生まれ変わった姫路城! 外国人入城者数が3.6倍になった、そのワケとは【後編】

生まれ変わった姫路城! 外国人入城者数が3.6倍になった、そのワケとは【後編】

2017.06.30

世界文化遺産・姫路城。2009年から5年間、大天守部分の修理が行われたが、その工事中の様子を間近で見学できる施設「天空の白鷺」が人気を博した。さらに改修後もARアプリを導入するなど来城者が楽しめる仕掛けが随所に散りばめられ、訪日外国人の数は改修前に比べ3.6倍になったという。マイナビニュースでは関係者への取材をもとに、“平成の大修理ドキュメント”を2回にわたってお届けする。前編はこちら

後編は、グランドオープン後の姫路城の運営・管理について、関係者に話を聞いた。

ARを導入し築城当時の城内を再現

姫路市よりグランドオープン後の運営・管理を委託された乃村工藝社。

まず着手したのが「展示の見直し」だ。改修前は、天守閣内に鎧や火縄銃、文献など多くの展示物が並んでいたが、グランドオープン以降はそうした展示物のほとんどを撤去。そのねらいについて、姫路城運営事務所の浅賀所長は「城の構造上の特性を理解して安全対策を練るとともに、築城当時の姫路城の姿を再現し、文化財としての価値およびその保存・継承の意義を伝えるためです。従来のガラスケースと比べると建物への負荷も少なく、見学者の動線も確保できます」と語る。実際、展示物を撤去したことにより混雑緩和につながり、以前に比べだいぶ回遊性がアップしたという。

乃村工藝社・姫路城運営事務所の浅賀所長

それら展示物を撤去した代わりに新たな展示方法として導入されたのが、最新技術のAR(拡張現実)である。その名もARアプリ「姫路城大発見」。現存しない建物も、3DCGにより当時の姿が再現されている。

展示物を撤去し、ARで説明

「大天守や西の丸櫓郡内を含めた姫路城敷地内城の15カ所に設置された“サイン”に携帯端末をかざすと、映像や解説文が映ります。これにより、口頭のガイドでは説明しにくいポイントもフォローできるようになりました。子供から大人まで、姫路城のもつ“文化力”を楽しみながら学べる展示になっています」(浅賀氏)

サインに携帯端末をかざすと映像や解説文が。これによって展示を減らしつつも、建物の歴史を知ることができる

平成の大修理に続き、このARアプリの開発に携わったのが、乃村工藝社のデザイナー、奥田氏だ。「現実の三次元空間に3DCGを合成し、築城当時の姫路城の姿や城下町の風景を見ることができます。一方、城兵が火縄銃を撃つシーンなどの再現映像もあり、要塞としての城の役割も学べます」

城内には無料Wi-Fiも完備しているため、アプリのダウンロードも簡単。その上、外国人がネットで検索した飲食店を訪れるなどまちなか全体の回遊性向上にもつながった。奥田氏によれば、これらの施策が反響を呼び、現在は他の自治体からの問い合わせもあるのだとか。

また、城内の照明にもこだわりが。「姫路城は文化財なので、建物内で電気工事ができません。漏電が起きれば火災にもつながってしまいます。そのため、従来の蛍光灯より発電量が少ないオリジナル充電式の行灯型LED照明を開発。江戸時代の重厚な空気感を再現しました」(奥田氏)

従来の蛍光灯より発電量が少ないオリジナル充電式の行灯型LED照明を開発

楽しみながら学べる展示が話題を呼び、改修後早々に観光客が殺到。そこで、ホームページで混雑状況や整理券配布状況をライブカメラでリアルタイム発信する「姫路城大入実況」を開設するなど、来城者の安全を最優先しながら、その満足度向上を目指している。

訪日外国人を積極的に誘致 パンフレットも19言語に対応

AR導入などの仕掛けが功を奏し、修理後の2015年には日本の城郭入場者で過去最高となる286万人を記録した姫路城。「世界文化遺産をひと目見たい」という訪日外国人の数も、改修前に比べ3.6倍に膨れ上がっている。

長蛇の列が…

その背景には、海外への積極的なプロモーション活動がある。浅賀所長によれば、改修後にはファムトリップによるインバウンド誘致も行ったという。ファムトリップとは、ターゲットとする国から、旅行会社やメディア、ブロガーを招待し、特定のエリアや企業の情報をPRする視察旅行のことだ。

「姫路城が外国の方に人気のポイントのひとつに、外観の美しさも挙げられると思います。特に欧米の方たちからは『“白い城”は自分たちの美的感覚に合う』という感想をよく聞きますね。また、中国人の“爆買い”が体験型観光にシフトしたことも、訪日外国人増加の要因のひとつかと思います」(浅賀氏)

増え続ける訪日外国人対策として、姫路城のパンフレットは日本語を含め20言語に対応。さらにスタッフ入社時には英語の研修を行うなど、引き続きインバウンド対策に力を注ぐ。

「姫路市の経済波及効果は424億円で、特に宿泊・飲食サービス、運輸部門で効果額の半分以上を占めています」(春井氏)

かつての匠たちの技術に敬意を表しながら、ARなど現代の知恵を駆使して生まれ変わった姫路城。ぜひ足を運んでみてはいかがだろうか。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。