ドコモの中期戦略「beyond宣言」、目新しさがないのは理由がある

ドコモの中期戦略「beyond宣言」、目新しさがないのは理由がある

2017.05.04

NTTドコモは2017年度からの中期戦略となる「beyond宣言」を策定し、このほど公表した。その内容は従来から取り組んできたものも多く、目新しさは少ないが、宣言としてまとめたことには大きな意味があるようだ。

「beyond宣言」から何がわかるか

ドコモが策定した「beyond宣言」は2020年のさらに先を見据えて、ドコモが実行していくいわば"公約"となるもの。モバイル通信がライフスタイルを大きく変革すると言われて久しいが、その方向性がより具体的に伺い知れる。

内容に踏み込んでいこう。beyond宣言は6つから成る。うち3つがユーザーに関わるもので、残り3つがビジネスパートナーと関わるもの。それらの底流には。次世代の高速通信の5G、パートナーとともに新たなビジネスやサービスを生む"協創"がある。協創は「+d」とも呼ばれ、今後のドコモの動きを理解するうえで特に重要だ。

「beyond宣言」は6つの宣言からなりユーザーとビジネスパートナーに関わるものに分かれる

ユーザー向けの3つの宣言

それでは、この6つをさらに細かく見ていこう。まずはユーザー向けの3つの宣言だ。

  • マーケットリーダー宣言

ドコモのサービス、料金、ポイントの進化により、マーケットリーダーを目指す宣言。従来から取り組んできたスマートライフのサービス強化、お客様還元、料金プランの見直しなどの取り組みをさらに発展・継続させていくとともに、サービス、料金、ポイントの連携・融合を推進してドコモならではの"お得"を実現していく。

そのひとつとして、2020年度までにポイント付与・利用加盟店を300社以上にし、日本最大級のポイント発行額を目指す。

また、第一弾として、「シンプルプラン」「ウルトラシェアパック30」といった料金プランを新設、ドコモポイントのdポイント移行などが5月から行われる。

マーケットリーダー宣言では料金プランやお客様還元のほかポイントも取り組みの対象に。dポイントを2020年度までに日本最大級、300社以上の加盟店からなるポイントプログラムにするという
  • スタイル革新宣言

5Gの特徴を生かして、VR、AI、IoTといった先端テクノロジーの活用を進め、パートナーとともに「体感革新」「ライフスタイル革新」「ワークスタイル革新」を実現する。

わかりやすいのが、体感革新だ。いわば"わくわくする新しい体験"のこと。たとえば、音楽ライブなどをAR・VRによって、一体感と臨場感が時間・場所の制約なく、体験できるサービスを提供するという。ライフスタイル革新では、AIの活用により、個々のユーザーを深く理解する究極のパーソナルエージェントの実現を目指したり、投資やレンディングといった金融分野にも取り組んでいく。

スタイル革新宣言では全9つのチャレンジが行われる。先端テクノロジーによりどの分野での進化を図ろうと考えているのかが分かる
  • 安心快適サポート宣言

AIを活用してユーザーとの接点を進化させる。コールセンターでの対応だけではなく、スマートフォンや店舗設置のキオスク端末のようなもので問題解決を図る。いわば"最適なおもてなし"を実現するための宣言となる。

AI活用により安心と快適なサポートを実現する試みが進む。チャットボットや受付端末でのサポートを促進するようだ

ビジネスパートナーと関わる3つの宣言

次はビジネスパートナーと関わる3つの宣言だ。注目しておくべきは、ビジネスパートナーとドコモのアセットを活用して新たなサービスを創造する「+d」の取り組みだ。その内容には漠然とした感じもあるが、各宣言によってドコモと何ができるのか、そのイメージを持つことが一番大切であり、ドコモが一番訴えたい部分だろう。

  • 産業創出宣言

5Gの高速、大容量、低遅延という特徴を活用し、パートナーとビジネスチャンスを広げていく取り組み。想定分野は、遠隔医療、ロボット、エンタメ、メディア、モビリティ、ツーリズム、スマートシティなど多岐に渡り、具体例として、5月下旬に5Gのトライアルサイトをオープンし、先行事例を提示していくという。

5Gをベースに様々な業界・業種の企業と協創を図っていく
  • ソリューション協創宣言

「+d」の取り組みをさらに進化させて、ビジネスパートナーとともに社会課題を解決していく。農業における生産性の向上や自動運転分野など、日本社会が抱える課題を通信と協創によって解決を図る取り組みのようだ。

協創により社会課題の解決を図る
  • パートナー商流拡大宣言

AIエージェントやIoT、送客能力、ポイントなどドコモのアセットを活用しながら、パートナーのビジネス拡大を進める。売上増加や生産性の向上などを図っていく。

ドコモのアセットを活用しパートナーのビジネス拡大につなげる

改めて宣言としてまとめた意味

これらがbeyond宣言の中身だが、根本的にそれほど目新しさはないことに気づく人もいるのではないだろうか。にも関わらず改めて宣言としてまとめたのには意味がある。

それは「+d」の認知拡大だ。5Gはモバイル通信キャリアのドコモが手がけることは誰でも推測がつく。しかし、パートナーとビジネスを拡大する「+d」の考え方は世間に浸透しきれていない側面があった。「+d」に取り組み始めておよそ2年が経ち、今では状況が少し変わりつつあるようだが、かつてはドコモからパートナーへ声がけをすることが多かったようだ。このことはドコモの吉澤和弘社長も認めるところだ。

それを今回の宣言で変えようというわけである。つまり、今まで以上に多くの企業から声がかかり、「+d」が進展する会社になりたいのだ。この「+d」はモバイル通信、スマートライフに次ぐ3本目の事業の柱を成すベースになるものであり、ドコモにとっては非常に重要だ。

「+d」の取り組みは「通信」「スマートライフ」に次ぐ3本目の柱に

これからの大きな成長を遂げるには、ドコモの考え方を広く知ってもらい、モバイル通信事業だけではなく、様々な事業資産を持っていることを認知してもらう必要がある。今回の宣言は対ユーザー、対法人のみならず、ドコモ自身のためという意味合いも大きいと言えるだろう。

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

藤田朋宏の必殺仕分け人 第1回

「選択と集中」が進みすぎた、日本の科学技術への投資

2018.11.15

ちとせグループCEOの藤田朋宏氏による新連載

巷を賑わす”ヘンな出来事”の問題点を、独自の解釈で洗い出す!

第1回は、「日本の科学技術投資」について

バイオベンチャー企業群「ちとせグループ」のCEOを務める藤田朋宏氏による新連載。“手段と目的の違い”によって生じた「ヘンな出来事」の問題点を、独自の視点で語ります。第1回は、「日本の科学技術投資」について。日本の科学技術への投資の問題点とはいったい何なのでしょう?

才能と“伸びしろ”に投資する、日本サッカー協会

先日、クアラルンプールに出張したときのこと。宿泊先のホテルが偶然にもサッカーの日本代表と同じだった。「日本代表」と言っても、同じホテルに泊まっていたのは本田や長友ではなく、U-16アジア選手権に参加している若い選手たち。

そこで彼らを見ていて、ふと考えた。日本サッカー協会の「選手への投資」は、実は凄く効率がいいのではないか。どうしてそう思ったのか、順を追って説明したい。

ホテルに置いてあったU-16アジア選手権のバナー

チェックインを済ませ、「部屋の準備があるから、ちょっとだけそこで待っていて」と指示するホテルマンに従い、ひとりロビーに放置されている間、何となしに選手の情報を調べてみた。それから一時間半。23名の選手一人ひとりの顔だけでなく、利き足まで覚えるくらいの時間が経っても、僕はまだロビーで放っておかれたままだった。まぁ、東南アジアではよくあることなので、腹は立たなかった。

ところで、「過去のU-16日本代表がその後、何度も日本代表に選ばれる割合はどれほどだろうか」と疑問に感じ、調べてみたところ、各年20数名の代表選手のうち、現役で活躍している選手は約1人であることが分かった。確かに16歳の段階では身体の発達に差があるし、試合で活躍できるかは運の要素も絡む。コーチとの相性やケガの問題もあるだろう。

そうは言っても、16歳の時点で日本代表に選ばれるだけのポテンシャルを持つ選手のうち、その数%しか将来も活躍できる選手がいない、という事実には驚いた。実際、長谷部、本田、岡崎、長友……など、この10年で活躍している選手たちの多くは、16歳時点ではそこまで期待されていなかった選手ばかりだ。

ではなぜ、そういった選手が後に日の目を浴びられたかというと、それは彼らにも「チャンス」を与えられていたからだろう。日本サッカー協会は、16歳時点で選抜したトップ選手だけに集中投資するだけではなく、同年代の他の有望選手にもしっかりとチャンスを与え続けられるような仕組みをつくれたのだと思う。

際立って目立つ選手だけではなく、将来の伸びしろがありえる選手にも、最低限のチャンスは回ってくることで、未来のトップ選手の育成が図れる。そうやって日本サッカー協会はこれまで、世界に通用するような選手を輩出してきた。

「科学技術に投資せよ」ではなく、予算配分の再考を

前置きが長くなってしまったが、ここから本題に入りたい。

先日、京都大学特別教授の本庶佑先生がノーベル賞を受賞したというニュースが流れた。「自分がバイオテクノロジー業界で働く人間だから」というのは関係なく、本庶先生と周りのチームの方々の長年にわたる科学に対する貢献が認められたこと、その事実に接した関係者の気持ちを想像すると、とても嬉しい気持ちになった。

ノーベル賞メダル(レプリカ)

 

近年、日本人のノーベル賞受賞が続いている。彼らのような日本の科学業界の仕組みをよくわかった方々は、これまで数多くのご苦労をされてきたことだろう。しかし、1つ残念なこともある。能力はもちろん、人格的にも優れたそういった先生方が、ノーベル賞受賞のタイミングでマスコミに発表する一世一代のコメントが「日本国の科学技術投資、科学技術教育のあり方についての憂い」であることだ。

僭越ながら、先生たちのコメントを解釈すると、よくニュースで取り上げられるような「科学技術にもっとお金を使え」ということではなく、その先にある「国家予算の配分」についての指摘をしていると認識している。

誰がなんと言おうと、日本の科学技術投資の選択と集中は年々進んでしまっているのが現状だ。しかし、先生方のいうような「選択と集中が進みすぎている」という指摘に対して、「日本にはもうお金がないのだから科学技術にばかり投資できない」と答えがずれてしまっている。

これこそが、日本の科学技術投資における問題ではないだろうか。

日本にはびこる「選択と集中こそが正解だよ病」

随分前からずっと不思議なのだが、そもそも「選択と集中こそが正解である」なんて、誰がいい出したのだろう。「選択と集中」の戦略で物事をうまく切り抜けられるようなことは、本当に生きるか死ぬか、背水の陣を敷いている時くらいだと思うのだ。

今の日本の「選択と集中こそが正解だよ病」はなかなか根深く、そもそもの目的を実現することよりも「選択と集中」を行うことそのものが目的になっているんじゃないかと感じることが多い。

今の日本で行われている多くの意思決定の場面で、サッカーの例で例えると、U-16日本代表を選んだ人のメンツを潰さないということが、強い日本代表をつくることよりも優先されてしまっているように思う。

そのため、16歳の時点で選んだ選手だけに集中投資し、16歳の段階で選ばれなかった他の選手のポテンシャルに賭けることもしないというような「選択と集中が正解である」という間違えた進め方で意思決定が行われているようなことが多いように感じる。

サッカー選手の育成でも、科学技術の投資でも初期の段階で選抜してそこだけに集中投資するという戦略を繰り返せば繰り返すほど、全体としての力は落ちる一方になるのではないか。歴代のノーベル賞受賞者の先生方も、そういうことを言いたかったのではないかと思う。

手段であるはずの「選択と集中」が、目的となっている?

私は、「16歳の段階で、将来素晴らしいサッカー選手になる人物を見分けられる」なんて言葉は、伸びしろのある選手に対しておこがましいと感じる。これは科学技術の研究にも同じことが言える。「その研究が将来素晴らしい成果を残すかどうか見分けられる」なんて言葉は、科学者に対しておこがましい。

もっと言ってしまえば、どの研究が将来化けるかの判断は、16歳のサッカー選手の成長を言い当てることより遥かに難しいだろう。なぜならば、サッカーという競技のルール自体は変わらないが、科学と言う競技はルール自体を決めているので、科学研究の将来性をあらかじめ予測するのは16歳のサッカー選手の将来性を予測するより難しいためだ。

そんな中、日本サッカー協会が幅広い底上げに力を入れ、紆余曲折も有りながらも右肩上がりの成長を維持できているにも関わらず、日本の科学技術投資は過剰な「選択と集中」を強めるが故に、科学技術力の相対的な低下を招いているように感じる。

その差はいったい何か? これは1つの仮説でしかないが、日本サッカー協会の強さの秘訣は、会長の独断で物事を決められる側面が強い組織であるために「目的」がハッキリしている点にあるのではないだろうか。

その一方で、日本の科学技術投資のような“数多くの人の善意の組み合わせの上になり立っている意思決定機構”では「選択と集中を進めることが正解である」という、本来手段の一つである価値観が「目的」となってしまっているように感じる。

本来考えるべきは、「日本の科学技術をどうするべきか」ということであるにも関わらず、その手段と目的が逆転しまっているのではないだろうか、と思うのだ。

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

音楽特化の「YouTube」が日本上陸! AIでレコメンド

2018.11.14

音楽に特化した「YouTube Music」が日本でスタート

有料会員になれば、広告なし再生やオフライン再生が可能

YouTube Premiumでは、オリジナルコンテンツの配信も開始

仕事や作業をする際、周りのノイズをカットして集中するために、音楽を聴くという人は多いだろう。わかる。よくわかる。フロアが騒がしいと作業に全く集中できない。周りで仕事している人がいるということがわからないのだろうか、と疑問に思うが、まぁそれは置いておいて、パソコンで作業する場合、手軽に好きな音楽を聴けることから、YouTubeで音楽を聴くという人も多いのではないだろうか。

そんなYouTubeユーザーに朗報である。11月14日、Googleは音楽に特化したストリーミング再生サービス「YouTube Music」を日本でローンチすると発表したのだ。

好みやシーンに応じて楽曲をレコメンド

YouTube Musicは、音楽再生に特化したアプリ。YouTubeにある公式の曲やプレイリスト、歌ってみた、弾いてみたなど、さまざまな音楽動画を視聴することができる。

また、機械学習が活用されているのも特徴の1つだ。視聴履歴などからユーザーの好みを把握するだけでなく、「いつどこで何をしているのか」を類推して、シーンに合わせた楽曲をレコメンド。家でリラックスしているときにお勧めの曲や、仕事中にお勧めの曲などを、自動でピックアップしてくれるという。

さらに、あいまいなカタカナ発音で洋楽を検索したり、CMタイアップ曲などから検索したりすることも可能で、聴きたい曲をスムーズに探すことができそうだ。

サービスの発表会において、YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏は「オーディエンスに着目した結果、今出ているアプリでは満足できていない層があることがわかり、そのユーザーに音楽サービスを届けようとこのサービスをスタートしました。YouTube Musicは、ユーザーの利用シーンや好みに合わせた曲を、YouTubeにある膨大なミュージックカタログからレコメンドするユニークさを持っています」と、サービスの魅力を強調した。

YouTube 音楽部門 プロダクトマネージメント責任者のT.ジェイ ファウラ氏

無料でも利用できるが、有料のYouTube Music Premiumに登録すると、「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」などが可能になる。料金はWeb/Androidが月額980円で、iOSが月額1280円(ともに税込み)だ。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏は「日本ユーザーの方は通勤通学などで音楽を聴くことが多いと思います。オフライン再生機能では、前日の夜に自宅のWi-Fiで翌日聴くべき曲を自動で更新し、通信なしで聴けるようになります。データの通信量などを気にする必要もないので、非常に便利な機能だと思います」と、オフライン再生のメリットを訴求した。

なお、同サービスには著作権管理システムが働いており、YouTubeと同様に適切な権利コントロールが可能だという。

YouTube 日本音楽ビジネス開発統括担当の鬼頭武也氏

「YouTube Originals」が日本でも始動

また今回、「YouTube Premium」という新しい有料プランもスタートする。料金はWeb/Androidだと月額1180円で、iOSだと月額1550円(ともに税込み)だ。YouTube Music Premiumの機能に加えて、YouTubeでも「広告なし再生」「バックグラウンド再生」「オフライン再生」機能が使えるようになる。

さらに、YouTube Premiumの会員は、12月から日本でも配信される予定のYouTubeオリジナルコンテンツ「YouTube Originals」を視聴することも可能だ。すでに世界30カ国でコンテンツを展開しているが、このたび、日本でも制作がスタート。SEKAI NO OWARIとMARVLEがコラボしたミュージックビデオ制作の裏側に迫るドキュメンタリー「Re:IMAGINE」、YouTuberのはじめしゃちょーが主演する連続ドラマ「The Fake Show」、YouTubeで人気のクリエイターが手がけた「隙間男:Stalking Vampire」の3つだ。

「YouTube Music Premium」と「YouTube Premium」で利用可能な機能
日本で制作される「YouTube Originals」のコンテンツ

発表会には「The Fake Show」に主演する、YouTuberのはじめしゃちょーが駆けつけた。

はじめしゃちょー

「今回僕が出演するのは、今までなかったYouTuberをテーマにしたドラマ。アカウント乗っ取りや炎上など、問題に直面しながらも夢に向かって進んでいく姿が描かれているので、僕の動画を見たことない人にも見てほしいですね」と動画の紹介をするとともに、YouTube Musicについて「普段、広く浅く、さまざまな音楽を聴くので、非常に楽しみなサービスです。ぜひ使ってみたいと思います」と期待を述べた。

なお、YouTube Musicは「Google Home」「Google Home Mini」にも対応予定。そのほか、現在「Google Play Music」を利用しているユーザーは、追加料金なしで移行することができるという。