アルファロメオの「ジュリア」にディーゼルエンジン搭載車が加わったのは大きなニュースである。先にSUVの「ステルヴィオ」に追加されたことで、エンジン自体のインパクトは若干薄れるが、ジュリアの選択肢が増えたことはカスタマー視点で見ても嬉しい。

アルファロメオの「ジュリア」にディーゼルエンジン搭載車が登場(画像はガソリンエンジン搭載車。ディーゼル車の外観はガソリン車の「スーパー」と変わらない)

まずは価格に注目! ガソリン車とほぼ同等?

FCAジャパンは2019年4月、ジュリアのディーゼルエンジン搭載車「2.2 ターボ ディーゼル スーパー」(2.2 TURBO DIESEL SUPER)を発売した。“スポーツディーゼル”の愛称が走りへの期待をあおってくるが、まず注目しておきたいのはプライスだ。「ディーゼル スーパー」の556万円は、ガソリンエンジンを搭載する「スーパー」よりは13万円高いものの、その1クラス上に位置する「ヴォローチェ」よりは31万円安くなる。

「ジュリア」の価格は受注生産のエントリーモデル「2.0 TURBO」が446万円、「2.0 TURBO SUPER」(スーパー)が543万円、「2.2 TURBO DIESEL SUPER」(ディーゼル スーパー)が556万円、「2.0 TURBO VELOCE」(ヴェローチェ)が587万円、「2.0 TURBO Q4 VELOCE」(ヴェローチェQ4)が597万円、「2.9 V6 BI-TURBO QUADRIFOGLIO」(クアドリフォリオ)が1,132万円となる

何が言いたいかというと、ジュリアにおけるディーゼル車のポジショニングに注目して欲しいのだ。通常、ディーゼルエンジン車は開発と生産にお金がかかるため、ガソリン車よりも割高になるパターンが多い。一概に全てのディーゼルエンジン車に当てはまるわけではないが、「コモンレール式」(燃料を噴射する仕組み)のパテント料やEGR(排気ガスを再循環させる装置)、ATS(排出ガス後処理装置)などの追加パーツ代もそこに含まれるからだ。

ドイツ御三家を例に取ってもその傾向は強く、BMWあたりはガソリン車とディーゼル車の価格差が顕著だ。なので、割高のディーゼル車を買う場合は、長く乗ってランニングコストで元を取ろうというような計算をすることになる。

が、ジュリアは違う。ディーゼル車をガソリンの同グレードと比較しても、価格はそれほど変わらない。ちなみに、ステルヴィオのディーゼル車は617万円で、ラインアップの中では最もリーズナブルなモデルとなっている。

ディーゼルエンジン車は割高になりがちだが、「ジュリア」の場合、同グレードのガソリンエンジン車と比較してもそれほど変わらない

もちろん、そこにはインポーターであるFCAジャパンの戦略と世界市場の変動がある。

例えば、その背景にはヨーロッパでのディーゼルエンジン離れが見てとれる。ドイツ系メーカーの環境数値における不正改ざん事件が尾を引き、ヨーロッパの国々でディーゼル人気がガタ落ちしているのだ。また、それを機にヨーロッパ各都市で厳しい規制も始まっている。

昨年、ボルボジャパンがプレゼンテーションで使った資料にその変化が記されていた。ヨーロッパ18カ国のディーゼル比率の減少をまとめたもので、2017年4~6月は市場に対し45%だったものが、2018年4~6月は37%にまで落ち込んでいたのだ。さらにいえば、ピークとされる2011年には56%に達していた年間市場比率は今年、30%台まで減少する見込み。もはや、どこで下げ止まるのかは見通せない状態だ。

そこで、各メーカーはヨーロッパ圏外でのディーゼル車比率を増やす算段を取り始めた。つまり、日本にも好条件でディーゼル車が導入されるようになったのだ。低価格が実現したのは、そんな事情もあってのことだと推測される。

「ジュリア」にディーゼルは…合う!

では、この2.2リッター直列4気筒直噴式ターボディーゼルを実際に走らせた印象を少しお伝えしよう。

まず、ディーゼル特有の振動と音だが、振動はほとんど気にならない。軽量化されたクランクケースの剛性は高く、バランスシャフトも最適化されている。それに、エンジンマウントやブラケットも進化しているようだ。よって、かつてのようなトラック然とした振動はなく、実にスマートに吹け上がる。ただ、ディーゼル特有のエンジン音は若干残り、窓を開けるとボンネット越しに耳に入ってくる。もちろん、それでも最近はやりのガソリン3気筒ユニットレベルなので、そこまで気になるものでもない。

ジュリアのディーゼルエンジンは最高出力190ps(3,500rpm)、最大トルク450Nm(1,750rpm)を発生する

走り出しは高トルクが効いていてグイッとクルマを前へ押し出す感じ。トルクが前面にくるので、イメージ以上に大きなエンジンを動かしている気になる。「小さいエンジンを上まで回して……」という昔のアルファの4気筒エンジンとは別路線だが、それでもアクセルに対するレスポンスが良いので、そこは“スポーツディーゼル”と呼ぶにふさわしい仕上がりだ。それに、ハンドリングも軽快である。

そうした高トルク特性は高速道路でキラリと光る。1,500回転付近での高速巡航は快適そのもので、1クラス上の高級車を走らせている感覚。余裕のパワーだ。よって、ドライブモードはエコモード的な「a」で十分。アクセルを深く踏み込まずに、快適&省エネのロングドライブを堪能できる。

高いトルクを発生するディーゼルエンジンの特性は、高速道路を走ると大いに堪能できる

ちなみに、「d」「n」「a」のドライブモードは味付けがハッキリ区別されている。なので、追い越し用の中間加速が必要な時は「d」にすればOK。ギアが落ち、6,000回転マックスの回転計をしっかり使って加速してくれる。

そんなジュリアのグレード別に見た販売(登録)構成比率だが、2018年でみると、「スーパー」が第1位で40%を占めていた。続いて「ヴェローチェ」のFR、「ヴェローチェ」のQ4という順位だ。といっても、ヴェローチェQ4に迫る数の「クアドリフォリオ」の存在も見逃せない。なぜなら、ディーゼルがデビューした2019年3月単月では、ディーゼル比が15%となり、各モデルが横並びに近くなったことで、クアドリフォリオがトップの座に躍り出たからだ。まぁ、この辺はスペシャルなモデルゆえ、デリバリーのタイミングもあるので、一概に1番人気とは言えないのだが……。

それはともかく、ディーゼル車の登場で、ジュリアファンがざわついているのは確かだ。オールドスクールなアルファロメオのイメージから、このクルマの登場に拒否反応を持つ方もいるだろうし、スポーツディーゼルの走りに納得する方もいるだろう。個人的には、後者であることは間違いない。しばらく走らせていると、ディーゼルであることを忘れるほど自然なエンジンフィールに酔いしれる。メーカーも、そこにたどり着いたからこそ発売したのだと思う。クルマづくりではデザイン、サウンド、フィーリングを大事にするイタリアメーカーだけあって、ディーゼルでもしっかりとそこにこだわっている。