「CX-8」発表のマツダ、クロスオーバーSUV攻勢で成長軌道回帰なるか

「CX-8」発表のマツダ、クロスオーバーSUV攻勢で成長軌道回帰なるか

2017.05.09

連休前に発表となったマツダの決算。今期連結業績見通しにおける純利益は、3期ぶりの増益となる1000億円(前期比7%増)を予想した。販売はクロスオーバーSUV(多目的スポーツ車)の主力である新型「CX-5」のグローバル展開を中心に、世界販売で自身の記録更新となる160万台を狙う。

国内販売が好調な「CX-5」。グローバル展開の成否は

CXシリーズを拡充

マツダは現在、中期経営計画「構造改革ステージ2」を進める中で、同社のセールスポイントとなった「スカイアクティブ技術(SKYACTIV TECHNOGY)」の次世代商品群の開発に取り組んでいる。内燃機関の技術進化と合わせて、グローバルでの環境規制への対応や安全なクルマ社会の実現に向け、ハイブリッド車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、電気自動車(EV)といったクルマの電動化や、安全技術の開発(自動運転支援)を2019年~2020年に加速させる計画だ。

しかし、マツダのスカイアクティブ次世代商品群が投入されるのは来期終盤以降であり、当面は乗用車をベースに乗り心地を重視した、マツダのクロスオーバーSUVブランド「CX」を冠した車種の拡大で攻勢をかける。

この流れでマツダは、新型CX-5をグローバル展開し、2017年後半には北米でクリーンディーゼルモデルを投入する。また、日本ではディーゼル専用車だった「CX-3」にガソリンモデルを追加。さらに3列シートの新型「CX-8」をまず日本から投入して、ミニバンからの転換を図ることにしている。

「CX-8」は内装の画像しか公開されていない

世界的に人気のSUV、販売比率を向上へ

世界の乗用車市場の潮流は、このSUVにある。米国市場でも最近の人気は大型SUVとなっている。マツダとしてもグローバル販売の6割を稼ぐ米国で新型CX-5を今期初めから投入しているし、昨年から販売している大型SUV「CX-9」も、今期は通年で貢献することになる。

日本車メーカーとしては中堅クラスで、マツダのライバル的な存在であるスバルは、北米依存がマツダ以上に高いがSUVで先行しており、スバル車のグローバル販売に占めるSUV比率は70%を超える。マツダは前期で39%だったSUV比率を今期は45%程度に引き上げる方針で、スバルを追いかけることになる。

クロスオーバーSUVの車種を拡充するマツダ。車種を絞ったスバルとは異なる方向でもあり、今後の動向が注目される。

販売で過去最高も目立つ減益幅

マツダの2017年3月期の決算は、グローバル販売台数が対前期比2%増の155万9000台と過去最高となったものの、売上高は3兆2144億円(前期比6%減)、営業利益は1257億円(同45%減)、純利益は938億円(30%減)の減収減益となった。

2017年4月28日の決算説明会に登壇したマツダの小飼雅道社長

特に営業利益、純利益の大幅減益が目立つ。これはひとえに、為替の振れによる業績への影響度が高いことからくるものだ。マツダの輸出比率は日本の自動車メーカーの中でも突出しており、現状でも約8割となっている。

必然的に、前期は円高による為替差損が損益に大きく影響した。マツダの前期業績での為替レートは、USドルで108円(前々期は120円)、ユーロで119円(同133円)。ドルでは12円、ユーロでは14円の円高となった。

これにより、営業利益段階での為替差損分は、USドル185億円、ユーロ261億円、英ポンド198億円、豪ドル189億円、カナダドル141億円、その他53億円の計1027億円と、各国通貨に対する円高分が営業利益の減益分1011億円を上回るほど。マツダにとって、前期の円高は大きな痛手となったのだ。

もちろん、マツダはこの間、2014年にメキシコ工場を稼働させ、2015年にはタイにエンジン工場を新設して車両、エンジン、トランスミッションの一貫生産体制を確立するなど、海外現地生産体制の拡充を進めてきてもいる。

中国・アセアンに活路

しかし、マツダは北米以外も欧州などで販売基盤があり、なかなか高い輸出比率から抜けきれない状況にある。マツダはこのため、中国とアセアン地域の強化に乗り出している。

中国とタイに生産拠点があり、中国では2016年6月から「CX-4」を現地生産に切り替えてきている。また、2016年秋に「ASEAN事業室」を新設し、今期は現地生産を中心にタイでの販売を19%増やす計画だ。また、マレーシア、ベトナムなどの販売網を拡大し、中期的にはアセアンの販売を5割増とする計画を立てている。

「2017中国カーデザイン・オブ・ザ・イヤー」を受賞し、販売も計画を上回るマツダの「CX-4」

こうして、北米依存の収益構造、為替感応度の課題を段階的にクリアーしていく構えだ。

復活を果たしたマツダの今後

マツダが長年の米フォードとの資本提携を脱し、1990年代の苦境から立ち直って、クルマを構成する諸要素すべてを刷新する「スカイアクティブ技術」と並行し、生産分野の「モノづくり革新」をスタートさせたのが2006年あたり。内燃機関の進化に向け、モデルベース開発力に独自の磨きをかけることにより、2012年から2015年にかけて現行の新世代商品群を市場に投入してきた。

マツダの新世代商品群

一方で、新デザインテーマ「魂動(こどう)」をマツダの日本車デザインブランドとして形成するなど、この間の流れはマツダ復活への道のりだった。

しかし、前期の円高は大幅減益の要因となり、為替変動の影響はいまだに大きいものがある。小飼雅道社長は、今期の為替レートを対ドル108円と想定し、グローバル販売を160万台に乗せて3期ぶりの増益を目指すプランを発表した。

着実なグローバル台数成長とブランド価値向上がカギ

一方で、今の中期経営計画の最終年度である2019年3月期の売上高営業利益率目標を「7%以上」から「5%以上」に下方修正している。グローバル販売を年間5万台ずつ増やす計画とするものの、為替の前提を1ドル=120円から108円に変更したことによるものだ。小飼社長は「着実な台数成長とマツダブランド価値向上」を今の中計のテーマに設定している。

その意味では、次の中期経営計画でマツダは真価を問われることになる。今秋の東京モーターショーでは、スカイアクティブの次世代ガソリンエンジン技術と魂動デザインを盛り込んだ“次世代VISIONモデル”が公表されるだろう。

電動車や自動運転車で、マツダは独自の方向性を示せるのか。包括業務提携を結んでいるトヨタ自動車との協力関係は深まるのか。似て非なるスバルとの違いは明確となるのか。このあたりを念頭に置きつつ、東京モーターショー以降のマツダの動きに注目したい。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。