一度過ぎ去った「AR」ブーム、再び注目されているのはなぜか

一度過ぎ去った「AR」ブーム、再び注目されているのはなぜか

2017.05.01

フェイスブックがAR(拡張現実)のプラットフォームを推し進めることを発表するなど、ここ最近ARに対する取り組みが急速に活性化している。2010年前後に一度大きく盛り上がったものの、その後沈静化してしまったARだが、なぜここに来てARへの注目度が再び高まりつつあるのだろうか。

「ポケモンGO」「SNOW」などの人気で関心が高まるAR

スマートフォンなどを通じて現実世界を見ることで、現実にはない情報を付加して拡張する「拡張現実」(AR)。そのARが、ここ最近再び大きな注目を集めつつある。

そのきっかけとなったのは、米ナイアンティックが昨年提供を開始したゲーム「ポケモンGO」だろう。ポケモンGOは現実の位置情報とリンクし、特定の場所に行くことでアイテムを手に入れたり、モンスターを捕獲したりできることが人気となり、レアモンスターが出現する場所に人が殺到するなど、世界的な大ブームをもたらしたことは記憶に新しい。AR要素を多く取り込んだゲームとしてポケモンGOが大成功したことが、ARに対する注目度を高める要因となったことは確かだ。

もう1つ、ARへの注目を高めたのが、昨年から今年にかけて日本でも人気となっている「Snapchat」や「SNOW」などのアプリだ。これらはいずれも、リアルタイムで顔を認識して犬や猫の耳や舌などを付加したり、隣り合った人同士の顔を入れ替えたりと、実際の顔をユニークに加工して撮影できる備えている。これもAR技術をより分かりやすい形で取り入れ、ユーザーにサービスを提供して成功した大きな事例といえるだろう。

だがARの注目度を高めているのはポケモンGOやSNOWだけではない。ARの活用に向けて積極的に取り組む姿勢を見せる企業が増えていることも、AR人気を高める要因になっているのだ。例えばSNS大手の米フェイスブックは、4月に実施した開発者会議「F8」で、スマートフォンのカメラを用いたARプラットフォームを提供することを発表している。

このARプラットフォームでは、スマートフォンのカメラを通して現実世界を見ることで、さまざまなオブジェクトを表示したり、モノや場所の詳しい情報を表示したり、SNOWのように顔に装飾をかけたりといったことができるようになる。しかも今回打ち出した施策はあくまでフェイスブックのARに向けた取り組みの第一歩であり、将来的にはより高度なARの実現を目指す考えのようだ。

本格的なARを実現するデバイスも登場

またハード面でも、より本格的なARを実現できるデバイスが登場してきている。実際、昨年にはレノボの「Phab2Pro」、今年にはASUSの「ZenFone AR」と、グーグルのAR技術「Tango」に対応したスマートフォンが相次いで発売・発表されている。

Tangoに対応したスマートフォンでは、3つのカメラと赤外線を活用することで、現実空間を正確に捉えることができ、従来のスマートフォンよりも一層リアルなARの表現が可能になることから、今後の展開が期待されているAR技術だ。Tango対応デバイスは今後大幅に増えることが予想され、ARの利用拡大にも影響を及ぼす可能性が高い。

「Tango」に対応した「ZenFone AR」は、3つのカメラなどを活用して現実空間を正確に把握し、高度なARを実現できるのが大きな特徴だ

「セカイカメラ」終了で一度は去ったARブーム

こうした具体的な動きだけでなく、アップルがAR関連の技術やデバイスの開発を進めているという報道が一部でなされているなど、ARに対しては現在多くの企業が興味や関心を示しており、今後一層大きな広がりを見せる可能性がある。

だが、ARといえば以前にも大きなブームが巻き起こり、多くの企業がAR関連サービスを手掛けて注目を集めていた時期があった。そのけん引役となったのが、頓智ドットが2009年より提供していた「セカイカメラ」である。

セカイカメラは、スマートフォンのカメラを用いて現実の風景を見ると、「エアタグ」と呼ばれる情報が重ねて表示され、それをタップすることでエアタグ内のテキストや画像などを見ることができるというもの。エアタグは現実世界の建物やオブジェクトなどに付与されているだけでなく、自分で投稿することもできたことから、コミュニケーション用途に活用することも可能であった。

従来のARは、基本的に「マーカー」と呼ばれる専用の画像データを印刷するなどして設置し、それをアプリ側が認識することで、オブジェクトを表示する仕組みとなっていた。だがセカイカメラはGPSやジャイロセンサーなどを用い、マーカー不要でARを体験できることから評判となり、類似するアプリも多く現れた。しかも当時はスマートフォンやアプリが大きなブームとなっていたことから、ARはスマートフォンで未来を体験できる技術として、大きな盛り上がりを見せることとなったのである。

しかしながら当初こそ高い関心を集めたARだったが、ソフト・ハード共に技術面でまだ発展途上だったこともあって表現がリアリティに欠け、物珍しさ以上の価値を提供することができなかった。それゆえARが定着したのはゲームなどの娯楽やプロモーションなどの分野に限られ、セカイカメラが2014年には全てのサービスを終了するなど、ブームは急速に鎮静化してしまったのである。

「CEATEC 2010」より。2009~2010年頃にかけてもARが大きな盛り上がりを見せ、スマートフォンとARを活用したさまざまな実証実験などが実施されていた

技術の進化でより現実的なARの実現が可能に

にもかかわらず、なぜ現在、ARが再び注目されるようになってきたのだろうか。その理由はやはり、技術的な進展によってより高度なARの表現が可能になったことにあると考えられる。ARは一過性のブームこそ過ぎ去ったものの、そのポテンシャルが高いことに変わりはない。それゆえブーム後も、ARの研究開発に取り組む企業自体は多く存在していたのである。

しかもARがブームとなった2009~2010年頃と比べると、現在のスマートフォンのハードウェア性能は劇的な進化を遂げ、高度な処理が可能となっている。また搭載されるセンサー類も大幅に増えたことから、あらゆる手法を用いて現実空間の位置や物体を捉えられるようになったのだ。

先に触れたTangoのように、ハードウェア的に機能を拡張するという手法だけでなく、SNOWなどのように映像から顔や物体を認識し、その位置をトラッキングするソフトウェア技術なども、現在では確立されている。従来用いられていたマーカーやGPS、ジャイロセンサーなどだけでなく、そうした新しい要素技術を組み合わせることによって、より高度なARが実現できるようになったわけだ。

ZenFone ARなどTango対応のスマートフォンには、通常のカメラに加え3つのカメラが搭載されており、それらを活用することで物体との距離などを測ることができる

加えて言うならば、VR(仮想現実)の人気が高まっていることも、ARが注目されるようになった要因の1つといえるだろう。ARとVRの組み合わせによって、現実空間と仮想空間を融合した複合現実(MR)の実現が期待されていることから、VRと並行してAR関連の技術進化も注目されるようになった部分も大きいのだ。

当初のARブームが、ARの存在そのものを伝える上で大きな役割を果たしたとすれば、現在のARに対する注目の高まりは、ARが本格的に普及するための第一歩だといえる。ARに対する技術やプラットフォームの開発はより加速していくと考えられるだけに、今後の普及に向けてはARを活用したサービスやコンテンツをいかに増やしていけるかが、大きなポイントとなりそうだ。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。