花火のほうが安い? ドローンライトショーが抱えるお金の問題

花火のほうが安い? ドローンライトショーが抱えるお金の問題

2017.06.27

ハウステンボスとインテル、hapi-robo stは共同で、長崎のハウステンボスにおいて日本初となるドローンによるライトショーを展開することを発表した。海外では普及しつつあるドローンのライトショーだが、日本においても普及する余地はあるのだろうか。

ドローンを使ったライトショー

ライトショー専用ドローンを300機同時使用

ハウステンボスが開催するのは「Intel Shooting Starドローン・ライトショー」だ。これはインテル製の「Shooting Star」ドローンを使った光のショーで、このドローンを数百機単位で飛行させ、プログラム制御でLEDを点灯してフォーメーション飛行することで、空中にアニメーションを描くというもの。これまでに米国をはじめオーストラリア、ドイツ、オーストリア、メキシコ、シンガポールなどで開催されており、昨年11月には1人のパイロットで同時に500機のドローンを飛ばすというギネス記録を達成している。

ドローンの開発には機械学習やディープラーニングの環境と制御用の通信ネットワーク、フライト中の莫大なデータを処理する演算能力、センサーやソフトウェア技術、そしてドローンデバイス自体の開発能力が必要。インテルであればその全てを賄えるという図だ

Shooting Starドローンはライトショー専用に設計されており、サイズは幅384x奥行き384x高さ93mmと標準的なホビードローンと同等ながら、重さは280gと非常に軽量。最大飛行距離は1.5km、最大飛行時間は約20分。ライトショー時は秒速最大3m(時速10.8km)、GPSモードでは秒速10m(時速54km)で飛行できる。風については風速8m程度までは耐えられるという。ライトショーに利用するLEDライトは赤・青・緑・白の4色で構成され、約40億色を表現できるという(各色256段階と思われる)。

米Intel ニューテクノロジー事業本部副社長のアニール・ナンデュリ氏が持っているのがShooting Starドローン。超軽量で安全性にも配慮されている。ライトショー専用で市販されていないのが残念

ハウステンボスのCTOであり、hapi-robo stの代表取締役でもある富田直美氏は、ロボットがメインスタッフの「変なホテル」の開業をはじめ、最先端技術を体感できる「ロボットの館」、店長と料理長がロボットの「変なレストラン」など、ロボットの活用を加速させてきた人物だ。今回のライトショーについても「ドローンでの夢」と表現し、「本当はドローンの編隊飛行を自分で開発したかったが、大変難しかった。それをインテルが実現したことで、世界最高水準のドローンによるデジタル花火をお客様にナンバーワン、オンリーワンとして提供できる」と語った。

富田氏は今年2月にハウステンボスにおいて、日本初となる「夜間のドローンレース」を開催するなど、新技術を使ったサービスやイベントを多数成功させてきた実績もある

日本でもドローンのライトショーは根付くか?

ハウステンボスでは7月22日から8月5日までの間、Shooting Starドローン300機によるショーを実施する予定で、音楽に合わせて3Dアニメーションなどを表現するという(雨天中止)。期間中の7月22日と8月5日は「夏一番花火大会」および「スペシャルテーマ花火」がそれぞれ同時開催される予定。

この両日は花火とライトショーが同時に開催されるため、伝統的なアナログの花火と、最新テクノロジーであるドローンのライトショーが同時に楽しめる、まさに前代未聞の貴重な機会になる。

海外ではレディ・ガガのコンサートやスーパーボウル、ディズニーランドのショーなどに活用されて、かなり市民権を得てきているドローンによるライトショーだが、日本においてはほぼ完全に未開拓の市場だ。

筆者が知る範囲では、NTTドコモなどがドローンの編隊を使って空中に広告などを描いたり、災害時の情報発信などに利用することを研究しているが、まだまだせいぜい数十台での研究段階。インテルのShooting Starはすでに多数の実績がある点や、同時制御の台数などで大きく水を開けている。

エンタテインメントとしてドローンライトショーを考えたとき、花火やプロジェクションマッピングと比べると、空中を舞台にするため、同時に楽しめる人数の点で建物の壁面を使うプロジェクションマッピングを上回り、騒音や正確性において花火を上回ることができるといったメリットがある。

ドローンライトショーを巡るいくつかの問題

日本でも今回のショーを皮切りに、今後本格的なドローンライトショーが広まっていくだろう、と結びたいところだが、いくつかの問題もある。

まず、人口集中地ではドローンを飛ばすこと自体が難しい点だ。日本ではレジャー施設やスタジアムなども比較的住宅の近くにあるケースがあり、こうした場所ではドローンを飛ばした時に事故が起きる可能性がある。

ハウステンボスの場合、私有地である上に飛ばすのは海上ということもあって、万が一の際にも事故が起きないという判断で実施するとのことで、こうした条件を満たせる場所はやや限られそうだ。

続いてがコストの問題だ。ドローンによるライトショーは数百機というドローンの数に加え、制御は一人でもできるとはいえ、ショーの実施するためには数多くのスタッフが必要だ。

トータルコストについて具体的な金額は公表されなかったが、ハウステンボスの澤田秀雄社長は「花火よりちょっと高い」と表現していた。ハウステンボスの花火大会は九州でも最大級の1万8000発(「夏一番花火大会」の場合)を打ち上げるが、1万発規模の花火大会で人件費を含めた費用が5000万~1億円程度と言われており、ライトショーの値段は少なくとも1億円以上はかかるとみられる。こうなると、実施できる期間は相当限られてしまう。

とはいえ、場所の問題は花火大会が実施できる場所であればクリアできるだろうし、コスト面もスポンサーをつけるなりすれば問題はない。こうしたエンタテインメントは回数を重ねて経験値をためることで安全性や確実度が高まり、コスト減にも繋がっていく。

日本で楽しめる最新エンタテインメントの一つとしてドローンライトショーを定着させるためにも、その嚆矢となるべく積極的に導入に動いたハウステンボスの英断を歓迎したい。

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

メルカリ出し抜くラクマ、売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が5億円を突破

2019.01.22

ラクマ売上金の「楽天キャッシュ」チャージ額が累計5億円に

同様のサービスを構想しているメルカリを先行する形に

楽天は1月21日、フリマアプリ「ラクマ」において、取引で発生した売上金のうちオンライン電子マネー「楽天キャッシュ」へチャージした累計額が2018年12月末に5億円を突破したと発表した。

ラクマでの売上金を楽天キャッシュへチャージする機能は、2018年7月より提供開始されている。チャージした電子マネーは、楽天会員向けのグループ各種サービスで利用できるほか、ローソンやファミリーマートなど「楽天ペイ」対応店舗での決済でも利用可能だ。

2017年8月1日から開始されたローソンでの支払いに続いて、2018年12月4日からはファミリーマートでも楽天ペイが使用できるようになった

同じくフリマアプリを展開するメルカリは、100%子会社「メルペイ」で同様のサービスを構想している段階であり、この分野においてはラクマが1歩先行する形になった。

現状、メルカリで得た売上金をメルカリ以外で使う場合は、一度口座に振り込む必要がある。また、売上金には180日という「振込申請期間」が設定されており、その期間中に「口座に振り込む」か、メルカリ内で使える「ポイントを購入」するか、選ばなければならない。ただし振込の場合、1万円未満だと210円の手数料が発生する(2018年1月21日時点)。ラクマの売上金チャージ機能と比較すると、どうしても見劣りしてしまうだろう。

ちなみに筆者もメルカリユーザー。現状、売上金が合計1万円に満たないため、振込手数料を発生させずに現金に換えるためには、あと1540円分の売り上げが必要になる (画像はメルカリアプリより)

しかし、少し古いデータではあるが、2018年5月31日のニールセン デジタルの発表によると、スマートフォンからの利用率の高いオークション/フリマサービスは、1位がYahoo! オークションで25%、2位がメルカリで23%、3位がラクマで11%であることがわかっており、同じフリマサービスであっても、ラクマの利用率はメルカリの半分であるのが現状だ。

メルカリのダウンロード数は2018年11月14日時点で7500万、ラクマが同年10月時点で1500万と、両サービスの普及率にも差があることからも、日本におけるフリマ市場のバランスがすぐにひっくり返ることはないだろう。

だが、ラクマが売上金をさまざまなサービスに使えるという実用性で、メルカリとの新たな差別化ポイントを生み出したことは、新規ユーザーの獲得に少なからず貢献しそうだ。

ラクマ売上金のチャージ額が5億円突破したことは、ユーザーの「アプリ内の売上金を別の場所で使いたい」というニーズの強さの証明ともいえよう。こうしたユーザー視点に立った機能の追加による消費体験の向上が、フリマ市場にどのような影響をもたらすのか、キャッシュレス決済市場への参入が期待される、メルカリの動向と合わせて注目したい。

1000字の描き直しを越えて ―ナール制作の舞台裏

最初の書体感覚をもち続けることのむずかしさ

写研で書体デザインの責任者を務めていた橋本和夫さんに衝撃を与えた書体、ナール。作者の中村征宏氏が第1回石井賞創作タイプフェイスコンテスト応募時に書いた設計意図は、次の通りだ。

〈縦組みの場合にも、横組みにも字間のバランスがムリなく一つの流れを持つことを念頭におき、ボディータイプとして、従来使用されなかった丸ゴシック系のタイプフェイスを試みた。字面をいっぱいに使い、文字のエレメントを強調し、細い線で構成することによりシンプルさを求めた。字面を大きく使うことが字間の問題に関連し、字間のバランス調整のための切り貼り、字詰めの工程を少しでも短縮することができるのではないかと思う。その結果、組み上がりにおいて、集合の調和が生まれるのではないかと思う。広告制作物などにおいて、コピーやサブ・タイトルなどに適するのではないかと考える。〉(*1)

中村征宏氏の著書『文字をつくる』(美術出版社、1977年)

1970年(昭和45)5月18日にコンテスト授賞式が開催されたのち、写研からの文字盤発売に向けて、同年8月ごろから本格的な書体制作が始まった。必要な文字数は漢字が約5400字、ひらがなとカタカナで約150字、アルファベット約100字、その他(約物、記号など)約200字で、合計約5800字だ。写研の監修を受けながら、原字はすべて中村氏が描いた。監修を担当したのは橋本さんである。

約5800字の原字を描くのは、想像以上に大変な作業だ。橋本さんは語る。

「コンテストに応募するときに描いていただくのは、漢字50字とひらがなカタカナ、そして記号の一部だけです。それを1枚のパネルに構成するので、文字構成としては、まとめやすい。ところが、文字盤化する際には約5800字を1文字1文字描くことになり、完成するまでの年月は2年はかかります。外部デザイナーの方と書体をつくるようになって、われわれが一番苦労したのは、“今月と来月では、仕上がってくる書体の雰囲気が変わってしまうことがある”ということでした」

「文字を増やす際に字種リストを渡すのですが、『何の文字をつくるか』を見るためのリストのはずが、長い間ながめているうちに、つくっている文字がリストの文字に似てきて、当初のデザインと雰囲気が異なってきてしまった。ナールは既成概念をくつがえす、突き抜けたデザインの丸ゴシック体だったはずなのに、描き進むうちに最初のデザイン思想から離れ、持ち味が失われるということが起きたのです」

原字を描き進めるうち、コンテストのオリジナルデザインから、いつのまにか特徴が変わってしまっていたのだ。そのままでは、まるで違う書体になってしまう。結局、途中で1000字分を描き直すことになった。

中村氏もこのことを振り返り、著書に〈人の感覚は徐々に変化するものには気づきにくいものですから、いつも最初の見本と照らし合わせながら書き進めることが大切です。このようなことは、太さだけのことではなく字形とか感覚面でも同じようなことがいえます。感覚もときがたつことによってどんどん変化するものですが、とくに最初の感覚は大切にしていきたいものです〉と書いている。(*2)

悩ましい文字

「もうひとつ、ナールを監修したなかで、ひどく悩んだことがありました。ナールは、字面いっぱいに真四角に描かれた書体です。たとえばひらがなの『り』は通常は縦長、『へ』は横長の形をしていますが、これらの文字すら、できる限り正方形に近づけて描かれている。ぼくが悩んだのは、『々』という漢字でした」

ナールでは、縦長の「り」、横長の「へ」も正方形にかなり近い

「時々」「常々」「佐々木」など、同じ漢字を繰り返すことを表すときに用いられる「々」の字だ。

「常識的にいえば、この字は他の漢字よりも小さく描きます。では、通常は縦長、横長など固有の形をもつひらがなですら正方形に近づけているナールでは、どういう大きさにすればよいのか? 最初は『々』も他の漢字と同じ大きさで、真四角にするのがよいと思ったのですが、いざつくってみると、やはり少しは他の漢字より小さくしなければ『々』に見えないとわかりました」

「他の書体をつくるときにも『々』をどういう大きさにするか、いつも考えるのですが、ナールのときにはとりわけ悩んだものでした」

また、こうした試行錯誤を経て、「文字を図形化する際も、かなと漢字の使い方に意味のあることをあらためて認識しました」という。

新聞雑誌、広告から、道路標識まで

途中で1000字の描き直しなどがあったものの、コンテストから2年後の1972年(昭和47)、ナールは写研写植機用の文字盤として発売された。書体名は、「中村」の “ナ” と、丸みを表す言葉である「ラウンド」の頭文字 “R” をとって「ナール」とつけられた。(*3)さらに、ナールと組み合わせて使うことを想定した中太の「ナールD」の文字盤も1973年(昭和48)に発売された。

ナールD(上)とナール(下)

中村氏はコンテスト応募当時、ナールを本文書体と考えていたが、いざ発売されてみると、広告や雑誌、新聞などの見出しなどに使うディスプレイ書体として大人気となった。ポスターや広告のキャッチフレーズ、テレビの字幕、道路標識などに幅広く使われ、一世を風靡した。

「タイポスによってデザイナーのつくる書体が注目され、少女たちが丸文字を書くようになっていく流れのなかで登場したナールは、『時代に乗った』ともいえますが、むしろ『時代をつくった』書体といえるでしょう。写植の文字はナールの登場によって、それまで職人が手描きしていたレタリング文字の分野に浸透していった。“新書体ブーム”の幕開けでした。そうして写植の機械は、単に文字を印字するだけでなく、多彩なディスプレイ書体によって雑誌や広告にファッション性を生み出す手段のひとつとして、とらえられるようになっていったのです」

(つづく)

(注)
*1:中村征宏『文字をつくる』(美術出版社、1977年)P.80
*2:同書 P.21
*3:『文字に生きる〈写研五〇年の歩み〉』(写研、1975年)P.127

話し手 プロフィール

橋本和夫(はしもと・かずお)
書体設計士。イワタ顧問。1935年2月、大阪生まれ。1954年6月、活字製造販売会社・モトヤに入社。太佐源三氏のもと、ベントン彫刻機用の原字制作にたずさわる。1959年5月、写真植字機の大手メーカー・写研に入社。創業者・石井茂吉氏監修のもと、石井宋朝体の原字を制作。1963年に石井氏が亡くなった後は同社文字部のチーフとして、1990年代まで写研で制作発売されたほとんどすべての書体の監修にあたる。1995年8月、写研を退職。フリーランス期間を経て、1998年頃よりフォントメーカー・イワタにおいてデジタルフォントの書体監修・デザインにたずさわるようになり、同社顧問に。現在に至る。

著者 プロフィール

雪 朱里(ゆき・あかり)
ライター、編集者。1971年生まれ。写植からDTPへの移行期に印刷会社に在籍後、ビジネス系専門誌の編集長を経て、2000年よりフリーランス。文字、デザイン、印刷、手仕事などの分野で取材執筆活動をおこなう。著書に『描き文字のデザイン』『もじ部 書体デザイナーに聞くデザインの背景・フォント選びと使い方のコツ』(グラフィック社)、『文字をつくる 9人の書体デザイナー』(誠文堂新光社)、『活字地金彫刻師 清水金之助』(清水金之助の本をつくる会)、編集担当書籍に『ぼくのつくった書体の話 活字と写植、そして小塚書体のデザイン』(小塚昌彦著、グラフィック社)ほか多数。『デザインのひきだし』誌(グラフィック社)レギュラー編集者もつとめる。

■本連載は隔週掲載です。

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