覇権争いの行方は? 自動運転の“地図づくり”で日本連合が前進

覇権争いの行方は? 自動運転の“地図づくり”で日本連合が前進

2017.06.14

自動運転に使う「高精度3次元地図(ダイナミックマップ)」を作る日本企業連合、ダイナミックマップ基盤企画が、日本全国の高速道路・自動車専用道路を対象とする地図づくりに乗り出す。自動運転用の地図づくりでは、ドイツのヒア(HERE)やオランダのトムトム(TomTom)といった企業が有名だが、日本連合は覇権争いに加われるのだろうか。

日本で自動運転用の地図づくりが動き出す

2018年度までに3万キロ分を整備

ダイナミックマップ基盤企画は三菱電機、ゼンリン、自動車メーカー各社などが出資して2016年6月に立ち上げた。これまではダイナミックマップの実運用に向けたシステム構想を練るなど「企画会社」として活動してきたが、市場のニーズに早急に対応すべきだと判断し、当初の計画よりも前倒しで、実際の地図づくりを進める「事業会社」化を決めた。事業会社化にあたっては産業革新機構などから計37億円の出資を受け入れ、資本総額を40億円に増やす。社名も近く「ダイナミックマップ基盤(DMP)」へと改める。

出資各社が知見・技術を提供する

ダイナミックマップとは、路面情報や構造物などの情報に、交通規制情報、渋滞情報、車両・歩行者の情報などを組み合わせた地図のこと。一般的な地図が「人が読む」ものであるならば、ダイナミックマップは「クルマが読む」地図だといえる。

DMPは今後、国内の高速道路および自動車専用道路の全線(上下線合計3万キロ)のダイナミックマップづくりに取りかかる。費用は約30億円で、作業は2018年度までに完了の予定だ。中長期的には一般道の地図づくりも進める。

さまざまな情報が載るクルマ用の地図

オールジャパンの知見を集約

事業会社化発表の会見に登壇したDMP社長の中島務氏は、同社のバリューは「オールジャパンの知見の集約」だと語った。DMPの事業性については、投資(費用発生)が先行するビジネスなのでしばらくは赤字が続くと見通すが、2020年代の前半には単年度の黒字化を達成したいとの考えを示した。

DMPの先行きを左右するのは、自動車メーカーが実際に自動運転車を商品化するのか、するなら規模(台数)はどの程度か、そしてメーカーはDMPの地図データを選ぶ(買う)のか、といった点だろう。もっと根本的な問題として、メーカーがダイナミックマップに依存しない自動運転車を発売するケースも考えられるわけだが、中島社長はクルマがカメラ・センサーで検地できる情報には限界があるとして、その可能性は「現時点で」低いとの見方を示した。

今回、事業会社化の会見で気になったのは、DMPがヒアとの連携を発表したことだ。日本連合のDMPとヒアは競合関係にあると思ったのだが、両社が連携する真意はどこにあるのだろうか。

共通化で得られるメリット

DMPの中島社長は、ヒアとは「地図の作り方、加工の仕方」について、共通化も視野に入れた協議の開始で合意したという。この部分を共通化すると、どのようなメリットが享受できるのか。中島社長が挙げた例は以下の通りだ。

1.例えば、米国の地図づくりはヒアが先行しているが、DMPとヒアが地図づくりの基本部分を共通化できれば、同国の地図づくりをDMPが改めて行うような二度手間を避けて、ヒアからデータの提供を受けるようなケースも考えられる

2.実際に自動運転車が走る世の中が到来した時、並んで走る2台のクルマが、違う作り方の地図情報をもとに自動運転を行っていると、一方のクルマでは車両位置の検知に1.5mの誤差が生じており、もう一方では誤差がほとんどない、といったケースが発生するかもしれない。こうした、「信用できないクルマが隣を走る」ような可能性を、地図づくりの共通化によって排除できる

ヒアとの調印文書を紹介する中島社長

協調と競争、うまい線引きは可能か

自動運転についてよく耳にするのが、どこまでが「協調領域」で、どこからが「競争領域」かという話だ。DMPとヒアの連携は、ダイナミックマップを作る複数の企業グループが、その「作り方」では協調し、「売り方」で競争するという将来像を示唆するが、その通りに進むかどうかについては疑問も残る。おそらく海外勢はDMPよりも大規模な地図データをすでに保有しているだろうし、地図の作り方について既存の方法を改めたり、修正したりするのも大変だろうからだ。地図づくりでは世界的な協調が広がるのか、それとも覇権を巡る戦いは避けられないのか。まずはDMPとヒアの協議の行方に注目したい。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。