サッポロが豪州ワインで巻き返し! 4強ひしめくビール業界と同じ構図へ

サッポロが豪州ワインで巻き返し! 4強ひしめくビール業界と同じ構図へ

2016.04.11

これは筆者の感覚だが、一昔前、ワインといえば特別な料理を味わったり、何かを記念したりする際に飲むアルコール飲料だった。リカーショップで購入したワインのビンを大事に抱えて家路を急ぎ、コルクスクリューで慎重に栓を抜く……。明らかにビールや焼酎を飲む場合と心構えが違っていた。だが今は気軽にコンビニでワインを購入し、特に身構えることもなく飲むようになった。“デイリーワイン”という言葉を頻繁に聞くようになったが、筆者もこの飲酒スタイルにすっかり馴染んでしまっているようだ。

このデイリーワインが功を奏してか、“第7次ワインブーム”が日本の酒市場で渦巻いている。2008年のリーマン・ショックの影響でワインの消費量はいったん減少するが、以降は7年連続で消費量が増加。“ポリフェノール”が話題となった第6次ワインブーム(1998年)の消費量を2013年に突破し、2014年、2015年も伸び続け過去最高を続伸している。

“王者”フランス産を抜いたチリ産ワイン

この第7次ワインブームの牽引役が安価な輸入ワインだ。なかでも突出して輸入量を増やしているのがチリ産ワイン。2007年に発効した経済連携協定(EPA)により関税が低減され、ここ10年間で約7倍と爆発的に輸入量が増えている。2015年には、輸入ワインの“絶対的王者”ともいえるフランス産を抜き、ついにチリ産が輸入量でトップに立ったことをみても驚異的な伸びだ。

このチリ産ワインのあとに続きそうな気配をみせているのがオーストラリア産ワインだろう。2015年1月に日本とのEPAが発効し、関税低減による販売単価の低下が見込まれる。加えてオーストラリア大陸の南側はワイン用ブドウの栽培に最適な気候で、数多くのワイナリーが存在。ワインに関する国の研究機関・教育機関も充実しており、輸出産業としてワイン醸造に力を入れている。オーストラリア産ワインの日本への輸入量はチリ産、フランス産、イタリア産、スペイン産、アメリカ産に次ぐが、2014年のオーストラリアのワイン生産量はチリを上回っており、品質の面でも世界のワイン通から一定の評価を得ている。

全米で大人気のイエローテイル

このオーストラリア産ワインを輸入商品の主力に据えているのがサッポロビールだ。2004年に豪 カセラ・ファミリー・ブランズ社の「イエローテイル」の独占販売権を得て、特にワインのエントリー層向けに展開してきた。ちなみにイエローテイルは、アメリカ市場において輸入量トップのワインブランドで、短期間のあいだにアメリカ市場を席巻したことから“伝説を作ったワイン”とも呼ばれている。日本においてもオーストラリア産ワインとしてはナンバーワンで、その存在感を高めている。

ライバルがひしめくデイリーワイン領域

ただ、それまでワインエントリー層から高い支持を得ていたアメリカ産、2007年のEPA発効以降、低価格で爆発的な人気となったチリ産に比べると、まだまだ認知度が低いといわざるをえない。しかも、キリン傘下メルシャンの「フランジア」(アメリカ産)および「フロンテラ」(チリ産)、サントリーの「カルロ ロッシ」(アメリカ産)、そしてアサヒビールの「サンタ・ヘレナ アルパカ」(チリ産)といった強力なライバルが輸入ワイン市場で立ちはだかる。

なかでもアサヒのアルパカは驚異的だ。2012年の販売初年は3万6,000ケース(1箱12本)だったが、2015年には101万ケースまで一気に伸ばした。チリ産ワインの輸入量がフランス産を抜いたと前述したが、まさにその原動力になったといっても過言ではない。さらに、アサヒはワイン専門商社エノテカを買収。ワイン市場で2強といわれているメルシャンとサントリーを猛追する構えをみせている。

オーストラリア屈指のワイン産地、バロッサ・バレーを代表するピーター・レーマン

こうした情勢をみるとサッポロは出遅れた感があるが、手をこまねいているわけではない。カセラが豪州で買収した「ピーター・レーマン」ブランドのワインを輸入し、日本で販売開始すると発表した。ただピーター・レーマンはデイリーワインの価格帯より高めで、イエローテイルよりも高級な“ファインワイン”領域に位置するブランドになる。

サッポロビール 取締役 常務執行役員 営業本部長 時松浩氏は「“量”を追う戦略よりも“質”の高さで勝負していく。そのためにもピーター・レーマンというブランドは要であり、強みになる」と話す。さらに「オーストラリア産ワインがチリ産ワイン並みの存在感を示すようにするのがわれわれの使命」とも付け加えた。

手を携えるサッポロ 時松氏と豪カセラのジョン・カセラ氏。カセラ氏は「ピーター・レーマンの『ストーンウェル・シラーズ』は、和牛に合うのでぜひ試してほしい」と筆者にすすめてくれた

リーマン・ショックからこれまでの数年は、コストパフォーマンスの高いデイリーワインが注目を浴びてきた。これによりワインを飲む機会が増え、日本人のワインに対する味覚が発達したのは確か。となれば次は“よりおいしいワイン”を求める消費行動になるのは容易に予想できる。日本固有のワイン用ブドウ「甲州」や「マスカット・ベーリーA」を原材料にした“純国産ワイン”の人気が高まっていることも、日本人のワインに対する需要がシフトしている証拠だ。ただし国産ワインの場合、原材料となるブドウの確保が各社の課題となっており、高まる需要に即応できないというジレンマがある。その意味でもサッポロがピーター・レーマンブランドという“駒”を手中にできたことは大きい。

一方、カセラの代表取締役 ジョン・カセラ氏は「サッポロという日本における最良のパートナーを得られたのは幸運。豪州ワインの魅力をこれまで以上に日本のみなさまに伝えていただきたい」と、イエローテイルを日本ナンバーワンの豪州ワインに育てたサッポロの手腕に全幅の信頼を置いている。このサッポロとカセラの結束が、オーストラリア産ワインの存在感を高めるためのカギのひとつといえるだろう。

人口が減少フェーズに入った日本では、酒類の需要減衰が叫ばれている。そうしたなかにあって、ワインはまだまだ日本で伸びしろがあると予測されている。そのためか、ビール市場で激戦を繰り広げてきたメルシャンを擁するキリン、そしてサントリー、アサヒ、サッポロといった “ビール4強”のワイン市場に寄せる期待は大きい。奇しくも“レギュラービール”から“プレミアムビール”へと戦場が広がっていったように、ワインもデイリーからファインの領域へ広がる局面がみえはじめている。4強がどのようにしのぎを削っていくのか、興味が尽きない。

「XC40」でボルボが二連覇! 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員に要因を聞く

「XC40」でボルボが二連覇! 日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員に要因を聞く

2018.12.07

日本に丁度いいサイズ感、ボルボ「XC40」が大賞受賞

トヨタは「カローラ スポーツ」と「クラウン」がベスト10に

選考委員に聞く採点理由と「XC40」の評価

「第39回 2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー」はボルボのSUV「XC40」に決まった。前回の「XC60」に続き、ボルボが二連覇を成し遂げた。トヨタ自動車の「カローラ スポーツ」は2位と健闘したが、得点を「クラウン」と分け合うような格好となった分、あと一歩、XC40には及ばなかった。

ボルボ「XC40」とCOTY受賞を喜ぶボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長

受賞で日本向け増産!? 「XC40」は2,000人が納車待ち

XC40はボルボのSUVラインアップで最も小さいクルマだ。日本カー・オブ・ザ・イヤー(COTY)の受賞理由にも、「日本の道路環境にちょうどいい扱いやすいサイズ」の一文が入っている。COTYを受賞したボルボ・カー・ジャパンの木村隆之社長は、「XC40は日本で約2,000人のお客様に納車を待ってもらっている申し訳ない状態。この受賞をCEOのホーカン・サミュエルソンに報告し、必ずや、日本向けに2,000台の増産を勝ち取りたい」と笑顔で語っていた。

「2018-2019 日本カー・オブ・ザ・イヤー」の最終結果

COTYでは選考委員(今回は60人)が各25点を持ち、「10ベストカー」(今回はスバルが10ベストカー受賞を辞退したので全9台)に各自の評価基準で配点していく。その際、必ず1台に10点(最高点)を付け、残りの点数をほかのクルマに割り振るのがルールだ。今回、その「10点」を最も多く獲得したのが、トヨタのカローラ スポーツだった。

クラウンと点数を分け合わなければ、カローラ スポーツでCOTY受賞を狙えたような感じもするトヨタだが、広報に聞くと、この結果は「想定通り」とのこと。選考委員に聞いた話によれば、トヨタは最後まで、カローラとクラウンのどちらを“推す”のか、態度を鮮明にしなかったそうだ。どちらも自社のクルマなので、ひいきしなかったということなのだろう。

10ベストカーを受賞する「カローラ スポーツ」の小西良樹チーフエンジニア(右)と日本カー・オブ・ザ・イヤー 実行委員会の荒川雅之実行委員長

COTY選考委員に聞く選考理由とボルボ二連覇の感想

COTY表彰式では、選考委員を務めた数人のモータージャーナリストから話を聞くことができた。

諸星陽一さんは、「いいクルマが多くて悩んだ年」だったと振り返る。カローラ スポーツに10点を入れた理由については、「10年後に今年を振り返ったとき、『カローラが若返った年だった』と分かるクルマだったから」とした。XC40については「すごくいいクルマだと思う。サイズ的には少し大きいけど、ボルボの中では日本に合うサイズのクルマだし、クルマそのもののできもすごくよかった。獲るべきクルマが獲ったという側面もあるのでは」と納得の表情だ。

「イノベーション部門賞」はホンダの「クラリティ PHEV」が受賞

御堀直嗣さんはボルボ・カー・ジャパンの広報活動を評価する。情報発信を担当する社員が商品のアピールポイントをよく理解している上、「10ベストカー」の試乗会にはわざわざ最も安いグレードのXC40を持ち込み、商品の“素”のよさを訴求していた姿勢に好感を抱いたそうだ。

御堀さんが10点を入れたのはクラウンだった。その理由は、「欧州車などと競争できる操縦性を持たせながら、国内専用車として培ってきたクラウン独特の乗り心地、しなやかさというか、優しさというか、そういうものを併せ持っていたので」とする。

「エモーショナル部門賞」はBMW「X2」が受賞

森口将之さんはボルボの二連覇に「驚いた」としつつも、「ボルボのブランドは、一言でいえば“のってる”という感じ。海外のカー・オブ・ザ・イヤーやデザインの賞も受賞しているし、『XC90』から始まった新世代ボルボの商品が確実に評価されているのでは」と分析する。

「スモールモビリティ部門賞」はダイハツ工業「ミラ トコット」が受賞

二連覇を成し遂げたボルボからは、ここ数年のマツダとの共通点を感じるというのが森口さんの感想だ。一時期、経営危機にあったマツダは、2012年にSUV「CX-5」を発売して以降、“新世代商品群”と称して次々に新商品を世に問い、評価を高めていった。実際のところ、新世代商品群からは「CX-5」「デミオ」「ロードスター」の3台がCOTYを獲得してもいる。

ボルボもCX90以来、新しいクルマの市場投入を続けており、今回、COTYで二連覇を達成した。経営危機にあったマツダと、一時期は伸び悩んでいたボルボ。その両社が、逆境にあっても守りに入らず、ものづくりをゼロから見つめなおした姿勢を評価したいと森口さんは話していた。

その日、ソフトバンクで何が起こったのか? スマホ通信障害の原因と不安

その日、ソフトバンクで何が起こったのか? スマホ通信障害の原因と不安

2018.12.07

ソフトバンクの携帯電話サービスに全国規模の通信障害が発生

原因はエリクソン製の交換機と発表、世界11カ国で同様の被害

同様の「重大事故」は他社でも起こる可能性、自衛も必要か

ソフトバンクの携帯電話サービスで全国規模の障害が発生した。12月6日13時39分頃発生した障害は全国に影響し、同日18時4分頃まで、4時間30分に及んだ。原因と、残された課題を探る。

交換機の不具合で通信障害が発生?

今回の障害は、LTEに関わる交換機の不具合によるものという。この不具合は、コアネットワーク(基幹通信網)内のSGSN-MME(Serving GPRS Support Node-Mobility Management Entity)という2つのノードで発生した。問題の交換機を製造したのはエリクソンで、現時点では「交換機のソフトウェア証明書のバージョン齟齬」が不具合の原因だったと発表されている。

スウェーデンに本拠を置くエリクソンは、グローバル市場にコアネットワーク向け製品を提供していたことから、イギリス大手のO2をはじめ、世界11カ国の携帯電話キャリアでソフトバンクと同様の障害が発生した。

音声・データ通信ともにつながらない状態が続いた

この交換機の不具合により、ソフトバンクの4G LTE網に障害が発生し、音声・データ通信ともにまったくつながらない(圏外になる)、またはつながりにくい状況になった。その影響で、3G網には通信が集中して輻輳が発生したため、スマートフォンでの通信がまったく行えない、というユーザーが全国で発生した。

同様に固定電話サービス「おうちのでんわ」、自宅用無線LANサービスの「SoftBank Air」もまったく使えない、または使いづらい状況に陥った。サブブランドのY!mobileも同様で、さらにはMVNOでソフトバンク回線を使うLINEモバイルなどにも影響した。

交換機のソフトウェアのバージョンを古いものに戻して復旧を図った結果、同日18時4分頃には障害が解消。当初は通信集中による輻輳も見られたが、翌7日の14時時点では、それも解消して通常通りの利用ができている、という。

「重大事故」に強い是正義務

電気通信事業法では、119番などの緊急通報を行う音声サービスの障害が1時間以上継続し、影響が3万人以上に及んだ場合に「重大事故」として、総務省への速やかな報告を求めている。現時点で、ソフトバンクは影響人数を「調査中」としているが、全国で発生した障害のため、重大事故に該当するのは間違いなく、今後30日以内に原因などを明確に報告する義務がある。

今のところ、これまで9カ月間にわたって使ってきたソフトウェアが、なぜこのタイミングで障害を起こしたのかは分かっていない。証明書の期限が切れたから、という可能性もあるが、現時点ではソフトバンクは「調査中」としている。

とにかく、コアネットワーク内の装置のソフトウェア的な問題による障害だった、ということは明らかになっている。キャリアは、災害時の通信をバックアップするために重要施設を分散化して二重化するなどの対策を取っているが、今回の障害では、ソフトバンクが東京・大阪に置くすべての重要な設備が障害を起こした結果、全国規模での障害となってしまった。

LTE化も影響拡大の背景、他社は他人事ではない

影響が大きくなった背景には、LTE網への移行が進んでいる点も挙げられる。有限の周波数を使っている関係上、キャリアはより効率的なLTEへの移行を推進してきた。3G網で利用する周波数を減らしてLTEに移行した結果、3Gで通信できる容量が限られてしまうため、LTEの障害で3Gしかつなげられなくなったときに、接続できないユーザーが大量に発生したのだ。

音声通話でもLTEを使ったVoLTEが一般化しており、4G LTEが全て影響を受けたため、音声通話にも影響が及び、問題が拡大した。

これに関してはドコモもKDDIも同様で、同じように障害が発生した場合に、「逃げ場」がなくなるという問題がある。とはいえ、3Gはもはや終了を前提としており、バックアップのためだけに残すには無駄が多すぎる。

昨今の通信網はネットワーク構成が複雑化し、どのような障害が発生して、どこまで通信に影響するか分かりづらくなっている。冗長化によってマルチベンダー化することも一つの手段だろうが、重要設備であるため、そのコストも馬鹿にならない。ユーザーの通信料削減のためのコスト削減が求められている現在のキャリアにその余力はないだろう。

もともと、これまでも各社は「重大事故」を起こして対策を整えてきており、災害における対策も重点的に取り組んできた。今回の詳細な原因が明らかになっていないため、キャリア側の対策と今後の取り組みはまだ判断がつけられないが、同じことが起きないような対策が望まれる。

対策の一つとなりうるキャリアの設置する公衆無線LANサービスは、回線に携帯網を使っている例もあり、こうした障害時に使えなくなる危険性もある。キャリアは固定回線化を進めることも必要だろう。

無線LANを使って音声通話を行うWi-Fi Callingという仕組みもあるが、日本のキャリアはサービス提供に及び腰だ。とはいえ、こうした場合の対策としては有効でもあるため、これもキャリアの対応を促したいところだ。

事業者の責任は重いが、ユーザーも自衛すべきか

これに対して、ユーザー側に取れる対策はあるだろうか。今回は、公衆電話を使ったというネットの声もあったが、これも一つの手ではある。とはいえ、急激に数を減らす公衆電話は、いざという時に見つけられるかは分からない。

前述のキャリアの公衆無線LANサービスも利用できる。LINEなどのSNSサービスでの音声通話なら無線LAN環境でも利用できる場合もあるため、ある程度の代替にはなる。キャリア以外の有料の公衆無線LANサービスもあるので、いざという時には一時的な契約もありだろう。サービス間のローミングの仕組みもあれば、追加料金を支払わずに済むので、サービス提供者同士の連携があっても良さそうだ。

筆者は複数キャリアの回線を所有しているが、こうしたバックアップは万人に勧められるものではない。とはいえ、最近のMVNOは、プリペイドカードからすぐに利用開始できるので、こうしたSIMカードを買っておくというのもいいかもしれない。

iPhone Xsのように、eSIMを採用した端末も有効だろう。無線LAN環境があれば、通信プランをインターネット経由で購入してすぐに利用開始できるため、一時的な障害時に購入して使うことができる。物理的なSIMカードのように事前に購入しておく必要がないというのもメリットだ。ただ、国内キャリアが提供していないと、いざという時のバックアップにならないので、各社の対応を期待したい。

障害時にキャリア間でローミングをする仕組みも考えられるが、現状の仕組みではさすがに難しいだろう。複雑化したネットワークは、安易な対策ではカバーしきれなくなっているため、完全に障害を発生させないことは難しい。

ソフトバンクとエリクソンのさらなる究明・対策の公表が待たれるところだが、他のキャリアも他山の石として、設備の検証や対策の検討は必要だろう。