きたのかを比べなくてはならない。その変化にどう対応すればいいのか、次の対策の検証開始することができる。

例えば、口コミの中に自社のパワハラ体質と捉えられるような投稿があったとする。もし、このような投稿があれば企業側が、人事部門と連携し社内調査を開始すべきである。投稿が事実であれば、即座に社内の体制を整理する必要があるのだ。

「炎上」事象発生!即謝罪。それでいいのか?

「炎上」事象が発生した場合、ソーシャルリスク対策をおこなっている以上、企業側は「謝罪」「謝罪しない」の2者選択しかないという結論に至ることが多い。炎上コンサルの1つの手法ではあるものの、謝罪する、しないで解決に至るという安易な考えは捨てなければならない。

「ネガティブ」な口コミの件数が多いと言ってもそれは1つの要素でしかない。件数だけを見て「謝罪」「謝罪しない」の判断自体をすべきではないのである。企業の口コミが拡散された、されないに関わらず、1つの口コミがどのような影響を与えているのか見極める必要がある。その口コミが誰にどのような影響を与えているのかを冷静に捉え、その後の企業アクションの方法を検討していかなければならない。

口コミパトロールにはこんな役割も!

「ポジティブ」な口コミに対しても、パトロールは大きな役割を果たすこともある。例えば、自社製品に対する「価格」に対しては「ネガティブ」だけれども「機能性」に対しては「ポジティブ」など、口コミの「ネガティブ」「ポジティブ」の区別である。データが可視化されれば、そこからのクロス分析も可能になる。

口コミのパトロールは、「価格帯」「デザイン」「機能性」など口コミベースで自社製品の弱みや強みを可視化することができるというメリットがある。さらに、口コミのパトロールを継続させれば、テレビCMなど、顧客の意見を取り入れた有効な広告展開を期待できると言える。マーケティングの改善、リスクの回避にも効果的なのだ。

口コミのパトロールは、単純なリスク調査と思われがちである。しかし、さまざまな口コミを知ることは、企業側としてより多くの情報を集約でき、結果的に自社を守ることに繋がるのだ。

次回は、ソーシャルリスク対策2つ目の「体制構築と準備」について具体的に触れていきたい。

佐伯朋嗣

大手IT広告代理店にて100名規模のSEM部署、特にSEO領域の責任者やジョイントベンチャーによる子会社の営業統轄を歴任。その後クラウド業界を経て2011年イーガーディアン入社、2015年に取締役就任。 現在はイーガーディアングループ全体の営業責任者として、監視、SNS、広告BPOなど数多くの大型案件に関わる。 企業のSNS使用方法や炎上のメカニズム、その対策などのソーシャル対応や分析を得意とする。

2016年、記憶に残る炎上とは?

企業に刻々と忍び寄る「炎上」ダメージ 第2回

2016年、記憶に残る炎上とは?

2017.02.20

前回、「炎上の定義」についてお話した。今回は、その定義をもとに、記憶に新しい2016年の炎上の傾向について切り取っていこう。

たった一つの投稿が、国までも動かした!?

「保育園落ちた、日本死ね!!!」

これは、あるユーザーがブログに匿名投稿をした文章のタイトルである。待機児童問題に対し、強い不満を訴えた母親の悲痛な叫びは、瞬く間にSNS上で拡散されて炎上。ユーザー間で「ポジティブ」「ネガティブ」両面の意見投稿がなされ、激しい議論が巻き起こった。さらに、有名タレントがSNS上でこの問題を取り上げたことから、国会でも議論になり、世間に広く知れ渡ることとなる。たった1つの炎上が、国までをも巻き込む事態となったのだ。

そのCMに一言申す!声を上げたユーザーたち

また、こんな特徴的な炎上もあった。それは、企業のテレビCMに対する炎上である。2016年は、女性の容姿や年齢に関することを取り上げたCMがたびたび問題となった。視聴したユーザーたちは、「女性軽視ではないか」「女性差別ではないか」とSNS上で、意見を出し始めて炎上へ発展した。

その結果、企業への苦情が相次ぎ、最終的に企業側がCMの放送停止という結論を出すことになる。早期に放送停止の判断をした企業は、ユーザーの反応を日頃から調査していた、もしくは、SNS上のインシデント対策に力を入れ、社内体制を整えていたと考えられる。

時代とともに炎上も傾向を変える?

前回でも触れたように、以前は、「炎上」させる事を目的とした第三者、いわゆる「炎上仕掛け人」のような人物がSNS上に存在していた。問題投稿(社会的に非倫理的な発言や行動、公序良俗に反するような内容)を見つけ出し、意図的に拡散させた。炎上仕掛け人が、ターゲットにしていたのは、企業に属する社員やその家族が主であった。企業の機密情報や、顧客の個人情報を気軽にSNS上に投稿してしまうケースや、犯罪とも取れるような投稿である。火種は投稿者の「不用意な発言」だった。具体的には、店舗などに「有名タレントが来た」というプライベートな情報の投稿である。

一度炎上をしてしまえば、もう誰にも止めることはできない

そして、問題の投稿をした本人の個人情報が、ユーザーに暴かれ、さらにあらゆるサイトから投稿者の過去の発言までもがピックアップされ炎上を助長していた。この一連の流れは、わずか数時間の間に行われたのだ。

2016年、「炎上」は、時代とともに変化を遂げた!

2016年は特に「炎上」が変化したと感じる。今までは「ユーザーの不用意な発言」が炎上の火種となっていた。しかし、2016年は、「コメンテーター型」、つまり議論され情報が拡散し、炎上に繋がるというケースがほとんどだった。 その要因は、SNSの日常化である。SNSユーザーは年々増加傾向にあり、日常生活に欠かせない一部となり始めた。さらに「炎上」という事象・言葉自体も既に一般化され、傍観者だったユーザーも「炎上」に対して、興味を持ち、企業のテレビCMや広告への意見を投稿しやすくなったのだ。

マスメディアもこれまで以上に「炎上」に関心を示し、報道することで、炎上のスピードも早くなり、一般ユーザーをいっそう誘引する。ひとつの炎上事象に対しさまざまな意見が出る「コメンテーター型」になるのは、「個人の価値観」は多種多様であるからだ。ネガティブとポジティブに意見が分かれてしまうのも当然であろう。賛同・反対などの意見交換も繰り広げられ、さらに多くの炎上が発生し過熱するようなサイクルになってきた。

「炎上」の変化とともに企業も意識を変え出した?

2013年に世間を賑わせた「バイトテロ」をご存知だろうか。バイトテロは、投稿者の行動や発言が「問題である」と誰もが捉え、非難が殺到し炎上していた。バイトテロは、「個人の価値観」に左右されないのだ。

しかしながら、ここ数年、そのバイトテロも激減している。その要因としてあげられるのは企業対策だ。企業側も管理者教育やリスク検知、パトロールなどを始めとした対策を強化し始めた。それにより、バイトテロの炎上が減少していったと考えられる。

各企業が、何らかの対策を取るようになったことで、一定の効果を挙げているとも言える。企業側も単純にリスク投稿を監視・パトロールするだけには留まらない。ユーザーの生の声に耳を傾け、その時々でもっとも効果的な対策を講じるようになっている。

ユーザーの意見が"見える化"されたからこそ、企業は慎重に対策を練らなければならない。「自社へのリスク投稿がなされた」と、そのことだけに注力している企業がいれば体制を整え直す必要がある。ポジティブ・ネガティブに問わず、ユーザーが何を企業に訴えたいのをしっかりと調査しなければならないのだ。

次回は、炎上が発生した場合の企業対策について具体的に触れていきたい。

佐伯朋嗣

大手IT広告代理店にて100名規模のSEM部署、特にSEO領域の責任者やジョイントベンチャーによる子会社の営業統轄を歴任。その後クラウド業界を経て2011年イーガーディアン入社、2015年に取締役就任。 現在はイーガーディアングループ全体の営業責任者として、監視、SNS、広告BPOなど数多くの大型案件に関わる。 企業のSNS使用方法や炎上のメカニズム、その対策などのソーシャル対応や分析を得意とする。