瀧澤信秋のいろはにホテル

本当にラブホテル? 飽くなき探求心が生んだ宿泊業の新しいカタチ

瀧澤信秋のいろはにホテル 第4回

本当にラブホテル? 飽くなき探求心が生んだ宿泊業の新しいカタチ

2019.01.05

“一般ホテル化”が進むレジャーホテル、人気の秘密を探る

高級シャンパンも用意! 「WATER HOTEL」の感動的なルームサービス

スイーツのショーケースもある「ホテル&スイーツ フクオカ」

レジャーホテルの枠を超えた「HOTEL Mai Sakura」とは

「レジャーホテル(ラブホテル)」の“一般ホテル化”が進んでいる。

その理由は宿泊業全体の活況にある。業態としては「レジャーホテル」に区分されるものの、淫靡な雰囲気は皆無で、リゾートホテルレベルのクオリティを担保できるような施設が増えてきているのだ。こうした流れについて、詳しくはこちらの記事で詳しく説明している。

今回はそんな、一般ホテル的なコンセプトやサービスなどを持つ“特徴的なレジャーホテル”を紹介し、そこから見える各ホテルの人気のポイントについて考察していこう。

水をモチーフにしたレジャーホテル

ラグジュアリーリゾートホテル「WATER HOTEL S国立」(東京都国立市) 

レジャーホテル業界でも、クオリティの高さとラグジュアリー感でその名を知られるのが「WATER HOTEL S国立」(4号営業)。中央道の国立府中インターチェンジ至近に位置する。いわゆるラブホテルをイメージするような淫靡な雰囲気は皆無だ。ホテル名のとおり、至る所で水をモチーフにした設備や仕掛けがあり、客室で供されるミネラルウォーターにまで気遣う。

客室はスタンダードからデラックス、スイートまで様々なタイプがある。最も安い客室で休憩利用が6,900円から、平均で9,000円~1万円といったところ。最も豪華な「フォーシーズンズスイート2」になると1万8,000円から、宿泊は3万2,000円~で設備も豪華だ。露天ジャグジーやスチームサウナブース、カラオケ(DAM)に60インチ4K液晶TVなどを備える。

ルームサービスの供食体制も感動的。高級シャンパンやワインなどホテルとは思えない驚きの低価格で提供されている。

厳選された食材を使ったバラエティに富んだメニューは、本格的な厨房で調理される。原価率はなんと60%を超えるというから驚くが、そもそもレジャーホテル業界では、料理や飲み物で利益を出すという発想がない。駐車場には品川ナンバーなどの高級車も目立つ。最高級ルームで豪華な食事をしても都心のラグジュアリーホテルの素泊まり料金でお釣りが来る。“わかっている人”のリゾートなのだろう。

スイーツショップのようなレジャーホテル

次は、2017年1月に開業した「ホテル&スイーツ フクオカ」。福岡で話題のレジャーホテル(4号営業)だ。

「ホテル&スイーツ フクオカ」(福岡県福岡市)

ロビースペースに隣接するのはスイーツのショーケース。白を基調とした清潔感溢れる空間はまるでスイーツショップだ。ロビーにはカフェスペースもある。ショーケースには美味しそうなスイーツが並び、後ろにはガラス越しのスイーツキッチンもある。

とはいえここはレジャーホテル。店員はいない。ショーケースの後ろにトレーが置かれておりゲスト自らスイーツをピックアップする。このシチュエーションで想像するのは、ショーケースの前で彼女が指さすスイーツを向こうにいる彼がトレーにピックアップしている光景だ。リゾート感ある外観や空港近くという立地もあり、スイーツ目的のゲストなど一般ユースの需要もあるという。

スイーツブッフェはデイユース・宿泊共料金に含まれており、滞在中はカフェスペースでもゲストルームでも、好きなだけスイーツを楽しむことができる。

大きな窓から注ぎ込まれる自然光には、レジャーホテルの雰囲気は皆無。レジャーホテルの定番にして、得てして食べるのに難儀するローテーブルを採用しているミスマッチホテルは多いが、このホテルのこのナチュラルな客室には計算されたくつろぎの仕掛けがある。ソファとテーブルの高さは食事をするのに抜群のバランスで、自宅のようにくつろげる。

ブックショップのあるレジャーホテル

立地によっては“ホテルのご当地フィーチャー”の傾向は強まっている。京都でいえば古都の雅といったコンセプトの一般ホテルは多く、奈良に立地する「HOTEL Mai Sakura」はレジャーホテルにして、随所に古都をイメージするデザインがある(新法営業)。

「HOTEL Mai Sakura」(奈良県奈良市)

ロビーから客室まで至る所で雅に触れることができる一方、驚いたのはおおよそレジャーホテルには見られない施設、設備のラインアップである。複合型ホテルを謳う進化型レジャーホテルだ。

エントランスを入ると真正面には、なんとブックショップ&ラウンジ「桜書店」があり、食、旅、美や洋書など幅広いジャンルの本が並ぶ。書店に隣接するのは、寝転べる畳スペースとコミックコーナー。家族での利用もあるというホテルにして、子供がはしゃげそうなエリアである。その他、カラオケやゲームコーナー等のアミューズメントスポットも併設、全て無料である。レジャーホテルの雰囲気を残しつつ、もはやその枠を超えている。

奈良駅から徒歩5分という好立地にして、奈良公園や東大寺といった有名スポットへも好アクセス。新法ホテルで出入り自由ということもあり、観光やビジネス目的の利用も多く、それぞれに対応する客室が用意されている。訪日外国人旅行者の利用も増加する中、一般ユースの需要が3割を超えるというから驚く。

一般的にレジャーホテルは回転率が命といわれるが、こちらではフリータイム等の時間拘束に余裕を持たせており、一般利用の使い勝手も良いのだろう。

***

業界の既成概念を覆した融通無碍な発想は、宿泊業としての価値を見いだす現代のレジャーホテルに新風を吹き込んでいる。ホテルはハード・ソフト・ヒューマンといわれるが、人的サービスの希薄な業態だからこそ、ゲストが何を望み欲するのかというあくなきヒューマンの探求が続く。人間の"本能"に根付き直結する業態だけに解を導き出す努力にはリアリティがある。

「瀧澤信秋のいろはにホテル」、次回は最近話題沸騰の「カプセルホテル」について。進化し続けるカプセルホテルの最前線とは?

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時代とともに変わるホテル - ラブホは「レジャーホテル」へ

瀧澤信秋のいろはにホテル 第3回

時代とともに変わるホテル - ラブホは「レジャーホテル」へ

2019.01.04

近年、ラブホテルは「レジャーホテル」と呼ばれるように

現代的な“おしゃれ感”のあるレジャーホテルが増加

ホテル不足で再注目、一般の宿泊サイトでも予約可能に

ホテルのカテゴリーは多様だ。シティホテルにビジネスホテル、リゾートホテルやカプセルホテルなど、それぞれの業態に応じてサービススタイルも異なる。

筆者は、『ホテル評論家』として“横断的評論”を心がけている。さまざまなスタイルのホテルを利用者目線で横断的に批評することで、評論活動におけるホテルサービスの最適解を導きだそうとしているのだ。「ラブホテル」もそのフィールドである。

今回は「ラブホテル」について話を進めよう

ラブホテルは「レジャーホテル」へ

ラブホテルとは伝統的な表現であり、近年業界では「レジャーホテル」という呼称が一般的だ。筆者が連載している業界誌のタイトルもレジャーホテルという用語を用いている。以前ネット記事で、“ラブホテルは昔ながらの淫靡な雰囲気を醸し出している施設”で、レジャーホテルは“現代的なおしゃれ感のある施設”を指すという見解を見かけたが、あくまで呼び方の変化であり、ラブホテルがレジャーホテルと言われるようになっただけだ。

近年、ラブホテルはレジャーホテルと呼ばれている

呼称はさておき、現代的でおしゃれ感のある施設が増加していることは事実である。確かに昔ながらの淫靡な雰囲気を醸し出している施設も存在感を放つが、多様なスタイルのホテルが誕生する中で、レジャーホテルに区分されるものの、淫靡な雰囲気が見られないホテルが生まれているのだ。リゾートホテルのようなクオリティに加え、一般ホテルに近い形態で利用できる施設もある。

フロントでの対面手続きも珍しくなくなった

では、レジャーホテルの定義とは何か。

レジャーホテルに限らず、料金を受領して人を宿泊させる場合、「旅館業法」が適用される。旅館業法では「旅館・ホテル営業」のほか「簡易宿所」(カプセルホテルやホステルなど)、「下宿」とカテゴライズされているが、レジャーホテルは当然のことながら「旅館・ホテル営業」として届け出されている。

中でも特有の設備を持つ施設は、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律)第2条第6項第4号の「専ら異性を同伴する客の宿泊・休憩の用に供する政令で定める施設を設け、当該施設を当該宿泊・休憩に利用させる営業」に該当する。

それら施設、設備などを設ける場合は、旅館業法の許可と共に風営法の届け出をしなければならず、店舗型性風俗特殊営業の4号営業に分類される。業界ではこのような設備を持つレジャーホテルを「4号営業ホテル」と呼んでいる。

4号営業ホテルには「フロントによる対面接客がないこと」や「客室で自動清算できる機器を設置していること」など、さまざまな要件があるが、その一方で最近はフロントでの対面接客がある施設も目立つようになってきた(対面接客のないレジャーホテルにも正確にはフロントがあるが、遮へいされた場所にありスタッフの顔も見えないようになっている)。

「新法営業ホテル」のフロント(左)、客室に設置されていない新法ホテルの自動精算機(右)

対面接客で料金や鍵のやりとりが行われる施設は、一見するとレジャーホテルでも、実は風俗営業法が規定する要件にはあてはまらない。これらの施設は、ホテルを4号営業ホテルに対して「新法営業ホテル」と呼んでいる。4号営業許可はハードルが高いことも、この「レジャーホテルの一般ホテル化」という新たなフェーズ移行が進んでいる一因なのかもしれない。

「ホテル不足」がレジャーホテルの人気を後押し?

新法ホテルとレジャーホテルの一般ホテル化について考察してきた。

男女が特定の目的のために利用する施設という側面を保ちつつ、ビジネスプランの提供や女子会プランなど多目的な利用が周知されている現況もある(4号営業でもビジネスプラン・女子会プランなど提供する施設はある)。アメニティや備品、食事のサービス、ドリンクサービス等の充実もレジャーホテルの定番であり、レジャーホテルがセレクトされる理由になっている。

「タオルウォーマー」が用意されていたり、無料でスイーツを選べたりと、サービスが充実している

ここで誤解のないように申し上げたいのは、「業態としてはレジャーホテルに区分されるものの淫靡な雰囲気は皆無で、リゾートホテルとしてもクオリティが担保できるような施設も増えている」という前述部分であるが、これは決して“4号営業=淫靡な雰囲気の施設で、新法営業はそれ以外”ということでない。4号営業であっても一般ホテルでみられるようなコンセプトを有するホテルもあるし、新法営業でもアダルトな雰囲気を持ち合わせる施設もある。

近年訪日外国人旅行者の激増もあり、ホテル業界が活況を呈している。それに伴い、これまでになかったスタイルやサービスが見られるホテルが増えている。たとえば、デイユース(休憩利用)といえばレジャーホテルの十八番だったが、最近ではビジネスホテルなども積極的に採用する利用形態だ。一般ホテルのスタイル多様化は、レジャーホテルの業際化ともいえる新たなシーンを創出している。

ここ数年、ホテル不足問題という観点からもレジャーホテルがフィーチャーされている。一般の宿泊予約サイト(OTA)でもレジャーホテルの取り扱いがなされるようになった。都市部では駅近や繁華街至近といった場所に立地していることが多く、何より客室の設備、アメニティについては一般ホテルを凌駕しているケースも多い。たとえば、ドライヤー類4台というのはレジャーホテルでは常識である。

複数のドライヤーが用意されている

そのほかにも、一般ホテルは相応の料金変動がみられる中、レジャーホテルの料金は均一感があったり、一般ホテルが満室でもレジャーホテルは稼働に余裕があったりすることも、レジャーホテルの人気を後押しする。ホテル不足問題は、レジャーホテルの一般ホテル化への流れを促進し、かつその周知性を高めていると言えるだろう。

次回も引き続き、レジャーホテルについての話が続きます。ホテル評論家の選ぶ、3つの“驚きのレジャーホテル”とは? 掲載は1月5日を予定しています。

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ドーミーインのお風呂は「筋金入り」だった 多様化するビジネスホテルの今

瀧澤信秋のいろはにホテル 第2回

ドーミーインのお風呂は「筋金入り」だった 多様化するビジネスホテルの今

2018.12.06

ホテル評論家・瀧澤信秋氏による連載!

「多様化」が進むビジネスホテルの現状は?

ドーミーインが「風呂好き出張族」に好かれる理由

ここ数年、急速にビジネスホテルの「多様化」が進んでいることをご存知だろうか。本稿では、「料金変動」の面を中心にお伝えした前回に引き続き、「各ホテルの差別化への取り組み」というテーマで、多様化が進むビジネスホテルの現状を探っていきたい。

全国チェーンが席巻してきたビジネスホテル業界

筆者はホテル評論家としての仕事の傍ら、ホテルプロジェクトへの参画といった仕事もこなしている。持ち込まれる案件は宿泊主体型ホテル(ビジネスホテル)が多い。近年のホテル開発の多くは宿泊主体型ホテルで占められているから当然といえば当然だが、それにしても実に多くのビジネスホテルが誕生している。

いたるところでビジネスホテルを見るようになった

手もとにある2019年のホテル開業予定一覧には、320軒超の開業予定施設が列挙されているが、ザッと見ただけでも宿泊主体型ホテルがその多くを占める。活況を呈する宿泊業自体が注目されているうえに、ビジネスホテルの需要が高いことは周知の事実。当然、ビジネスとして成立すると見込まれるから開業するという思惑はいずこも同じだ。

プロジェクトがスタートしてから開業に至るまではさまざまな過程を経るが、期間は2~3年は要する。この間には、所有者をはじめ、投資家や建築家、オペレーター、コンサルタントなど、さまざまな人がかかわるうえに、巨額の資金も投入される。かような状況下で、一度ゴーしたプロジェクトが引き返されることはほとんどない(というより、そんなことはとてもできない)。

コンセプトを打ち出す“進化系ビジネスホテル”

筆者は以前から、ビジネスホテルは「ハイクラス型」と「ローコスト型」に分けられると指摘しているが、この傾向はますます際立っている。

一般的にローコスト型は標準化された客室を大量供給する傾向にあるが、ハイクラス型では独自コンセプトの打ち出しが目立つ。開業を控えたホテルから届く大量のリリースを見ると、最近のビジネスホテルはハイクラス型が多くを占めていることがわかる。

筆者の造語で恐縮だが、ハイクラス型は“進化系ビジネスホテル”と表すことができるだろう。「ビジネスホテルなのに豪華」「ビジネスホテルなのに高品質ベッド」「ビジネスホテルなのに食事が素晴らしい」……など、“ビジネスホテルなのに○○”、というのが進化系に共通する特徴だ。

これはビジネスホテルのシティホテル化(シティホテル=料飲やバンケットなど宿泊以外にも多くの用途があるホテル)とも言えるが、リミテッドサービスであれば、やはりビジネスホテルなのである。

質感の高い客室では24時間滞在プランも人気だ(画像は立川ワシントンホテル)

多彩なサービスが提供できるシティホテルと比較し、宿泊に特化しているビジネスホテルはコンセプト化の方向性が画一的になる傾向があり、続々誕生するビジネスホテルブランドの中には、コンセプト化に注力しつつも同工異曲といったものも見られる。ただし、差別化とコモディティ化によって、特異な尖ったサービスも散見するようになったのも事実だ。

実際の差別化の取り組みや傾向について、いくつか例を紹介しよう。

混戦極める快眠コンセプト

“ホテル”という名の通り、ビジネスホテルが「眠り」にフィーチャーするのは自然なこと。しかし、昨今はビジネスホテルなのに高級ホテルのような快眠ホテルが増加している。

スーパーホテルやコンフォートホテルなど、快眠への取り組みをアピールするビジネスホテルは多い。中でも、スーパーホテルの取り組みは特筆すべきものがある。スーパーホテルは、言わずと知れた“選べる枕”のパイオニアでもあるが、同様のサービスを行うビジネスホテルが増えてきたのも事実で、“よく見るサービス”になりつつある。

スーパーホテルの選べる枕

また、オリジナルマットレスで知られるのが「アパホテル」と「レム」だ。専門メーカーとの共同開発は高級ホテルで見られる傾向にあったが、今後はビジネスホテルでも一般的になるかもしれない。また、既に一般化しているのが羽毛布団を使った“デュベスタイル”のベッドメイクだ。

長くなってしまうので詳述は避けるが、筆者は評論家としての活動を始めた4~5年ほど前から、自著や各種媒体、講演などでデュベスタイルを推奨してきた。当時は高級ホテルで多く見られたが、いまやビジネスホテルでも定番化している。

朝⾷の有料・無料の⼆分化は「⼆極化」へ

ゲストの中には、「朝食でホテルを選ぶ」という人もいる。

無料とは思えない充実の内容(ホテル ココ・グラン上野不忍にて)

従前より、朝食のクオリティを堅持したい(宿泊料金の高い)ハイクラス型が有料、ローコスト型が無料というある種の逆転現象を指摘してきたが、有料朝食/無料朝食は、ここにきてそれぞれに際立つ進化を遂げている(「無料」とはいえ、宿泊料金に転嫁されていることはいうまでもない)。

無料朝食といえば、パンにコーヒーといった簡易的なスタイルから始まったが、今やブッフェスタイルが当たり前。煮物・焼き物・揚げ物といった充実メニューからパン・ご飯、サラダバーまで用意されているケースもある。

無料でこうなのだから有料朝食の充実は言わずもがな。特に最近驚いたのが「ホテルフォルツァ長崎」(長崎市)だ。ご当地メニューをかなりフォローしたラインアップにはじまり実演メニューまで、前回訪問時より大きく進化していたのが印象的だった。朝食による差別化はどこまで進むのだろうか。

もはや定番「お持ち帰りスリッパ」

かつてはビジネスホテルの差別化アイテムに思えたが、もはや定番な存在になったのが「お持ち帰りスリッパ」である。

ウォッシャブルスリッパを導入するホテルもあるが、筆者は前述のデュベスタイルと共に良いビジネスホテルを見分けるアイテムとして推奨してきた。これもいまや定番のアイテムに。さらには高級ホテルのお持ち帰りスリッパのような、質感まで追求する施設も登場した。

ビジネスホテルでもすっかりおなじみのお持ち帰りスリッパ

差別化アイテムといえば、最近気になったのが、テレビ画面でランドリーやレストランの空き状況などがわかるシステムだ。当初は「ここまでやるか」と驚いたが、すでに定番のサービスになりつつある。また、いつのまにか定番になったものといえば、自動精算機がある。ホテル・利用者双方に効率化をもたらすように見えるが、他方では、ゲストが操作に難儀しているシーンを時々見かける。

異業態からのアイデア取り込みも

ビジネスホテルのテレビといえば、画面でアメニティなどリクエストできるシステムもみられるようになったのをご存知だろうか。

実は、こうしたシステムはレジャー(ラブ)ホテルの十八番だ。筆者はラグジュアリーから、ビジネス、カプセル、レジャーホテルといった横断的視座で評論しているが、レジャーホテルのサービスが一般ホテルへ波及するケースを何度か見てきた。

レジャーホテルには学ぶべきサービスが多い

前述の自動精算機も、ロビーに設置/客室に設置と形態は違うが、多くのレジャーホテルで見られるシステム。自動精算機の開発を手がける業界大手の株式会社アルメックスは、レジャーホテルのシステム開発でも高名な会社だ。

レジャーホテルが先駆けだったシャンプーバイキングも旅館やビジネスホテルで見かけるようになった。また、全客室への電子レンジ導入をとあるビジネスホテルでみかけたが、これもレジャーホテルでは定番のアイテムである。

レジャーホテルは“顔を出せない”“接触できない”という業態だけに、あらゆるゲストの多様な好みを充足できるよう、さまざまなシーンを想定してサービスを準備、提供している。CS(顧客満足)は当然として、匿名的な業態にしてある意味でPS(個人満足)追求が勝負の鍵。それゆえに、きめ細かなサービス・システムが他業態に先駆けて誕生しているというわけだ。

温泉大浴場で抜きん出る「ドーミーイン」

「大浴場」もビジネスホテルの魅力の1つ。中には天然温泉を楽しめる施設もあり、ファンの心を掴んでいる。

ビジネスホテルと温泉で知られるのが「ドーミーイン」だろう。ほとんどの施設で大浴場が楽しめてその多くが天然温泉だ。露天風呂、サウナや冷水浴も標準装備で、お風呂好きの出張族にファンが多い。

ドーミーインでは露天風呂も定番

経営会社の株式会社共立メンテナンスは、ホテルの売上高ランキングでもプリンスホテル、東横イン、東急ホテルズに次ぐ第4位で、前年度比伸び率もダントツ(日経MJ2018年11月14日)。ビジネスホテルの温泉大浴場といえばドーミーインというイメージは定着しているが、これはもちろん一朝一夕に評価を得たわけではない。

同社はもともと、大浴場施設のある寮の運営を主幹事業としていた企業であった。そこから、社員寮入居者の「出張先でも寮みたいなホテルがあったら」という要望があり、1993年にビジネスホテルへ進出。当時としては珍しい大浴場付きのビジネスホテルを展開していくことに。ドーミーインは、当初から天然温泉にも注力している“筋金入り”のホテルなのだ。

***

以上、ビジネスホテルの差別化についてみてきた。

ホテル評論家として、旅行者が急増した人気沸騰エリアは常に注目している。旅行先としての魅力分析というよりも、2~3年すればここもビジネスホテルの開業ラッシュになるのだろうというような需給予測的着目だ。そして一気に開業が重なる。需要に供給が追いつくのは世の常であるが、限られたマーケットでの差別化は至上命題といえる。

コンセプトは“作り”“打ち出し”“当てはめる”という面がある一方で、長年かけて一貫したスタンスを徹底した結果、揺るぎないコンセプトとなり、オンリーワンの確固たる地位を築くホテルもある。徐々にコンセプトが築かれていくような地に足の付いたホテルはゲストの信頼も厚いのである。 

次回は本記事でも触れたレジャー(ラブ)ホテル、その驚異的なサービスと一般ホテルの業際化について取り上げます。 

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