ジャニーズ事務所から「バーチャルアイドル」が誕生し、その意外性に注目が集まっている。
嵐やV6、KAT-TUN、Kis-My-Ft2など、これまで活躍してきた同事務所のアイドルたちは、改めて言うまでも無く皆、生身の人間だ。だが2月19日に発表された「Johnny’s×SHOWROOM 『バーチャルジャニーズプロジェクト(VJP)』」に関して言えば、それは異なる。
同プロジェクトは、SHOWROOMで行うライブ動画配信が主軸。表に立つのはバーチャルキャラクターで、キャラクターの声を担当する演者(キャラクターボイス:CV)として、ジャニーズ事務所のアイドルが配役されているという座組みだ。
プロジェクト第一弾として今回発表されたのは、関西ジャニーズJr.内ユニット「なにわ男子」の藤原丈一郎さんと大橋和也さんがCVを務めるキャラクター。この企画を若手の登竜門として考えていることが伺える。

また、会見当日の夜から、両キャラクターの動画配信がスタート。「海堂飛鳥」の配信は21:30から、「苺空星空」の配信は22:15から開始となっており、続けて見ることのできるスケジュールだ。発表に驚き、関心を持った人たちがその熱量のまま、今夜の配信に集まることが予想される。
これまではWebサイトではアイドルの写真は非掲載、電子書籍ではシルエットのみ掲載というケースもあるなど、インターネット対応には消極的だったジャニーズ事務所だが、2018年3月にはYouTubeに公式チャンネル「ジャニーズJr.チャンネル」を開設するなど、その姿勢は変化しつつある。
今回の企画に関して、「最新技術でジャニーズの新時代を切り開く」(プレスリリースより抜粋)としており、その気概の感じられる、非常にスピーディーな企画進行だ。ジャニーズがインターネット技術の潮流に関心を示していることを象徴する事例とも言えそうだ。
これまでにもあった二次元×三次元の試み
影響力が非常に大きなジャニーズ事務所による企画ということで注目を集めている本企画だが、これ以前にもキャラクターとアイドル(俳優)をコラボレーションさせた女性向け企画は存在する。アニメ・マンガ原作の脚本を若手俳優が演じる「2.5次元舞台」は、キャラクターを生身の俳優が演じるという点で、やや類似性はあるだろう。
それ以上に近いのは、バンダイナムコとアミューズが企画したメディアミックス作品「ドリフェス!」(2016年開始)。キャラクターのCVにアミューズの若手俳優を起用したという点で、今回の座組みに近いものがある。
活動の中で「5次元アイドル」(2次元のキャラクターと3次元の俳優を合わせた造語)を標榜し、ゲームアプリやTVアニメでキャラクターのCVとして出演した俳優たちが劇中歌を歌い踊るライブを行うなど、“次元の壁”を行き来する活動を行ってきた。2018年10月に開催された武道館ライブをもって活動に区切りをつけるとアナウンスされたが、今も根強いファンを抱えるコンテンツだ。
「顔が見えない」ことに不安の声も
ジャニーズのような「三次元」のアイドルを長年輩出してきた事務所が、あえて「二次元」の要素を含むバーチャルアイドル企画を立ち上げたのは、HoneyWorksのファンはじめ二次元を愛好する人たちへのアプローチによるファン層の拡大、そしてファンとアイドルの交流機会の創出が狙いと考えられる。
動画にコメントをつけ、アイドルが返事をするというやりとりは、これまでライブで受ける「ファンサ」(観客に向けてアイドルがアクションを行うこと)が主体だったアイドルとファンの関係に変化をもたらすかもしれない。
ただ、バーチャルアイドルが表に立つと当然ながら、ジャニーズアイドルの顔は見えない。ジャニーズJr.として活動し、ユニット化、そしてデビューという既存の路線とは大きく異なる本企画に対し、ジャニーズファンからはSNS上で不安の声も上がっている。
「二次元」と「三次元」、どちらか一方で構わないという人がいるのも事実ではあるが、相乗効果によって新たな魅力を創出する、あるいはこれまで知らなかったもう一方の魅力を発見する機会になることも考え得る。新たな化学反応を起こすことができるか、今後の展開に注目したい。