「アイサイト」と電動化の融合がカギ? 究極のスバル車が生まれる条件

「アイサイト」と電動化の融合がカギ? 究極のスバル車が生まれる条件

2017.06.22

スバルの「アイサイト」に「ツーリングアシスト」という新機能が追加された。筆者も体験試乗をしたが、実によくできた機能であり、スバルの言うリアルワールド(現実の交通環境)で安心して利用できる制御に仕上がっていた。新機能の詳細は別のリポートに譲るとして、今回はアイサイトとスバル車の今後について考えてみたい。

新機能「ツーリングアシスト」で進化したスバルの「アイサイト」

画像処理は他者が「追いつけない」水準に

スバルの運転支援の特徴は、フロントウィンドウ上端の中央部に、ステレオカメラと呼ぶ2つのイメージセンサーを搭載し、その情報のみから状況を判断、運転を操作するシステムであることだ。今後、自動運転へ向けてはレーダーなど追加のセンサーを装備する可能性を否定しないが、ともかく、世界の自動車メーカーが運転支援で同様の機能を提供している中、ステレオカメラのみで実現しているのはスバルのみである。

スバルがステレオカメラで強みを持つのは、アイサイトの前身「アクティブ・ドライビング・アシスト(ADA)」の実用化に先立つ1989年から、ステレオカメラにこだわって開発を続けてきたからだ。それは運輸省(現在の国土交通省)が、産官学の関係者による先進安全自動車(ASV:Advanced Safety Vehicle)推進計画の第1期(1991~1995年度)を立ち上げるより前のことで、すでに28年の経験を積んでいる。

長きにわたりスバルが磨いてきたステレオカメラの技術

このように早くから開発に取り組んできたこともあり、スバルは画像認識や画像解析など全てを社内で独自に確立してきた。画像処理に関する技術は、他の自動車メーカーの技術者が「とても追いつけない水準にある」と異口同音に評価するほどだ。

リアルワールド重視は不変

また、リアルワールドを重視する視点もずっと変わらない。例えば危険回避アシストについても、事故が多いのは交差点であり、その低い速度で幅広い視野から危険を察知し、自動ブレーキをかけて事故を回避する機能を、アイサイトはいち早く採り入れた。それはレーダーではなく、ステレオカメラによる広角の視野をいかした成果であった。

2014年にアイサイトはバージョン3(Ver.3)に進化し、ステレオカメラはカラー画像となった。これにより、前を走るクルマのブレーキランプ点灯を認識することが可能となり、車間距離が縮む前に減速する準備を整えられるようになった。レーダーで車間距離を管理する他のシステムに比べ、初動が早くなり、追突を予防するブレーキ操作が急でなくなることから、システムを利用する際の安心感は高まった。

実際にアイサイトを公道上で利用して実感するのは、まさしくクルマも目で前を見てくれているという感触があることだ。前のクルマのみならず、その前や、さらに先のクルマが減速し始めたのを運転者が目で捉えるのと同じように、アイサイトも、減速が必要になるかもしれないと構えるかのような感覚を覚えるのである。

そこに、自分の運転に近いという親近感も生まれる。あるいは、自分よりずっと安全に気を配ってくれているとの信頼も生まれるのだろう。

ステレオカメラで優位性を発揮できる理由

運転するとき、人間は情報の90%を目に頼っている―。そう考えたスバルの技術者たちが、クルマの運転支援や自動運転も、複眼のカメラであるべきという原理原則、根本を貫き通した28年の成果が、アイサイトのツーリングアシストにしっかり反映されているのである。

今回のツーリングアシストでも、カラー画像で認識と解析をするので、車線だけでなく、前のクルマへの追従も可能になっている。そして、車線を優先するのか、前のクルマへの追従を優先するのかといった判断も、ステレオカメラでの画像認識があるからこそ、間違いなく選ぶことができる。

ステレオカメラであれば、人間の眼のように先の先まで見通すことができる

さらに、ツーリングアシストとなって進化した点として注目したいのは、加減速したり、ハンドル操作を始めたりするときの様子が非常に自然であることだ。わざと車線逸脱をさせてみようとハンドルを切ってみると、素早く車線中央へ戻さなければならないため、かなり力強く電動パワーステアリングを機能させるのだが、ステアリング修正の動作が急すぎないため、車体が横へ揺すられることなく、滑らかに車線中央へ戻されていく。

車線中央を維持する走行では、運転席からの目線でも中央にいる実感があり、たとえば日産自動車「セレナ」のプロパイロットで、若干ズレているように感じてしまったのとは差を感じた。これは良し悪しというよりも、アイサイトが積み上げてきた成熟度の高さを、ツーリングアシストでは一層実感できたということである。

車線の中央をキープする能力も高いアイサイト

自動運転への道も? アイサイトの今後

ここで今後の展開を考えてみたい。当初のステレオカメラ開発で、人間が情報の90%を目に頼っているとスバルの技術者は述べていたが、残りの10%を捉えなければ、自動運転にはつながっていかないわけである。ツーリングアシストの技術者も、ステレオカメラのみにこだわっているわけではないと話す。

またスバルは、自動運転を目指してはおらず、目指すのは究極の安全であり、事故ゼロであると言うが、それが結果的に自動運転への道筋にもなっていくのだろう。

アイサイトを進化させたスバルは今回、北海道の美深試験場に、高速道路のカーブ/高速道路の分合流/市街地を想定した交差点/アメリカのフリーウェイを模した路面を新設したと発表した。自動運転に着実に前進する構えがそこからもうかがえる。

スバル研究実験センター美深試験場のテストコースを改修し、運転支援技術の高度化に活用

その上で、スバルが現在、後追いの形となっているクルマの電動化を進め、電気自動車(EV)を実用化すれば、アイサイトの進化は、まさに究極の域に達することができるのではないかと想像する。

モーターの反応速度がアイサイトを進化させる

クルマの電動化が進むと、なぜアイサイトの進化が究極の域に達するのか。それを説明するため、自動運転の鍵となる「認知・判断・操作」の各段階について考えてみたい。

現状、スバルはアイサイトにより、「認知」と「判断」で高い水準に到達しており、「操作」についてもツーリングアシストでの自然な、しかも確実な走行性能の実現ができている。しかし、既存のエンジンに比べモーターは、作動の指示に対して圧倒的な速さでそれを実行する能力がある。エンジンでは、どうしても超えられない作動遅れが残るのである。

実際、日産は自動運転の試作車をEVの「リーフ」で製作している。こうなると、アイサイトの優位性をさらに維持、前進させるためには、1日も早い電動車両の実現がスバルにとって不可欠になってくる。

電動スバル車の登場はいつごろか

現状、スバルは2019年にプラグインハイブリッド車(PHV)を、たぶん米国を中心に市場導入し始め、次いで2021年をめどにEVを市販しそうだ。ことにEVは、客室空間を大きくとるため床下にリチウムイオンバッテリーを搭載するので、スバルが言う水平対向エンジンによる低重心を、今以上に実現可能となる。

2017年3月期決算でクルマの電動化に注力する方針を示したスバルの吉永泰之社長

また、モーターを前後用に2個、場合によっては各タイヤ用に4個使うことで、4輪駆動、すなわちスバルの言うところのAWDも実現できる。そして、モーターの応答の早さをいかせば、高次元の操縦安定性を作り込むことも可能なのである。あえて言えば、それがわかっていてなぜ早くEVをやらないのかとさえ思うほどだ。

しかし、実はスバルは、三菱自動車工業「i-MiEV」発売と同時期に、「プラグインステラ」という軽自動車のEVを市場に投入しているし、その前段階としては、2003年の東京モーターショーに「R1e」というEVコンセプトカーを出展しているのだ。EVの加速や走り味のよさをしっかり開発していたのである。そして、プラグインステラは、あえてバッテリー搭載量を減らし、走行距離の長さより軽快で力強い、しかも低重心による安定性に優れた走りのよさを特徴としていた。

「プラグインステラ」(左)と「R1e」

ところが、軽自動車を自社開発しなくなり、日産との提携を止め、トヨタ自動車と提携を結ぶことで、スバルのEV開発は途絶えてしまった。そこを今、スバルは必死に取り返そうとしている。同社のブランドメッセージである「安心と愉しさ」は、アイサイトとEVの組み合わせによって完成されるものと確信する。

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

「eBASEBALL」の初代覇者が決定! 定番プロリーグとして定着なるか

2019.01.17

「eBASEBALL」で初代王者を決めるe日本シリーズが開催された

頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ

はたして“もう1つのプロ野球”で頂点に輝いたのは?

1月12日、東京ビッグサイトTFT HALL 500にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ2018」のe日本シリーズが開催された。頂点を争ったのは、埼玉西武ライオンズと横浜DeNAベイスターズ。はたして初代王者に輝いたのは、どちらのチームか。

3カ月間の戦いの末、頂点を争う切符を勝ち取った2チーム

「eBASEBALL」とは、野球ゲーム『実況パワフルプロ野球 2018(パワプロ)』を使用した、日本野球機構(NPB)とコナミデジタルエンタテインメント(KONAMI)が共同で開催するプロリーグだ。

2018年7月より行われたオンライン予選、西日本、東日本選考会を経て、9月末に実際のプロ野球球団による「eドラフト会議」を実施。ドラフトで指名された選手は、プロゲーマーとして各球団に所属する形になった。

11月からは実際のプロ野球のペナントレースのように、セ・リーグ、パ・リーグに分かれて「eペナントレース」がスタート。そして12月に行われた、eペナントレース上位チームによる「eリーグ代表決定戦」によって、パ・リーグの埼玉西武ライオンズと、セ・リーグの横浜DeNAベイスターズが、e日本シリーズへの切符を手にした。

パ・リーグ代表の埼玉西武ライオンズは、eペナントレースを13勝2敗の圧倒的な強さで勝ち抜き、eリーグ代表決定戦でも危なげなく、代表権を獲得。対するセ・リーグ代表の横浜DeNAベイスターズは、キャプテンであるじゃむ~選手のデータを活かした戦術と強力打線、そして巧みな投球術でeリーグ代表権をもぎ取った。

埼玉西武ライオンズのなたでここ選手(写真左)、BOW川選手(写真中)、ミリオン選手(写真右)
横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手(写真左)、じゃむ~選手(写真中)、AO選手(写真右)
会場は超満員。立ち見席も出るほどの人気ぶりで、まさに日本一を決定するのに相応しい舞台となった

一発勝負の決勝戦! 最後に笑うのは……?

e日本シリーズでは、各チーム3名による3イニング交代制の試合を1戦だけ行う。そこで勝利したチームがeBASEBALL パワプロ・プロリーグの初代チャンピオンになるわけだ。

『パワプロ』でお馴染みの選手の調子発表

選手の調子を見ると、埼玉西武ライオンズは、主力に不調の選手がおらず実力を存分に発揮できそうなラインアップ。横浜DeNAベイスターズは主砲筒香の好調が嬉しいものの、桑原、ソトの不調が厳しい。どちらかというと調子具合は埼玉西武ライオンズが優位に見られた。

さぁ、いよいよプレイボール。まず1人目、埼玉西武ライオンズはミリオン選手、横浜DeNAベイスターズはヒデナガトモ選手がコントローラーを握る。奇しくも、ペナントレースで最多奪三振のタイトルを獲得した2人の対戦となった。

そのため、激しい投手戦が繰り広げられたが、3回裏に均衡が破られる。豪打を誇る埼玉西武ライオンズとしては珍しいスクイズで1点を先制すると、そこから怒濤の連打で計5点をもぎ取り、序盤にして埼玉西武ライオンズが大量リードを得た。

スクイズ、スチールと小技も冴え、一気に5点を奪うミリオン選手
センターフライの捕球ミスやスクイズの打者をアウトにできなかったなど、ミスが出てしまったヒデナガトモ選手

2人目は埼玉西武ライオンズがBOW川選手、横浜DeNAベイスターズがじゃむ~選手と、キャプテン対決。じゃむ~選手が2点を返すも、BOW川選手が1点を追加し、スコア「西武 6-2 DeNA」で最終プレイヤーにバトンが渡された。

埼玉西武ライオンズのキャプテンを務めるBOW川選手
横浜DeNAベイスターズの軍師ことじゃむ~選手

最後は、ペナントレースで急成長した埼玉西武ライオンズのなたでここ選手と、横浜DeNAベイスターズ無敗のエースAO選手の対戦となった。

最優秀防御率のタイトルを獲得し、eペナントレースでの失点はわずか3点と脅威の安定感を持つAO選手は、e日本シリーズでもその実力を発揮。打撃3冠を獲得したなたでここ選手をみごとに完封した。しかしながら、3イニングでは1点を返すのがやっとで、最終スコアは「6対3」。埼玉西武ライオンズが優勝し、e日本シリーズを制した。

今回の大会で急成長したなたでここ選手
横浜DeNAベイスターズのエースとしてチームを牽引したAO選手
ペナントレースから実況を担当した清水久嗣アナはe日本シリーズの実況も担当
解説を務めた元ヤクルトスワローズ監督の真中満氏
同じく解説を務めた元中日ドラゴンズ監督の谷繁元信氏
ゲーム解説を務めるぶんた氏
パワプロ・プロリーグ初代チャンピオンの埼玉西武ライオンズ

埼玉西武ライオンズも横浜DeNAベイスターズも、打撃、特に本塁打に期待できる選手が揃っており、その打撃力で勝ち進んでいたなかで、e日本シリーズではホームランが「ゼロ」という、頂上決戦に相応しい緊迫感のある試合だったといえよう。

e日本シリーズでは博多激獅会も応援に駆けつけ、プロ野球さながらの応援が飛び交った

試合終了後は、優勝の表彰とともに、各個人タイトルの表彰も行われたので、その様子も紹介しよう。パ・リーグでは、首位打者、本塁打王、打点王、最優秀防御率の4冠を埼玉西武ライオンズのなたでここ選手が獲得。最多奪三振は埼玉西武ライオンズのミリオン選手が獲得した。

また、セ・リーグでは、首位打者と本塁打王の2冠を広島東洋カープのカイ選手、打点王と最優秀防御率の2冠を横浜DeNAベイスターズのAO選手、最多奪三振を横浜DeNAベイスターズのヒデナガトモ選手が獲得。そして、MVPには、4冠獲得のなたでここ選手が選出された。

パ・リーグの最多奪三振を獲得したミリオン選手
セ・リーグの首位打者と本塁打王を獲得したカイ選手
セ・リーグの打点王と最優秀防御率の2冠を獲得したAO選手
セ・リーグの最多奪三振を獲得したヒデナガトモ選手
パ・リーグの首位打者、打点王、本塁打王、最優秀防御率の4冠、そしてMVPを獲得したなたでここ選手
e日本シリーズでは12球団のマスコットがそろい踏み。スポンサーであるSMBCのキャラクター「ミドすけ」も登場した

eBASEBALLは試合を重ねるごとに盛り上がりを見せ、決勝の舞台でもあるe日本シリーズでは立ち見が出るほど多くのファンが駆けつけた。プロ野球ファンにとって、オフシーズン時期の楽しみの1つとして、eBASEBALLが定着しそうな気配も感じる。

最後にNPB(日本プロ野球機構)コミッショナーの斎藤惇氏による締めの挨拶にて、「eBASEBALL パワプロ・プロリーグ 2019」の開催も発表された。来シーズン、さらなる飛躍と盛り上がりに期待したい。

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

SUVでは満足できない人へ…「パサート」試乗で再考したクロスオーバーワゴンという選択肢

2019.01.17

フォルクスワーゲンの「パサート オールトラック」に試乗

これは意外? クルマ好きも納得のスポーティーなクルマ

ステーションワゴンとSUVの“いいとこ取り”

昨今のSUVブームはとどまることを知らない。コンパクトからラグジュアリーまで多様性もみられ、さらに「RAV4」の日本復活など、いくつかの新型車投入のニュースも届いている。しかし、SUVが必ずしも全てのユーザーにとってベストな選択肢とはいえないはずだ。

日常の使い勝手などを考慮すると、セダンとSUVの架け橋である「クロスオーバーワゴン」こそ、真の“いいとこ取り”なのではないかと思うところもある。今回は、フォルクスワーゲンから登場した「パサート オールトラック」に試乗し、この車種の魅力について再考してみた。

フォルクスワーゲンのクロスオーバーワゴン「パサート オールトラック」に試乗した

スバルが普及させたクロスオーバーワゴンという車種

フォルクスワーゲンがミッドサイズモデル「パサート」に新グレード「パサート オールトラック」を追加した。このモデルは、パサートのステーションワゴン「パサート ヴァリアント」をベースとし、SUVのエッセンスを取り入れた「クロスオーバーワゴン」と呼ばれるジャンルのクルマだ。つまり、ステーションワゴンとSUVの中間的な存在である。特徴としては4WD、専用サスペンションで高めた最低地上高、SUVを彷彿させるラギッドなスタイルなどが挙げられる。これらにより、ステーションワゴンよりも走破性が高まっている。

「パサート オールトラック」は最低地上高の高さやSUVを髣髴させるスタイルなどを特徴とする。価格はグレード別に「Passat Alltrack TDI 4MOTION」が509万9,000円から、「Passat Alltrack TDI 4MOTION Advance」が569万9,000円からだ

少しだけクロスオーバーワゴンの歴史を振り返りたい。意外かもしれないが、こういったクルマを普及させたのは日本メーカーなのだ。

SUVのニーズが高まっていた1990年代の北米で、SUVを持たないスバルは大苦戦していた。その打開策として、2代目「レガシィ」をベースとするクロスオーバーモデル「アウトバック」(日本名:レガシィ グランドワゴン)を開発。これが大ヒットとなり、北米市場での巻き返しに成功する。

スバルが2代目レガシィをベースに開発した「アウトバック」。意外にも、歴代モデルの中にはセダン仕様が用意されていたこともある。日本では「レガシィ グランドワゴン」の名で登場。その後、「レガシィ ランカスター」と名称を変更した。先々代モデルからは日本でも輸出名を取り入れ、現在同様の「レガシィ アウトバック」となった

アウトバックがヒットした背景には、ステーションワゴンの高性能化が進み、実用車というイメージが変化して、アクティブなカーライフやスポーティな走りが楽しめる多用途なクルマとして認知されだしたことがあった。セダン譲りの使い勝手と走行性能、そこにラフロードにも対応できる走破性を組み合わせた欲張りな存在として人気を集めたのだ。事実、アウトバックの後にはボルボ「XC70」(後のV70 クロスカントリー)や「アウディ オールロード」といったクロスオーバーワゴンの名車が続々と誕生している。

今やクロスオーバーワゴンは、ステーションワゴンの定番となった。そのパサート版が「パサート オールトラック」だ。

パサート版クロスオーバーワゴンはどんなクルマなのか。試乗で確かめた

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすい?

ラギッドなイメージを高めたエクステリアは、パサート本来の上品なデザインの中に、アグレッシブさを感じさせる。主な変更点としては、アンダーガード付きの前後バンパー、ホイールアーチのブラックモール、シルバー仕上げのサイドシルモールなどが挙げられる。サスペンションは標準車+30mmアップとし、最低地上高は160mmを確保した。

ボディサイズは全長4,780mm、全幅1,855mm、全高1,535mm。コンパクトとはいえないが、日本の道路や駐車場には適応しやすいサイズといえる。最大のポイントは、ルーフレールを装備しながらも薄型とすることで、全高を1,550mm以下としているところ。これなら、多くの立体駐車場に入れられるはずだ。

「パサート オールトラック」は日本でも使いやすいサイズ感だ

基本的にインテリアはパサートと共通だが、グレーのパネル加飾を取り入れるなど、スポーティーな装いにしてある。装備は上級モデルらしく充実していて、全車速追従機能付きのACCや車線内中央維持支援機能「レーンアシスト」、渋滞時追従支援機能「トラフィックアシスト」などの先進安全運転支援機能をはじめとし、スマートキー機能の「キーレスアクセス」やSSDナビ付きインフォテインメントシステム「ディスカバープロ」、シート&ステアリングヒーター、パワーテールゲートなど快適装備も満載だ。

車内は広々としており、前後席共に快適なスペースが確保してある。ラゲッジスペースは標準で639Lと大容量。後席を折りたためば最大1,769Lまで拡大可能だ。

インテリアはスポーティーな装い。機能はパサート ヴァリアントの上級グレードに近いもので、充実している
後席は3分割の可倒式。折りたためば最大で1,769Lまで積める

これがベストパサート? スポーティーな乗り味を体感

次にメカニズムを見ていく。エンジンは「AdBlue」(アドブルー、尿素SCRシステムの触媒として用いる尿素水のこと)を使用したクリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載。最高出力は190ps/3,500~4,000rpmで、最大トルクは400Nm/1,900~3,300rpmを発揮する。トランスミッションにはDCTタイプの6速DSGを組み合わせる。

最大のポイントは、現行型パサートで初めて4WDを採用していること。さらに、アクセルやパワステ制御などを変更できる走行モードには「オフロードモード」が追加となっている。オフロードモードでは、急な下り坂で車速を一定に保つブレーキ制御「ヒルディセントアシスト」などが作動する。

クリーンディーゼルの2.0TDIエンジンを搭載する「パサート オールトラック」

試乗したのはパサート オールトラックの最上級グレードである「アドバンス」だ。一言でいえば、かなりスポーティーなキャラクターに仕立てられている。低回転で最大トルクを発揮するディーゼルエンジンの魅力が存分に味わえて、峠道の上り坂も力強く駆け上っていく。元気さはパサートTDIを上回っている印象だ。出力は同等だが、アクセルなどのセッティングが異なるのだろう。

そこに前後のトルク配分が可変となる4WDの「4MOTION」と電子制御ディファレンシャルロック「XDS」が加わることで、コーナリングもグイグイ曲がっていく。それでいて乗り心地も良いのだ。ラフロードに適応すべく、足回りのしなやかさを重視していることが良好な乗り心地につながっているのだろう。

「パサート オールトラック」の上級グレード「アドバンス」で御殿場周辺の峠道を走った

同じパサートのスポーティグレード「2.0Rライン」は、もっとハードなセッティングで乗り心地もやや硬めとなる。一方で、パサート オールトラックのアドバンスはバランス重視のセッティングなのだが、クルマ好きをも納得させるスポーティーさを持ち合わせている。これがベストパサートだとさえ思ったほどだ。

ただ、アドバンスはオールトラックの標準車が装着する225/55R17タイヤに対し、245/45R18タイヤにサイズアップしている。さらにはXDSやアダクティブシャシーコントロール「DCC」なども追加となっているので、標準車のオールトラックと異なる部分があることは加味しなければならない。

ただ、オールトラックがスポーティなワゴンに仕立ててあることは間違いない。ファミリーカーだけどドライブを楽しみたいというユーザーには、パサートの中で最もオススメできるクルマだ。

ファミリーカーでも走りを楽しみたいという人には「パサート オールトラック」をオススメしたい。確かに509万円からという価格は安くないが、「パサート ヴァリアント TDI」のエントリーモデルのナビ付きが約470万円であることを考慮すれば、納得のプライスといえよう

走りの良さを持ち合わせたSUVも増えてはいるが…

ステーションワゴンがブームとなったきっかけは、実用性の高さに加え、ワンボックスカーやSUVなどでは得られない走りの良さを獲得できたところにあった。しかし、走りの良さを身につけた昨今のSUVは、そのニーズを奪い、ステーションワゴンの領域を食ってしまったといえる。あれほど盛況であった日本のステーションワゴンも激減し、今やスバルの一強となっている。

ただ、輸入車を見ると、ステーションワゴンの顔ぶれはなかなか充実しており、一定の販売台数を確保している。その中には、いくつかのクロスオーバーワゴンが存在する。

クロスオーバーワゴンはステーションワゴンに価値が加わったクルマなので、ベース車と比べれば、やはり値段は少々高くなる。それでも、中身に見どころはあるし、コスパで考えても納得できるものが多いと思う。日常での使い勝手を重視したい人、ワイルドさやスポーティーさを強調するSUVに子供っぽさを感じてしまう人などは、改めてクロスオーバーワゴンに注目してみてはいかがだろうか。