明治が飲料で低糖質に参入、広がりを見せる“ロカボ”市場の行方

明治が飲料で低糖質に参入、広がりを見せる“ロカボ”市場の行方

2017.06.09

食品に対する健康志向は近年ますます高まるばかり。中でも「ロカボ」、つまり低糖質の市場では、飲食メーカー各社の動きが活発になっている。明治はこのほど、糖質を抑えた「明治ロカボーノ カフェラテ」および「明治ロカボーノ フルーツラテ」の新商品発表会を開催。ロカボ飲料の市場にいち早く参入した。

明治がロカボ飲料を発売

低糖質ラテのターゲット層は?

新発売の飲料「明治ロカボーノ」は、カフェラテとフルーツラテの2種類で価格は各160円。甘さや満足感と、低糖質を両立させたところに最大の特徴がある。ブランドの名称も、低糖質を意味する「ロカボ」と、「おいしい」のイタリア語表現である「ボーノ」を組み合わせたものだ。

明治では新商品のターゲットを「20~30代の男女」(市乳営業本部の守屋孝氏)としており、CMには乃木坂46の白石麻衣さん、西野七瀬さん、高山一実さんを起用している。「健康的なイメージがあり、特にターゲット世代の男女双方に好かれる旬な存在」(同)ということが起用の理由だそうだ。

CMには乃木坂46の3人を起用

テレビCMのほか、公式ホームページのweb限定動画、SNSへの投稿を対象とするオリジナルグッズのプレゼント企画など、若い世代を意識したプロモーションにも力を入れる。

発表会ではCM放映のほか、乃木坂46の3人が撮影の様子について語ったり、試飲して感想を述べるなどして、商品の特徴やコンセプトを紹介していた。では、同商品の「低糖質でおいしい」という特徴はどのように実現されているのだろうか。

糖質量を10g以下に低減

まず、1本(430ml)あたりの糖質量は9.9gとしている。これは、「ロカボ」という用語の登録商標を取得している食・楽・健康協会が提唱する定義にのっとったものだ。同会の定義によると、1食あたりの糖質量20~40g、間食の糖質量10gで、1日に70~130gほどが適正な糖質量とされている。

発売されたロカボーノは全量で10g以下なので、「ロカボ」の定義に当てはまるわけだ。ただし、あくまで間食の代わりに同商品のみをとる場合に限る。スイーツを食べながらゴクゴク飲んでは、ロカボではなくなってしまうので注意しなければならない。

実際のところ、甘いのか甘くないのか

では、「ボーノ」(おいしい)の観点で新商品を見るとどうだろうか。

試飲した乃木坂46の3人からは、「おいしい、甘さがしっかりしているのにスッキリ」「おやつ感覚で飲める」「低糖質ということにこだわらず好きになれる」「ゴクゴク飲める」などの感想が聞かれた。おいしさ(=甘さ)がありつつ、後味がスッキリしていて量も多いため、夏場に合うことなどが強調されていることがわかる。

白石麻衣さんは、「おやつ感覚で飲むのもいいのでは」と感想を語った

実際にカフェラテを試飲してみると、スイーツのように甘いというよりは、どちらかというと甘さ控えめの印象を受けた。またカフェラテでは、後口に苦みが残ってしまう場合もあるが、同商品では後口がスッキリしている。430ml全ては飲みきれなかったが、乳飲料と言ってもサラッとしているので、暑い日などなら、いっぺんに飲めるかもしれない。

糖質を抑えながらもきちんと甘みを出せる理由は、原材料名を見るとわかる。「糖質オフ」を売りにするお菓子などと同様に、甘味料によって甘さを加えてあるためだ。もっとも、明治の商品で言うと「白のひととき珈琲」も、原材料名には砂糖が記載されておらず、炭水化物量(糖質量)は100mlあたり5.5gとなっている。

実はカフェラテの材料となる牛乳にも糖質が含まれている。牛乳の糖質も抑えなければならないため、甘くクリーミーな味を出すのは想像以上に難しいのかもしれない。

日本人は糖質をとりすぎている

日本人は炭水化物を「主食」とする食習慣のため、1日の糖質摂取量がもともと多い。例えば、ランチを「おにぎり2個、野菜ジュース」などで軽く済ませるということはよくあるだろう。しかしこれでも、1食で糖質100gを摂ってしまっている。このような状況もあり、日本人は一般的に、1日に300gの糖質を摂っていると言われている。

それに加えて、「食後に甘いものがなければ我慢できない」「疲れると甘いものを食べたくなる」などと、甘いものを欲する人も多い。たまにならいいが、習慣的に食べ続けると、明らかな糖質過多となってしまうのだ。こうした習慣を見直したい人は、糖質オフのスイーツなどを適宜利用するのもよいかもしれない。

明治では今回、飲料の他にも同じブランドでカスタードプリンを同時発売している。ロカボは「これからまだまだ伸びてくる分野」(守屋氏)と期待をかけており、今回の商品が売れれば、今後も展開を広げていくとしている。

いずれにせよ、低糖質ブームは外食を含め飲食業界全体に広がっている潮流だ。ロカボ競争は今後も過熱していくことが予想される。一方で消費者は、何しろ自分の健康に関係することであるから、ブームにただ流されるのではなく、「ロカボとは何か」という知識をしっかり持っておくことが重要だろう。

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

何がゴーンに起こったか? 日産で発覚した不正と権力集中の経緯

2018.11.20

ゴーン氏による3つの重大な不正とは

不正は「ゴーン統治の負の遺産」と西川社長

ゴーン不在でアライアンスの今後は

カルロス・ゴーン氏が日産自動車で働いた不正が発覚し、東京地検特捜部に逮捕される事態となった。企業再生の旗手ともてはやされた豪腕経営者は、自らが代表取締役会長を務める会社の資金を私的に使うなどの理由で失墜してしまった。なぜ、このような不正が起こったのか。その理由を探るため、西川広人(さいかわ・ひろと)社長が出席した日産の記者会見を振り返ってみたい。

日産の西川社長は、11月19日に記者会見を開催した。横浜の日産グローバル本社には200人を超える報道陣が詰め掛け、質疑応答は深更に及んだ

ゴーン依存から抜け出すチャンス?

西川社長の説明によると、ゴーン氏が日産で働いた不正は「開示される自らの報酬を少なく見せるため、実際より少なく有価証券報告書に記載」「目的を偽り、私的な目的で日産の投資資金を支出」「私的な目的で日産の経費を支出」の3つ。内部通報を受けて数カ月間の調査を行った結果、不正が判明したという。不正の首謀者はゴーン氏と同氏側近のグレッグ・ケリー代表取締役の2人。11月22日には取締役会を招集し、不正を働いた2人の職を解くことを提案するという。

会見で西川社長は、本件について「残念というより、それをはるかに超えて、強い憤りというか、私としては落胆が強い」との感想を述べた。不正の具体的な経緯や内容については、検察当局の捜査が進行中であるため、詳細には説明できないという。「約100億円の報酬で約50億円しか申告していないとすると、消えた50億円を日産ではどのように処理したのか」という記者からの質問に対しても、「今の段階では」回答できないとして明言を避けた。

この問題は日産の、ひいてはルノーと三菱自動車工業を含むアライアンスの今後に、どのような影響を及ぼすのか。「将来に向けては、極端に特定の個人に依存した状態から抜け出して、サステイナブルな体制を目指すべく、よい機会になると認識している」というのが西川社長の言葉だ。

検察当局の捜査が進行中で、不正の内容については多くを語れないとした西川氏だが、一刻も早く自らの言葉で状況を伝えたいという理由から、このタイミングで記者会見を開催したという

ルノーと日産のCEO兼務が権力肥大の温床に

逮捕の時点で、日産と三菱自動車では会長、ルノーでは会長兼CEOを務めていたゴーン氏には、西川社長が「極端」と表現するほど、権力が集中していた。なぜ、このような体制となったのか。「長い間に、徐々に形成されたということ。それ以上に言いようがない」とした西川社長だったが、1つの要因として「ルノーと日産のCEOを兼務した時期が長かった」点を指摘し、「このやり方は、少し無理があった」と述懐した。

業績不振の日産にルノーから乗り込んだゴーン氏は、日産を立て直し、2005年にはルノーのCEOにも就任して、両社のトップに立った。その当時を西川社長は、「当たり前に、日産を率いるゴーンさんが、ルノーのCEOをやるのはいいことじゃないかと考えて、あまり議論しなかった。どうなるかについては、日産としても、十分に分かっていなかった」と振り返る。

誰かに権力が集中したからといって、その企業で必ずしも不正が起こるとは限らないし、権力を持ちつつ、公正な企業経営を行っている人もたくさんいる。そう語った西川氏ではあったが、今回の不正については「長年にわたるゴーン統治の負の遺産」であり、「権力の集中が1つの誘引となった」と結論づけた。経営陣の1人でありながら、ゴーン氏をコントロールする役割を果たせなかった責任については、「ガバナンスで猛省すべきところはあるが、事態を沈静化して、会社を正常な状態にする必要もある。やることは山積している」とする。

権力者が去った日産は今後、どのような企業になっていくのか

内部通報によりゴーン氏が日産を去るという構図は、クーデターに見えなくもない。不正が日産ブランドに与える負の影響は計り知れないが、これを機に、有機的で透明性の高い企業統治の在り方を追求できるかどうかが、日産とアライアンスの今後を左右しそうだ。ゴーン不在の新生日産にとって、真の実力を問われる局面になる。

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

「食事に合う」缶チューハイをつくってしまったストロングゼロの仕掛け

2018.11.20

サントリー「ストロングゼロ」の新商品が11月20日より発売

「食事に合う」を押し続けた広告展開の狙い

-196℃製法は居酒屋の「不味い」チューハイから誕生?

サントリーの缶チューハイ「-196℃ ストロングゼロ」という商品に、どのような印象を持っているだろうか?

飲みやすい、度数が高い、お手頃価格――。さまざまなイメージを想起することかと思うが、サントリーの打ち出すメッセージは、一貫して「食事に合う」だ。特に、「唐揚げとよく合う」という点を全面に押し出した広告を見たことがある、という人も多いのではないだろうか。

確かに、味そのものを広告で伝えるのは難しいし、度数が高いからお得に酔えるとお茶の間に出すのはなんだか気が引けるのも想像できる。とはいえ、コーンポタージュ味のガリガリ君くらいディープなイメージになりかねない「食事に合う」缶チューハイというメッセージも、かなりの勇気が要ったのではないだろうか。

なんで缶チューハイが食事に合うなんて言ってるの? サントリー商品開発センター(神奈川県・川崎市)で聞いてきた

居酒屋の「美味しくない」チューハイがキッカケに

そもそも、ストロングゼロのきちんとした商品名で記載される「-196℃」とは何だろう。これは、果実などを-196℃で瞬間凍結し、パウダー状に微粉砕したものをアルコールに浸漬してチューハイに仕上げるという、サントリー独自の「-196℃製法」を意味するもの。

ストロングゼロの開発に携わるサントリースピリッツ商品開発研究部の藤原裕之氏によると、この製法が誕生したキッカケは、居酒屋での「美味しくないチューハイ」にあったのだという。

「居酒屋で飲む“生絞りチューハイ”って、美味しいですよね。でもある日、レモンは入っているのに、全然美味しくないチューハイがあったんです。なぜ同じ組み合わせなのに、味が変わるのか。それは“自分でレモンを絞る・絞らない”の違いにあったんです」(藤原氏)

「-196℃」製法、誕生のキッカケは居酒屋にあった

つまり、美味しさの要因は「手についたレモンのフレッシュな香り」にある、というのだ。

そこで、「レモンを、丸まる1つ使ったチューハイを作りたい」というコンセプトのもと、「果実」だけではなく、「果皮」に含まれる香り・美味しさ成分まで余すことなく作る製法として、果実を瞬間冷凍し、まるごと砕いてお酒に入れる「-196℃製法」を開発した。同じようなコンセプトのチューハイは他社でも見られるが、この製法はサントリーの特許技術だ。

こちらは「-196℃製法」を再現した実験。写真は液体窒素を容器に流し込んでいるところ
ちなみに、液体窒素の中に花を入れると、すぐに凍ってしまう。軽く握っただけでパラパラと粉々に砕ける
レモンを数十秒いれると、こちらも完全に凍ってしまった。さすがに素手で砕くのは無理だそうで、本来は機械でクラッシュしてパウダー状にしているそう

市場拡大の追い風に乗り、「食中酒」として存在感増す

余談になるが、ここ最近はストロングゼロを筆頭に、「ストロング系チューハイ」がSNSで異様な広まりを見せている。昨年末には「#ストロングゼロ文学」という大喜利ネタが流行り、今年も「#わたしのストロングゼロ」なるハッシュタグが誕生し、盛り上がった。このあたりの話題に興味のある人は、こちらの記事(「ストロング系チューハイ」、なぜ人気? 愛飲者が理由を分析)も読んでみてほしい。

では、なぜここまでの人気がある商品になったのか。それは、市場全体の盛り上がりをタイミングよく追い風にできたことも大きい。

「RTD(Ready to drink:缶チューハイやカクテルなど、フタを開けてすぐにそのまま飲める飲料のこと)市場は、2007年から、10年連続で伸長しています。この傾向は2018年も継続しており、本年度は1~9月だけで、前年比111%増えています」(藤原氏)

RTD市場・アルコール度数別販売状況。ちなみにサントリーが「-196℃」シリーズを発表したのは2005年、ストロングゼロシリーズが生まれたのが、2009年だ

RTD市場の中でも、特に高アルコール(アルコール8%以上のもの)飲料が市場を牽引する存在になっていて、これらは2012年に市場シェア24%だったところ、2017年には33%にまで伸長している。

高アルコール飲料が伸びている理由は「お得に酔える」ことが求められたからと考えられるが、「経済性のみでここまでの伸びがあるとは思えない」と藤原氏は説明する。

「なぜ、高アルコール飲料を飲む人が増えているのか。我々の見解としては、それは『食』にあると考えています。2015年、2018年の『食事中にRTDを飲んでいる数』を比較すると、ここ3年で約5%伸びていることがわかりました」(藤原氏)

特に40~50代の伸びが大きく、これまで食事中にビールを飲んでいた所を、チューハイに置き換える傾向にあるようだ。スーパードライやプレミアムモルツ、一番搾りといった人気ビ―ルの度数は、5~5.5%。そこから流入した層が、「低アルコールのチューハイでは物足りないから」と、高アルコールのものを選ぶようになっているのかもしれない。

そこでサントリーは、「食事に合う」チューハイという立ち位置を明確にする戦略に動いた。味の改良だけでなく、世の中のニーズの変化にも敏感に反応した結果の、「食事に合う」だったのだ。

「食事に合う」というイメージ訴求を続けてきたサントリー

市場を牽引する「ストロングゼロ」、次の一手

サントリーが初めて「-196℃」の缶チューハイを商品化したのが2005年。それ以降、RTD市場の成長に沿って売り上げを伸ばし続けている。特に、-196℃のラインアップに高アルコールの「ストロングゼロ」を追加してからの成長が顕著だ。市場の成長に沿って、というよりはむしろ同社のイメージ戦略も相まって、「市場を牽引している」ともいえるかもしれない。

「-196℃」シリーズの販売実績。ストロングゼロが誕生したの2009年以降、急激な成長を遂げている

「食事中のお酒にチューハイが選ばれるキッカケとなったのは、『レモン』味のフレーバー。今後もレモンをRTD市場の成長のキードライバーと捉え、力をいれていきたいと考えています」(藤原氏)

既存の人気商品「ストロングゼロ ダブルレモン」に続き、ストロングゼロが次に指す一手も、やはり「レモン」だ。さらにレモンを”マシマシマシ”した、その名も「ストロングゼロ トリプルレモン」で、まだ食事中に缶チューハイを飲んでいない新規層への訴求を目指す。

「-196℃ ストロングゼロ トリプルレモン」は、11月20日より販売開始。価格は350mlが141円、500mlが191円(税抜き)
同社が押し出す「食事と合う」チューハイ。見ているだけで仕事を放棄したくなってくる