今期減益予想でも前向きなスバル、その独特な事情と経営戦略

今期減益予想でも前向きなスバル、その独特な事情と経営戦略

2017.05.11

2016年度の業績で売上高・販売台数ともに過去最高を達成したスバル。今年度も台数は増え、売上高も増収の予想なのだが、なぜか営業利益は減益の見通しだ。その理由を探ると、スバルの独特な事情と将来に対する考え方が分かってくる。

2017年5月9日の決算説明会に登壇したスバル代表取締役社長の吉永泰之氏

前期は実質的に増益

まずはスバルの2016年度業績を振り返りたい。売上高は3兆3260億円、連結販売台数は106万4500台と、ともに5年連続で過去最高を更新。台数でいえば、同社としては初めて100万台の大台に乗せた。

営業利益は2015年度比で3割近い減益となる4108億円だった。1500億円を超える大幅な減益だが、スバルの説明によると、このうち1400億円以上は円高に振れた為替の影響だという。為替影響以外の減益要因には、いわゆるタカタのエアバッグ問題に関連するリコール費用も含まれている。決算説明会でスバルの吉永社長は、「(2016年度は)実態としては増益を確保」したとの見方を示した。

注目したいのは、すでに始まっている2017年度(2018年3月期)の業績予想だ。販売台数は前期比4万1000台増加の110万5500台、売上高は同940億円増収の3兆4200億円を見通しているにも関わらず、営業利益は8億円の減益となる4100億円を予想している。

なぜか減益予想の2017年度

為替レートについては、2016年度実績の1ドル=108円から今期は同110円と円安に振れると想定。クルマも売れて、為替も好転する見通しなのに、減益を予想しているのはなぜなのか。吉永社長の言葉から探った。

減益予想の要因は

吉永社長は減益予想の要因として以下の5点を指摘する。

1.販売台数は増えるが、車種の構成が変化すること

2.原材料の市況が悪化していること

3.試験研究費を増やしていること

4.米国で販売管理費(販売奨励金=インセンティブ)が増加していること

5.タカタ以外にもクレーム費用が若干増加していること

このうち米国の販売管理費については、同国の事業環境が大きく関係している。

インセンティブの増加は避けられない情勢

米国では自動車需要がピークアウトしたとの観測があり、2017年1~4月は全需が前年割れを続けるなど、販売環境が悪化している。スバルは「インプレッサ」が好調で、この4月も前年同期比プラスの結果だったそうなのだが、やはり販売管理費の増加は避けられない様子だ。ただし、スバルのインセンティブ上昇は単純な値下げ攻勢に起因するものではなく、金利が上昇している局面で、低金利クレジットを維持しているがゆえの現象らしい

2016年10月に発売したインプレッサ。手前が「インプレッサスポーツ」、奥が「インプレッサG4」だ。米国でも人気で、4月は6000台の販売計画に対し7000台以上を売ったという

市況の悪化とクレーム費用の増加も、スバルに限った話ではないだろう。減益予想の要因として注目すべきは、販売台数における車種構成の変化と、増加する試験研究費についてだ。

販売台数は増えるが、その内訳は

スバルは今期、販売台数を2016年度に比べて4万1000台上乗せする計画だが、内訳を見るとインプレッサが5万2000台の増加で、SUVの「レガシィ アウトバック」などの車種は計1万1000台の減少になるのだという。

一般的に、セダン型のクルマはSUVよりも利益率が低い。売れる車種が変化すると、損益面に影響が出るのは自動車メーカーに共通する現象だ。しかし、ここまで大きな影響が出ている状況というのは、ここ最近のスバルが、利益率の高い車種を多く販売していたという実績を反映しているものと見ることができる。

自動車メーカーにとって、クルマの市場投入時期に一定のサイクルがあるのは当然だ。今はインプレッサが売れているが、スバルは今後、米国でSUVのラインナップを強化していく方針を示しており、2018年には3列シートのミッドサイズSUV「アセント」を投入する予定としている。米国ではセダンからSUVを含むトラック系へと需要が激しくシフトしている様子。SUVが売れ始めると、スバルの損益面にはプラスの影響が出るはずだ。

米国で2018年に発売予定の「アセント」

減益予想の要因として、車種構成以外で気になるのが試験研究費の増加だ。スバルは何に資金を投じるのか。

自動車業界が急速に変化、スバルはどうする

「自動車史として、次元が変わる技術進化が起きている」。スバルの吉永社長は、独ダイムラーがメルセデス・ベンツの戦略として掲げる「CASE」という言葉に言及しつつ、現在の自動車業界をこのように分析した。CASEはConnected(つながるクルマ)、Autonomous(自動運転)、Shared & Service(カーシェアリング)、Electric Drive(クルマの電動化)という4つの言葉の頭文字だ。

このような状況の中、スバルは試験研究費を前期の1142億円から1340億円に増やす。何に注力するのかといえば、吉永社長が強調したのが電動化の部分だ。

吉永社長が「大事なページなので」と詳しく説明したスライド。最下部にある図から分かるのは、スバルが「CASE」の「E」(電動化)に注力する姿勢を示していることだ

ただ電気自動車(EV)を出せばいいというのではなく、「いかにスバルとして魅力あるEVを開発できるかが勝負」というのが吉永社長の考え方。電動化の方向性としては、プラグインハイブリッド車(PHV)については提携関係にあるトヨタ自動車から学び、EVの方でスバルらしいクルマを開発するという方針のようだ。

PHVは2018年、EVは2021年の発売を予定。スバルらしいEVの在り方は現時点で未知数だが、現状の商品群から考えれば、車重が重くてバッテリーの減りが早いといわれる、SUV型のEVに同社が挑戦する可能性もゼロではないだろう。

やるべきことは、きちんとやる

スバルといえば高い営業利益率が特徴の1つだが、試験研究費が膨らむことで、今後も減益の流れが続くとすれば、その特徴を維持するのは難しくなる。このあたりについて吉永社長は、2桁の利益率を維持していく方針に変わりはないと明言しながらも、業界の現状を踏まえ、「(試験研究費の増額のような)やるべきことは、きちんとやる」という考え方を示した。

販売台数は増加、売上高は増収、為替は好転を見通しながらも、営業利益は減益というスバルの今期業績予想だが、その中身を見ると、同社の姿勢が前向きであることを感じられた。

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

新AQUOSは“片手ポケット族”狙う iPhone不在の「小型スマホ」市場に勝機

2018.11.16

シャープが新スマホ「AQUOS R2 compact」を発表

大画面化の波に逆らい、「片手ポケット族」が増加傾向に

iPhone不在の「小型スマホ」市場を狙う

11月15日、シャープがAndroidスマートフォンの新製品「AQUOS R2 compact」を発表した。名前に「compact」と付いている通り、最近のスマホ市場では選択肢が減っている小型モデルであることが特徴だ。

小型スマホの需要を取り込む「AQUOS R2 compact」

コンパクトな見た目とは裏腹に、中身にはハイエンドである「AQUOS R」シリーズのスペックを詰め込んでいる。世界的にスマホの大画面化がトレンドとなっている中で、あえて時代に逆行するシャープの狙いはどこにあるのだろうか。

スマホを片手で持ち、ポケットに入れて使う人が増加

世界のスマホ市場では、6.5インチの「iPhone XS Max」に代表される大画面モデルが人気を博している。だが、日本では通勤電車などの利用シーンにおいて、片手で使う人が多いといわれている。シャープによれば、スマホを片手で持つ人は64% 、服のポケットに入れて持ち運ぶ人は49% に達しており、その割合は上昇傾向にあるという。

片手で持ち、ポケットに入れて持ち歩く「片手ポケット族」が多いという

その背景として、シャープはスマホの「インフラ化」を指摘する。SNSやコンテンツを楽しむだけでなく、サービスの利用やモバイル決済にスマホは欠かせない存在になっており、日常生活でスマホを取り出す場面が増えている。

AQUOS R2 compactは、日本人の手のサイズを念頭に置いた「横幅64mm」のボディに、できるだけ高性能な部品を詰め込んだハイエンドコンパクト機になっている。プロセッサは最新のSnapdragon 845、メモリは4GBを搭載しているが、これは大画面モデルのAQUOS R2と同等だ。

ポケットに入れやすいサイズに高性能を詰め込んだ

スマホ本体を小型化する一方、画面は前モデルの「AQUOS R compact」より大型化した。このためにシャープは画面の上下に切り欠き(ノッチ)を持つIGZOディスプレイを開発。インカメラと指紋センサを搭載しつつ、表示領域を上下に広げてきた。

前モデル(左)と比べて新モデル(右)は表示領域が広がった

「iPhone不在」の小型スマホ市場を直撃

シャープによれば、小型スマホを求める人は全体の3割程度という。スマホ市場では残りの7割に向けた大画面モデルが幅を利かせており、最新のiPhoneでは6.5インチのXS Maxに加え、一般向けモデルの「iPhone XR」も6.1インチとなっている。

一方、小型モデルとして根強い人気のあった「iPhone SE」は、後継モデルが出ないまま販売が終了。中古市場では価格が上昇する騒ぎもあった。

日本で最大シェアを誇るiPhoneだが、小型スマホ市場では存在感が薄れつつある。ソニーモバイルはXperiaシリーズのコンパクト機を投入しているが、2018年夏モデルの「Xperia XZ2 Compact」と比較して、シャープ機は画面の大きさ、薄さ、軽さの面で圧倒している。

中国メーカーとして日本でも勢いを伸ばすファーウェイ、OPPOも世界市場において大画面化競争を繰り広げており、小型モデルに積極的な動きは見せていない。この点もシャープにとって有利に働いている状況だ。

また、AQUOS R2 compactは顔認証と指紋認証の両方に対応しているのも特徴。これは、iPhoneにもXperiaにもない機能だ。スマホをポケットから取り出し、顔の前に持ち上げるだけでロックを解除できる顔認証だが、卓上に置いている場合は使いにくい。だが指紋センサがあれば、指を置くだけで済む。

顔認証に加えて指紋認証にも対応

スマホの端末メーカーの多くはグローバル市場に目を向け、大画面化のトレンドを追いがちだ。だが、シャープは国内の需要をしっかりとらえた上で、日本のユーザーに刺さる製品作りを続けている。

依然としてiPhone人気が続いている中で、限られた市場であっても「不在」のチャンスをタイムリーに活かし、ユーザーを奪還する。国内に目配りできるシャープならではの戦い方に注目したい。

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

知って納得、ケータイ業界の"なぜ" 第23回

大画面化するスマートフォン 使いやすさの試行錯誤は縦長から折り畳みへ

2018.11.16

海外メーカーの台頭で日本にも大画面化の波が到来

大画面化と使いやすさの両立、各社の工夫の歴史

縦長スマホにとって代わるのは「折り畳み」スマホか

スマートフォンのディスプレイは年々大型化が進んでおり、かつては「大きすぎる」と言われた5インチディスプレイが、今や小さい部類に入ってしまうほどだ。一方で使いやすさを維持しながらディスプレイの大画面化を実現するため、メーカー各社はさまざまな工夫を重ねている。スマートフォンのディスプレイサイズはなぜ大きくなり、今後はどのように変化していくのだろうか。

海外メーカーの台頭で日本でも大画面化に拍車

スマートフォンにとってディスプレイは、単に情報を表示するだけでなく、タッチして操作するインタフェースも兼ねている非常に重要な存在だ。そのスマートフォンのディスプレイが、ここ10年ほどで最も大きく変化した要素が「サイズ」である。

どれくらい大きくなったのかというのは、新旧のスマートフォンのディスプレイサイズを比べてみれば一目瞭然だ。日本で最初に発売されたiPhoneである「iPhone 3G」のディスプレイサイズは3.5インチだった。一方、「iPhone X」や「iPhone XS」、「iPhone XR」といった最近のiPhoneのディスプレイサイズは6インチ級があたりまえ。1.7倍に以上に拡大しているのだ。

今やスマートフォンのディスプレイサイズは5インチ以上が一般的で、6インチも珍しくなくなった。画像の「iPhone X」のディスプレイサイズは5.85インチだ

さらに「iPhone XS Max」は6.5インチもあるし、他の大手メーカーでもサムスン電子の「Galaxy S9+」やファーウェイの「HUAWEI P20 Pro」のように、6インチを超えるディスプレイを採用した機種は増えている。なぜ、これほどまでにディスプレイサイズが大きくなったのかというと、それは大画面が欲しいというユーザーが多いため。スマートフォンの性能向上によって動画やコミック、ゲームなどのコンテンツを楽しむ人が増えていることから、ユーザーのニーズに応えるかたちで、大画面が求められるようになったといえよう。

だが日本国内の事情に目を向けてみると、公共交通機関での通勤・通学が多いのに加え、片手で文字入力ができる「フリック入力」が広く普及したこともあり、片手でスマートフォンを操作する傾向が強く、実は大画面に対するニーズはそこまで大きい訳ではない。実際日本では、4インチディスプレイの「iPhone SE」が人気を保っていたし、シャープの「AQUOS R Compact」やソニーモバイルコミュニケーションズの「Xperia XZ2 Compact」などのように、4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトなスマートフォンも投入されている。

2018年の夏モデルとして販売されている「Xperia XZ2 Compact」は4.9インチと、最近では珍しくなった4インチ台のディスプレイを採用したコンパクトモデルだ

にもかかわらず、日本でも大画面のスマートフォンが増えているのはなぜか。まずは国内のスマートフォンメーカーが減少したことで、市場に海外メーカー製のスマートフォンが増えているためだ。海外では移動手段の違いに加え、文字入力システムの違いからスマートフォンを両手で持って操作する機会も多く、片手操作に対するこだわりが弱いのだ。

新興国などでも、ディスプレイサイズが大きいほど人気が出る傾向が目立ち、大画面に対するニーズが強いのである。海外製スマートフォンが日本市場に入り込みやすくなったことが、日本国内においてもスマートフォンの大画面化を進めたといえる。

縦長スマホの元祖はアップルだった?

とはいえ、スマートフォンが大画面化するに従って、本体の横幅がひろがり、さすがに海外のユーザーからも「持ちづらい」という声が増えてきたようだ。そこで近年急速に増えているのが、従来の16:9比率ではなく、18:9や19:9といった縦長比率のディスプレイの採用である。

持ちづらさに影響する横幅をこれ以上広げることなく、ディスプレイを縦に伸ばすことで大画面化しようとしたのだ。この流れをけん引したのは韓国メーカーで、2017年にはLGエレクトロニクスが「LG G6」(日本未発売)、サムスン電子が「Galaxy S8/S8+」といったように、縦長比率のディスプレイを採用した機種を積極的に投入した。

2017年発売の「Galaxy S8」「Galaxy S8+」は、18.9:9と縦長比率の有機ELディスプレイ「インフィニティディスプレイ」を採用したことで大きな話題となった

この韓国の両メーカーとも、グループ内にディスプレイデバイスを開発する企業を持っている。それゆえ縦長比率のディスプレイが生み出されたのには、実は大画面化だけが目的ではない。自社のスマートフォンに新しいディスプレイをいち早く搭載し、トレンドを作り上げることで、グループ企業のディスプレイデバイス販売拡大につなげる狙いもあったといえる。

だが、縦長ディスプレイで大画面化するというアイデアを真っ先に実践したのは、実はアップルである。アップルはかつてディスプレイの大画面化に消極的で、2011年発売の「iPhone 4s」までは3.5インチのサイズにこだわっていた。だが大画面化を求めるユーザーの声を受け、2012年発売の「iPhone 5」でディスプレイサイズを4インチに拡大した際に、ディスプレイの横幅はそのままに、縦に長くするという手法をとったのである。ある意味、アップルは5年前に現在のトレンドを先取りしていた、といえるかもしれない。

スマートフォンのディスプレイを縦に伸ばして大画面化するというアイデアをいち早く実践したのは、アップルの「iPhone 5」だった

しかしながら、ディスプレイを縦に伸ばして画面サイズを大きくする工夫にも、いずれ物理的な限界が来ることは目に見えている。そこで、さらなる大画面化の追求で、いま注目されているのが折り畳み式ディスプレイだ。このアイデア自体は、NTTドコモが2013年の「MEDIAS W」(NECカシオ モバイルコミュニケーションズ製)、2018年の「M」(ZTE製)で既に実現しているものだが、いずれも2枚のディスプレイを用いていたため、どうしても画面の折り目に継ぎ目が発生してしまう弱みを抱えている。

折り畳みスマートフォンとして注目されたNTTドコモの「M」は、2枚のディスプレイを用いるスタイルであるため折り畳み部分に継ぎ目が発生してしまう

だが有機ELを用いれば、ディスプレイを折り曲げられる“真の”折り畳みスマートフォンが開発できると言われており、大手スマートフォンメーカーがその開発を進めているとの観測報道も幾度となくなされている。

これは折り畳みできるという意味の「フォルダブル」スマホなどと呼ばれ、先ごろはサムスン電子が、来年発表するというフォルダブルスマホ「Galaxy F」のプロトタイプを開発者向けに見せはじめたりしている。2019年は各社から製品が登場するのではないか? との声もあるようだが、いま確実に言えることは、真の折り畳みスマートフォンがいつ、どのメーカーが、どのような形で投入するのかが、大いに注目されているということだけである。