iPhoneの販売が伸び悩み、アップルCEOが指摘する意外な原因

iPhoneの販売が伸び悩み、アップルCEOが指摘する意外な原因

2017.05.05

アップルは米国時間5月2日に、2017年第2四半期決算を発表した。売上高は529億ドルで、前年同期と比べて5%上昇した。1株あたりの利益は予想を上回る2.10ドル、グロスマージンは若干予想を上回る38.9%だった。

iPhone 7の売れ行きはどうだったか

中国市場の現状とその先

アップルのようなコンシューマー向けの製品を中心とした企業の売上高は、例年、ホリデーシーズンを含む四半期(アップルの場合は第1四半期)に最大化する。しかし、アップルは中国市場を欧州に続く第3の市場へと育てており、中国の旧正月を含む第1四半期にも、売上高の山ができるようになってきた。

その中国市場は、2016会計年度は、3割近い減少が続いており、2017年第2四半期についても、14%減となった。また、昨年は2桁成長を続けてきた日本市場も、5%増に留まり、勢いが止まりつつある。その代わり、アジア太平洋地域の売上は前年同期比20%上昇と、成長力を見せ、近い将来、日本市場の規模を追い抜くことになるだろう。

アップルの米国外の売上比率は65%で、今後も高まっていくことが考えられる。カンファレンスコールではインド市場の成長に加え、ドバイにAppleStoreを新たに出店したことに触れ、これらの市場での成長に期待を寄せている。

iPhoneが売れないのは、秘密主義のせい?

先進国におけるハイエンドスマートフォン市場の中心的な存在であるiPhoneは、ライバルのサムスンとともに、市場を牽引する役割を果たしている。サムスンは既に、GALAXY S8を発表し、好評を得ており、アップルが9月にも発表するとみられる新型iPhoneへの期待も高まっている。

そんな足下のiPhoneの販売台数は、前年同期比1%の微減となる5080万台となった。ティム・クックCEOはカンファレンスコールの中で、「早期から、高い頻度で将来のiPhoneについての報道がなされていること」を、販売が伸び悩む原因と指摘していた。

有機ELディスプレイへと変更される新型iPhoneの噂については、2015年から報道されており、最近は設計図とみられるリーク画像も見られるようになってきた。

アップル自身が未来の製品に関する情報公開に積極的ではないことや、人々の注目を集めるコミュニケーションを展開していることから、メディアでもアップルは最もページビューを集めるテーマとなっていることから、ちょっとした噂であっても、記事になる、それが拡散し、話題になるのだ。

それまで成功してきた秘密主義マーケティングの弊害を受け取ってしまった格好だ。

高付加価値路線で、次のiPhoneも…

微減したiPhoneの販売台数に対して、売上高は1%の微増となった。平均販売価格は655ドルに上昇し、より高付加価値化が進んでいることを表している。

特に、価格の安いiPhone SEや過去のモデルであるiPhone 6sシリーズが中心とみられるアジア太平洋地域での大きな成長でも、平均販売価格が落ちなかったことは、それまでのiPhoneの市場であった先進国市場に置ける更なる高付加価値化が進んでいることの表れだろう。

ティム・クックCEOは、カンファレンスコールの中で、iPhone 7 PRODUCT(RED) Special Editionが好評であることを指摘した。このモデルは3月21日に発表された、赤いiPhone 7シリーズであり、性能面では既存の製品と全く同じだが、ジェットブラックと同様、128GBモデル以上にしか設定されないカラーとなっている。

売れ行き好調というiPhone 7 PRODUCT(RED) Special Edition(画像:アップルプレスサイトより)

加工にコストがかかるとみられるジェットブラックも、REDモデルについても、シルバーやゴールド、ローズゴールドと価格は同じだ。ただ、最も安い32GBモデルが用意されないだけであり、色違いだから割高、という印象は持たないだろう。

アップルは、特別モデルだからといって特別な価格を付けるわけではないが、iPhoneを長く使っていれば必然的に欲しくなる保存容量のサイズとモデルの付加価値、価格を連動させる形で、iPhoneの平均販売価格を無理なく引き上げている。

MacとiPadはグーグルとマイクロソフトに勝てるか?

MacとiPadは対照的な結果となった。

Macは420万台を販売し、前年同期比4%増、売上高は14%増となった。2016年10月のアップデートで、MacBook Proの新モデルを投入し、ラインアップからMacBook Air 11インチモデルが姿を消した。これにより、1000ドル以下のモデルは、MacBook Air 13インチモデルの999ドルしかなくなり、iPhone同様、Macラインアップの高付加価値化を推し進めることになった。

昨年10月にMacBook Pro新モデルを投入

アップルによると、ポータブル型のMacは前年比で10%の成長をしており、力を入れているという。しかしそれは、デスクトップモデルの刷新が遅れていることの裏返しでもあり、最新のMacを手に入れようとしたとき、MacBook Pro以外の選択肢を選びにくいという事情もある。

Macに関する積極投資の姿勢を示したが、4月に語ったMacProの来年の刷新と、今年後半のiMacの刷新以上の情報が語られることはなかった。

iPadについては、「四半期を通じて供給が逼迫する中で、890万台を販売した」とのコメントが全てだ。前年同期の1020万台、予想の960万台を下回り、1000万台以下を記録することになった。

需要があったiPad Air 2の供給が追いつかず、販売台数を伸ばせなかったことから、ラインアップの見直しを3月21日に行い、iPad(第5世代)で、教育や企業導入への需要をまかなっていくことになる。

iPad ProはPCの代替としての役割を期待されており、新モデルの投入についても注目されてきたが、前述の需給の改善が落ち着くまでは、しばらく新たな取り組みができない状況ではないだろうか。

サービス部門に加えて、アクセサリもiPhone効果

最後に、サービス部門とその他のハードウェアについて、数字を振り返ろう。

これまでサービス部門は、季節変動なく、20%前後の成長を続けてきた。その原動力となっていたのが、iPhoneを購入したユーザーによるアプリの購入や課金が行われるApp Storeだ。

2016年は、7月リリースのPokemon GO、12月リリースのスーパーマリオランといったヒットゲームにも恵まれ、引き続き、その効果が続いている。1アカウントあたりの売上平均と、支払いを行っているアカウント数が成長しており、後者の増加率は過去最高を記録したという。

また、Apple MusicやiCloud追加ストレージなどの月額サブスクリプションサービスについても、2桁成長をしており、1億6500万ドルの売上を記録したという。2020年までに売上を倍増したい考えだ。

また、サービス部門に続いて、iPhone効果を見せ始めたのがその他の製品部門だ。このカテゴリには、Apple Watch、AirPodsやBeatsなどのワイヤレスオーディオ製品、そしてApple TVなどが含まれている。

Apple Watchは前年同期比で2倍以上に成長しており、またAirPodsの品薄状態も改善されつつある。iPhoneと組み合わせて利用する製品にはケースなども多かったが、ウェアラブル分野の製品が充実し、売上拡大に貢献するようになった点は重要だろう。

次を考え始める時期

iPhoneを中心としたエコシステムは、向こう数年間の成長余地を、付加価値向上と、サービスやその他の製品の売上拡大という形で成熟を見ている。

サービス部門では、ケーブルチャンネルなどが見られるバンドルセットの販売や、Apple Musicのコンテンツ拡充などによるユーザー拡大も期待されている。

また、その他の製品のカテゴリでは、ARに注力していくとの発言から、メガネ型デバイスへの期待や、Amazon Echoに対抗するSiriを搭載するスピーカーデバイスの登場も注目を集める。

しかし、iPhoneのエコシステムの「次」の展開についても見えつつある。アップルは自動運転に関する行動での試験走行の認可をカリフォルニア州で得ており、アップルのものと見られるテスト車両の目撃情報も報告され始めた。

こうした展開の一部は、6月に予定されている開発者会議WWDCで明らかになる。そして9月には、新型iPhoneの発表もあるだろう。引き続き、テクノロジーやライフスタイルを作り出す企業としてのアップルに注目していきたい。

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

「音声」巡り覇権争うアマゾンとグーグル、立ち止まるアップル

2019.01.21

CESで存在感を放つアマゾンとグーグル、各社の最新動向は?

レノボはGoogleアシスタント、Alexaに対応した新製品を発表

アップルは各社にプライバシー問題を警告、独自路線を貫くか

米ラスベガスで開催された世界最大級の家電見本市「CES 2019」で、別格の存在感を放っていたのがアマゾンやグーグルだ。2018年はグーグルがCESに初めて本格出展したことで話題となったが、2019年も大がかりなブースを設置して来場者の注目を浴びた。

ラスベガスのCES会場前に設置されたグーグルのブース

アマゾンやグーグルは音声アシスタントで競争しており、家電製品への組み込みを進めている。2019年のCESではどうだったのか、両社の最新動向をレポートする。

グーグル対アマゾンの音声争いが加速

グーグルは今年もCES会場に「Googleアシスタント」を目玉にした大型ブースを設置。巨大な壁面広告やモノレールのラッピング広告で存在を示し、家電メーカーのブースには白い帽子のスタッフを派遣するなど、CESを乗っ取る勢いだった。

「Googleアシスタント」に対応した家電製品が並ぶグーグルブース

一方、Alexaで先行するアマゾンも展示エリアを拡大。業界やメーカーの枠を越えた「Alexa対応製品」を一挙展示することで、エコシステムの強大さを示した。家庭向けのスマートホーム用途だけでなく、オフィスで使う事例も示すなど、応用範囲を広げている。

アマゾンは「Amazon Alexa」対応製品をブースに集めた

具体的な対応製品として、音声で操作できるスマートスピーカーやスマート電球はもちろんだが、これまでにないジャンルの製品も増えている。たとえばレノボは「目覚まし時計」と「タブレット」の2機種を発表した。

レノボの目覚まし時計「Smart Clock」(左)とタブレット「Smart Tab」(右)

Googleアシスタントに対応した「Smart Clock」は、目覚まし時計の置き換えを狙った製品だ。音声だけでなく画面のタッチ操作にも対応しており、カレンダーの予定や寝覚めのいい音楽、室内の照明と連動した目覚まし機能を提供する。

一方、Amazon Alexaに対応した「Smart Tab」は、一般的なAndroidタブレットとして使えるほか、ドックに置くと音声とタッチで操作するスマートディスプレイに早変わりする。自宅でも外出先でも1台2役で使えるお得さが特徴だ。

アップルが投げかける「プライバシー」問題

CESに両社が注力する背景には、音声アシスタント市場におけるシェア争いがある。「Amazon Echo」や「Google Home」といったスマートスピーカーの売上ではグーグルがアマゾンを猛追しており、2018年第1四半期には逆転劇を果たした(英Canalys調べ)。しかし第3四半期にはアマゾンが再び首位に立つなど、接戦が続いている。

その勢力はスマートスピーカーを越えて、家電全体に広がりつつある。家電の操作といえばスイッチやリモコン、タッチ操作が一般的だが、音声に対応する製品は増えている。これまで独自の音声アシスタント「Bixby」を展開してきたサムスンも2019年にはグーグルとアマゾンとの連携を発表した。

サムスンはスマートTVでグーグル、アマゾンと連携

このまま音声が普及していけば、世界中の人々がインターネットのサービスやコンテンツにアクセスする手段になる可能性がある。音声アシスタントのシェア争いは、スマホOSのシェア争いと同じくらい重要というわけだ。

ただ、音声操作はプライバシーに関する懸念もある。音声操作を受け付けるには、マイクが常時オンになっている必要があるからだ。マイクをオフにする機能はあるとはいえ、家庭内のプライベートな会話を常にマイクに拾われるのは心地よいものではない。

この問題に一石を投じたのがアップルだ。CES会場からよく見えるホテルの壁に意見広告を掲載。ラスベガスの有名なコピーをもじって「iPhoneで起きることはiPhoneの中にとどまる」と訴え、サードパーティと広く連携するアマゾンやグーグルを牽制した。

アップルはCESでプライバシー重視をアピール。元々の言葉は、「What happens in Vegas stays in Vegas.(ラスベガスで起きたことはラスベガスに残る)」というもの

アップルも独自の「Siri」をiPhoneに搭載し、スマートスピーカー「HomePod」も販売している。だがサードパーティとは積極的に連携していないため、音声のシェア争いでは不利な立場に追い込まれている。アップルがこのまま「プライバシー重視」路線を貫くかどうかも、音声アシスタント市場の行方を左右しそうだ。

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第30回

一度は姿を消したワイヤレス充電が再びメジャーになった理由

2019.01.21

いまや当たり前の「ワイヤレス充電」スマホ

開発も販売も、実は日本が世界初だった

過去にナゼ廃れたのか、今はナゼ流行っているのか

最近、ケーブルに接続する必要なく充電ができる、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンが増えてきている。一時は姿を消していたワイヤレス充電が、ここにきて再び脚光を浴びるようになったのはなぜだろうか。

世界初のワイヤレス充電対応スマホは日本製

スマートフォンを充電する際、多くの人は充電用の電源ケーブルに接続して充電していることだろう。だがここ最近、スマートフォンをケーブルに接続することなく、専用の充電台に置くだけで充電ができる「ワイヤレス充電」に対応したスマートフォンが増えているのだ。

例えばアップルのiPhoneシリーズであれば、2017年発売の「iPhone 8」シリーズ以降からワイヤレス充電に対応している。他にもグーグルの「Pixel 3」やサムスン電子の「Galaxy Note 9」、そしてファーウェイの「HUAWEI Mate20 Pro」など、海外製のハイエンドスマートフォンを中心として、ワイヤレス充電に対応したスマートフォンは着実に増えている。対応スマートフォンの広まりとともに、ワイヤレス充電をするための充電器も数が増え、家電量販店などで目にする機会も増えている。

ワイヤレス充電対応機種は急増しており、「iPhone XS」など最新のiPhoneもワイヤレス充電に対応している

充電をするためにケーブルに接続するというのは手間がかかるし、何よりケーブルは絡まりやすく取り回しが面倒なもの。それだけに、スマートフォンを置くだけで充電できるワイヤレス充電は消費者にとって非常に便利だ。したがってスマートフォンに搭載するという動きも比較的古くから進められていたのだが、現在のように広く普及するまでにはかなりの時間を要している。

実は、スマートフォン単体でワイヤレス充電ができる機種が最初に投入されたのは日本で、開発したのも日本企業である。2011年にNTTドコモから発売された、シャープ製の「AQUOS PHONE f SH-13C」がそれに当たり、Wireless Power Consortium(WCP)が策定したワイヤレス給電規格の1つ「Qi」に対応。Qi対応の充電器に置くだけで、スマートフォンを充電できる仕組みを備えていたのである。

世界初のワイヤレス充電対応スマートフォン「AQUOS PHONE f SH-13C」は、2011年にNTTドコモが提供。専用の充電器も提供していた

しかも当時、NTTドコモはQi対応のワイヤレス充電ができるスマートフォンの開発に力を入れており、「おくだけ充電」という名称まで付けて積極的なアピールを進めていた。さらにシャープだけでなく、NTTドコモと関係の深い他の国内スマートフォンメーカーともQi対応のスマートフォン開発を進め、市場に多くのワイヤレス充電対応スマートフォンが存在した時期があったのだ。

規格や充電性能の問題が解決し採用機種が増加

だが2013年を境に、NTTドコモのラインアップからワイヤレス充電対応のスマートフォンが一時期姿を消し、ワイヤレス充電は急速に存在感を失うこととなる。当時ワイヤレス充電に力を入れていたパナソニックモバイルコミュニケーションズやNECカシオモバイルコミュニケーションズなどが、iPhoneなどに押されてスマートフォン市場から撤退した影響も大きいが、より本質的な要因は2つあると考えられる。

1つは、急速充電に対する消費者のニーズが高まっていたためだ。当時はバッテリーの性能が現在より低かったため、スマートフォンを使っているとあっという間にバッテリーを消費してしまい、不満の声が多かったため、何よりも素早く充電できることが強く求められていたのだ。しかしながら当時のQiは電力の出力が弱く、充電速度が遅かったことから、消費者のニーズとマッチせず姿を消してしまったのである。

そしてもう1つの理由は、ワイヤレス給電規格が複数存在し、業界全体で、どの方式を採用するか方向性が定まっていなかったため、後続するスマートフォンがなかなか出てこなかったことだ。実際、2015年に日本でも発売されたサムスン電子の「Galaxy S6」「Galaxy S6 edge」はQi規格だけでなく、Power Matters Alliance(PMA、現在はAirFuel Alliance)が策定したワイヤレス給電規格も採用することで、ワイヤレス充電に対応させている。

2015年発売の「Galaxy S6 edge」は、当時まだ事実上の標準規格が定まっていなかったこともあり、複数のワイヤレス給電規格に対応していた

そして最近になってワイヤレス充電が再び日の目を見ることができたのは、それらの課題が解決したことが大きく影響している。急速充電に関しては、当初Qiのモバイル機器に向けた「Volume I」という規格では、送信できる電力が5W以下とされていたため充電速度が遅かったのだが、その後10W、15Wといったより大容量の送信ができる規格の策定が進んだことで、より速く充電できるようになったのである。

また規格の統一に関しては、アップルなど影響力の大きな主要スマートフォンメーカーがQiの採用に傾いたことで、Qiがスマートフォン向けの事実上標準規格となった。そのため多くのスマートフォンメーカーがQiを採用しやすくなり、急速に数が増えたといえる。

さらにもう1つ、高いデザイン性や防水性能など、スマートフォンに求められる要素が年々増えていることも、ワイヤレス充電が復活した大きな要因として挙げられるだろう。一方で、かつて必要だったPCへの接続など、スマートフォンに何らかのケーブルを接続する必要性は年々薄くなっている。将来的にはスマートフォンのワイヤレス充電対応が当たり前となり、充電用のUSB端子やLightning端子がなくなることも十分あり得るだろう。