「折り畳みスマホ」はスマートフォンの新ジャンルとして定着するのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第33回

「折り畳みスマホ」はスマートフォンの新ジャンルとして定着するのか

2019.03.19

大画面化の限界を破ろうと登場した「折り畳みスマホ」

2019年にスマホ大手が参入し、本格的なトレンドに

普及する? 価格とコンテンツが最大の課題に

2018年末から2019年初頭にかけ、ディスプレイを折り曲げて畳むことができる「折り畳みスマートフォン」大きな注目を集めている。閉じた状態では普通のスマートフォン、開くとタブレットサイズで利用できるのが特徴だが、新しいスタイルのスマートフォンとして市場に定着し、普及していくには課題も多い。

大画面化の限界から生まれた折り畳みの発想

ここ最近、にわかに注目されるようになった「折り畳みスマートフォン」だが、そもそもどんなものなのか。簡単に言えば、これはディスプレイ素材に、一般的なLEDとは異なる面光源で、かつフレキシブルな特徴を持つ有機ELを採用することで、1枚のディスプレイを2つに折り曲げられるようにしたスマートフォンのこと。いくつかの企業が折り畳みマートフォンを相次いで発表したことから、一気に注目を集めるに至ったようだ。

折り曲げられる7.8インチのディスプレイを備えたRoyoleの「FlexPai」は、世界初の折り畳みスマートフォンとして注目を集めた

最初に折り畳みスマートフォンを発表したのは中国のRoyoleというベンチャー企業で、2018年11月に7.8インチのディスプレイを折り曲げられる「FlexPai」という機種を発表している。だがより本格的に注目されるようになったのは、2019年2月に入ってからであろう。

その理由は、2019年2月20日(米国時間)にサムスン電子が「Galaxy Fold」、ファーウェイ・テクノロジーズが2019年2月24日(スペイン時間)に「HUAWEI Mate X」と、スマートフォン大手が相次いで折り畳みスマートフォンを発表したからだ。いずれの機種もFelxPaiより洗練され、より日常使いに適したスタイルながらディスプレイを曲げられるという機構を実現したことから、がぜん折り畳みスマートフォンに対する注目が高まったのである。

サムスン電子の「Galaxy Fold」。7.3インチのディスプレイを内側に備え、本を開くようにして開くと大画面ディスプレイが現れる仕組みだ

ディスプレイを曲げられるというだけでも十分に大きなインパクトがある折り畳みスマートフォンだが、その誕生にはやはり「スマートフォンの大画面化傾向」が影響している。初代iPhoneが登場した頃には3インチ程度だったスマートフォンのディスプレイも、年を追う毎に大画面化が進み、いまでは6インチを超えるディスプレイも当たり前のものとなってきている。

だが人間が片手で持つことができるスマートフォンのサイズ、特に横幅には限界がある。6インチ超でも、18:9や19:9の縦長比率として片手に持てる横幅に抑えていたのが最近のトレンドだが、従来の方法によるディスプレイの大画面化は限界に達しつつある。しかしながら特に海外では、消費者がスマートフォンに一層の大画面化を求める声が非常に強い。そうした市場ニーズに応えるべく、持ち運ぶ時はコンパクトで、必要な時だけ大画面で利用するという、折り畳みスマートフォンの開発を推し進めるに至った訳だ。

ファーウェイの「HUAWEI Mate X」。さらなる大画面化を求める消費者ニーズに応えるべく、3年もの歳月を費やして開発されたとのこと。同社初の5G対応スマートフォンにもなるという

各社の折り畳みスマートフォンは、開いた状態では7.3~8インチと、小型のタブレット並みのサイズ感を実現している。従来より一層の大画面でコンテンツを楽しめるというメリットが生まれる訳だが、大画面によってもう1つもたらされるメリットは、表示できる情報量が増やせること。実際Galaxy Foldはそのメリットを生かし、画面を3つに分割して3つのアプリを同時に利用できる機能を搭載している。

さらに今後、次世代通信の「5G」が普及していけば、通信速度が一気に高速になりコンテンツのリッチ化が進むことから、大画面を生かせるシーンも現在以上に増えていくことが考えられる。それゆえ折り畳みスマートフォンこそがスマートフォンの将来像と見る向きもあるようだ。

普及にはコンテンツや価格など多くの課題あり

だが実際の所、折り畳みスマートフォンが真に普及して定着に至るかといえば、まだ多くの課題があるように感じる。理由の1つは、折り畳みスマートフォンに適したコンテンツが少ないことだ。その最大の要因はディスプレイのアスペクト比で、折り畳みスマートフォンでは開いた状態のアスペクト比が、アナログテレビで主流だった4:3に近い比率になってしまう。これは折り畳むという構造状どうにもならない課題だ。

折り畳みスマートフォンは、開いた状態では4:3、あるいはそれに近いアスペクト比となることから、オフィス文書や地図、Webサイトなど情報量が求められるコンテンツは見やすい

この比率は、オフィス文書などを利用するのには適しているといわれる一方、映像やゲームなどのコンテンツでは横長の傾向が強いため、あまり適していない。実際、折り畳みスマートフォンで16:9や21:9の映像コンテンツ再生すると、どうしても上下の黒帯が目立ってしまうのだ。

一方で映画などの動画コンテンツ再生時は、上下に黒帯が目立つなど大画面をフルに生かせていない印象だ

そうしたことから折り畳みスマートフォンを普及させるには、それに適したコンテンツの開発も同時に求められているのだ。そのためにはいかに多くのコンテンツホルダーから協力を得られるかが、非常に重要になってくるだろう。

そしてもう1つの課題は価格だ。折り畳みスマートフォンは最新の技術を詰め込んで開発しているため、Galaxy Foldは1980ドル(約22万円)、HUAWEI Mate Xは2299ユーロ(約29万円)と、価格が非常に高い。現在は“初モノ”ゆえにこれだけの価格でもやむなしとの認識がなされているようだが、普及を考える上では少なくともその半額程度、つまり現在のフラッグシップスマートフォンと同程度にまで価格を落とす必要がある。

折り畳みスマートフォンの実用化を実現した今後は、いかにその価値を落とすことなく価格を落とすかという、難しい課題をクリアする必要がある訳だ。そうした課題をクリアできなければ普及にはつながらないだけに、折り畳みスマートフォンが今後の主流になるかどうかは、現状ではまだ見通せないというのが正直な所でもある。

ファーウェイを巡る米中摩擦、その背景に5Gの攻防

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第32回

ファーウェイを巡る米中摩擦、その背景に5Gの攻防

2019.02.13

ファーウェイら中国勢排除の流れが米国から日本にも

一般消費者には直接影響ないが、キャリアは深刻

米国が懸念したのは「5G」時代のセキュリティ

2018年末から、米国がファーウェイなど中国の通信機器メーカーを排除する動きを進めている。日本にもその波が及び、5Gでは中国メーカー製の通信設備が導入できなくなるとも言われているが、この問題はいつまで続くのだろうか。

消費者に影響はないがキャリアには大きく影響

2018年12月、ファーウェイの副会長兼CFOである孟晩舟氏がカナダで拘束されたことを期として、ファーウェイを巡る米国と中国との対立が表面化。米国が自国だけでなく、同盟国にもファーウェイなど中国メーカー製の通信設備を導入しないよう要請するなど、国際問題となって通信業界に大きな影響を与えている。

その影響は、米国の同盟国である日本にも及んでいる。日本政府が2018年12月20日に、政府のIT機器調達に関して「IT調達に係る国の物品等又は役務の調達方針及び調達手続に関する申合せ」を公表しているが、具体的な国や企業の名前は記載されていないものの、その内容からこれが事実上、政府調達から中国メーカーの排除を示す指針なのではないかと言われている。

2018年末に連日その動向が報道されたことから、一連の問題に関しては記憶に新しい人も多いことだろう。ただ今回の出来事で、スマートフォンなどコンシューマー向けのファーウェイ製品の販売を政府が禁止した訳ではないし、ファーウェイ製端末からセキュリティ上明確な問題が見つかったという事実もない。今回の問題が一般消費者に直接影響を与えるものではないことは覚えておくべきだ。

ファーウェイは2019年にも新機種「HUAWEI nova lite 3」を発売。一般消費者が手にするスマートフォン関連の事業に大きな影響が起きている訳ではない

ただ通信設備を導入するキャリアとなれば話は別である。例えばソフトバンクは、既にコアネットワークの一部にファーウェイやZTEなどの設備を導入していることから、政府の方針によっては、それら設備を排除しなければならないだろう。もし置き換えをするならば、10億円程度の投資が必要になるとのことだ。

またNTTドコモも、5Gに関する実証実験などを通じてファーウェイと関係を深めようとしていた。だが一連の出来事によって政府から何らかの方針が示されれば、ファーウェイからの機器調達も難しくなる可能性が高い。

ドコモは5Gに関する実証実験を実施するなど、ファーウェイとの関係を深めていた

米国側の懸念は5G時代のセキュリティか

しかしなぜ、米国は関係各国に影響を及ぼすほど、中国メーカーの通信設備を排除することに躍起になっているのだろうか。その背景には次世代通信規格「5G」を巡るセキュリティが大きく影響している。

4Gまでは携帯電話のネットワークの影響する範囲が、フィーチャーフォンやスマートフォンなど“個”のデバイスに限られていた。それゆえセキュリティの脅威が及ぶ範囲も、そうした個のデバイスに限られている。だが5Gになると、IoTの主要なネットワークに5Gが活用されると言われており、その影響範囲は自動運転車や遠隔医療、ドローンやスマートシティなど、今後の社会を構成する非常に多くの場面に及ぶ。

KDDIが愛知県で実施した5Gの自動運転車の実証実験より。5Gのネットワークはスマートフォンだけでなく、自動運転やドローンといった、より幅広い分野に用いられる可能性があるのだ

そうした5Gの時代に、ネットワーク上の機器にセキュリティ上の問題があったとなれば、その影響はスマートフォンから個人情報が盗まれるのとは比較にならない規模になる。それゆえ5Gの基幹ネットワークに、同盟国ではない中国の通信設備が多数入り込むことを米国側は懸念した可能性があるだろう。

ソフトバンクの代表取締役副社長執行役員兼CTOである宮川潤一氏は、同社が上場した時の記者会見で「4Gと5Gでは基地局の仕組みが違う。5Gでは基地局で情報を取るという仕組みはあり得ると思っている」と話している。そうした技術的な要素の変化も、米国側の懸念を高めている要因になっていると考えられる。

とはいえ現状、ファーウェイの製品でセキュリティ上何らかの問題が起きたという明確な事例はない。それだけに米国側は、政治的手段に打って排除に出るという、強引な措置を取る必要に迫られたといえそうだ。

ソフトバンク上場会見に登壇する宮川氏。5Gでは4Gと比べ技術的に変化しており、それがセキュリティ上の脅威となる可能性があると話している

そうしたことから中国メーカーの通信設備を排除する動きが本格化するのは4Gからではなく、5Gからとなる可能性が高いだろう。実際、日本政府が年末に打ち出した先の申合わせは、総務省が公表したキャリアが5Gの電波を獲得する上で求められる条件などが記述されている「第5世代移動通信システムの導入のための特定基地局の開設に関する指針」でも留意が求められている。

2つの大国間に関わる政治的な摩擦が大きく影響しているだけに、この問題が早期に解決する可能性は低いと言わざるを得ない。もし今後も両国間の緊張が高まり、政治的な対抗措置の応酬がなされるようであれば、5Gだけでなく今後の通信技術の発展にも大きな影響が出かねないだけに、一層の懸念がなされるところだ。

SIMを内蔵した「eSIM」対応のスマートフォンがなかなか増えない理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第31回

SIMを内蔵した「eSIM」対応のスマートフォンがなかなか増えない理由

2019.02.05

新型iPhoneで話題になった「eSIM」、普及してない?

実はスマートフォン以外の通信端末で多く採用

ユーザーは便利でも、電話会社はメリットが薄く消極的

スマートフォンなどの本体に直接SIMを組み込んだ「eSIM」を採用する機種が登場してきている。SIMの抜き差しが不要で、スマートフォン上でサービスの契約を完結できるeSIMは非常に便利なものだが、対応する端末がなかなか増えないのはなぜか。

スマートフォン以外の採用機種は増えている

2018年に発売されたiPhoneの最新モデル「iPhone XS」「iPhone XS Max」「iPhone XR」に、新たな要素として追加され話題になったのが「eSIM」(embedded SIM)である。これら3機種にはいずれも通常のSIMスロットとは別に、本体にもう1つSIMが内蔵されており、見た目には分からないがデュアルSIM構造となっているのだ。

2018年に発売された「iPhone XS」「iPhone XS Max」などには、通常のSIMスロットに加え、内蔵型のSIM「eSIM」も搭載されている

そしてeSIMを用いることで、通常契約しているキャリアとは別の通信サービスの利用が可能になる。例えば、世界中で利用できる海外用のプリペイド通信サービス「GigSky」などは、eSIMに対応したiPhone用のアプリを提供しているので、海外を訪れた際はここからGigSkyのプリペイドのプランを契約して、通常のSIMを挿入した状態のままGigSkyによるデータ通信が利用できる。

eSIMが内蔵されたiPhone XSからGigSkyのアプリを使えば、料金プランを選んでお金を支払うだけで、SIMを差し替えることなく海外で通信ができる

日本ではまだなじみが薄いように見えるeSIMだが、実はスマートフォン以外であれば既にいくつかの端末に採用されている。その代表例となるのが「Apple Watch」で、Series 3以降にはeSIMを搭載したモデルが用意されており、NTTドコモの「ワンナンバーサービス」など携帯大手3社が用意した専用のデータ通信プランを契約することで、iPhoneに接続する必要なくApple Watchだけで通話や通信ができるようになる。

同様に、eSIMを採用した端末として2018年に登場したのが、スマートフォンが近くになくても電話が受けられる、スマートフォンの子機というべきNTTドコモの「ワンナンバーフォン」。こちらもeSIMが採用されており、Apple Watch同様ワンナンバーサービスを契約することで利用可能になる。

スマートフォンの右隣にあるのが、eSIMを搭載したNTTドコモの「ワンナンバーフォン」。スマートフォンに接続する必要なく、単体でスマートフォンにかかってきた電話が受けられる

だが現在、国内ではeSIM端末専用のプランやサービスは用意されていても、スマートフォン向けの通常の料金プランをeSIMで契約することはできない。実際にSIMを抜き差ししたことのある人なら分かると思うが、非常に小さいSIMを本体に挿入する作業には専用のピンが必要になるし、利用を開始するにもさまざまな設定が必要であるなど、面倒な手間がかかる。そうしたユーザーの負担を減らす上でも、eSIMは非常に便利な存在であるはずなのだが、携帯電話会社側が積極的に対応しないのはなぜだろうか。

携帯電話会社にとってeSIMの採用メリットは少ない

それにはeSIMが誕生した経緯が大きく影響している。そもそもSIMカードを内蔵するというニーズが生まれたのは、M2M(機械間通信)、現在でいうところのIoT機器のような、通信機能を備えた機器を開発する法人からの強いニーズがあったためなのだ。

理由はSIMの管理の面倒さにある。例えば通信機能を搭載した自動車を大量に製造して世界各国に輸出し、それぞれの国で通信機能を利用できるようにするには、1台1台にそれぞれの国に対応したSIMを物理的に挿入する必要がある。しかも自動車とは別にSIMの管理もする必要があり、非常に手間がかかってしまう訳だ。

そうした法人の手間を減らすため、製造段階であらかじめSIMを組み込み、輸出後に各国のキャリアの契約情報を遠隔で書き換えるという、現在のeSIMの発想が生まれ標準化が進められていったのである。eSIMであれば必ずしもSIMカードのサイズにこだわる必要はなく、より小型のICチップにして機械に直接はんだ付けすることも可能なことから、機器の小型化や耐久性を高めることにも貢献できるというメリットもある。

eSIMは必ずしもSIMカードの形状をしている必要はなく、機器に内蔵しやすいようより小型のチップ状のものが多く用いられている

だが携帯電話会社の側からしてみた場合、遠隔で契約情報を書き換えるというeSIMの仕組みは、確かに法人のニーズを満たす上では便利なものだが、コンシューマー向けとなるとユーザーが契約だけでなく解約も簡単にできてしまうため、ほとんどメリットがない仕組みでもあるのだ。それゆえ法人向けと比べると、スマートフォンなどのeSIM対応サービスはあまり積極的に進められていないのである。

しかしながらアップルだけでなく、グーグルも「Pixel」シリーズで、海外では既にeSIM搭載モデルを投入している(日本向けの「Pixel 3」「Pixel 3 XL」では未採用)など、いまメーカー側からeSIMの採用を積極化する動きが進んでいる。最近でも中国のスマートフォンメーカーであるMeizuが、表面だけでなく側面からも端子やボタンを廃止したスマートフォン「Zero」を発表し話題となったが、この端末もSIMスロットを廃止するため、eSIMを採用しているのだ。

日本ではeSIMが搭載されていないグーグルの「Pixel 3」だが、実は海外向けのモデルはeSIMが搭載されている

ユーザーの利便性を高めたり、スマートフォンのデザインをよりよくしたりする上でも、今後メーカー側がeSIMを採用する動きは一層高まってくるだろうし、そうした端末が増えるとともに携帯電話会社側も何らかの対応が迫られることとなるはずだ。海外ではeSIMに対応したサービスを提供する携帯電話会社が徐々に増えてきているが、日本でもeSIMへの積極的な対応に期待したいものだ。