知って納得、ケータイ業界の"なぜ"

なぜMVNO通信サービスは昼休みの通信速度が遅いままなのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第22回

なぜMVNO通信サービスは昼休みの通信速度が遅いままなのか

2018.08.22

MVNOの通信速度が遅いのはどうしてか

データの通り道が細いMVNO特有の問題

フルMVNOとなって帯域幅を広げる企業

大手キャリアから料金が安いMVNOのサービスに乗り換えた人が不満を抱くのが、昼休みなど多くの人がスマートフォンを利用する時間帯を中心に、劇的に通信速度が遅くなることではないだろうか。同じ大手キャリアのネットワークを使っているのに、なぜMVNOの通信速度だけが遅くなりやすいのだろうか。

MVNOのネットワークは“道”が狭い

大手キャリアでスマートフォンを利用していると、月々の通信料が6~7千円から1万円はかかるのが一般的だ。それゆえ毎月のスマートフォンの通信料金を節約するために、“格安”をうたうMVNOに乗り換えたという人も、多くいることだろう。

確かにMVNOのサービスは、同じ通信容量であれば毎月の通信料金が大手キャリアの半分から3分の1と、大幅に抑えられるので、料金面でのメリットが非常に大きいのは事実だろう。だが一方で、MVNOのサービスを利用している人から多くの不満の声が聞かれるのが通信速度だ。

というのも、特に昼休みや朝夕の通勤時間帯など、多くの人がスマートフォンを利用する時間帯になると、MVNOのサービスは軒並み通信速度が劇的に遅くなってしまうのだ。MVNOの状況にもよるが、その通信速度は動画視聴はおろか、Webサイトの閲覧やSNSの利用などであっても、まともに利用できないほど遅くなるケースもあり、深刻な状況が続いている。

こうした事象は大手キャリアのサービスではほとんど起きることはなく、MVNO特有の問題となっている。ではなぜ、MVNOの通信速度が遅くなりやすいのかといえば、それはネットワークの帯域幅、要するにデータの“通り道”が狭いからである。

MVNOは、お金を払って大手キャリアから借りたネットワーク帯域を使い、通信サービスを提供している。このことは、鉄塔を建てるなど莫大なインフラ投資をする必要がなくなるため設備投資が少なくて済み、MVNOが安価にサービスを提供できる一因となっている。

だが一方で、帯域幅を増やすにはより多くのお金をキャリアに支払う必要があり、無尽蔵に増やせる訳ではない。それゆえMVNOの帯域幅は大手キャリアよりも狭い、つまり道幅が狭いのである。狭い道路にたくさんの車が通れば渋滞が起こるのと同じように、帯域幅が狭いネットワークに、多くのデータが流れ込めば混雑が起きやすくなる訳だ。

2018年7月1日に実施されたLINEモバイルの発表会より。ネガティブイメージとしてネットワークと通信速度に対する不安が挙げられるなど、MVNOは通信速度の問題に大きな影響を受けている様子が見える

解決に特効薬がない頭の痛い問題

もう1つ、キャリアがMVNOに対して、時間帯に関係なく一定の帯域幅で貸し出していることも、MVNOが簡単に帯域幅を増やせない要因となっている。というのも、ユーザーのデータ通信利用は24時間常に一定という訳ではなく、確かに昼休みや朝夕などはスマートフォンの利用者が増えて混雑が起きやすいのだが、深夜・早朝などはスマートフォン利用者が大幅に減り、帯域が空いている状態になる。

帯域が空いているということは、お金を払ってネットワークを借りているMVNOにとって“無駄”が生じていることでもある。混雑している時間帯に合わせた幅の帯域幅を借りると、空いている時間帯に多くの無駄が発生してしまうことから、MVNOはコストの無駄を抑えるため、混雑時にユーザーが不満を抱かない範囲の帯域幅を借りてサービスを提供しているのだが、ユーザーとともに増えるデータ通信量に耐え切れず、混雑時に通信速度が大幅に落ちてしまうのである。

この問題を解消するにはいくつかの方法がある。1つはキャリアにより多くのお金を支払って、混雑する時間帯に合わせた帯域幅を借りること。KDDI傘下のUQコミュニケーションズが提供している「UQ mobile」は、帯域幅を自らWiMAX 2+のネットワークを提供することで得ていることに加え、他のMVNOより高めの料金設定にすることによって、KDDIからより広い帯域幅を借り、高速な通信速度を維持している。

UQ mobileは他のMVNOより通信料を高く設定することで、売上を増やしより多くの帯域幅を借りることで、通信速度の低下を抑えている

2つ目は、自らキャリアになってしまう方法だ。そうすれば他社にお金を支払う必要はなく、自身のネットワークの帯域幅が使い放題になるため、問題は一気に解消する。この手法を取ろうとしているのが楽天で、同社は2019年に携帯電話事業に参入することを発表している。

そして3つ目は、空いている時間帯の帯域幅を有効活用することで、帯域の無駄を減らし底上げを図る方法だ。実際、MVNO大手のインターネットイニシアティブ(IIJ)は、自らSIMを発行できる「フルMVNO」となり、法人向けのデータ通信サービスに力を入れることで、深夜などの時間帯にもネットワークを活用してもらう取り組みを進めている。

IIJは個人のスマートフォン向けサービスだけでなく、IoTを中心とした法人向けのサービスにも力を入れることで、深夜のネットワーク稼働率を高め無駄を減らそうとしている

より直接的な施策を打ち出しているのが、ソニーネットワークコミュニケーションズの「nuroモバイル」が提供する「時間プラン」の「深夜割」だ。これは深夜1時から早朝6時の5時間だけ、高速通信を使い放題にするいうもの(それ以外の通信速度は200kbps)。空きのある深夜の帯域を有効活用してもらうことで、利用効率を高めようとしている訳だ。

だが、1つ目、2つ目の方法を取ることができるMVNOは相当限定されるし、3つ目の方法は劇的な効果には結び付きにくい弱点がある。それだけにMVNOにとって、通信速度の問題は頭の痛い問題として残り続けることとなりそうだ。

「4G」で満足している人が多いのに「5G」が必要とされるのはなぜか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第21回

「4G」で満足している人が多いのに「5G」が必要とされるのはなぜか

2018.07.12

2020年に日本でも、携帯電話の次世代通信規格「5G」のサービスが提供される予定だ。携帯電話の通信方式は、約10年毎に世代交代が進んでいるのだが、そもそもなぜ、一定期間毎に新しい通信規格を導入する必要があるのだろうか。

日本では2020年に「5G」の商用サービスを開始

携帯電話の通信規格、要するに音声やデータをやり取りするための仕組みは、約10年毎に世代交代がなされる傾向にある。現在多くのスマートフォンで用いられている主流の通信方式「LTE-Advanced」は、「4G」、つまり「第4世代」の通信方式であり、2010年に標準化がなされている。

そしていま大きな注目を集めているのが、4Gの次の通信規格「5G」だ。2018年6月には5Gの通信方式「5G NR(New Radio)」の主要機能の標準化が完了したことが発表されており、日本では2020年、米国や韓国などより早い国では2019年から、5Gを用いたサービスを提供する予定となっている。

日本に先駆けて2019年の5G商用サービスを実施予定の韓国では、2018年2月の平昌冬季五輪で5Gの実証実験が実施されていた

5Gは従来の4Gと比べ、「高速・大容量」「低遅延」「多接続」といった特徴を備えている。高速・大容量は文字通り、4Gより通信速度が速いことで、4Gの最大通信速度は3Gbpsといわれているが、5Gでは最大20Gbpsの通信速度を実現するという。

2つ目の低遅延は、IP電話で通話した時に、自分が話した声が相手に遅れて届くといった、いわゆるネットワーク遅延が非常に小さいことを示す。4Gの遅延が約50ミリ秒であるのに対し、5Gの遅延は1ミリ秒と大幅に遅延が小さくなるとされており、医療や車の運転など、ずれのない遠隔操作などを実現するのに大いに役立つ。

そして最後の多接続は、多くのモノがインターネットに接続するIoT時代に備え、1つの基地局に対して同時に接続する端末の数が、4Gの100倍になるというもの。ただしサービス開始当初の5Gにはこの仕様は盛り込まれておらず、後から追加される形になるとのことだ。

こうして見れば、確かに5Gは4Gよりも大幅に進化していることが分かる。だが現在スマートフォンを利用している人達からすると、現在の4Gの環境でも動画は快適に視聴できるし、別段困ったことはないと感じていることだろう。これまでにも、2Gから3G、3Gから4Gといったように、通信規格の世代が変わる毎に「キャリアが多額の設備投資をしてまで、新世代の通信規格を導入する必要があるのか?」という声は起きている。

増大し続けるトラフィックへの対処が最大の目的

では一体なぜ、携帯電話の通信規格は一定期間毎にアップデートする必要があるのかというと、その本質的な理由は非常にシンプルである。トラフィック、つまりユーザーが携帯電話やスマートフォンでやり取りするデータの量が増える一方なので、新しい技術を用いた通信規格を導入しないと、いずれパンクしてしまうためだ。

やや古い資料になるが、総務省が公開している「平成29年版 情報通信白書」を見ると、移動体通信のダウンロードトラフィックは、1年で約1.3倍という急速なペースで伸びているという。さらに世界の移動体通信によるトラフィックは、2015年から2020年の5年間で、トラフィックが7.8倍にまで増加すると予測されているのだ。

国内の移動体通信トラフィックの推移(総務省「平成29年版 情報通信白書」より)

ちなみに1Gから2Gにかけては、携帯電話自体が多くの人に広まり音声通話の利用が増えたこと。2Gから3Gにかけては「iモード」などの登場によって、音声だけでなくデータ通信の利用が広まりつつあったこと。そして3Gから4Gにかけては、スマートフォンの広まりによって音声からデータ通信へと利用の主体が大きくシフトしたことが、トラフィックの増加に大きく影響している。

そうしたトラフィックの伸びに対処し安定した通信を実現するべく、キャリアは基地局を増やすなどしてネットワークの改善を進めている。だがそれでもなお、これだけ急激なペースで伸びるトラフィックに対処するには不十分で、根本的な対処をするには通信の仕組みそのものを変える必要がある訳だ。それゆえ通信規格がアップデートされる毎に、従来使用できなかった電波を使えるようにしたり、電波の利用効率を高める技術を導入したり、一度に通信するアンテナの本数を増やしたりするなどして、より大容量通信に耐えられる体制が整えられている。

だが新しい通信規格を導入しても、それを利用するためのインフラやデバイス、サービスが整っていなければ、ユーザーは利用してくれず普及が進まないという問題も抱えている。それが顕著に表れたのが、2Gから3Gへの移行時である。

世界初の3Gによる商用サービスを2001年に開始したのはNTTドコモの「FOMA」である。だが2Gと比べると端末サイズが大きくバッテリーが持たない、3Gの利用に適したサービスが少ないなどの理由から長い間ユーザーの不評を買い、2004年に従来の2Gの携帯電話と同じ感覚で利用できる端末(「900i」シリーズ)が登場するまで、なかなか普及が進まなかったという経緯がある。

それゆえ3Gと同じ轍を踏まないよう、キャリアは5Gの導入に際して、ネットワークや端末に加え、5Gの利用を促進するためのサービス開発にも力を入れるようになった。実際NTTドコモは、東京・お台場や東京スカイツリータウンなどで「5Gトライアルサイト」を展開、5Gを活用したサービス創出に向けたさまざまなデモやサービスの一般展示を実施している。5Gに関してもそうした取り組みの成否が普及を大きく左右するだけに、2020年までキャリアが5Gに向け、どのような取り組みを見せるかはしっかり注目しておく必要があるだろう。

NTTドコモは5Gの早期普及に向け、東京スカイツリータウンなどで5Gを活用したサービス創出に向けた「5Gトライアルサイト」を展開している
なぜスマートフォンの購入は「割賦払い」なのか

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第20回

なぜスマートフォンの購入は「割賦払い」なのか

2018.06.29

スマートフォンを購入する際、多くの人は24回、48回などの割賦を組んで購入していることだろう。携帯電話の購入はかつて一括払いが主流だったのだが、なぜ割賦払いが主流となっていったのだろうか。そこには2つの要素が大きく影響している。

メリットもデメリットもある割賦払い

大手キャリアやMVNOなどでスマートフォンを購入する際、多くの人は一括払いではなく、2年間の割賦を組んで購入しているのではないだろうか。実際大手キャリアは、NTTドコモの「月々サポート」やソフトバンクの「月月割」など、24ヵ月以上という長期間の割賦払いで端末を購入してもらい、毎月の割賦料金から一定額を値引きするという仕組みを導入している。

大手キャリアからサブブランド、MVNOに至るまで、スマートフォンの販売は一括ではなく、割賦を組むことが一般的となっている

また最近では、KDDI(au)の「アップグレードプログラムEX」のように、4年間の割賦契約をする代わりに、2年経過後に端末を買い替えた際に割賦残債をゼロにするという仕組みを導入するキャリアも増加。一層長期間の割賦を組む必要が出てきている。

最近ではauの「アップグレードプログラム」のように、48カ月の割賦を組む代わりに25カ月目以降に買い替えた際に残債の支払いが不要になる仕組みも増えている

なぜ割賦を組むのかといえば、最近では10万円を超える高額なスマートフォンも多く、高額なスマートフォンを購入しやすくするためである。実際キャリアの割賦払いは購入当初の料金負担が軽減されるし、利子が付くどころか値引きまで受けられてしまうなど、ユーザーにとって一定のメリットがあるのは事実だろう。

しかしながらこの割賦が問題となるのは、キャリアを解約する時である。当然のことながら割賦は全ての支払いが終わるまで残債があるし、キャリアを解約すると毎月の端末代にかかる割引も適用されなくなる。それゆえ残債がある状態でそのキャリアの契約を解除してしまうと、値引きなしで残債を一括払いする必要が出てきてしまうのだ。高額な端末を購入し、短期間で解約してしまった場合、携帯電話の解除料よりもはるかに高い料金を支払う必要があることから、キャリアが顧客を“縛る”要因として問題視する向きもある。 実は2000年代半ば頃まで、割賦を組んで携帯電話を購入するという発想はなかった。というのもかつては、毎月の通信料金の一部を、端末料金を値引く「販売奨励金」として活用し、端末価格を0円、1円といったように大幅に値引いて販売するのが一般的だったため。タダ同然で携帯電話が買えてしまうため、割賦を組む理由が存在しなかった訳だが、それが一転して現在のように端末価格が高くなり、割賦払いが主流になったのかというと、大きく2つの要因が影響している。

普及に影響したソフトバンクと総務省

1つはソフトバンクである。現在は総合通信会社として知られるソフトバンクだが、その前身は2006年に、現在のソフトバンクグループである旧ソフトバンクが、ボーダフォンの日本法人を買収して設立したソフトバンクモバイルである。

現在のソフトバンクは、ボーダフォンの日本法人を買収して設立したソフトバンクモバイルが前身。買収当初は業績不振が続き他社のようにお金をかけることができなかった

実は旧ソフトバンクは、この買収に際して1兆7500億円もの金額を費やし、膨大な借金を背負うこととなった。しかも当時、ボーダフォンの日本法人は不振が続き赤字経営。それゆえソフトバンクモバイルは資金が潤沢ではなく、従来のように販売奨励金による値引きという施策を取るのは難しかったのである。

そこで生まれたのが、現在の月月割にもつながる独自の端末購入プログラム「スーパーボーナス」である。これは端末を24ヵ月の割賦払いをする代わりに、頭金の支払いを不要にしたり、毎月の割賦料金から一定額を割り引いたりするなどの特典を提供するというもの。販売奨励金の代わりに長期間の割賦を組んでもらうというリースに近い仕組みを導入して端末を購入しやすくした訳で、ある意味苦肉の策だったともいえる。

その販売手法が一転して主流になったのには、もう1つの要因となる総務省だ。総務省は以前より、キャリアの販売奨励金による販売手法が、端末を頻繁に買い替える人だけが得をし、買い替えない人は損をする仕組みであるため、不公平だと問題視していたのだ。

そこで2007年に総務省が実施した有識者会議「モバイルビジネス研究会」で、端末代と携帯電話代は明確に分離すべきだとの見解がなされた。その結果、キャリアは従来のような販売奨励金による端末価格の大幅値引きが難しくなってしまった。そうしたことからソフトバンクモバイル以外のキャリアも、販売奨励金なしで端末を購入しやすくするべく、割賦払いを採用するに至ったのである。

通信料金と端末価格の問題はその後、スマートフォンが登場し、市場競争が激化したことで境界線が再び曖昧になり、その度総務省が有識者会議を開いてキャリアへの指導を加えていく……といういたちごっこが続いている。だが割賦払いは、値引きなしでも高額な端末を購入しやすくなるユーザーメリットがあること、そしてキャリアにとっても、ユーザーの長期契約に結びつくメリットがあることから、大手キャリアだけでなくMVNOやサブブランドにも広がり、定着しているようだ。