安東弘樹のクルマ向上委員会!

マニュアル設定の理由は? 安東弘樹、トヨタ「カローラ」の技術者と語る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第4回

マニュアル設定の理由は? 安東弘樹、トヨタ「カローラ」の技術者と語る!

2018.08.28

安東さんが「カローラ」技術者と対談

マニュアル車の設定には意外な理由も

安東さんのクルマ選びは混迷の度合いを増してきた

トヨタ自動車の新型車「カローラ スポーツ」に試乗し、自身の“購入検討リスト”にも加えるほどの好感触を得た安東弘樹さん。試乗後に行ったエンジニアとの懇談では、マニュアルトランスミッション(MT)設定の理由など、気になるポイントに次々と切り込んだ。

※文と写真はNewsInsight編集部・藤田が担当しました

カローラは「つまらないクルマではない」

安東さんが話を聞いたのは、トヨタ Mid-size Vehicle Company MS製品企画 ZE 主幹の梅村伸一郎さん。最初の話題は、新しいカローラがハッチバックというボディタイプとなった理由だ。

ほかの参加者が帰路についた後も話し込んでいた梅村さんと安東さん

カローラにはセダンの「アクシオ」とワゴンの「フィールダー」があるが、新型が全く新しい姿で登場したのはなぜか。梅村さんは「イメージを変えるという意味で有効かなと。カローラにはハッチバック、セダン、ワゴンをグローバルで用意するんですが、ハッチを最も早く投入したのは、ユーザー層の若返りを図る上で1つの手段。もともとカローラにはスポーティーなイメージがあったので、原点回帰を図りました」とした。

対する安東さんは、フォルクスワーゲンの試乗会で「ポロ」と「up!」のGTIに乗ったばかりと前置きした上で、「カローラもつまらないクルマではなく、感動すら覚えました。今までは退屈なクルマというイメージがあったので、ハッチバックにしたことも含め、英断だと思います。元はといえば『レビン』もありました。1970年代初頭に父親がカローラに乗っていましたが、当時は高齢の方のクルマというイメージは微塵もなかったので、原点回帰は大歓迎です」と応じた。

スポーティーなイメージを取り戻すカローラの原点回帰は「大歓迎」と安東さん(画像提供:トヨタ自動車)

若い人は「カローラ」を買う?

デザインについては、「生まれて初めてカローラを格好いいと思った」と安東さんも好印象だ。梅村さんはリアの造形について、「バックドアには樹脂を使ってます。『フィールダー』も樹脂だったんですが、トヨタとして初めてのトライだったので、鉄に戻せるような(のっぺりした)造形にしなければなりませんでした。今回はノウハウがあったので、思いきった造形にできました。これは鉄だとできません」とのこだわりを教えてくれた。

トヨタが若者世代に提示するクルマのカローラ スポーツだが、最も安いグレード「G“X”」で210万6,000円、最上級グレード「HYBRID G“Z”」で268万9,200円からという価格設定について安東さんは、少し高いとの印象を抱いた様子。「20代の人が買うとなると……」と懸念を示すと梅村さんも、「ちょっと高いという声は実際、ある」と応じた。

「もう少し何とかできないかとは考えていますが、インパクトを出したいという考えもあって(装備などにもこだわった)。少し値が張りますが、20~30代が欲しいと憧れるクルマは、その上の世代の方にも買って頂けるので」とする梅村さんによれば、受注状況は「今までの傾向から考えると、若い人からも受注は頂いています。グレードは『G“Z”』が最も多く、ハイブリッドが7割」(試乗会があった7月5日時点での数字)とのことだった。

若い世代が憧れるクルマは、上の世代にも魅力的に映るはずと梅村さんは話していた(画像提供:トヨタ自動車)

マニュアル設定は「すばらしい判断!」

「人生で一度もマニュアルから離れたことがない」と話す安東さんが期待を示したのが、カローラ スポーツのMT車(8月2日に発売)だ。 「日本のMT車市場は小さいんですけど、『スポーツ』ということで」と導入の理由を説明する梅村さんに対し、安東さんは「すばらしいご判断! このまま(MT車を)絶滅させるのは……」と嬉しそうな様子を見せた。

カローラ スポーツが導入する「インテリジェントマニュアルトランスミッション」(iMT)は、インテリジェントという言葉の通り、ドライバーの変速動作をクルマがコンピューター制御で支援するシステムだ。例えば発進時のクラッチ操作を検出した際には、クルマ側でエンジン出力を最適に調整する(トルクを上げる)ことで、クラッチのみによる発進操作をよりスムーズに行えるようサポートする。MT車の操作が苦手な人でも「エンストしにくい」(梅村さん)そうだ。

日本のMT車市場は小さいが、カローラでMTを出したいという強い思いがあったと語る梅村さん

カローラにマニュアルを設定する2つ目の理由

クルマに関する全ての操作を自分で行いたいと考える安東さんにとって、iMTのようなクルマ側からの介入は不要だろうとは思うが、こういったシステムを導入すること自体については、「MT車のハードルを下げるのにすごくいい。一度エンストすると、萎えてしまう人もいるので。僕の世代でもMT乗りはほとんどいない」とし、その判断に理解を示していた。

MT車の衰退を嘆く安東さんは、「カローラ スポーツ」に「iMT」を導入するトヨタの判断を喜んだ

アクシオ、フィールダーにもMT車を用意するトヨタだが、同社がカローラシリーズにMTを採用する理由は、運転の楽しさを提供するためだけではない。カローラユーザーの平均年齢は60歳を超えているので、これまでMT車にしか乗ったことがなくて、「MT車しか乗れないといって買ってくれる人もいる」(梅村さん)そうだ。

「あの色(紺色、ブラッキッシュアゲハガラスフレークというエクステリアカラー)でMTのターボだったら、このクラスの日本車で初めて欲しいと思うかも」。エンジニアとの懇談も終盤に差し掛かり、カローラ スポーツのMT車が購入検討リストに入ったことを明言した安東さん。ポルシェ「911 カレラ 4S」、ジャガー「F-PACE」に続き、安東家に納車されるのはどのクルマになるのだろうか。対抗馬としてはMINI(ミニ)「クラブマン」、マツダ「アテンザ」が有力なようだが、判明したときには弊紙でもお伝えできればと思う。

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購入検討リストに伏兵あらわる? 安東弘樹、トヨタ「カローラ スポーツ」に乗る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第3回

購入検討リストに伏兵あらわる? 安東弘樹、トヨタ「カローラ スポーツ」に乗る!

2018.08.21

クルマ選びを進める安東さんに思わぬ候補車が!

「カローラ スポーツ」の何が気に入ったのか

“若者のクルマ離れ”にも一言

「意のままに動くからかな? すごく気持ちいい。好感が持てる」

トヨタ自動車の新型車「カローラ スポーツ」に試乗している時、安東弘樹さんが口にした言葉だ。「運転は快楽」と語る安東さんだが、このクルマに今後、マニュアルトランスミッション(MT)車が登場すると聞いて俄然、食指が動いたようだ。

※文と写真はNewsInsight編集部・藤田が担当しました

カローラが「全く別のクルマ」に

トヨタが開催した新型「クラウン」と新型車「カローラ スポーツ」の試乗会。長い歴史を持つトヨタの看板商品に立て続けに乗った安東さんは、「カローラの方が好きです、断然」(以下、発言は安東さん)と言い切った。

トヨタの新型車「カローラ スポーツ」

最初に乗ったカローラ スポーツは、最上級の「HYBRID G“Z”」というグレード。ハイブリッド(HV)システムを積む排気量1.8Lのクルマで、最高出力は98PS、最大トルクは142Nmだ。

乗り込むなり「標準でタコメーターがあるのはありがたい」と話した安東さんだが、それは「エンジンがどのくらい回っているか、常に把握していたいから」との理由から。ステアリングを握ると、「パドル(指でシフトチェンジできるパドルシフトという装置のこと)は付いてて欲しいなー!」とのこだわりも見せていた。

「標準でタコメーター」に安東さんは好感を持った(画像提供:トヨタ自動車)

走り出すと、「走り味には好感が持てる。MTが出るという話なので(8月2日に発売、試乗したのは7月初旬)、そこは期待したい」と楽しげな様子に。「ステアリングの応答性を含め、今までのカローラのイメージを完全に覆した。全く別のクルマ」というのが運転してみての印象だ。

このグレードで標準装備となる「スポーツシート」は、トヨタが出来栄えに自信を示すフロントシートだ。クルマの乗り心地については、途中休憩があったとしても、続けて「1,000キロ運転できるかどうか」だという独特の評価基準を持つ安東さんだが、このシートについては「座面が少し短いかな」としつつも、おおむね高評価だった。「フットレストも、いい位置にある」ので、「これなら疲れないかも」との感触を得たそうだ。トヨタはカローラ スポーツの開発にあたり、走りの面では「ずっと走っていたくなるような気持ちよさ」を目指したというが、その部分を安東さんも感じ取ったようだ。

「始めてカローラを格好いいと思った」

次に乗った1.2Lのダウンサイジングターボについては、パドルシフトでギアを変えても「あまりメリハリがない」と話していたが、走行モードを「SPORTモード」に変更して以降は「パドルに対するリニアな反応が出てきた」と印象が変わった様子。「HVより運転は楽しいが、願わくばCVTは『デュアルクラッチ』(ポルシェなどのスポーツカーブランドが採用するトランスミッション)にしてくれないかな」と独特の願いも口にしていた。

試乗の最中、同じく試乗中のカローラ スポーツとすれ違った際には、「純粋に格好いい。ヘッドランプの形とか」「生まれて初めてカローラを格好いいと思った」との言葉も。エクステリアカラーとしては「紺色」(ブラッキッシュアゲハガラスフレークという名称)が気に入ったという。

安東さんも気に入ったという「カローラ スポーツ」の外観

“若者のクルマ離れ”について安東さんの見解は

安東さんには好印象だった様子のカローラ スポーツ。このクルマでトヨタが狙うのは、カローラユーザーの若返りだ。

カローラはユーザーの平均年齢が60歳を超えるクルマになっていて、トヨタは今回の刷新で若い世代の取り込みを狙っている。セダンとワゴンに先行させる形で、新しく採用したボディタイプであるハッチバックのカローラ スポーツを発売したのも、トヨタがターゲットユーザーと位置づける「新世代ベーシック層」、つまりは20~30代の顧客にアピールしたいとの考えからだ。この目論見を安東さんはどう見たのか。

「(クルマに何を求めるかといえば)僕は『魔法の絨毯』、つまりは好きな時間に、好きな場所に連れて行ってくれるところ、それに尽きると思っていて、若い人もそういうツールがあったら嬉しいというのは変わらないと思います。だけど、若い人は『買えねーじゃん』と」。これが安東さんが想像する若者の本音だ。「スマホとか、他にお金の掛かるものがある」から、クルマのローンにお金を回す余裕がないのでは、と見る。

若者がクルマを欲しくても買えないのだとすれば、自動車メーカーはどんなクルマを作るかと同時に、どうしたら買ってもらえるような状況を作り出せるかにも知恵を絞らなくてはならないだろう

「僕らが20代前半の頃って、クルマくらいしかお金を掛けるところがなかった。今はスマホでデバイス代を払って、ゲームもやったりすると月々3万円とか。クルマのローン分がスマホ代に消える。そしたらクルマは買えない」。つまり、若者がクルマを買わない理由は、「単純に買えない」からだと安東さんは考える。「魔法の絨毯というクルマの良さはいまだに響くはず」だし、「タダならポルシェだって乗りたいだろう」とは思うが、「現実問題として、税金や駐車場代を含め買えない。維持できない」のが問題だというのだ。

「クルマを安くするしかないけど、それができないとしたら、税金を下げるとか超低金利ローンを設定する、自動車税は35歳未満は免除にする、それくらいしなければ若い人はクルマ、ましてや新車なんて買えませんよ」

“こみこみ300万円”で購入検討リストに

確かに、最初に試乗した「HYBRID G“Z”」というグレードは、車体価格こそ268万9,200円(税込み)だったものの、シートヒーター、ドライブモードをセレクトできる機能、販売店オプションのナビ(9インチ)などを含めると、総額は357万7,133円に達していた。後に乗ったガソリンエンジン車もオプション込みで280万円前後はする。全体としてクルマが高くなっている感じがしていたが、“大衆車”カローラの価格を見て、改めて実感は深まった。

クルマのオプションは、モノにもよるが結構な価格になる

とはいえ、ポルシェ「911 カレラ 4S」、ジャガー「F-PACE」に続く3台目のクルマを真剣に選んでいる最中の安東さんは、カローラ スポーツのMT車に「ちょっと、購入リストに上がるレベル」の期待を抱いたとのことだ。3台目候補はMINI(ミニ)「クラブマン」とマツダ「アテンザ」の2台に絞られたかに見えたが、ここへきて伏兵が登場した。

オプションを含めた価格で、クラブマンが600万円程度、アテンザが500万円程度というリストに、カローラ スポーツのMT車が全部込みで(おそらく)300万円くらいで加わるとなれば、悩む気持ちも分かるというものだ。「あの色(紺色)でターボエンジンなら考える。後は実用燃費がどのくらいか。かなり気持ちいいクルマだ」というのが試乗会の後に聞いた安東さんの感想。そんなクルマであっただけに、試乗後のエンジニアとの話もかなり盛り上がった。その模様は本連載の第4回でお伝えしたい。

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進むべきはプレミアム化の道? 安東弘樹、マツダの技術者と語る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第2回

進むべきはプレミアム化の道? 安東弘樹、マツダの技術者と語る!

2018.08.16

「アテンザ」の試乗を終えた安東さんがマツダ技術者と対話

ミニ「クラブマン」との比較で感じたこととは?

安東さんのクルマ購入リストに意外な伏兵あらわる!

マツダのフラッグシップ「アテンザ」の試乗を終え、技術者と話を始めた安東弘樹さん。話題は多岐にわたったが、最終的にはマツダのブランド戦略に直結するテーマに収斂していった。マツダはプレミアムブランドになれるのか。安東さんの考えは。

※文と写真はNewsInsight編集部・藤田が担当しました

安東さんが話をしたのは、マツダ パワートレイン開発本部の西尾貴史さんと広報本部の岡本隆秀さん。ちなみに、岡本さんは広報部に来る前、車両開発本部にいた方だ。

左が西尾さん、中央が岡本さん

8速AT採用の可能性は?

初めに話題となったのは、オートマチックトランスミッション(AT)の多段化に関する話。安東さんは6速ATの旧型と6速MTの新型のディーゼルに乗った際、時速100キロでエンジンが2,000回転も回ってしまった事に触れて(MTは1,850回転ほど)、「せっかくトルクがあって良いエンジンなのだから、(アイシン・エィ・ダブリュなど)他社から8速ATを買ってきて取り付けてはどうか」と口にしていた。ちなみに、欧州の同等スペックのディーゼルエンジンにはほとんど8速ATが組み合わされていて、安東さんの愛車は100キロで1,400回転ほどだそう。トランスミッションを多段化し、細かく変速できれば、効率のよいエンジンの回転数域を使えるので、燃費にも加速にもメリットがある。

この意見について西尾さんは、「他社から持ってこようと思えば技術的には可能」としつつも、「難しいのは、AT側とエンジン側で『トルクの協調』というのをやっていて、変速する時に、一度エンジン側のトルクを落としてから、油圧でつなぎなおして再びトルクを上げる、みたいな制御を入れてるんです。内製でやるのであれば、部署が近いので制御について密に話せるんでしょうけど、他社のトランスミッションを導入すると、それにエンジンを合わせなくてはならないので、ベストな解が出せなくなると思います」との考えを示した。

シフトポジション表示について細かい質問が!

運転に関する作業は全て自分で行いたいという安東さんにとって、アテンザにマニュアルトランスミッション(MT)の設定があることは高評価だったが、気になる点もあったようだ。それは、「シフトポジションの画面表示」だ。

アテンザでは、ドライバーが正面に見るモニターに、どのギアで走っているのかが表示される。例えば5速であれば「5」という具合だ。安東さんが疑問を呈したのは、モニター表示の切り替わりが実際のシフト操作よりも遅かったこと。ちなみに、AT車をMTモードにして走っている時、パドルシフト(ステアリングに付いていて、指でシフトチェンジできる装置のこと)で5速に入れたときには、モニター表示もすぐに反応して「5」の表示に変わっていた。

シフトポジションの画面表示に関する話題に(画像提供:マツダ)

この点に関し西尾さんは、「MTはシフトレバーに(モニター表示と連動するような)スイッチが入っているのではなくて、エンジン回転と車速の比で(どのシフトに入っているのかを)判断・計算してます。クラッチをつないだ直後はそこが不安定で、計算しきれないので表示の切り替えが遅れてしまうんです」と説明。MTでは例えば、ドライバーが3速から5速に入れるような予期せぬシフト操作もありうるので、それを見越したエンジン制御も必要になる。そのあたりにATよりも難しい部分があると西尾さんは話していた。

こんな具合で、安東さんとマツダの技術者による懇談は話題が多岐にわたったのだが、マツダのブランド戦略にまで話が及んだのは、安東さんがアテンザの後席ドアに関する感想を述べたことがきっかけだった。

100万円の違いも納得できる欧州車と日本車の違い

ポルシェ「911 カレラ 4S」、ジャガー「F-PACE」に加え、3台目のクルマを購入しようと真剣にクルマ選びを進める安東さんは、アテンザのほか、ミニ(MINI)の「クラブマン」も購入検討リストに入れている。アテンザの出来栄えには納得の表情だった安東さんだが、クラブマンも捨てがたいと感じている理由は、欧州車が持つ重厚感、あるいは上質感ともいえる部分に惹かれているからだ。それが端的に現れているのが後席のドアだという。

アテンザの試乗車に乗り込むとき、安東さんが気にしたのが後席の「開け閉め感」だ。「F-PACE」や「クラブマン」などは、ドア自体が分厚く、閉めたときには「ガチッ」という感覚があるそう。一方で、「アテンザ」に限らず、日本車では開け閉め感に軽さがあるという。

クルマは命を預けるものだけに、そういった部分から感じる重厚感、安心感といったようなものは重要というのが安東さんの考え。「きわめて少数派かもしれないが」と前置きした上で、「同じようなスペックのクラブマンより、アテンザは100万円も安く買える。逆にいえば、ドアのガッチリ感など、そこが100万円の違いかとも感じる。装備などを考えると、アテンザの方がコスパは高いと思うんですけど、ユーザーとしては悩ましい。ドアの感じだけで100万円の差が気にならなくなることもあるので」と語った。

試乗車の乗り降りでは常にドアの開け閉め感を気にしていた安東さん

マツダのハイエンドなクルマはどうなっていくのか

これに対しマツダの岡本さんは、「ドアの開け閉め感、まさにその点は開発でも議論しているところです。もちろん、欧州車のずっしりとした安心感は認識してるんですが、(マツダとしては)日米向けのニーズに応えると、なかなかそこに踏み切れない。日米のお客様はクルマに乗る時に、ドアを開けながら乗り込むという所作になります。そうすると、ドアの重さが気になってしまうんです」と日本メーカーならではの事情を説明した。

欧州車が重厚な質感を持つ背景として、「これからアウトバーン(ドイツの高速道路。速度無制限区間もある)で時速200キロ超の世界に入るという時、やはり安心感というか、包み込まれて乗りたいという思いになるんでしょう」とした岡本さんは、欧州車の後席ドアに端的に表れている質感なども考慮して、マツダとしても「ハイエンドなクルマでは、うまく作り分けるべき状況なのかもしれない」と話していた。

「アウディにするかマツダにするか」が理想?

ドアの“ガッチリ感”に象徴されるようなクルマの質感の話は、マツダのブランド戦略に直結する。マツダは先日、これからのクルマづくりの方向性として「ラージ」と「スモール」という考え方を提示し、年間販売台数200万台という目標を打ち出したばかりだが、欧州のプレミアムブランドと同じような規模感を目指していく上で、「ラージ」に属する商品群では付加価値の向上に力点を置く姿勢を見せているからだ。

「ステータスシンボルとしてのクルマには関心がないが、求めるものを具現化してくれるということで」輸入車を選んでいる安東さんも、マツダの今後に期待を示す1人。「アテンザの車体価格は500万円に上げてもいいのでは。日本車の越えなければいけない壁というか、思い切って車体を500万円にできるかどうかには注目したい。コンパクトカーは頑張って安く売ってもいいと思うんですが、フラッグシップと名乗るクルマは別に考えてもいいのではないでしょうか」

「世田谷に住んでいて、輸入車に乗っている年収1,000万円超の人に買ってもらうのか、今の顧客に少し背伸びして買ってもらうのかで、マツダ車の価格設定は変わってきそう」(安東さん)

車体価格に100万円を上乗せできるか

ただし、「どうやって日本の自動車メーカーが変わっていくか。マツダも過渡期だし、(価格帯で)上にいったときに売れるかどうかについて悩んでいるのは、痛いほど理解できます」とも安東さんは話す。

マツダの西尾さんも、車体価格を100万円引き上げられればクルマは「全然変わる」とし、ステアリングの位置を電動で調整できるようにしたり、後席ドアの質感を上げたりなど、いろいろな部分を改良できることは認めるが、「ただ、『マツダプレミアム』というのが浸透し切らないタイミングで、自分勝手に価格を上げてしまうと、お客様の気持ちが付いてこないのではという懸念もあります」と複雑な心境を明かしてくれた。この点については、「『アウディにするかマツダにするか迷う』という感じになった方が、生き残る道はあると思う」というのが安東さんの考えだ。

「マツダのクルマに乗っている自分に出会いたい。国産の、マツダのような職人気質のメーカーで、『RX-7』の新型かどうかは分からないが、シフトフィールが良くて剛性感のあるクルマに乗りたい」。最終的に、マツダへの思いをこのように表現した安東さん。差し当たり、どのクルマを購入するかについては、検討リストに浮上しているアテンザとクラブマンによる争いが混迷の度合いを深めたわけだが、ここで同リストに、新たに1台の日本車が登場することになった。

意外な感じもするが、それはトヨタ自動車の新型車「カローラ スポーツ」だった。なぜカローラが候補に浮上したのか。こちらの試乗会にも同行したので、その理由も含めて本連載の3回目でお伝えしたい。

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