外国人取締役が一気に増加、ソフトバンクグループの人事は何を意味するか

外国人取締役が一気に増加、ソフトバンクグループの人事は何を意味するか

2017.06.23

ソフトバンクグループは6月21日に株主総会を実施し、米スプリントCEOのマルセロ・クラウレ氏や英ARMのCEOであるサイモン・シガース氏など5人が、新たに取締役として就任することが承認された。この人事には同社の戦略が大きく反映されているが、それは一体何なのだろうか。

新たにソフトバンクグループの取締役に就任した5人(画像:ソフトバンクグループ第37回定時株主総会オンデマンド配信より)

スプリントとARMのCEOが取締役に

昨年、英半導体設計大手のARMを約3.3兆円で買収する一方で、昨年度には利益1兆円を達成するなど、大胆な戦略で成長を続けているソフトバンクグループ。同社は6月21日に株主総会を実施し、新しい取締役11名の選出がなされた。

その内容を見ると、代表取締役社長の孫正義氏や、代表取締役副社長でありソフトバンクの代表取締役社長を務める宮内兼氏など従来の取締役に加え、新たに社外取締役の2人を含む、5人の取締役が新任。退任する取締役が1人であることから、4人の取締役が追加されたこととなる。

マーク・シュワルツ氏を除いた4人はいずれも新たに取締役に就任する面々となる

過去にもソフトバンクグループの取締役を務めていたゴールドマン・サックスのマーク・シュワルツ氏を除くと、いずれも新しいメンバーとなるようだ。1人は米スプリントCEOのマルセロ・クラウレ氏。マルセロ氏は元々携帯電話の卸売事業を展開していたブライトスターのCEOであったが、ソフトバンクグループ(当時はソフトバンク)が2014年に同社を買収した後、経営が危機的状況にあったスプリントのCEOに就任。スプリントの再建に大きく貢献した手腕を買われてソフトバンクグループの取締役に選任されたといえそうだ。

そしてもう1任人はARMのCEOであるサイモン・シガース氏。サイモン氏はARMの生え抜きのCEOであり、ソフトバンクグループへの売却を決断した人物でもある。数あるソフトバンクグループ傘下の事業の中でも、孫氏はいまARMに最も高い関心を寄せており、ARMが今後ソフトバンクの戦略の主軸になると考えている。そうしたことからARMでの実績をソフトバンクグループの今後の戦略に役立てるべく、取締役に選任されたといえそうだ。

ソフトバンクグループはこれまでにも、アリババCEOのユン・マー氏など、グループ内で実績を残した人物を取締役に起用するケースはいくつか見られたことから、両氏の就任は順当だと言える。むしろソフトバンクの戦略が大きく現れているのは、他の2人の取締役である。

高まるソフトバンク・ビジョン・ファンドの存在感

その理由は、両者ともに、昨年設立を発表した投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」に関係する人物だからだ。1人はラジーブ・ミスラ氏で、ドイツ銀行などで投資事業などを手掛けた後、2014年にソフトバンクグループの傘下企業に参画。資金調達で多くの実績を残し、ソフトバンク・ビジョン・ファンドの立ち上げでも責任者として指揮を執ったとされている。

そしてもう1人は、サウジアラビアの政府系ファンドで取締役を務めている、社外取締役のヤシル・アルルマヤン氏。そもそもソフトバンク・ビジョン・ファンドは、サウジアラビアの政府系ファンドと共同で発足させた投資ファンドであり、その関係者が社外取締役に入るということは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドがソフトバンクグループ全体の事業で大きな位置を占めようとしていることを見て取ることができる。

ソフトバンク・ビジョン・ファンドの設立には、昨年9月に孫氏がサウジアラビアの副皇太子と面談したことが大きく影響している

ソフトバンク・ビジョン・ファンドは今年5月に初回クロージングを完了し、約10.3兆円を集めたと発表している。その出資者にはサウジアラビアの政府系ファンドのほか、アップルやクアルコム、フォックスコンやシャープなどが含まれており、非常に大規模な投資ファンドとなっている。今後同社は大規模な投資や買収は自社が直接負担するのではなく、このファンドを通して実施するとしている。

ソフトバンクグループはソフトバンク・ビジョン・ファンドの設立により、同じ志を持つ同士による緩いつながりでの企業連合を構築する狙いがある

そして孫氏はこのファンドを通じて、「同志的結合による企業連合を作りたい」とも話している。ソフトバンクグループは、ボーダフォンの日本法人(現在のソフトバンク)やスプリントなどの通信事業に関しては、自社で直接経営に参画し、積極的にテコ入れを図って再建を進めるケースが多く見られた。だが実はそれ以外の事業に関しては、孫氏が直接経営に乗り出すのではなく、経営自体はそれぞれの企業に任せるケースが多い。

買収・出資した企業を系列化して抱え込むのではなく、緩いつながりによって経営の自立性を保つことによってアリババなどの成功を生み、それが急成長の原動力にもなっていることから、ソフトバンク・ビジョン・ファンドでも同様の投資スタイルを世界的に展開し、事業拡大につなげる狙いがあるといえよう。緩いつながりであれば売却などもしやすく、自社が負うリスクが小さいということも、こうした戦略の裏にはあるといえそうだ。

ヤフー宮坂氏が退任、国内事業への関心は弱まる

そしてソフトバンクグループは、緩いつながりによって世界的な企業連合体を構築することにより、グローバル企業として継続的に成長できる体制を作り上げることを目指している。そのことを同社では、「Softbank 2.0」として表しており、ソフトバンク・ビジョン・ファンドもSoftbank 2.0の実現に向けた取り組みの一環となっている。

では今後、ソフトバンクグループはファンドを通じて、どのような企業への出資を進めようとしているのだろうか。具体的には同社が成長分野として挙げている、IoT、AI、ロボットの3分野が主体になると考えられる。

ARMの買収もIoTの拡大に向けた一環といえるだろうし、6月にはロボットの研究開発を手掛けているボストン・ダイナミクスを買収し、話題となっている。それゆえ今後も、これら3分野に関して先端テクノロジーを持ち、成長性が見込めるベンチャー企業などへの出資を世界的に進めていくといえそうだ。

ソフトバンクグループは6月に、リアルな動きをするロボットの研究・開発で注目されるボストン・ダイナミクスを買収。先進技術を持つ企業への積極投資を進めている

一方で退任する取締役からは、ソフトバンクグループがどの分野に対して注目を失っているのかが見えてくる。今回の株主総会では、ヤフー代表取締役社長の宮坂学氏が取締役を退任しているが、ヤフーはソフトバンクグループの国内におけるインターネットサービスの中核を担う企業でもある。

それだけに宮坂氏の退任からは、ソフトバンクグループが国内事業への関心に成長を期待しなくなってきていることが見えてくる。既に孫氏は、成長が停滞してきている国内携帯電話事業に対する関心を大きく落としているが、ヤフーもスマートフォンへの対応や、2013年の「Eコマース革命」で弱みだったEコマース事業の改善を進めて以降、業績の大きな伸びは見込みづらくなってきている。国内事業は次の投資につながるキャッシュフローを生み出す源泉として業績の安定化にとどめ、今後はファンドによる投資を主力事業として海外で成長を拡大させたいというのが、同社の新たな方針といえそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。