パナソニック家電成長のカギは“憧れ”へのつなげ方

パナソニック家電成長のカギは“憧れ”へのつなげ方

2017.06.13

パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長(パナソニック代表取締役専務)は、2017年6月12日、滋賀県草津の同カンパニー本社において、2017年度事業方針について説明した。

パナソニック アプライアンス社の本間哲朗社長

国内家電市場におけるパナソニックのシェアは27.5%と、過去30年間で最高となったことを示したほか、創業100周年を迎える2018年度には、売上高2兆8000億円、営業利益率4.5%を目標に掲げ、引き続き、成長戦略を推進する考えを示した。

成長のポイント:プレミアム商品

パナソニックの家電事業の成長戦略のポイントは、国内におけるシェアナンバーワンの維持と、海外事業の拡大にある。そして、それらを支えるのが、プレミアム商品の提案と、現地完結型の企画、開発、製造による地域密着型製品の展開だ。

本間社長も、「地域、国に適合したプレミアム商品提案を通じ、限界利益の向上とともに、日本における新たなマーケティングを展開し、シェアナンバーワンを拡大する一方、海外においては全地域の黒字化を目指し、とくにアジア、中国、インドでは組織能力を向上し、事業成長を加速させる」と語る。

たとえば、プレミアム家電の構成比は、日本では46%、アジアでは38%に、中国では55%に拡大しており、「今後は、インド、欧州にもプレミアム家電を積極的に展開していくことなる」という。

プレミアム家電の定義は、それぞれの国によって異なり、日本の冷蔵庫では400リットル以上、中国ではスマホで制御できる商品といった形になるが、「プレミアム家電の共通的な考え方は、憧れにつながる商品」と位置づけている。

国内においては、白物家電需要の飽和状態もあり、成長率は1%程度を想定しているが、競合メーカーが低迷していることもあり、パナソニックへの集中が見られている環境にあることは見逃せない。

本間社長は、「世界を見渡しても、それぞれの国でトップシェアを持っているローカルメーカーは、日本におけるパナソニック以上のシェアを持っている。そうした観点からみると、日本でシェアを拡大できる余地はまだあると考えている」と語り、「健康家電やフィットネス家電など、様々な提案を通じて日本における家電事業を成長させ、シェアを拡大させる」と意気込む。

だが、シェア拡大戦略には、慎重な姿勢もみせる。

「日本は、収益が高く出せる環境にあるため、シェア拡大を利益計画に盛り込むと、大きな増益を目指した計画になり、甘い立て付けになる。そのため、2017年度以降の営業利益計画には、日本でのシェア拡大は盛り込んでいない」とする。

ちなみに、パナソニックは、2018年度に迎える100周年にあわせた記念モデルについて、8月に第1弾製品を発表する予定だという。

「100周年というのは、内部的なものであり、これを外部に向けて打ち出していくかはまだ決めていない。だが、この節目にあわせて、各事業部に、目が覚めるような中身を持った製品を、ひとつずつ投入できるように要請している」と本間社長は語る。

これらの商品も、日本市場向けのプレミアム商品になることは明らかだ。どんな「目の覚めるような商品」が登場するのかが楽しみだ。

成長のポイント:海外事業の拡大

もうひとつの成長戦略の軸が海外事業である。

パナソニックは、ここ数年、米国および中国からのテレビ事業の撤退により、海外売上げ比率が減少。現在、国内外の比率は54対46となっている。だが、数年後にはこれを逆転させ、海外が半分以上を占める形になることを目指す。つまり、家電事業の成長には、海外事業の拡大が鍵になる。

とくに、アジア、中国は、それぞれAPアジアおよびAP中国を設立。権限と責任を委譲した「前線化」によって、現地主導型の経営体制を確立。この成果がようやく発揮されようとしているところだ。

「アジア、中国では、ラインアップを刷新しているため、これらの地域での収益性が劣るように見えるが、この1年で収益が刈り取れると感じられるところまで到達し、十分な力がついてきたと判断している」2017年度には、アジア、中国において、5%台の営業利益率を目指す考えだ。

中国では、ECサイトを通じた販売が増加していることから、ECサイトと一括商談を行う電商本部を新設。さらに、「旺盛なインバウント需要の影響もあり、パナソニックの理美容商品に対する認知と評価が高まっている状況を捉え、スモール家電を中心としたプレミアム戦略を推進。外資系白物家電ブランドナンバーワンの獲得を目指す」と語る。

ナノイーを搭載したドライヤーをはじめとするスモールアプライアンスも、中国で高い評価を得ており、2万円を超える製品が売れ筋になっているという。

とくに中国では、「軽厨房」ブランドによるスマートキッチン群を、2016年9月から発売。スマホと連動したIoT家電として展開することで、プレミアム比率を高めることに成功している。

「軽厨房シリーズは、来月までに商品が出揃う。冷蔵庫、洗濯機、炊飯器、圧力鍋、ベーカリー、IHグリルがひとつのアプリが操作できるようになっている」とし、「IoT家電は、中国が最も手応えがある。中国では、多くの人が、朝から晩までスマホを手放さない。また、IoT家電に対する価値を感じて、そこに対価を支払っている。中国で成功した商品のなかで、日本でも受け入れられる商品や、そこに価値を感じてもらえる商品があれば、順次、日本にも投入していく」と語った。

また、アジアでは、ベトナム、インドネシア、フィリピンで家電ブームといえる状況に入っていることを指摘。「エアコンが一般消費者の購入できる価格帯に入ってきた。マレーシアのエアコン生産拠点に加えて、新たにタイの生産拠点で、50万台体制でエアコンの生産を開始。さらに、クアラルンプールのアジアデザイン拠点の機能を強化する」などとし、アジアでの体制強化をさらに加速させている。

そのほか、インドでは、地域とAP社の共同責任経営のパナソニック インド アプライアンスを設立。ジャジャールへのR&Dセンターの開設や、バンガロールでのオフショア開発部門の開設に加え、2017年度第4四半期から、インド国内で冷蔵庫工場を年間50万台体制で稼働する計画も明らかにしている。

各地域の収益性と成長性向上のロードマップ

だが、いくつかの課題もある。

ひとつめは、海外事業における収益性と成長性への取り組みだ。

本間社長は、「海外では、一部赤字の地域があり、さらに、パナソニックが弱い領域も多い。海外家電事業の収益性と成長性は、業界水準には見劣りする」と語りながら、「日本では、メジャー家電、スモール家電、エアコン、AVCという4つの柱がある。だが、海外でその体制が確立できているのは、台湾とマレーシアだけである。この4つの柱で事業展開することで、その地域におけるパナソニックブランドの確立につながる。そして、この4つの柱のすべてに強い商品を持っているのは、世界中を見てもパナソニックだけである。今後、どの地域において、どの柱を、どの順番で立てていくのかということを、明確なロードマップとして考えている」と語る。

そして、「2017年度は、一部残っていた海外家電事業の赤字を無くし、地域、国に適合したプレミアム商品の提案を通じて限界利益を向上させたい。家電事業は、文化に寄り添う事業であり、調理家電ならば食文化、洗濯機ならば衣類の文化に沿ったものになる。そこに対して、パナソニックならではのやり方で商品を提案していく」と述べた。

たとえば、インドでは、衣服についたカレーの染みを落とすことができるカレーコースを搭載した洗濯機や、高音質を実現した液晶テレビなどによるプレミアムマーケティングを展開しており、こうした地域ごとのニーズ特性にあわせた商品展開を進める考えだ。

カレーモード搭載の洗濯機

テレビ事業の利益率改善

また、テレビ事業の利益率改善も課題となる。

「テレビ事業は、限界利益率の改善と、2015年度までの構造改革の完了で、利益は良化している」とするものの、ソニーが2016年度実績でテレビ事業の営業利益率5%を達成しており、パナソニックのテレビ事業の利益率はそれを大きく下回る。

本間社長は、「ソニーが、テレビ事業において、営業利益率10%を目指すと宣言したことは感慨深い」と前置きしながら、「パナソニックは、テレビ事業に関しては、具体的な販売目標を掲げるようなビジネスではないと考えている。また、最も大きなコストを占めているパネルを調達するという体制では、5%の営業利益を出すのはたやすいことではない」とする。そして、「全体の経営を考える場合に、そこに高いターゲットを置いて、全体を狂わせては戦略を誤ることにつながりかねない。達成可能な現実的な目標を置いて、毎年、少しずつ良化していけばいいと考えている」と語る。

それにも関わらずテレビ事業は継続する意思を見せる。

「家電の販売プラットフォームを持つ上で、テレビ事業を持つ重要性はある」とし、「家電事業が文化の事業であるのに対して、テレビ事業は文明の事業である。顧客価値を認識してもらうもので、各地域でそれをどう訴求するかが重要だ」とする。

4K有機ELテレビ「ビエラ TH-65EZ1000」

パナソニックが成長戦略のなかにテレビ事業を位置づけていないのは明らかだが、収益改善は当面の課題であることに間違いはない。

BtoB事業の地盤をいかに早く構築できるか

そして、もうひとつの課題が、BtoB事業の地盤づくりだ。

パナソニックの利益拡大において、BtoB事業は重要な鍵になり、本間社長も、「将来において、BtoB事業は高い利益を確保できるビジネスだと考えており、高収益化への推進を加速していきたい」と語る。

だが、現時点では、「地域別販売体制を確立している段階にある」のが実状だ。利益成長に向けた改革として、冷機コンプレッサー事業の本社機能をシンガポールに移転したのもそのひとつだ。

ここでは、M&Aを含めた非連続の成長戦略や、IoTを活用することで事業基盤を強化するといった取り組みにも挑む。増収増益を加速する体制づくりを早期に構築できるかが鍵になる。

2つのリスク

さらに、本間社長は、成長戦略におけるリスク要因として、「2つの課題がある」とし、「鉄やアルミニウムなどの原材料費の高騰による収益性の阻害」、「労働力の逼迫と、それに伴う人件費の増加」をあげる。

こうした外的要因をにらみながら、収益拡大への舵取りを担う必要がある。

本間社長は、「過去2年続けて、すべての事業で増益となった。成長ドライバーは、どれかひとつの事業というよりも、すべての事業を増益させることにある。2017年度もすべての事業で増益を目指す」とする。

アプライアンス社では、非連続投資を行いグローバルな成長を目指す「高成長事業」にエアコン、食品流通、スモール・ビルトインを位置づけたほか、安定的な収益拡大を目指す「安定成長事業」には、洗濯機、冷蔵庫などのメジャー家電や、コンプレッサーなどのデバイスを位置づけ、リスクを最小化し、黒字化の定着を目指す「収益改善事業」には、テレビやデジカメなどのAVCを位置づけている。

パナソニックの家電事業全体では、この2年で営業利益を2倍に拡大してきたが、さらなる利益拡大に向けた一手を、国内外において打つ考えだ。2018年度の創業100周年に向けてのラストスパートがかかりはじめた。

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

安東弘樹のクルマ向上委員会! 第18回

ポルシェの次に買うクルマ? 安東弘樹、ルノー「メガーヌ R.S.」に乗る!

2019.03.27

ルノーの5ドアハッチバック「メガーヌ R.S.」に試乗

やっぱりMT車が好き! 高性能モデルの登場に高まる期待

もしも(好きなように)クルマが買えたなら…安東さんの人生設計

安東弘樹さんに同行した日本自動車輸入組合(JAIA)試乗会も、いよいよ最後の1台となった。残すはルノーの「メガーヌ R.S.」だ。愛車のポルシェ「911 カレラ 4S」から乗り換える候補の1台として、「ある程度は本気で」購入を検討しているというこのクルマを、安東さんはどう評価するのか。

MT車の日本導入を待って購入を検討?

「メガーヌ R.S.」は5ドアハッチバック「メガーヌ」の高性能モデル。「R.S.」はルノーのモータースポーツ活動を担う「ルノー・スポール」の頭文字だ。このクルマについては以前、モータージャーナリストの塩見智さんに試乗してもらったので、詳しくはこちらの記事をご覧いただきたい。

「メガーヌ R.S.」に乗り込んだ安東さん

安東さん(以下、安):(乗り込んですぐ)ドアヒンジは多くの日本車と同じでプレスですね、開ける時に軽い感じがします()。(しばらく走って、高速道路に入りつつ)さすがはFF(前輪駆動車)、急加速すると暴れますね(笑)。

【編集部注】ドアヒンジとはドアとクルマをくっつけている部品のこと。ここの作りによってドア開閉時の重厚感、ひいてはクルマの上質感に差が出ると安東さんは語る。細かいポイントのようだが、ドアヒンジについてはマツダミニの取材でも話題になった。

編集部(以下、編):今回、メガーヌ R.S.に試乗してみたいと思ったのはなぜですか?

:すごく気になっていたクルマなのですが、まだ乗ったことがなかったので、どうしても今回、運転してみたかったんです。今回のクルマはDCT(デュアルクラッチトランスミッション)ですが、MT(マニュアルトランスミッション)車を今、待っている状態です。ただ、急加速した時の“暴れん坊感”を体験してみて、いくら電子的に制御しても、FFには限界があるなとも感じました。じゃじゃ馬を乗りこなす、というところにカタルシスを感じる人もいるとは思いますけど。

「メガーヌ R.S.」のボディサイズは全長4,410mm、全幅1,875mm、全高1,435mm。価格は440万円だ

:MTだったら欲しいクルマですか?

:はい。もうすぐ、MTが日本に導入されるらしいのですが、欲をいえば、「メガーヌ R.S. トロフィー」というグレードを待ちたいです。R.S.は279馬力ですが、トロフィーは300馬力なんで。

:「待ちたい」っていうのは、真剣に購入を検討していて、待ち構えているという感じですか?

:うーん、ある程度は本気で考えているっていう感じでしょうか(笑)。次もポルシェ「911 カレラ 4S」に乗るのが理想ではあるんですけど、それこそ、私の稼ぎ次第というか、買えない可能性もあるので……。今の911は、乗り始めてから10年になりますし、乗り換えたいタイミングではあります。

:その乗り換え候補の1つが、「メガーヌ R.S. トロフィー」だというわけですね。ただ、素人なので分からないんですけど、最近の安東さんの露出ぶりを見ている限り、次もポルシェで大丈夫なんじゃないですか?

:どうでしょうねー、想像もできません(笑)。今回の確定申告で、どのくらいの税金を払わなきゃいけないのかにもよりますし。フリーになって初めての確定申告なので、正直、怖いです。

:この間の「バラいろダンディ」(TOKYO MXで放送中のテレビ番組、安東さんは火曜レギュラー)で、「これから、税理士さんと話をする」っておっしゃってましたもんね(笑)

:いくらくらいの税金になるのか、それによっても変わってきます。ただ、フリーランスになってもうすぐ1年経ちますが、この収入では、新しい911には手が届きません(笑)

:本当ですか?

:今の911と同じように長期ローンを組めば、あるいは……。とは思いたいですが、新しい「911 カレラ 4S」を自分が乗りたい仕様で買うと、税金なども含めた乗り出し価格が2,200万円弱になってしまいます。日々忙しいのですが、薄利多売でやっているので、くどいようですが、本当に現状、購入は難しいです(苦笑)

1台はスポーツカーを所有しておきたいという安東さんだが、次に何を買うのかは将来の収入次第だそう。「メガーヌ R.S.」もMT車が気に入れば候補に入るようだ

:(メガーヌの走行モードを変更して)「レースモード」に設定すると、ESC(横滑り防止装置)がカットになるんだ……。自動ブレーキもオフになりますが、それは当然ですよね。サーキットを走っていて、前走車に近付くたびにブレーキが掛かったら、たまったものではないですから(笑)。このモードに入れても、そんなに乗り心地が硬くならないというか、不快感はないです。

法定速度で走っている限り、レースモードにする意味はあまりないでしょうけど、腕と環境が許せば、滑らせながら走ってみたいですね! MTだったら楽しいだろうなー。あと、パドルシフトは下まで伸びていて欲しいです。乗り始めてから、5~6回は空振りしてますから。

パドルシフトとは、指による操作でクルマのギアを上げ下げできる装置のこと。画像では分かりにくいかもしれないが、ステアリングの後ろに付いている
一般的にパドルシフトの操作部分は縦に長いが、「メガーヌ R.S.」のパドル(赤い十字マークが付いているところ)は上方向に長く、下方向に短い造形になっている。そのため、パドルの下の方を指で操作しようとして、何度か空振りしてしまったと安東さんは話しているのだ

:パドルシフトがステアリング連動式なので、コーナーを曲がっているときの操作も、少しやりにくいですね()。

【編集部注】パドルシフトには、ステアリングに連動して動くものと、ステアリングコラムに固定されているものがある。

:ステアリングと一緒にパドルシフトが動くのと、固定してあるのだと、どちらがいいんですか?

:メルセデスもそうですけど、ドイツ車はステアリングに連動して動く方が主流ですよね。ただ、ステアリングを切って(左右が)逆さまになっている時、パドルシフトの位置も逆になるので、どちらがプラス(ギアを上げる方)だか分からなくなることがあるんですよ。そこが難しいところで、だから「GT-R」(日産自動車)とかも固定式ですし、基本的にラリー用のクルマもコラム固定式ですね。

:ステアリングを切りまくるからですか?

:そうです。だけど、F1などのフォーミュラカーだと、ステアリングにシフトパドルが付いていて連動しますね。なぜなら、ステアリングを切っても最大で半回転ですから、左右の手を持ち替えないので、当然、その方が好都合です。

だから、このクルマ(試乗中のメガーヌ)は、ステアリングを大きく切っている時でも、シフト操作に迷わない事を優先させたんでしょうね。

:山道でヘアピンを抜ける時とかですか?

:そうですね。これ、好みは分かれると思います。

「メガーヌ R.S.」は1.8L直列4気筒16バルブ直噴ターボエンジンに電子制御6速ATのトランスミッションを組み合わせる

:このクルマ、小さいように見えて、幅が1,875mmもあるんですね。

:そう、結構あるんですよ。「Eクラス」(メルセデス・ベンツ)より幅が広い。

:メガーヌって、前のモデルまで3ドア(ハッチバック)が中心だったみたいですね。5ドアになって、見た目とかどうでしょう?

:このデザイン、僕は好きですね。先代よりも好きです。絶妙な“カタマリ感”があって、色もいい。シンプルなのに存在感があるという嬉しいデザインです。

:歴代のメガーヌ R.S.は、ニュルブルクリンクで素晴らしいタイムをたたき出してきたそうですが、そのあたりには惹かれますか?

:そこは、そんなに重視しません。ただ、メーカー同士が競い合ってくれる分にはいいんですけどね。ましてやFFですし、ちゃんと手なずけて走って、技術の革新というか、そういうところでメーカー同士が競い合ってくれているのは悪いことではないと思います。

:ただ、安東さんとしては、走りについては自分で確かめたい?

:そうですね。だから、こっちの方が数字が上だから買う、という感覚はありません。

:安東さんの頭の中にはクルマのスペックがたくさん入っていますけど、数字で比べて買おうというのではなく、ただ、好きだから頭に入っているだけなんですか?

:覚えようとしているんじゃなくて、スペック(諸元)表を見てると、自然に覚えちゃうんですよ。これ(試乗中のメガーヌ)だと、最大出力が279馬力ですよね?

:合ってます。

:それで、205kWじゃなかったでしたっけ?

:ごめんなさい、手元の資料にキロワットまでは書いてきてないです。

:206kWだと、280馬力になるんですけどね。

:……。

「メガーヌ R.S.」の最大出力は279ps(205kW)、最大トルクは390Nmだ。車両重量は1,480キロ

:数字的には見劣りしても、自分がいいと思えば買うというのが、安東さんのクルマ選びということですね。もし、次の911が何らかの理由で買えなかった場合は、メガーヌもアリだと思いましたか?

:MT車に乗ってみないと、何とも言えませんねー。急加速した時の暴れぶりを体験して、FFの限界は感じましたけど、MTなら、もう少し自分で制御できるかもしません。ただ、やっぱり楽しいクルマだなとは思いましたね!

:今回、たくさんの輸入車に乗っていただきましたけど、総評として、心に残ったのは?

:やっぱり、あの加速感も含め、テスラですね。何でも電気で動くので、後席のファルコンドアなんかが壊れたら目も当てられないとは思うんですけど、ただ、インパクトとしては「モデルX」になりますね。

もしも収入が激増したらどんなクルマに乗りたい?

購入を決めたメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」には、何年乗る予定ですか?

:今の「F-PACE」よりも早いペースで走行距離が伸びる可能性があるので、2年で7万キロあたりが見えてくると、乗り換えを考えるかもしれません(※)。まあ、2年後に私の収入がどのくらいになっているかにもよりますけど……。

【編集部注】ジャガーのSUV「F-PACE」とポルシェ「911 カレラ 4S」の2台を所有している安東さんだが、通勤に使っているF-PACEは走行距離が伸びてきている上、大柄なサイズの問題で駐車場を見つけるのが大変なので、これをメルセデス・ベンツ「E220d 4MATIC オールテレイン」に乗り換える。サイズ的に駐車場が見つけやすい分、オールテレインの稼働率はF-PACEよりも高くなることが予想されるので、代替サイクルは早まるかもしれない。オールテレインが納車されるのは2019年5月の予定。その時点で、F-PACEには2年8カ月乗ったことになる。

:もし、収入がものすごく増えたら、所有するクルマの構成はどうしたいんですか?

:やっぱり「911」と、あとは「ヴェラール」(レンジローバー)のディーゼルエンジン車を買って、もう1台は小さいディーゼルエンジンのクルマで、それは「デミオ」(マツダ)なのか「ミニ」なのか分からないんですけど、そんな感じですかね。それか、プジョーの「308 アリュール」か……。

「308 アリュール」って、今までは税制的に中途半端な1.6リッターのディーゼルエンジンを搭載してたんですけど、それが1.5リッターになって、しかも、パワーアップしたんですよ。それに、何が嬉しいって、パドルシフトが付いたんですよ! 今までは上級グレードにしか付いてなかったんですけど。

プジョー「308 Allure」(アリュール)

:なるほど、収入が大幅に増えたら、クルマを2台にしておく必要もないですもんね。駐車場を借りて、3台持ってもいいわけで……。

:駐車場を借りるというか、3台のクルマを入れられる車庫が付いた家に建て替えるのが夢ですね。

:その可能性も、フリーになった今だと、高まってますよね。会社員でいるより、大きく稼げるチャンスがあるわけですから。

:そうですね、可能性は“ゼロ”ではないですね(笑)

:これも「バラいろダンディ」で聞いたような気がするんですけど、ある程度の金額を稼いだら、お仕事はやめるっておっしゃってましたよね? 好きなクルマに乗り続けられて、ご家族も安泰というような金額が貯まったとしたら。

:そうですね(笑)。3億円ほど貯まったら、やめると思います。家族を養えて、子供たちを学校に行かせられて、あとはクルマも、「ヴェイロン」とか「シロン」()が欲しいとは思わないので……。ポルシェのMTと、ヴェラールと、ミニか何かを所有して、スポーツ走行する時はポルシェ。長距離移動の時はヴェラール。そして、都内での仕事や移動の時は、コンパクトなディーゼルモデルか、電気自動車(EV)でもいいかもしれません。

【編集部注】どちらもブガッティのクルマ。1台で何億円もする。

:私の人生として、あと20年は責任があると思うんですよね。ただ、テレビ関係の仕事が続けられるとは思っていません。やっぱり、テレビの仕事って緊張するし、疲れますから(笑)。何より、ずっと私への需要があるとは思えません。

立て続けにクルマに乗った今回の取材も、かなりお疲れになったはずだと思っていたのだが……

他媒体が用意したクルマも含め、計11台の輸入車に立て続けに乗り、JAIA試乗会の取材を終えた安東さん。「仕事は疲れる」と言いつつも、メガーヌから降りるとすぐ、「ばらいろダンディ」の生放送に出演するため、試乗会の拠点となった大磯プリンスホテル(神奈川県)を愛車「F-PACE」で飛び出していった。

安東さんのコラムによれば、今回の取材はさすがにくたびれたものの、愛車を運転して帰ったおかげ(?)で、半蔵門(正確には東京都千代田区麹町)にあるTOKYO MXに到着する頃には、すっかり疲労感がなくなっていたというから驚きだ。

とにかく、多くのクルマに限られた時間で乗ってもらったので、時間配分がうまくいかず、弊紙では紹介しきれなかったクルマもある。具体的にはポルシェ「パナメーラ 4 E ハイブリッド」とBMW「X3 M40d」の2台なのだが、これらも安東さんが試乗を希望したクルマだったことに変わりはない。特に「X3 M40d」については、短時間の試乗ではあったものの、「もっと乗ってみたくなるいいクルマだった」とのコメントがあったことは、ここでお伝えしておきたい。

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メルセデス・ベンツの電動化戦略、「EQC」で本格化

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加速はスポーツカー並み! 航続距離は450キロ

メルセデス・ベンツ初の市販電気自動車(EV)「EQC」が今年、いよいよ登場する。2019年半ば頃の日本導入が噂されているが、一体、どんなクルマに仕上がっているのか。モータージャーナリストの清水和夫さんは以下のように解説する。

メルセデス・ベンツのEV「EQC」

メルセデスの電動化を包括する「EQ」ブランド

メルセデス・ベンツは2018年9月、スウェーデンのストックホルムにおいて、バッテリーだけで走る電気自動車(BEV:Battery Electric Vehicle)「EQC」を正式に発表した。それまでも、各国の国際的なイベントでは、同社の電動モビリティを包括する「EQ」(イーキュー)というサブ・ブランドを発信してはいたが、いよいよ、本格的なメルセデスの電動車両がEQCから始まるのだ。

ここでは混乱を避けるため、電動車両の定義とメルセデスが採用する「EQ」というサブ・ブランドについて説明しておく。

「EQ」とは「電動化」にフォーカスしたメルセデスのサブ・ブランドであり、バッテリーだけで走るBEVを「EQ」、バッテリーとエンジンを組み合わせるプラグイン・ハイブリッドを「EQ Power」、48Vのサブ電源を使うシステムを「EQ Boost」と呼ぶ。

このように、電動車両といっても、バッテリーとモーターだけで走るBEV、エンジン/バッテリー/モーターを組み合わせるプラグイン・ハイブリッド(PHVあるいはPHEVと略す)、あるいは、48Vを使う車両に見られるマイルド・ハイブリッドなど、クルマの在り方は多様化している。「〇〇社は20XX年までに全てのクルマを電動化する」というヘッドラインのニュースが世界中を駆け巡っているが、電動化の中身をきちっと理解する必要があるだろう。メルセデスの場合は「EQ」「EQ Power」「EQ Boost」の名前で整理している。

「EQ」ブランドのクルマたち

EQCは「GLC」相当のSUVをベースとするクルマだ。「Aクラス」相当のセグメントでBEVが登場すれば、「EQA」と呼ぶことになるだろう。

内燃機関はベンツの代名詞、EVはどう作る?

EQCの日本初公開となったイベントは、桜が咲く前の3月初め、メルセデス・ベンツのブランド発信拠点「Mercedes me」(東京・六本木)にて開催された。注目すべきは、メルセデス・ベンツ日本(MBJ)がEQCと家の電気をつなげる「EQハウス」という斬新なコンセプトで同車を発表したこと。EQCは自宅でも充電できるので、家との相性がよい。そこでMBJは、竹中工務店と組んで「EQハウス」という新しいアイディアを提案したのだ。クルマと家が電気でつながることを「V2H」(Vehicle to Home)と呼ぶ。日本では以前から取り組んできたシステムだ。

MBJと竹中工務店は、モビリティとリビングの未来の姿を具現化すべく、六本木の「Mercedes me」に体験施設「EQハウス」を設置した。ちなみに、「EQC」の展示はすでに終了している

ところで、EQCのカットモデルを見た時、面白いことに気がついた。EQCは「Cクラス」ベースのSUV「GLC」をベースとするが、BEVなのでエンジンとギアボックスが存在しない。そのスペースには、パイプ製のケージが設置されているのだ。パイプの内側にはフロントモーターとデフ(デファレンシャルギア)が置かれ、上部にはインバーターが配置されている。リアも同様にモーターとデフでリアアクスルが構成される。

エンジンがなくなる代わりに、「EQC」にはモーターとデフを納めたパイプ製のケージが入っている

バッテリーは床下のフロア内に格納することで重心を低く設定できる。と、ここまでは常識的なパッケージなのだが、衝突安全の剛体として、このパイプ製ケージにはエンジンと同じ強度を持たせてある。つまり、エンジン車と同じく、モジュールでデザインできるモデルベース開発(MBD)を取り入れているのだ。自動車業界で流行の手法は、EQCにも採用されていた。

EQCのボディサイズは全長4,761mm、全幅1,884mm、全高1,624mm、ホイールベース2,873mmとGLCに近いから、シミュレーションしやすい。性能を見ると、前後2つのモーターは合計で最大出力408PS、最大トルク765Nmを発生する。加速性能はV8ターボのエンジン車並みで、停止状態から時速100キロまでの加速は5.1秒と俊足だ。リチウムイオン・バッテリーの容量は80kWh。気になる航続距離は450キロとのアナウンスがあった。

「EQC」のボディサイズは「GLC」に近い。加速はV8ターボエンジン並みだ

EQCの試乗会は2019年5月に開催されるので、それまでは詳細なインプレッションをお届けできないが、スポーツカー並みの加速性能を誇るEQCは単なるBEVではなさそうだ。何か、もっとすごい仕掛けがありそうに思える。試乗会が楽しみになってきた。

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