どうなる米・中の自動車業界、日本勢も注視する巨大市場をPwCが分析

どうなる米・中の自動車業界、日本勢も注視する巨大市場をPwCが分析

2017.06.13

PwC Japanグループは6月12日、「2017年上期 世界の自動車産業の現状と展望」と題したセミナーを開催し、自動車産業を専門とするシンクタンクの分析を披露した。日本メーカーにとってドル箱市場といえる米国と、開拓すべき有望市場である中国は特に動向が気になるところ。これらの市場の先行きについてPwCの予測を紹介したい。

世界の生産台数は2019年に1億台を突破

まずは全体の総括を見ていく。PwCのシンクタンクであるPwC Autofactsの分析結果によると、世界の自動車生産台数は2016年実績の9230万台が2019年には1億台を突破する見通し。2023年には1億1200万台の規模に達するという。

2023年までの増加分のうち、66.5%は中国、インド、ASEAN諸国を含む「新興アジア・太平洋」地域が占める。中でも大幅に伸びるのは中国だ。ちなみに、日本の生産台数は同じ期間で20万台ほど減るとのことだった。

世界の生産台数は伸びるが、その大部分は新興市場での増加で、成熟市場はほぼ横ばいだ

販売台数について全体の展望はなかったが、エコカーの販売ついては2023年までの見通しが示された。それによると、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)、燃料電池自動車(FCV)を合わせたエコカーの販売台数は伸び続け、2016年の400万台弱が2023年には1200万台を超えるとの予測だった。この分でいくと、2023年には世界で売れるクルマの11.2%がエコカーになる計算だ。

次に、米国市場を詳しく見てみる。

ピークアウトも依然として巨大な米国市場

米国市場についてPwCは、販売台数は記録更新となった2016年の1750万台がピークであり、今後数年は縮小基調が続くとの見方を示した。この流れは2019年で底を打ち、その後は再び増加に転じて1700万台を超える水準に戻るという。

PwC Autofactsの予測を紹介したPwCあらた有限責任監査法人の手塚謙二氏は、米国市場について1700万台前後が「健全なレベル」との分析を披露。これから数年の縮小基調についても、「低迷」ではなく「サイクリックな(周期性の)下方局面」だと解説した。

リーマンショック後に急回復し、2016年には過去最高を達成した米国の自動車販売台数。1700万台前後のレベルに落ち着くというのがPwCの見方だ

自動車販売の内訳としては、セダン系からピックアップ系(SUVを含むトラックなどの車種)への需要シフトが鮮明だ。米国では原油安を背景にエコカーへの関心が低下しており、ガソリンを多く消費してもスペースの広さやユーティリティー性に魅力があるSUVなどの車種を選ぶ傾向が顕著になっているという。実際のところ、2017年1~5月の販売状況を見ても、ピックアップ系が前期比4.7%の増加であるにも関わらず、セダン系が同11%の減少となり、トータルの販売台数も2%のマイナスに終わっているそうだ。

懸念は在庫の増加と高止まりするインセンティブ

米国市場で気になるのは、在庫の増加とインセンティブの高止まりだ。米国の自動車販売は日本と違い、ディーラーがヤードに在庫を抱え、クルマを買う人は新車に乗って帰るのが一般的。なので、自動車販売が不振に陥ればディーラーの在庫は増えていくことになる。その在庫台数は、2017年1月に2005年以来で初めて400万台を超え、減る気配は見えないという。

在庫台数は近年、増え続けている

インセンティブとはメーカーがディーラーに支払う販売奨励金のことで、値下げの原資などとして使用されるもの。米国では2016年末からインセンティブが上昇し続けており、最近ではクルマ1台あたり3500ドルを超える奨励金が使われているという。販売のペースが落ちれば在庫も増えるので、メーカーは在庫を捌けさせるためにもインセンティブを積み増すという循環だ。インセンティブの増加は、当然ながら自動車販売の収益性を悪化させる。

かつて世界最大の自動車市場だった米国も、販売台数を見ると頭打ちが鮮明だ。それに対して、今や圧倒的な世界一の地位を確立した中国市場の展望はどうだろうか。

中国でもSUVが人気、NEV生産はいまひとつ伸びず

中国では生産台数が右肩上がりに伸び続けており、2016年の2660万台が2023年には3470万台に達する予想となっている。ちなみに、2023年になっても中国には1000万台分の余剰生産能力が残るそうだ。

中国市場の特徴は、これは世界的な潮流でもあるが、SUV系の人気が上がっていることだ。2017年1~2月の累計で、販売台数はSUV系が前期比15.8%の増加。一方、セダンは10.1%、ミニバンは24%の減少になったという。この期間の全セグメントを合わせた販売台数は前期比5%の増加。かつてのような爆発的な伸び率ではないが、堅調に成長している様子がうかがえる。

中国政府は新エネルギー車(NEV、エコカーのこと)の普及を急いでいるが、現時点で同国の生産台数はそれほど多くない。2017年1~3月の実績で見ると、NEVの生産台数は5万8000台。中国全体の自動車生産に対するシェアで言えば3%にとどまる。PwCの予測によると、2023年に中国で生産されるNEVは260万台で、シェアは7.5%となる。

日本メーカーが注力すべき市場は

PwC Autofactsの予測を紹介したPwCあらた有限責任監査法人の手塚謙二氏

中国市場は拡大していく予想だが、ローカル企業が力をつけているし、現時点では独フォルクスワーゲンや米GMに勢いがあり、ここに食い込むのは容易ではない。ドル箱の米国市場は減速気味だ。このような状況を受けて、日本メーカーはどうすべきなのだろうか。PwCの読みでは、今後数年はASEAN市場での取り組みが重要度を増すという。

ASEANは日本メーカーが大きなシェアを握る得意市場。需要は低迷していたが現在は回復基調に入っており、2017年1~4月の累計ではインドネシアで前期比6%、タイで同15.7%、マレーシアで5.8%の販売増となっている。ASEANは輸出拠点でもあり、このエリアの生産台数は2016年の400万台弱が2023年には600万台と1.5倍に拡大する見通し。手塚氏は「日系の牙城であるASEANにおいて、いかにしっかりとしたオペレーションを行い、台数を稼ぐか」が大事になるとの見方を示していた。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。