今夏発売の「CX-3」から! マツダが新燃費基準にいち早く対応する理由

今夏発売の「CX-3」から! マツダが新燃費基準にいち早く対応する理由

2017.06.10

マツダは、この夏に発売を予定する小型SUV「CX-3」のガソリンエンジン車について、世界統一の燃費試験サイクルであるWorldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle(WLTC)の認可を取得したと発表した。日本国内では、2018年10月以降にWLTCによる燃費表示が義務化される予定だが、マツダはなぜ、前倒しでの対応に踏み切ったのか。

コンパクトSUVの「CX-3」にガソリンエンジン車が登場。新しい燃費基準「WLTC」で認可を取得した

WLTCでカタログ燃費と実用燃費の差が縮まる?

WLTCとは、国際連合の自動車基準調和フォーラムによって成立した乗用車などの国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP:Worldwide-harmonized Light vehicles Test Procedure)に沿った排ガスと燃費の表示方法である。

日本国内では現在、排ガス浄化性能と燃費値について、「JC08モード」に従って認可されている。JC08モードとWLTCでは燃費測定方法にさまざまな違いがあるのだが、その1つがコールドスタートとホットスタートの比率だ。

JC08モードでは、エンジンが止まった状態からクルマを始動させて(コールドスタートで)測る数値と、すでに走行を始めてエンジンが温まった状態で(ホットスタートで)測る数値の双方を一定の割合(コールド比率25%)で使用する。一方、WLTCではエンジンが冷えた状態からの計測が100%となる。コールドスタートの場合、排ガス浄化触媒を働かせるための温度上昇に燃料を消費するため、ホットスタートよりも燃費測定の結果が悪くなる。

WLTCではこのほか、平均車速の向上、アイドリング時間比率の減少、車両重量の増加などの変更が生じるため、全体的な燃費性能の評価がJC08モード値より厳しくなる傾向が考えられる。実際、マツダがCX-3のガソリンエンジン車で示した例でも、JC08モードに比べWLTCの方が6~8%ほど燃費値が悪くなっている。

マツダは2010年10月の「SKYACTIV」発表のときから、原理原則に基づいた新車開発に大きく舵を切った。SKYACTIVと名乗る次世代技術は、まずガソリンエンジンで導入され、以後はディーゼルエンジンやトランスミッション、車体、シャシー開発においても導入が図られた。また、その技術を適正価格で実用化し市販するため、モノづくり革新として工場での生産方式まで改革を行ってきた。

「SKYACTIV TECHNOLOGY」を取り入れて誕生したマツダの新世代商品群

SKYACTIVの中でも象徴的なのは、ガソリンエンジンの高効率化へ向けた取り組みである。エンジン効率の基本である圧縮比に注目し、これを従来以上に高めることで高効率化を進めた。それにより、ドイツを発端とする、小排気量エンジンに過給機を装備して低燃費と高出力を両立させるダウンサイジングに対抗し、自然吸気エンジンのまま、低燃費と高出力を両立する道を歩んできた。なおかつそれを、レギュラーガソリンで達成している。

低燃費・高出力の実現へ何を重視するか

ダウンサイジング過給エンジンとは、まず排気量を小さくすることで燃料消費を下げ、不足する出力は過給で補うという手法だ。したがって、過給器が作動するまでは小排気量エンジンの出力しか得られず、結果、運転者は余計にアクセルペダルを踏むことになり、実用域での燃費との間で開きが生じる傾向にある。また欧州は、国内よりガソリンのオクタン価が高いため、日本で使用するにはプレミアムガソリンを給油する必要がある。

一方、マツダが取り組んでいる、自然吸気エンジンでありながら根本的な圧縮比を高める方式は、十分な排気量を備えているため、運転者がアクセルペダルを踏み始めたところから適切な力が発生し、必要以上にペダルを踏み込ませないようにする。その上で、エンジン自体の効率の高さにより低燃費を実現する。したがって、実用燃費との差が少ないというのが、マツダ独自の燃費計測結果からも明らかにされている。

低燃費と高出力の両立において、何を優先するかという発想の違いがそこにある。そしてマツダは、エンジンそのものの高効率化に重心を置き、カタログ諸元での数値競争ではなく、実用性能に重きを置いた新車開発を続けている。なおかつ、より安価なレギュラーガソリンでの利用にこだわる。ただし、カタログなどでの表面に出る数値の比較が難しいため、営業政策上はなかなか強みを消費者に示しにくい面があった。

そこに現れたのが、WLTCである。

実用燃費へのこだわりは実を結ぶか

三菱自動車工業の燃費不正問題や、スズキの燃費計測における指定方法以外での抵抗値の算出など、2016年に噴出した燃費問題を受けて、国土交通省は国際的な指標となるWLTCの導入を検討してきた。そして、2018年10月の義務化が定まって間もなく、マツダは他社に先駆けてWLTCによる燃費表示を導入し、話題を得たことになる。

原理原則を見極め、何が理にかなっているかを追求することで課題解決することを、マツダはSKYACTIVで行ってきた。それにより、単にカタログ上のモード燃費値で他社と競うのではなく、実用燃費で顧客に利点をもたらす開発を続けてきたのだが、そこを単純明快に説明しきれずにきた。それが、他社に先駆けてWLTCに対応し、実用燃費により近い燃費表示を採用することへと踏み切った背景といえるのではないだろうか。

一言では説明できない商品改良の数々

本質を極める開発のやり方は、「G-ベクタリング コントロール」という姿勢制御の採用でも見られる。これは、運転技量の高い人がクルマの前後の荷重移動(アクセルのオンオフやブレーキなどで行う)を利用して姿勢制御を行っている操作を、電子制御による出力調整で一般の運転者が無意識のうちに実現できるようにした機能である。G-ベクタリングにより直進安定性が高まったり、カーブでの旋回が的確かつ安定したものなったりする。

G-ベクタリングをはじめ、さまざまな技術を採用しているマツダの新世代商品群だが、一言では説明しにくい要素も多い(画像は「CX-5」)

ほかにも、新世代商品群に用いられる新開発のプラットフォーム開発においてマツダは、アクセルとブレーキのペダル配置を適正化し、運転しやすく、かつペダルの踏み間違いを起こしにくい運転姿勢を追求してきた。これにより、運転支援機能の追加装備などと合わせた効果として、ペダルの踏み間違いによる死傷事故件数を、旧型車に比べ86%も改善している。

しかしそれらも、詳しく説明すれば消費者に理解が届くだろうが、一言では表現しにくいモノづくりであった。

新たな商品性としての燃費表示

一目瞭然の新しい機能を取り付けることや、性能差という数値で商品性を訴える手法は、各自動車メーカーが永年にわたり続けてきたことだ。

それに対して、マツダのSKYACTIVやG-ベクタリング、あるいはペダル配置などは、説明を受けなければなかなか気づきにくい商品性の向上であり、営業促進的には訴求点を見つけにくい事柄である。とはいえ、手にした消費者にとっては嬉しい機能であり、カタログ値に近い燃費を実用上得られたり、より安心して運転したりできれば、マツダ車を買って良かったとやがて実感できるだろう。

そうした一目見ただけではわかりにくく、原理原則に基づき、消費者にとっての価値を第一とした物づくりを、「魂動デザイン」という見栄えで飾り、人目を集めたのが今のマツダ車である。そこにもう1つ、他社にさきがけ、いち早く実用燃費に近いカタログ燃費値の表示になると期待されるWLTCの認可取得が、分かりやすい商品性として加わることになる。

マツダは新世代商品群の次に投入する「次世代商品群」を準備中。JC08モードに比べ、実用燃費の良さを示しやすいWLTCの導入は、次世代商品群を広くアピールしたいマツダにとってプラス材料となるかもしれない

WLTCはCX-3の“売りもの”になるか

WLTCは実用燃費により近い数値が示されるとともに、市街地/郊外/高速という3つの場面に応じた燃費値も公表される。ことに日本においては、クルマの使われ方は多様であり、こうした利用形態に応じた燃費表示は、各自の利用の仕方に適したクルマ選びの参考にもなっていくはずだ。

WLTCを採用する第1弾となるCX-3は、実はこれまでディーゼルエンジン車のみの販売であった。マツダが、ガソリンエンジンだけでなくディーゼルエンジンの魅力も訴え続けてきたのは事実だが、なぜCX-3だけディーゼルエンジンしか選択肢がなかったのか、そこは理解しがたい点だった。

発売から2年以上を経て、ようやくCX-3にガソリンエンジン車を加える時、WLTCの話題が営業的に一役買うことは間違いないだろう。

マツダの実直なクルマづくりがブランドの礎を築いていく過程で、魂動デザインという見栄えの分かりやすさと共に、こうした的を射た営業施策を採り入れることもまた、企業経営の妙といえるだろう。

なぜTBSラジオは「スペシャルウィーク」をやめるのか

なぜTBSラジオは「スペシャルウィーク」をやめるのか

2018.12.17

聴取率争いに自ら終止符? TBSラジオの決断

ラジコの普及で重要性を増すリアルタイムの聴取者数

「ノンリスナーのリスナー化」がラジオ業界の至上命題

TBSラジオが「スペシャルウィーク」をやめる――。11月29日(木)深夜の「木曜JUNK おぎやはぎのメガネびいき」(毎週木曜深夜25時からTBSラジオで生放送)でこの件が話題になった時は、初耳だったので驚いた。なぜ、こういう決断に至ったのか。TBSラジオのスペシャルウィークは今後、どうなるのか。TBSラジオの三村孝成社長に聞いた話も交えてお伝えしたい。

TBSラジオは12月8日(土)、AM波を送信している戸田送信所(埼玉県戸田市)の使用電力を再生可能エネルギーに切り替え、「ナイツのちゃきちゃき大放送」(毎週土曜日、朝9時から午後1時までの生ワイド番組)内でセレモニーを実施。この機会を捉え、TBSラジオの三村社長(左端)に話を聞いた

ラジオの「スペシャルウィーク」とは何か

本題に入る前に、まず、ラジオのスペシャルウィークとは何かをおさらいしておきたい。

スペシャルウィークと密接に関係するのがラジオの「聴取率」だ。これはビデオリサーチという会社が調べているもので、調査は首都圏、関西圏、中京圏の3カ所でアンケートを実施して行う。

そのうち、首都圏の調査を取り上げて中身を詳しく見ていきたい。まず、調査の対象エリアは東京駅を中心とする半径35キロ圏内となっている。対象者は12歳~69歳の男女個人、標本数はおよそ3,000人。調査回数は1年に6回(偶数月)で、その調査月のうち1週間を「聴取率調査週間」に設定し、「その期間中にラジオを聴いたか」「どんな番組を聴いたか」といったことをアンケートで調べて聴取率を算出する。

つまり、ラジオの聴取率というのは、首都圏でいえば、年に6回の「聴取率調査週間」の間に、アンケート調査を受けた人が、ラジオを聴いていたかどうかによって決まる。1分ごとの数字をはじき出すテレビの「視聴率」とは、かなり性格の違う指標だということが分かる。

こういう調査方法であることから、ラジオ局は聴取率調査週間に合わせて、通常放送とは違う企画、通常放送とは違うパーソナリティーの起用、リスナーへのプレゼント企画、豪華ゲストの起用といった特別な施策を実施する。これがスペシャルウィークだ。

約150mのアンテナがそびえ立つTBSラジオ戸田送信所。1,900万戸にAM波を届けるTBSラジオの基幹送信所で、使用電力は月間11万キロワットだ。再生可能エネルギーは「みんな電力株式会社」が供給する。電力は新潟県上越市の小規模水力発電施設などから調達する

ラジオ局によって呼称は異なるかもしれないが、聴取率調査週間をスペシャルウィークと位置づけ、特別なキャンペーンを展開したり、番組の内容を変えたりする手法は業界では一般的だ。

そんな中、TBSラジオは、この調査期間をスペシャルウィークと呼称することをやめると宣言した。その期間中に、局を挙げて特別なキャンペーンを打つことも、今後はしないという。つまり、聴取率を上げるために調査週間を狙って特別企画を展開するのはやめて、今後は時期を自ら考えて特別な取り組みを行うという態度を鮮明にしたのだ。

なぜ、こういう決断をしたのか。TBSラジオは17年4カ月の間、聴取率で業界トップを走り続けているにも関わらずだ。

聴取率トップでも放送収入が上がらない現状

決断の背景として、まず注目したいのは、聴取率で業界トップのTBSラジオでさえ放送収入が上がっていないというラジオ業界の現状だ。業界全体で見ても、広告収入は25年間、ずっと下がり続けている。

それに、ラジオの聴取率も過去に比べれば低迷している。前述したビデオリサーチの調査によれば、2018年10月の首都圏の「全局個人聴取率」(12~69歳、男女、週平均)は5.2%。この数字、1990年代には9%くらいあったそうだ。

スペシャルウィークに注力した結果、聴取率で業界トップに輝いたとしても、収入は上がらないし、ラジオを聞く人も増えない。それならば、慣習に固執する必要もない。これがTBSラジオの判断なのだろう。

確かに、普段はラジオを聴かない人(ノンリスナー)が、スペシャルウィークをきっかけに聴くように(リスナーに)なるかどうかは疑問だ。

もとからのラジオリスナーであれば、何らかの特別企画やキャンペーンに興味を持った時、ラジオをつけるなり「ラジコ」(radiko、スマホアプリやPCでラジオが聴ける)を使うなりして、番組を聴くかもしれない。しかし、ノンリスナーであり、ラジオの受信デバイスすら持っていないような人たちが、これを機にラジオをわざわざ買うかどうかは微妙だ。ラジコならハードルは低そうだが、三村社長は「今の時代って、アプリをダウンロードしてもらうのもすごく大変じゃないですか」と話す。

キャンペーンは時期が大事! 今後のTBSラジオは独自展開

スペシャルウィークに他局と足並みをそろえ、聴取率争いのために力を使うのではなく、ノンリスナーをリスナー化するために知恵を絞りたい。それがTBSラジオの考えらしい。

ラジオ業界の至上命題は「ノンリスナーのリスナー化」と語ったTBSラジオの三村社長

特別なキャンペーンを展開するにしても、聴取率調査週間より効果的なタイミングは確かにあるかもしれない。三村社長の考えはこうだ。

「ラジオを聴かなくなる理由には、例えば引越しや転勤などがあります。住む場所が変わって好きな番組が聴けなくなったり、ライフスタイルが変わってしまったりして、聴かなくなるパターンです。例えば、大学生で時間に余裕のあった人が、社会人になるとか。引越しとかライフスタイルの変化が多い時期というのは、ある程度は決まっていますから、そういう時にこそ、キャンペーンを張るという方法はあるのかなと思っています」

つまり、聴取率調査週間を気にしなければ、キャンペーンや特別企画が流動的に実施できるということだ。例えば、3月は奇数月で聴取率調査はないが、ノンリスナーに訴求するには適した時期かもしれない。

また、特別企画や豪華ゲスト起用のタイミングは個別の番組で決めてもいい。「私も、企画をやっちゃいけないといっているわけではないんですよ(笑)。効果が出そうな時に、どんどん企画をやってもらいたい。それが、たまたま聴取率調査週間なのであれば、その時にやってもいいわけだし」というのが三村社長の考えだ。

TBSラジオは機を見て特別企画を仕掛ける流動性を手に入れた

TBSラジオはスペシャルウィークだけを特別視するのではなく、「毎日がスペシャル」の気持ちで通常放送に取り組みつつ、ノンリスナーをリスナー化するための施策を打ち出していく。そういう方針を明確にしたわけだ。

重視するのは「ラジコ」のリアルタイム情報

とはいえ、聴取率はラジオ局にとって、ほぼ唯一の指標だったはずだ。これからTBSラジオは、何を参考にして番組づくりに取り組むのか。三村社長はラジコのデータを重要視する。

「聴取率を調査する目的は2つあって、1つは番組編成を考えるのに使うマーケティングデータを得るためです。番組の編成が、ちゃんと効果を出しているかどうか、リスナーに受け入れられているかどうか、それぞれの番組の企画や演出が、リスナーに評価されているかどうか。それらを測る指標が聴取率でした」

「ただ、その点に関しては、マーケティングデータといいながら、52週(1年間)のうち6週間しか調査していない数字ですし、調査週から約1カ月遅れて結果が分かるというのが実情でした。一方、ラジコのデータは毎日、リアルタイムで確認することができます」

おそらく、世の中でラジオを聴いている人の割合でいえば、ラジコよりもラジオ受信機を使っている人の方がまだまだ多い。しかし、ラジコであればラジオ局側は、リアルタイムでリスナーの実数が把握できる。このデータの方が、マーケティングデータとしては有用だと判断したようだ。

「もう、ラジコも始まって9年目です。ラジコの数字が動けば、聴取率も動くというのは体感しています。ラジコの聴取人数が増えれば、基本的には聴取率も上がるんです」

ラジコで毎日、リアルタイムで聴取人数が把握できて、そのデータを重視するというのであれば、スペシャルウィークに的を絞った番組づくりをしていていいはずがない。通常放送がいかに面白く、リスナーをひきつけているかの方がはるかに重要になる。実際のところ、TBSラジオの番組製作陣も、すでにラジコの数字を参考にしているらしい。

ラジコの聴取人数と聴取率はほぼ連動しているというのがTBSラジオの読みだ

聴取率を測るもう1つの目的は、営業データとして利用するためだという。

「分かりやすくいうと、広告主が宣伝費を出しますよね、その費用対効果を測るために聴取率を使うんです。これはテレビの視聴率と似ています。この点については今後、今のままでいいのかどうか、業界で議論していこうと思ってます」

リスナーの奪い合いはもはや無意味?

スペシャルウィークをやめるというTBSラジオの決断には、賛否両論があるかもしれない。しかし、スペシャルウィークで各局がゲストの豪華さや企画の面白さを競い合い、ライバル局のリスナーを奪い合うという従来の構図だと、既存のラジオリスナーが各局の間を移動するだけで、新規リスナーの数は増えないのだとすれば、納得できる部分は大いにある。

また、ラジオ局同士が聴取率争いをする必然性は、ラジコで「タイムフリー」というサービスが始まった今、かなり薄れているような気もする。この機能を使うと、全てのラジオ番組を、放送後1週間以内であれば、後からさかのぼって聴くことができるからだ。

例えば、放送時間が重なっているTBSラジオの「JUNK」とニッポン放送の「オールナイトニッポン」を両方とも聴くことは、今となってはとても簡単なことだ。録音機材を用意する必要すらない。どちらかをリアルタイムで聴いて、もう一方を後からタイムフリーで聴いてもいいし、どちらもタイムフリーで後から聴いたって問題ないわけだ。この点を踏まえると、もはやラジオ業界には、「裏番組」という概念すらなくなっているようにも思えてくる。

なぜ業界トップのTBSラジオが率先して変わるのか

TBSラジオは長年の間、聴取率で業界トップを走ってきたリーディングカンパニーだ。そのTBSラジオが、「スペシャルウィークをやめる」「ナイター中継をやめ、同時間帯を通常の番組(新番組を含む)に充てる」「ポッドキャスト配信TBSラジオクラウドでの配信に切り替える」など、率先して新しいことに挑戦するのはなぜなのか。賛否両論があるのは分かりきっているにも関わらず、こういった決断をできる理由が知りたかったので、三村社長に聞いてみた。

「前任の入江(TBSラジオの前の社長で、現在は会長の入江清彦さん)の時から、数々の改革をスタートさせていました。改革といっても、単に変えればいいという話ではなくて、一番の目的は新規リスナーを獲得することであり、パイ(ラジオリスナー自体の数)を大きくすることです。そのためには、リーディングカンパニーが率先して変わらなければ、業界も変わらないと思うんです」

「(パイが大きくなった時に)TBSラジオだけを聞く人が増えるということはありません。ラジオ受信機もラジコも、コミュニティFMをのぞけば、NHKを含め全ての局が聴けるわけですから。ラジオメディアそのものとして、ノンリスナーをリスナー化するのが最も大事なことですし、メディアビジネスとしては、自分達だけ得をしようというのはありえません。ただ、パイが大きくなれば、シェアが変わらなかったとしても、結果としてTBSラジオリスナーは増えますよね」

ノンリスナーのリスナー化は難題だが、これを成し遂げられなければラジオ業界に明るい未来はない。これを成し遂げるため、TBSラジオは挑戦するし、変わってもいくということなのだろう。

賛否両論が予想される決断を率先して下すのは、TBSラジオにリーティングカンパニーとしての自負があるからだ

最後に、リスナーとして気になるのは、TBSラジオのスペシャルウィークで楽しみにしていた各番組の特別企画が、今後、聴けなくなる(あるいは、頻度が少なくなる)のではないか、という点だ。この懸念をぶつけてみると、TBSラジオ編成局の野上知弘さんからは「これまでもそうだったんですけど、いいゲストはいつでも入れればいいということなんです」との答えが返ってきた。年に6回かどうかは別にしても、特別な企画やゲストの起用は今後も続くとみて間違いなさそうだ。

ちなみに、2018年12月10日~16日までの聴取率調査週間で、他局がスペシャルウィークを展開する中、TBSラジオの各番組はどんな放送を行っていたのだろうか。自分が聴いた番組のごく一部を振り返ってみると、例えば「火曜JUNK 爆笑問題カーボーイ」(毎週火曜日、深夜25時~27時)には漫才コンビのミキが、「水曜JUNK 山里亮太の不毛な議論」(毎週水曜日、深夜25時~27時)には相方のしずちゃんがそれぞれ出演していた。これらの番組は、「スペシャルウィーク」という言葉こそ使っていなかったものの、普段とは一味違う内容になっていた。

「月曜JUNK 伊集院光 深夜の馬鹿力」(毎週月曜日、深夜25時~27時)は従来(少なくともここ10年くらいは)、スペシャルウィークでも通常放送(フリートークとレギュラーコーナー)を行うスタンスを貫いてきたが、今回の発表を受け、12月10日の放送では冒頭にラジオコントを放送。その後は2018年のフリートークを振り返る「特別企画」を実施した。なんとも伊集院さんらしい対応だ。番組の最後に伊集院さんは、スペシャルウィークをやめるというTBSラジオの決定について「基本的には賛成」との考えを示していた。

「メガネびいき」では従来、12月のスペシャルウィークに実施していた毎年恒例の企画「ダイナマイトエクスタシー」を12月20日(木)に放送すると発表している。こちらは、聴取率調査週間とは時期をずらして特別な企画を打つという点で、新しい取り組みだといえるだろう。

もちろん、これらのTBSラジオの番組は、放送後1週間以内であればラジコのタイムフリーで後からさかのぼって聴ける。世界の主要メディアも注目しているとか、していないとかいう噂のダイナマイトエクスタシーは、今週木曜日の深夜に開催の運びとなる。

公認大会の総賞金は1億円越え! 日本eスポーツ連合の「今年」と「未来」

公認大会の総賞金は1億円越え! 日本eスポーツ連合の「今年」と「未来」

2018.12.14

JeSUが発足初年度の活動総括と来年以降の取り組みについて発表

年間の公認大会は34大会、賞金総額は1億円を超えた

今回ビックカメラが新たなスポンサーに加わることが決定

2019年以降も国際的なeスポーツの取り組みに力を入れるという

12月13日、一般社団法人日本eスポーツ連合(JeSU)は、今年1年の実績と来年に向けた活動について発表する記者説明会を開催。まずは、今年の実績について、岡村秀樹会長から説明が行われた。

JeSU会長 岡村秀樹氏

設立初年度でJeSU公認大会の賞金総額は1億円オーバー

JeSUは今年1月22日に発足し、2月1日から活動を開始。日本におけるeスポーツの振興を目的に活動を進めており、2月に開催した「闘会議2018」では、JeSU認定タイトルの制定とプロライセンスの発行を行った。

岡村氏は「ライセンスの発行によって、賞金付きeスポーツ大会の開催を実施しやすくなりました。設立初年度に行われた公認大会34大会の賞金総額が1億2977万円を記録し、JeSUの活動として、これは成功したと言えるでしょう」と胸を張った。

今年1月に発足し、2月より活動を開始したJeSU
2月に開催した闘会議では16人にプロライセンスを発行。同イベントでは賞金総額2815万円のeスポーツ大会も実施された
JeSUのライセンス認定タイトルは11タイトルまで増えた。公認大会は合計で34大会。賞金総額は1億円を超えた

6月には「アジア競技大会」の国内予選を行い、ジャカルタ パレンバンに3名の選手を派遣。『ウイニングイレブン』部門では、見事、初の金メダリストが誕生した。

9月の「東京ゲームショウ2018」では「e-Sports X」ブースを設置し、フェイエノールトと浦和レッズの『FIFA 18』国際親善マッチをはじめ、さまざまなeスポーツイベントをサポート。そして、11月に台湾で開催された「第10回 eスポーツ ワールドチャンピオンシップ」では、『鉄拳7』の破壊王選手が銀メダルに輝き、デモンストレーション競技として急遽採用となった『モンスターストライク スタジアム』の日本チームは、金・銀メダルを独占する快挙を成し遂げた。

また、上記のような大会開催や国際大会への選手派遣だけでなく、JeSUは国際eスポーツ連盟(IESF)の正規会員登録という実績も残している。

これらJeSUの貢献もあってか、eスポーツという言葉自体の認知度も格段に上がり、「新語・流行語大賞のトップテン入り」や「ヒット商品番付の小結」にも選ばれた。

台湾で行われた「第10回 eスポーツ ワールドチャンピオンシップ」では、『鉄拳7』で破壊王選手が銀メダルを獲得。『モンスト』もデモンストレーション競技に採用された
IESFの正会員加盟も決定。「準加盟で実績を積んでから正会員へ昇格する」というのが一般的なケースであるが、今回日本は異例のスピード加盟を実現した
話題の言葉として「eスポーツ」が認知されつつある
eスポーツは来年の国体の文化プログラムとしても採用された

なお、今回の説明会では、新たにビックカメラが公式スポンサーの仲間入りを果たしたことも発表された。

これまでのスポンサー6社にビックカメラが加わった

闘会議とJAEPOでは日本代表vsアジア代表の国際戦を実施

次に来年、「闘会議2019」と「ジャパン アミューズメント エキスポ(JAEPO)2019」と同時に開催される「eSPORTS国際チャレンジカップ~日本代表vsアジア選抜」について、JeSU副会長の浜村弘一氏から発表があった。

この選抜大会は、JeSUとアジアeスポーツ連盟(AESF)による共同開催で、2団体が承認する4タイトルで対戦する。競技タイトルに選ばれたのは、『ウイニングイレブン 2019』『Counter-Strike:Global Offensive』『ストリートファイターV アーケードエディション』『鉄拳7』。選抜選手や競技方法などは、近日中に発表する予定だ。

JeSU副会長 浜村弘一氏
闘会議2019、JAEPO2019と同時に開催される「eSPORTS国際チャレンジカップ~日本代表VSアジア選抜」。賞金総額は4タイトル合計で1500万円

最後に、地方のeスポーツプレイヤーの育成や支援、イベントの開催などを後押しするための、JeSU地方支部開設について発表された。

まずは、JeSUの前身である日本eスポーツ協会時代の地方支部として機能していた11団体を、JeSUの地方支部として認定。今後も地方支部の数は増やしていく予定だが、早急に事を進めることはせず、実績を積んだ団体に対してじっくりと審査を行い、認定していくとのことだ。

1月21日より活動が開始されるJeSUの地方支部。地方のeスポーツ活性化を後押しする。開設されるのは、北海道eスポーツ連合(金子淳)、山形県eスポーツ連合(成澤五一)、富山県eスポーツ連合(堺谷陽平)、石川県eスポーツ連合(島倉福男)、東京都eスポーツ連合(筧誠一郎)、静岡県eスポーツ連合(山崎智也)、愛知県eスポーツ連合(片桐正大)、大阪府eスポーツ連合(管野辰彦)、兵庫県eスポーツ連合(五島大亮)、岡山県eスポーツ連合(本村哲治)、大分県eスポーツ連合(西村善治)の11支部(1月21日より)。()内は会長名

課題ややるべきことが山積しているJeSUにとっては、まだまだ通過点ですらない状態ではあるが、それでも1年目として十分な成果を上げたのではないだろうか。浜村氏は説明会で「IPホルダーができないことをやっていく」と述べたが、来年以降も国と国の折衝や国への働きかけ、国際大会への進出などに期待したいところだ。