「クラロワリーグ 世界一決定戦」- Nova Esportsが選手層の厚さを見せつける

「クラロワリーグ 世界一決定戦」- Nova Esportsが選手層の厚さを見せつける

2018.12.07

幕張メッセで「クラロワリーグ 世界一決定戦 2018」が開催

日本からは開催国枠でPONOS Sportsが出場

会場での演出や配信視聴者向けの演出など見どころも満載

12月1日、幕張メッセにて「クラロワリーグ 世界一決定戦 2018」が開催された。優勝したのは中国代表のNova Esportsだ。決勝でラテンアメリカ代表のVivo Keydを破り、世界一の称号を獲得した。

クラロワリーグ初となる世界大会が、12月1日に幕張メッセにて開催された

クラロワリーグは、Supercellが開発、運営するスマートフォンゲームアプリ『クラッシュ・ロワイヤル』を使ったプロリーグ戦。アジア、中国、北米、ラテンアメリカ、ヨーロッパの5つの地域でリーグが開催され、各リーグの優勝チームが「クラロワリーグ 世界一決定戦 2018」で世界一の座を争う。

日本のチームはアジアリーグに所属しており、「クラロワリーグ アジア」では圧倒的な強さで日本のPONOS Sportsが優勝したが、世界一決定戦への出場をかけたプレイオフで惜しくも敗退し、「開催国枠」での出場となった。

会場だけでなく、配信映像でも趣向を凝らした演出が見られた

会場の幕張メッセには、今回の大会のために特設アリーナが設営されており、その豪華さは「1日で取り壊すにはもったいない」と思うほどだった。天井からは円筒状の巨大スクリーンが吊り下げられており、選手がプレイする中央ステージには、プロジェクションマッピングによってゲームのステージに即したステージが出現。『クラロワ』の対戦チームカラーの赤と青で分けられた客席も、まるで常設会場のようなしっかりとした作りだった。

ステージの上には円筒状のスクリーンが吊り下げられており、どの席からでも、プレイの様子とゲームの内容が確認できるようになっていた
観客席は階段状に設置されており、前の席に人がいても視界良好。椅子はベンチシートではなく個別のシートで、長時間でも疲れずに観られた
日本開催をイメージする和太鼓の演出なども行われた

また、今回は会場での演出のみならず、配信映像にクラロワのキャラクターが登場するなど、動画の視聴者向けの演出にも力が入っていた。準決勝開始直前には、映像上で「P.E.K.K.A」というキャラクターがステージに登場。剣を地面に突き立てると、ステージが「水辺」から溶岩の流れる「P.E.K.K.Aシアター」に変わるというファンにとってうれしい演出が行われた。

準決勝1回戦目の準備中に行われたステージ変更演出。ステージ上にP.E.K.K.Aが現れ、溶岩が流れるP.E.K.K.Aシアターに切り替えた

世界一を決める白熱した戦いが繰り広げられる

世界一決定戦は、シングルエリミネーションのワンデイトーナメントで行われる。6チームが出場するトーナメントなので、2チームが2回戦からのシード枠。開催前日までに各チームの代表者による総当たりリーグ戦が行われ、成績上位2チームにシード権が与えられる。

今回、シード権を獲得したのは、Nova EsportsとVivo Keyd。どちらも決勝まで残った2チームだ。そういう意味では実力通りの結果だったと言えるだろう。

当日の初戦、日本代表のPONOS Sportsは、北米代表のImmortalsと対戦。セット1は、PONOS Sportsのお家芸である2v2での対戦で、その実力を遺憾なく発揮して勝利を収めた。続くセット2は1v1での対戦。PONOS Sportsは、ここ1番に強いライキジョーンズ選手を投入するも、Immortalsのエース・Royal選手が得意とするゴーレムを抑えきれず、敗退してしまう。

迎えたセット3は、King of Hill(KOH)と銘打たれた3対3の勝ち抜き戦だ。PONOS Sportsは、フチ選手が初戦を落とすも、中堅のライキジョーンズ選手が連勝して勝利カウントを優位に。続くRoyal選手との再戦では、残念ながら雪辱を果たすことができなかったが、大将のみかん坊や選手が相手チームの予想を超えた「エアバルーン」による攻撃で一気に勝負を決めた。エアバルーンはみかん坊や選手が得意とするカードであるものの、リーグ戦ではほぼ使用されなかった。世界大会の大一番で使用し、決めてくるところは、さすがのひと言だ。

2v2を戦うみかん坊や選手(写真左)と天GOD選手(写真右)
1v1に出場したライキジョーンズ選手
KOHの先鋒で出場したフチ選手。今大会2人しかいない前大会の経験者だ
ImmortalsのエースRoyal選手とPONOS Sportsのエースみかん坊や選手との対決

2戦目はアジア代表のKING-ZONE DragonXとヨーロッパ代表のTeam Quesoの対戦だ。多くのチームが大会前日の記者会見で対戦したいチームとして挙げていたTeam Quesoだが、KING-ZONE DragonXのエースX-boe Masterの活躍により初戦敗退となった。

準決勝1戦目はPONOS Sportsとラテンアメリカ代表のVivo Keydの対戦。ビザの申請に手間取ったことで、Vivo Keydは選手1人とコーチが来日できず、3人での出場となった。しかし、圧倒的不利な状況ながら、エースJavi14選手の八面六臂の活躍でPONOS Sportsを圧倒。特にPONOS Sportsが得意であった2v2での敗北が大きく響き、KOHに入ることなくストレート負けを喫してしまった。Javi14選手は、シード枠を決める総当たり戦からその強さを発揮しており、ほぼ負けなしで勝ち続けている大会屈指の選手だ。

準決勝の1v1でJavi14選手と対戦したRolaporon選手。PONOS Sportsでは、もっとも1v1で好成績を残した選手である

準決勝2戦目は中国代表のNova Esportsとアジア代表のKING-ZONE DragonX。Nova Esportsは、昨年行われた個人戦のクラロワ世界一決定戦で優勝したセルジオラモス選手が所属するチームだ。

しかしながら、今回、セルジオラモス選手はレギュラー登録されておらず、その事実から選手層の厚さがうかがえた。実際、Nova Esportsは選手全員がエース級と呼べるほどの実力を持っており、クラロワリーグ アジアのプレイオフで圧倒的な強さを見せたKING-ZONE DragonXのX-boe Master選手すら及ばず、Nova Esportsが決勝へとコマを進めた。

決勝戦は、中国代表のNova Esportsとラテンアメリカ代表のVivo Keydの対戦だ。決勝は3勝で勝ち抜けのBO3方式。2v2のあと、1v1を3戦行い、そこでも決着が付かない場合、KOHへとなだれ込む。

Vivo Keydは2v2の選手が来日できなかったため、ほぼ経験のない選手が出場することになったが、みごと初戦を勝ち取ることに成功した。

セット2はVivo KeydがエースJavi14選手を投入するも、敗北。セット3も落とし、後がなくなったVivo Keydは再びエースJavi14選手を投入して勝負にかけた。しかし、ここでも白星を挙げることができず、セットカウント3-1でNova Esportsが優勝を決めた。Nova Esportsの選手層の厚さと、対策立案から実践までを短期間で行えるチーム力の高さは、出場6チームの中では群を抜いており、文句なしの優勝と言えるだろう。

総合力の高さで優勝を勝ち取ったNova Esports

エリアごとにリーグを行い、代表チームを選出するといった本格的なeスポーツ世界大会の日本開催は、この大会が初めてとも言える。その現場に居合わせたのはeスポーツに携わる者として幸せだ。その気持ちは会場に訪れた1000人の観客も感じていただろう。

日本でのストリーミング配信も同時視聴者数が4万人を超え、少しずつながらもeスポーツの魅力が浸透してきたように感じる。そのなかでも、世界的な大会である今回の「世界一決定戦」は、1つのターニングポイントとなるのではないだろうか。クラロワリーグ史としても、日本のeスポーツ史としても、記録と記憶に残るに違いない。

ミレニアル世代が求める“空間”とは? テクノロジーが生み出す新しい快適性

ミレニアル世代が求める“空間”とは? テクノロジーが生み出す新しい快適性

2018.12.07

“快適”とは何か……ミレニアル世代が求める空間

三者三様の提案による未来型の快適空間とは?

快適空間が求められる根底にはテクノロジーの進化

住宅やホテル、オフィス空間の設計・デザイン・施工を事業にしている三井デザインテックが、都内でセミナーを開催し、ミレニアル世代に向けた“空間のあり方”について説明した。

セミナーの会場となったのは「綱町三井倶楽部」。基本的には会員制で、会員企業の管理職以上の役職者および役員OBが利用対象となる。ただし、結婚式や別館での会食などは、会員以外の人でも利用可能だ。

まさに宮廷ともいえる三井グループのシンボル的建築物「綱町三井倶楽部」。2018年12月に本館の竣工から100周年となる

ちなみに三井デザインテックは昨年の12月初旬にもセミナーを開催し、海外で広まってきている先進のオフィススペース事情についてメディアに紹介していた。だが、今年はさらに踏み込んで、「ミレニアル世代の生活様式に求められる空間の姿」を切り口にセミナーを開催した。

第2次世界大戦以降、出生率が上昇した“ベビーブーマー”と呼ばれる現象が起こったが、ミレニアル世代はそのベビーブーマーの子世代にあたる。米国を中心にミレニアル世代は人口の多くを占め、親世代とは思考や価値観、消費行動が大きく異なっているといわれている。それだけに、企業はミレニアル世代を分析・理解し、効果的なマーケティングにつなげたいと考えている。

今回のセミナーは、三井デザインテック デザインマネジメント部 部長兼デザインラボラトリー所長 見月伸一氏がファシリテーター役をつとめ、パネリストに、ソニー クリエティブ スタジオ1 チーフアートディレクター 田幸宏隆氏、ハースト婦人画報社 エル・デコ編集部 ブランド ディレクター 木田隆子氏を迎えた。

左からソニー 田幸宏崇氏、ハースト婦人画報社 木田隆子氏、三井デザインテック 見月伸一氏

まず見月氏は、ミレニアル世代を「社会意識が高い」「競争志向が強い」、そして「テクノロジー主導型」だという分析を示した。彼らが持つ価値観により、社会や生活が大きく変化していくことは間違いないとも付け加えた。

ミレニアル世代に当てはまる3つのキーワード

そうしたミレニアル世代の特徴を踏まえながら、田幸氏はいくつかのキーワードを挙げた。「ノンヒエラルキー」「エクスペリエンスフォーカス」「ワークライフミックス」の3点だ。ノンヒエラルキーは、ミレニアル世代が階層構造に縛られていないことを示す。特に消費行動にそれが表れており、一昔前は本毛革のファーが重宝されていたが、ミレニアル世代は数百円の「フェイクファー」「エコファー」で十分と考える。ラグジュアリーという価値観が薄まり、カジュアルへと志向が傾いているのだ。

エクスペリエンスフォーカスは、ある意味ノンヒエラルキーの延長ともいえる。たとえば美術館で価値の高いクリエイティブに長時間見入るよりも、そうした作品を造る“体験”に興味を持つ人がミレニアル世代に増えているそうだ。スイーツなども有名パティシエの一品を味わうのではなく、自ら調理するという傾向が強まっている。そして、その調理過程や完成品をインスタグラムなどで公開したいという欲求が、自分で調理することへの原動力となる。昔からよくいわれていることだが「モノからコトへ」、つまり「物品購入から体験へ」のシフトそのものといえるだろう。

ワークライフミックスは、“ミレニアル世代に向けた空間のあり方”という今回のテーマに最も直結しているだろう。働き方改革を進めるうえで、「ワークライフバランス」は重要なキーワードになっているが、これは“オン”と“オフ”の時間をキッチリ分断し、仕事効率の向上とプライベートの充実を図るという考え方だ。だが“ミックス”という言葉になると、仕事とプライベートを取り混ぜるイメージとなり、働き方改革に逆行している印象になる。しかし“取り混ぜる”というのは正解だが、“働き方改革に逆行”というのは間違い。むしろ、自分の意欲が高いときに働き、リラックスしたいときには休息する。オンとオフを細かく調整することで、よりクリエイティブな成果につながる。海外のミレニアル世代は、すでにこうした価値観で生活している人が増えているそうだ。

こうした細かいオン・オフの切り替えを促すためにも、快適な空間が必要になってくる。今回、セミナーに参加した三井デザインテックの見月氏も、ソニーの田幸氏も、エル・デコ編集部の木田氏も、全員が空間のスペシャリストだ。それぞれの立場から、オン・オフの細かい切り替えが可能な空間の提示があった。

ミレニアル世代にどんな空間を提供するか三者三様の提案

三井デザインテックの見月氏は、同社が所属するグループ、三井不動産が運営する「ワークスタイリングステイ」について紹介した。この施設は、コワーキングスペースと就寝設備が直結したワークスペース。ミレニアル世代はベンチャーとして起業することが多いが、そうした人々は事務所をかまえて仕事をするよりも、取引先や協業する企業に近いところを一時拠点にし、ビジネスを進めることが多い。ワークスタイリングステイは、全国に30カ所以上の拠点をかまえ、10分300円から利用できる。そして、ワークを行うデスクと、そのすぐ数歩先にベッドをかまえ、オン・オフの細かい切り替えを可能にする。

汐留に開設された「ワークスタイリングステイ汐留」。右の写真は2段式のルームで、デスクワーク用の机とベッドで構成される(5月撮影)

田幸氏は、テクノロジーに寄り添ってきたソニーならではの提案を行った。とはいえ、インテリジェントホームやIoTで管理されたガチガチのデジタル空間ということではない。たとえば花瓶。花瓶を棚に置くと、テクノロジーで生み出された蝶のシルエットがその花瓶の周りを飛び交う。ほかにも窓を開けていなくても、木漏れ日が壁に映り込むような演出が行われ、まるで日だまりでまどろんでいるような感覚に包まれる。

もう、こうなると、オン・オフの細かい切り替えという概念すら無用に思えてくる。ワークしている次の瞬間、目を花瓶に向けたら、蝶のシルエットが飛び込んでくるのだ。田幸氏は、オフィスとホームという切り分けではなく、“すべてが生活を取り巻く空間”と考えることで、こうしたアイデアにたどり着いたのだろう(以下の写真はすべて4月に開催された「Sony Design Exhibition at Milan Design Week 2018」で示されたもの)。

人の動きを検知して灯りが揺らぐライト(写真:Sony Design/Hidden Senses)
ウォールライトは人の動きに反応し、さまざな色やカタチを映し出す(写真:Sony Design/Hidden Senses)
花は実物だが、蝶のシルエットはデジタルで生み出されたもの。花を取ると蝶も消える(写真:Sony Design/Hidden Senses)
壁に掛かった絵画にほんのりかかる木漏れ日。窓は開いておらず、デジタルで生成された光だ(写真:Sony Design/Hidden Senses)

木田氏は、インテリアにこだわるエル・デコならではの視点を披露した。特に印象的だったのは、自然に近づいたインテリアがトレンドになっていること。たとえば、庭に置くイスは木製がよいとか、自然石を使った廊下を家庭に採り入れたいとかだ。木田氏は「どんなにテクノロジーが進化しても、人間は常に自然に寄り添いたいという欲求が根底にある」と指摘し、「デジタルデトックス」が可能となる空間を常に求めていると話す。

そして三者ともに共通して言にするのは、こうした快適な空間が求められるようになったのは、テクノロジーの進化がもたらしたものだということ。テクノロジーが進化すれば、コワーキングといったスタイルは定着するし、テクノロジーを使った“癒やしの演出”も可能になる。そして、テクノロジーが進化してこそ、より自然に近い住環境の価値は増す。ミレニアル世代は、「デジタルネイティブ」といってもよい存在だ。その彼らが今までにない価値観を空間に求めるのは、テクノロジーの進化が根底にあるからかもしれない。

セミナーでは、「モノからコトへ」という意味をよく耳にしたが、筆者は「モノからコトへ、そしてトキへ」という印象を受けた。これは、何かの雑誌かテレビだかの受け売りだが、物品から体験へ、そして時間をいかに有意義に消化するかということ。ミレニアル世代は、すでにその段階に進んでいるのだろう。

なぜ総務省は「分離プラン」の導入に強くこだわるのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第27回

なぜ総務省は「分離プラン」の導入に強くこだわるのか

2018.12.07

総務省が携帯料金の「分離プラン」導入を強く提言

実は10年前にも分離プランは議論、導入されていた

再び「官製不況」の悪夢? 同じ轍を踏む可能性も

総務省の有識者会議で、携帯電話のキャリア各社に分離プランの導入を求めることなどを盛り込んだ緊急提言案が公表された。菅義偉官房長官の発言に端を発した、料金値下げの切り札とされる分離プランの導入だが、なぜ行政はこれほどまで熱心なのだろうか。

総務省が緊急提言案で分離プラン導入を要請

2018年8月に、菅官房長官が携帯電話料金の値下げに言及して以降、料金に関する大きな動きが相次いでいる携帯電話業界。その発言を受けて新たに実施されたと見られる総務省の有識者会議「モバイル市場の競争環境に関する研究会」で、2018年11月26日に「モバイルサービス等の適正化に向けた緊急提言」という緊急提言案が公表された。

この緊急提言案で言及している要素はいくつかあるのだが、中でも注目されているのは通信料金と端末代金の完全分離、俗にいう「分離プラン」の導入をキャリアに要求していることにある。

総務省が2018年10月より実施している「モバイル市場の競争環境に関する研究会」。11月には分離プランの導入などを求める緊急提言案を打ち出している

これまで携帯電話の料金は、通信料金と端末代を一体にし、毎月の通信料金に端末代の値引き分を上乗せすることで、「実質0円」など端末価格を大幅に値引いて販売してきた。この仕組みによって日本では高性能の携帯電話やスマートフォンがいち早く普及し、多くの人たちが最先端のネットワークやサービスを利用できるというメリットをもたらしたのだが、一方でいくつかの問題点も生み出していた。

その1つは、端末を頻繁に買い替える人は大幅値引きの恩恵を受けて得をするが、同じ端末を長く使う人は値引きの恩恵が受けられず損をするという、不公平感があること。そしてもう1つは、端末の割賦や長期契約を前提とした割引が複雑に絡み合っているため、料金の仕組みが分かりづらく、解約や他社への乗り換えがしづらいことである。

そこで通信料金と端末代を完全に分離し、通信料金への端末代の上乗せを禁止することで、毎月の通信料金を安くし、シンプルで公平な料金を実現したいというのが、緊急提言案の背景にある総務省の考えだ。分離プランの導入だけでなく、KDDI(au)の「アップグレードプログラムEX」に代表される、4年間の割賦を前提とした買い方プログラムに関しても、機種変更が値引きの条件となることで契約を強く縛るとして、抜本的な改善を求めている。

分離プラン自体は既にauとソフトバンクが導入しており、NTTドコモが2019年春の導入を発表している。だがこの提言案が通れば、キャリアは通信料金を原資とした端末の値引きが一切できなくなるため、最新のネットワークやサービスを利用できる高性能な端末を、自ら安価に販売して広める手段を完全に失うこととなる。ビジネスの大幅な転換を迫られるのは必至だろう。

NTTドコモは分離プランを軸とした新しい料金プランを2019年春に導入すると発表している

しかしなぜ、総務省はそれほどまでに分離プランの導入を強く要求しているのだろうか。その理由は、分離プランの導入が総務省、ひいては行政にとって“10年越しの悲願”だからである。

10年前からなされていた分離プラン導入の議論

実は総務省が分離プランに言及したのは2007年のこと。当時開かれた有識者会議「モバイルビジネス研究会」で、既に分離プランの導入に関する議論がなされていたのだ。

2007年といえば、iPhoneが日本で発売される直前の“スマートフォン前夜”で、「iモード」に代表されるように、キャリアがネットワークだけでなく端末、サービスの全てを用意する、垂直統合型のビジネスを展開していた頃だ。そのため携帯電話市場におけるキャリアの影響力が非常に強く、市場構造が硬直化し寡占が進んでいたことを総務省が問題視していた。より多様なビジネスができるよう、MVNOの参入や分離プランの導入、SIMロックの解除などについて議論がなされていたのだ。

さらに言うと、このモバイルビジネス研究会ではキャリアが分離プランを導入するべきという結論に至っており、それを受けて大手キャリアは一度、分離プランを本格的に導入したことがあるのだ。実際2007~2008年にかけての、NTTドコモの「バリュープラン」やauの「シンプルプラン」などで、分離プランの本格導入がなされている。

だがその後、分離プランの存在は薄くなり、再び通信料金と端末代の一体化が進んでいく。その理由の1つは、分離プランの導入によって端末代の値引きがなくなり、携帯電話の販売台数が激減したことだ。

実際、電子情報技術産業協会(JEITA)の発表によると、分離プランの導入が本格化した2008年度の国内携帯電話の出荷台数は3,585万と、2007年度の出荷台数(5,167万)からたった1年で3割以上減少している。このことが国内の携帯電話メーカーの弱体化につながる一因となっただけでなく、分離プランが「官製不況」と呼ばれ、総務省が批判されることにもなった。

そしてもう1つは、その後スマートフォンが爆発的に普及したこと。大手キャリアがスマートフォンの販売に力を入れ他社から顧客を奪うべく、実質0円、一括0円どころか5万円、10万円ものキャッシュバックが飛び交う激しいスマートフォンの値引き合戦を繰り広げ、分離プランの存在が薄れていったのだ。そうしたキャリアの過剰な端末値引きが行政の怒りを買い、結果的に今回の緊急提言案に至った大きな要因の1つにもなっている。

ちなみにモバイルビジネス研究会が実施されていた当時の総務大臣は現在の菅官房長官であり、現在の総合通信基盤局長である谷脇康彦氏は、当時は総合通信基盤局の事業政策課長として、モバイルビジネス研究会に大きく関わっていた。そうした意味でも、今回の緊急提言案と分離プランの導入は、行政側にとって10年越しの悲願だったといえる訳だ。

だが一方で、端末メーカーにとっては、10年前に起きた官製不況が再び訪れることが確実な情勢にもなっている。2020年に次世代の「5G」ネットワーク導入が見込まれる中、それに対応するスマートフォンの販売が不振などとなれば、5Gの普及にも大きな影響を与えかねない。それだけに分離プラン導入の成果だけでなく、その反動による影響がどのような形で浮かび上がってくるのかにも、しっかり注視しておく必要がある。