「一条真人」の記事

一条真人

ライドシェアで苦戦のUber、新サービス「UberEATS」で挽回なるか

ライドシェアで苦戦のUber、新サービス「UberEATS」で挽回なるか

2016.10.11

「Uber」を使ったことがある人はいるだろうか? 日本では名前は知っているが使ったことのない人が多いかもしれない。Uberはスマホアプリを使った新世代のタクシーと言えるもので、現在では世界70カ国で展開されているサービスだ。

国内では苦戦のUber

スマホのGPSで自分の位置を知らせると、的確にそこに自動車がやってくる――。Uberはタクシーがつかまりにくい場所にいるときに便利なサービスだ。Uberの運転手はUberの社員というわけではなく、自分の自動車で「サービス」を提供することで、Uberから支払いを受ける。

Uberが提供するのは位置情報、通信情報を統合したサービスであり、それに基づいてUberと契約した自動車オーナーが客をピックアップして目的地に移動させ、客はUberに対してスマホアプリに登録したクレジットカードで支払いをする。

そのため、支払いに関しても現金のやりとりをする必要もなくスマートだ。IT化されたタクシーサービスとも言える。特徴はUberにサービス提供する自動車オーナーも好きなときに働くことができ、自由であるということだ。

客は支払いを終えた後に、ドライバーを評価するシステムになっている。そのおかげで、ドライバーも良い評価を得たくて、良い仕事をするようになるというわけだ。非常に合理的なシステムだ。

Uberのサービスはアプリから配車を依頼し、乗車・決済、ドライバーを評価するという流れ

このシステムをひっさげ、Uberは世界的にビジネスを展開している。ちなみにUberのCEOは自分がパリを訪れたときに、タクシーを拾うのが非常に難しかったために、このサービスを始めることを思いついたのだという。創業は2009年だ。

さて、このようにスマートなシステムを持つUberが2014年には東京で本格的にサービスを開始したのだが、広くビジネス展開をするのは難しかった。日本においては普通の自家用車で客を移送するサービスが白タク行為とみなされ、国土交通省から指導が入り、自由にビジネスを展開することができなかった。現在は、一部エリアでの営業に限られ、容易にビジネスを拡大できずにいるのだ。

これに対して、Uberが足踏みしている間に同じようにスマホなどで呼ぶことができるサービスが続々と始まっている。たとえば、LINEが2015年1月に「LINE TAXI」というサービスを開始した(LINEは支払いサービスを提供、タクシーは提携会社が提供)。これはGPSでユーザーのいる場所にタクシーがやってきて、目的地まで移動することができるサービスだ。支払いはLINE Payですることができるので、現金で支払う必要がない。まるでUberのような使い勝手で使うことができるわけだ。

また、最近はロボット型携帯電話であるロボホンも自分がいるところにタクシーを呼ぶことができるようになった。これらのサービスはどちらも日本のタクシー会社である「日本交通」と連携したサービスで、日本交通自体もスマホアプリ「全国タクシー」を提供し、スマホでタクシーを呼ぶことができる。さらに、10月にはこのアプリはApple Payに対応するので、支払いに現金を使う必要がない。

LINE TAXIや全国タクシーは日本のどこでも使うことができるサービスであり、エリア制限がされたUberと比較すれば、遙かに大きなビジネスチャンスを持っていることになる。 ドライバー、自動車を持たずに配車システムしか持たない「ライドシェア」のUberのシステムをそのまま日本に持ち込もうとすると、法規制的に不利な状況になってしまうわけだ。さらに基本的な状況として、東京はパリなど外国と比較して、非常にタクシーが拾いやすい街なので、この種のタクシー配車サービスの必要性はあまり高くないので、この国はUberにとって、あまりいい市場ではないかもしれない。

新たに始めた「UberEATS」とは

そんなUberが9月30日に日本で新たに開始したのがフードデリバリーサービスの「UberEATS」。Uberのシステムを利用して、「人を移送する」以外のビジネス展開に乗り出したわけだ。配達員は登録制で、好きなときに働き、働いた分の報酬を受ける。Uberはレストラン、配達員、客をつなぎ、それを実現するためのシステムを提供するという立場だ。今回のビジネスに関しては、UberEATSは食のデリバリーサービスであり、人の移送ではないため、法的に問題がないということだろう。

食のデリバリーシステム「UberEats」

このUberEATSでは契約レストランの店内で提供するような料理を自動車もしくは自転車でデリバリーする。

客はUberと同じく、UberEATSの場合もスマホ、タブレットアプリで利用できる。客がアプリで料理を選択すると、Uberと契約したドライバー、ライダーが食品を運ぶ保温性を持つカーゴに料理を入れて注文者にデリバリーする。ちなみに当初は渋谷区および港区を中心としたエリア(渋谷・恵比寿、青山・赤坂、六本木、麻布)がサービス対象エリアとなり、他ではサービスを利用できない。

レストランと配達員は登録制。Uberは食をデリバリーするシステムを提供する役割

デリバリーサービスにもライバル

では、新サービスでUberは成功できるのだろうか。法規制に阻まれたUberだけに、新サービスへの期待も大きいだろうが、日本は宅配が盛んな国である。宅配サービスをまとめたドコモの「dデリバリー」、楽天市場の「楽天デリバリー」、FineDineなど様々だ。しかし、商品ラインナップを見ると、サービスごとに特徴がわかり、現状のライバルが鮮明になってくる。

dデリバリー、楽天デリバリーはデリバリーに向いたファストフード、弁当的なものを主に扱っている。これは商品自体はあまり高価ではないものが多いが、これに宅配料金が入ると割高感を感じないでもない。また、これらの商品は普通にレストランで出すようなものではなく、色合いが異なる。

これに対して、比較的有名な店のこだわりの料理をデリバリーしてくれるのが「FineDine」だ。ただし、利用可能エリアは、西は渋谷、新宿、高円寺、祖師谷から北は池袋、東は日本橋、銀座あたり、南は自由が丘という感じで、東京都の西側の一部に限られる。しかし、渋谷区および港区を中心としたエリア(渋谷・恵比寿、青山・赤坂、六本木、麻布)に限定されるUberEATSに比べれば、かなり広い。

店舗の関係でエリアによって、対応可能な店舗が変わるのはUberEATSもFineDineも同じだが、渋谷円山町あたりをターゲットに検索してみると、UberEATSのほうがバリエーションがある。クリスピードーナツなどスイーツも注文できるし、渋谷焼魚食堂のような選択肢があるなど、注文できる料理に幅があり、現時点では宅配料金が加算されない(当初は無料)のもいい。

現状のランナップを見る限り、UberEATSとダイレクトに競合しそうなのはFineDineのようなサービスだが、FineDineが有利なのは対応エリアの広さ、Uberが有利なのは料理のバリエーションの多さと現時点で宅配料金がかからないことだ。

宅配スピードはUberがデリバリーにかかる時間はテスト的に計測したところ、30分程度で、店と状況によっては8分程度でデリバリーされるなど、時間的には十分にスピーディそうで、戦闘力はありそうだ。FineDineはこれに対して、平均30~60分としている。ITに優れたUberの情報処理は速いが、それで得られるアドバンテージは実際のデリバリーは交通状況の問題もあるので大差ないとも考えられる。

UberEATSは成功できるか?

セグメントが近いUberEATSとFineDine。渋谷から利用するのであれば、ユーザー目線から見て、UberEATSにも魅力があるだろう。UberEATSとしては、とりあえずは現状のエリアで確実に勝てる条件を揃えなければ、ビジネスが始まらない。

さて、ユーザー視点から見てと書いたが、実際の運用ではドライバー、ライダーの運用の問題もある。運用のトラフィックがあがっていった場合、世界的にビジネスを展開し、多くの経験を持ち、独自システムを持つUberの方が有利なのではないか? と推定できるが、Uberは、まだ国内でエリア限定のサービスを開始したばかりであり、この当たりがどうなるかはまだわからないし、別の問題が生じてくることもあるだろう。

サービス対象エリアは今後、拡大していくということだが、いずれにせよ、Uberにとっては、まずは渋谷で確実に成功することが必要だ。それができれば、ライドシェアで苦戦した分を派生のビジネスで挽回できるかもしれない。

ロボット型携帯電話「ロボホン」は何をもたらすか

ロボット型携帯電話「ロボホン」は何をもたらすか

2016.09.02

僕がロボホンを初めて見たのは昨年の秋のCEATECだったと思うが、その第一印象はルックスが「カワイイ」ということと、その名前からくる「ロボット型のスマホ!」という言葉のインパクトだったが、その内容については展示がかなり混雑しており、詳しくはわからなかった。

その後、今年に入って、春のAndroidのイベント「ABC」などでも目にし、ダンスなどのアクションのデモを目にしていたが、ぞの具体的な機能についての情報が僕の耳に入ってきたは本当に発売も間近な時期だった。

それにしても、ダンスをするロボット型携帯電話というのは今までにないという印象だった。発売前のABCでのロボホンは30センチ四方ぐらいの範囲でダンスをしていたのだが、それでは広いスペースが必要になりすぎるということか、実際に販売されたロボホンのダンスはより移動が少なくなった。やはり、実際に販売される段階になると、現実的になるものだ。

踊ることもできるロボホン

実用レベルの音声入力を実現したロボット

僕はロボホンが「ロボット風の外観を持つスマホ」だろう程度に考えていたのだが、すぐにその予想が間違っていたことを感じることになった。

背面に小さな液晶を搭載しているのは知っていたので、その液晶で操作を行なうのでは? と思っていたのだが、実にロボホンはその主な操作をスマートフォンのようにタッチディスプレイではなく、「音声」によって行なうのだ。ちなみに人の名前などを音声入力でうまく入力できないときは、背中の部分に搭載している小さなディスプレイで手書き文字入力をすることもできる。

なお、現在のロボホンができる代表的な機能は次のようなことだ。普通のユーザーがスマホで行なう実用的なことのかなりの部分がカバーされているのではないだろうか?

  • メールの送受信

  • アラーム(目覚まし)

  • ニュース・天気予報の読み上げ

  • 地図の表示

  • デジカメ写真・動画の撮影、写真、動画のメールへの添付

  • デジカメ写真のプロジェクター表示

  • 音楽の再生

  • クイズ、ポポン(独自オセロ)

  • 通話、伝言

  • キーワード検索(Wikipediaでの検索)

正直なところを言えば、電車で目的に行くための経路検索などもあれば助かる機能だが、シャープでは、そのような機能を搭載することも視野に入れているという。今後、数年という長い視野でスマートフォンで主に使われているような機能をロボホンで実現することを目指しているのだという。

「なぜ、長い時間がかかるのか?」「スマートフォンにアプリを単純に移植するように簡単にいかないのか?」と言えば、言うまでもなくロボホンはUI(ユーザインターフェース)が音声であるためだ。単純に機能を持たせるだけでなく、音声入力で使いやすいそのアプリのためにUIも開発しなければならない。スマホのアプリをそのまま移植するわけにはいかない。 ロボホンがこのように購入後もソフト的に進化したり、情報にアクセスできるのはインターネットに接続できるからだ。ロボホンは4G LTEの高速なモバイル通信機能を搭載しており、スマホが通信できる場所なら、通信を行なうことができるし、Wi-Fi接続もできる。

プロジェクターで壁に投影することもできる
頭部にはカメラとプロジェクターを搭載
Wikipediaの情報を検索することもできる
背面のタッチディスプレイは補助的に使われる

「エモパー」スマホや「Siri」との違い

シャープはスマホメーカーでもあるが、最近のハイエンドモデルは「エモパー」と呼ばれる機能を搭載している。これはエモーショナル・パートナーの略で、人間の感情的パートナーのようになるという意味で、話しかけてきたり、画面に情報を表示したりする。スマホが友達になるというようなものだ。

ただ、このエモパーはコミュニケーションのためだけの機能であり、その機能はスマートフォンの一部に過ぎない。そして、そのコミュニケーション機能もロボホンを上回ることはない。その機能はメモを覚えてくれるとか、特定の話題を状況に応じて話をするというようなものだ。

エモパーの機能。雑談やメモの機能があり最新版ではダイエットなどに役立つアドバイスも

ロボホンとエモパー、両者ともにシャープの人工知能プロジェクト「ココロプロジェクト」から生まれているが、その目的、機能、スタンスは大きく異なっているのだ。

そして、iPhoneの「Siri」とも大きく異なっている。Siriは音声入力による自然言語処理でコミュニケーションができるという面ではロボホンに近いが、SiriはiPhoneの機能の一部に過ぎず、自立的に写真を撮影したり、人を認識して伝言を渡せるようなロボホンとは根本的に異なる。

ロボットとスマートフォンの違い

これらスマートフォンのアプリとロボホンのもう1つの大きな違いはその形状にある。ロボホンはロボットであり、「人間の形」をしているということ。人間の形状をしているが故に人々がそれを1つの独立した知的存在として認識しやすい。スマホが同じ人工知能を搭載したととしても、人間の形状をしたロボットのほうが人は話しかけやすいし、親しみを持ちやすいというわけだ。

そして、ロボホンはその「動作」や「声」の1つ1つにまで細かい配慮があり、1つのキャラクターを表現している。人間と同じくキャラクターを持った存在なのだ。

シャープではロボホンのしゃべりや動作において一定のガイドラインを作り、それに基づいて動作やしゃべりを決めているという。この細かいキャラクター作りにまで配慮しているあたりが他のロボット製品とロボホンの印象が異なる一因なのかもしれない。「カワイイ」キャラクター作りがロボホンが女性に受ける一因となっているのだろう。

音声入力はどうあるべきか

とはいえ、その音声入力インターフェースは簡単に現在の形になったわけではないようだ。シャープの関係者は次のように話す。

「日本人がロボットに話しかけるのはマインド的に難しいのでは? と考え、当初はエモパーのように『ロボホンから話しかける』UX(ユーザエクスペリエンス)を中心に企画・開発していました。しかしながら、実際にプロトタイプを作ってみると、形のあるものに意図しない内容を頻繁に話しかけられるのは思いのほか、うっとおしく感じ、心地の良いUXにならないと判断しました。そこで、心理的障害を下げるための対策として、『ボクに質問』のように、ロボホンから『○○も聞いてみて!』と誘導するようなUIやそわそわモーションをして『どうしたの?』と話しかけてもらいやすくしたり、というさりげない誘導を入れています」

つまり、人間のほうからロボホンに話しかけたいキモチにしようとしているわけだ。

ロボホンの可能性

いろいろ述べてきたが、やはりロボホンの大きな特徴はそのUIを基本的に音声入力にしたことが大きいだろう。これがロボホンを他のデバイスと明確に一線を画するものとしている。

何しろ、いままでスマホにしてもタブレットにしてもパソコンにしても、音声入力で不自由なく実用的に操作できるようなデバイスというのは存在したことがないのだ。言うまでもなく、パソコンはキーボード入力ができなければ使えないし、スマホにしても同様だ。これがロボホンであれば、メールアドレスさえ登録していれば、デジタル機器に疎い人でもスムーズにメールを使ったりすることができる。

これは非常に画期的なことであり、ロボホンは音声入力の標準化という今までにないUIを得たことによって、今後、今までにない市場を開拓していける可能性がある。

パソコンでキーボードをたたいて作業しながらでも、ロボホンで音声でメールの送信作業をしたり、受信したメールを音声で聞くことができる。物理入力デバイスとパラレルに使うことができるのだ。ある意味、パーソナルアシスタントのようで面白い。

ロボホンはスマートフォンのようなデバイスと競合する製品ではなく、共存できるもので、さらに新しい市場を開拓していける製品なのだ。

なぜ、音声入力にこだわったのか?

それにしても、なぜシャープはこんなに音声入力にこだわったのか? そして、その先に何か考えていることはあるのか? これもシャープ関係者に聞いてみた。

「音声"は"表示"のようにユーザーの時間を拘束しません。歩いているときや、何か作業をしているときにも音声であれば耳に入ってきます。また表示だけでは愛着が湧きませんが、音声の会話でやり取りすることで愛着が湧き、それによってその対象(ロボホンやお話しする家電)に自分の情報を話すようになると考えます。今後、音声でのサービス、特にユーザープロフィール・嗜好に沿ったサービスが展開されるようになると考えており、"音声"には非常にこだわっています。具体的なサービスはまだ検討中であり、現時点ではあまりお話できませんが、例えばユーザーの好きなものを登録しておくと、近くのレストランを検索した際に、好きなものとリンクしたお店を紹介してくれる等、嗜好理解を活用したサービスはいろいろ考えられるかと思います。好きな芸能人をロボホンに教えておくと、その芸能人が出演する番組を放送前に教えてくれる、等もユーザー理解の具体例になるかと思います」

シャープは音声入力の先に、さらにユーザーカスタマイズした情報サービスの提供なども考えているようだ。ロボホンは、まさにパーソナルアシスタントと言える存在になるのかもしれない。