日本コカは異例の位置づけ、飲料大手2社がスマホ自販機を出す理由

日本コカは異例の位置づけ、飲料大手2社がスマホ自販機を出す理由

2016.04.12

自動販売機でドリンクを買うともらえるポイント。これからはスマートフォンで管理、というのが今後の主流になるかもしれない。4月に入って日本コカ・コーラが「Coke ON」、ダイドードリンコが「Smile STAND」というアプリをリリースした。これらのアプリは利用者からすれば、ちょっと便利になるだけかもしれないが、自販機飲料の大手2社は重要なツールとして位置づけたいようだ。

異例の発表会

「Coke ON」は自販機ビジネスにおける新たな価値の創造をもたらすと話すティム・ブレット代表

日本コカ・コーラがリリースしたスマホアプリ「Coke ON」。4月7日、アプリに関する発表会が開催された。取材記者ならわかることだが、アプリのために発表会が開催されるのは、もはや極めて稀。かつそこに同社の代表が登壇したのだから、いかに重要な発表会であったかがよくわかる。

実はこの「Coke ON」、「コカ・コーラ デジタルマーケティング3.0」の中核に位置づけられるアプリだ。マーケティング1.0でオウンドメディアの推進を打ち出し、マーケティング2.0でFacebookやLINE、Twitterといったソーシャルメディアの活用を進めた。3度目の区切りでアプリを活用しようというわけだ。

「Coke ON」の最大の特徴は、ドリンクチケットだろう。アプリをダウンロードしたスマホと、対応自販機とをBluetoothで接続する。対応自販機にお金を入れ、ドリンクを買うと、アプリにスタンプが1つ刻印される。それを15個集めると、1本無料でもらえるチケットが付与される。

日本コカ・コーラの自販機は全国に100万台ほど設置。年内に14万台が「Coke ON」対応自販機に変わるという
「Coke ON」アプリ。15個のスタンプで無料のドリンクチケットがもらえる

アプリを活用することで、次のようなことも可能になる。リオ五輪で日本人が金メダルをとったらドリンクチケットを発行、気温30度超のエリア限定でアクエリアスのドリンクチケットを発行、といったことだ。前者については、実際に実施する方向であり、後者についても検討中だという。

これらの機能について、消費者からすれば、ちょっとおトクになっただけ、という認識しか持てないかもしれない。しかし、日本コカ・コーラにすれば、消費者と接点を持ち、ブランドや商品メッセージを伝えるためのエンゲージメントを高める大きな武器となりえるのだ。

コカ・コーラ デジタルマーケティング3.0とは

同社が考えるアプリを介したマーケティング戦略。その一つに、ドリンクを購入した段階で、スマホを通じて、購買情報を取得できることが挙げられる。いつ、誰が(正確にはアプリごとに振られたIDを取得)、何を買ったのかがわかるようになる。

これによって、ある人がコーヒー好きで"ジョージア"ばかり買うのであれば、その人に向けて映像やテキストコンテンツを配信できる。そこには、他社商品との組み合わせ、たとえば飲料とそれに合うお菓子といった組み合わせも提示でき、新しい価値提案を消費者のスマホに直接届けられる。

マーケティング上のターゲットは、メディアリテラシーを持った10代後半から40代の男女。「10代にリーチしようと考えると、テレビだけでは訴求しづらくなっている」(日本コカ・コーラのマーケティング本部の豊浦洋祐統括部長)とし、課題解決のツールとしてアプリを位置づけたいようだ。

飲料メーカーが直面する課題

日本コカ・コーラでは、商品訴求の浸透を狙いにするが、もう一歩、踏み込んだほうが物事の核心に迫れるだろう。自販機の飲料ビジネスは年々厳しい状況に追い込まれており、その打開策としたいという思惑も感じ取れるからだ。

コンビニのカウンターコーヒーが登場するなど、自販機にはライバルが多数

一般社団法人 日本自動販売機工業会の調査結果を見ると、2014年末における自販機の普及台数は220万台ほど。台数こそ近年は横ばいをたどっているが、飲料自販機(缶・ペットボトル)の売上は冴えない。2010年末は約1兆9,700億円だったが、2014年末には約1兆8,700億円までに漸減。つまり、1台当りの売上は減少傾向にあるわけだ。

その理由として、挙げられるのが販売チャネルの多様化である。コンビニが出店数を増やし、カフェチェーンも増えた。ネット通販でも飲料を安くまとめて買える。少子高齢化も若者がメインターゲットになる炭酸飲料にとって明るい話ではない。コーヒーに限れば、2013年からのコンビニのコーヒー市場への参入も自販機での需要を減退させる一因となっている。

ダイドードリンコも

こうした市場環境の変化に対して、直截的な表現で危機感を募らせるのが、ダイドードリンコだ。同社の場合、売上の85%が自販機からであり、市場環境の変化に対応するための施策として、スマホアプリ「Smile STAND」を4月1日にリリースしたとする。消費者と自販機の新たなかかわり方を創造し、自販機の存在を高めたい考えだ。

今年4月より東京・大阪でスマホアプリ対応自販機を約800台設置。2016年度中に約5万台、2018年度までに約15万台に広げていく予定(画像:ダイドードリンコのニュースリリース)

特徴は、日本コカ・コーラのアプリと同様、対応自販機のドリンク購入でポイントを管理できること。ダイドードリンコの場合は、そのポイントを使って、プレゼントキャンペーンに応募できるようになる。先々はポイントの付与にとどまらず、同社が掲げるスローガン「こころとからだに、おいしいものを。」に沿うように、アプリを通じて「健康」「学び」「安心」といったキーワードに付随したコンテンツの提供も視野に入っているようだ。

当初の位置づけとしては、試験的な取り組みであり、全国に28万台ある自販機のうち、今年4月より東京・大阪で約800台設置を対応させる。2018年度までに約15万台と半数以上を対応自販機を増やす方針で、力の入った取り組みとなりそうだ。

次の一手に期待

自販機とスマホアプリを組み合わせた取り組みはまだスタートしたばかりだが、その背景を探ると、厳しい環境のなかで、いかに消費者との接点を確保し、拡大できるかといった動きのあらわれと見ることができる。

そのアプリも今はまだ、消費者にすれば"ちょっとおトクになる"というほどのものだが、日本コカ・コーラのようにアプリからの取得データの活用は、新たな自販機マーケティングの到来も期待させる。ダイドードリンコもまだサービス展開の始まりを表明したに過ぎない。スマホアプリ活用の次なる一手がどんなものになるのか、注目しておきたいところだ。

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打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。