"ペダモニ"のパイオニアになれた理由 - 自転車パワーメーターの話

2017.05.12

自転車好きにとって、パイオニアのイメージは"ペダモニのパイオニア"だ。パイオニアのサイクル事業の歴史はペダリングモニターシステム発売後わずか4年と浅いが、サイクリストにイメージを浸透できたのはどうしてなのか。第3回は国内市場で存在感を築けた理由に迫る。

話を伺ったサイクルスポーツ事業推進部 藤田隆二郎氏(左)とサイクルスポーツ事業推進部 碓井純一課長(右)

他の電機メーカーが成功できない理由

筆者はサイクリストだが、今回、パイオニアに話を聞くまで知らなかったことがある。それは、ここ数年の自転車ブームを背景として、電機メーカーがサイクルコンピュータを開発し、販売していたことだ。

製品の存在が知られないという事態はパイオニアにも起こりえたことである。パイオニアは2008年12月からパワーメーターの開発に取り組み、2013年7月に「ペダリングモニターシステム」を発売した。この間に、何らかの目立ったアクションがなければ、サイクリストに認知さえしてもらえない製品になったかもしれない。

しかし、パイオニアの場合、そうはならなかった。

「今だから言えますが、販路の開拓が本当に大変でした」と碓井氏は話す。2013年7月に製品をテスト発売するまで、自転車販売店に意見を聞いて回ったが、「あのパイオニアさんが、なぜ自転車部品を?」というような返しもあったという。

そればかりではない。パイオニアが開発したペダリングモニターシステムは、10万円台半ばの高額商品。トレーニング機材であり、売るべき相手は競技志向が比較的高い人だ。そのため、売り先は量販店ではなく、プロショップとなる。そのため、プロショップに強い販売代理店と組むのが定石なのだ。

とはいえ、販売代理店にとって、パイオニアは新参者。パイオニアさんがなぜ? という流れになる。そこへスムーズに食い込めたのは、ペダリングモニターシステムがすでに広く知れ渡っていたからだ。

前回も記したとおり、パイオニアはテスト販売前から、すでにワールドチームに機材供給を行っていた。それ以前も、日本最大級の自転車展示会、サイクルモードで話題を作っていた。認知度はあった。だからこそ、プロショップへの販路も比較的スムーズに開けたのだ。

テスト販売がスタートしたのは2013年7月。販売代理店と相談し、国内40店舗に絞って販売を行った。パワーメーターは取り扱いの難しい商品だからだ。店内に置いておけば売れるわけではない。その魅力を顧客に適切に伝え、取り付けやサポートまで手がけ、使い方も指導できる深い知識がなければならない。

目論見は当たった。取扱店を絞ることで、十分に魅力を伝え販売することに成功したのだ。以後、販売店を徐々に増やし、今では国内800店で販売している。当初は「150店舗が限度でしょう」と販売代理店から言われたが、それ以上に大きな市場が築けた。

国内一択の状況

パイオニアのペダリングモニターシステムは、パワーメーターのなかでも後発の製品である。後発でも成功でき、"ペダモニのパイオニア"というイメージを作れたのはなぜか。

容易に思い浮かぶのは、価格と性能だ。パワーベクトルといういままでにない機能を搭載し、ワールドチームの使用に耐える耐久性と精度、価格は10万円台の半ばとはいえ、SRM社製のように30万円超のバカ高い値付けではない。

ペダリングモニターシステムのセンサー(左)とサイクルコンピュータ(右)

もうひとつ付け加えたいのは、パワーメーターという機材の使用上の特性だ。パワーメーターは精密機器であり、何らかのトラブルがあった場合に、すぐに修理してもらえる状況が望ましい。パワーメーターはペダルをこいだときに、「何ワット出た」と喜ぶものではなく、継続的なトレーニングに欠かせない機材だからだ。1カ月前に比べてどれだけ大きな力を出せるようになったのか、身体の疲労はどうなのか、レースに向けての調整を図れているのか、継続的にデータをとってこそ、有効な解析が可能になる。

仮に故障して販売店で解決できない場合は、メーカーに送り届けることになるが、この輸送・修理にかかる間は、データの採取ができなくなってしまう。海外製の場合、電池切れという単純なトラブルでも、メーカーの本国に送り、かなりの時間・費用を要するケースもあるようだ。この点、パイオニアの場合は静岡にサービスセンターがあり、データが採取できない時間は最小限に抑えられる。

国内で販売し、国内でサポートが受けられるのは、大きなメリットだ。販売側もお客に勧めるうえで、こうしたメリットは強調しやすい。お客もこうした側面は無視できないところだ。

海外販売も開始

ところで、海外でも販売は行われているのか。そのときのサポート体制はどうなっているのだろう。聞けば、海外向けは2014年から開始しており、日本と同様の販売・サポートシステムを築いているという。

販売店で取り付け、問題が生じればパイオニアの海外販社を通じて対応する。米国、欧州、豪州、台湾といったように、サイクル事業を始める前から、有力な地域には海外販社が存在しており、現地でサポートできる体制があったのだ。このため、故障しても購入先の国でサポートを受け、計測期間のロスが少なく対応できる体制を組めているという。

ペダリングモニターシステム販売の海外ネットワーク。米国、欧州、豪州、台湾と自転車人気の高いところに拠点がある。パイオニアの既存事業の拠点であり、偶然の一致で重なったという(パイオニア資料より)

こうして、パイオニアは国内、海外に販路を築き、サイクル事業を軌道に乗せることに成功した。パイオニア全体から見れば、まだ小さな存在だが、当初3人で始まった事業は今や開発・設計・営業人員を抱えるまでに成長している。

苦労を重ねて成功したパイオニアのサイクル事業。"ペダモニ"と略称で呼ばれるようになり、パワーメーター市場ではブランド力を有するまでになった。しかし、それは束の間のことに過ぎないのかもしれない。なぜなら、自転車界の巨人、シマノが今夏にパワーメーターを発売するからだ。パイオニアに打つ手はあるのか。どう立ち向かっていくのか。

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

メディア露出多数、高まる「N高出身」への期待値

2019.03.22

ネットの学校「N高」の卒業式に潜入

開校時に入学したN高1期生が卒業した

世間の注目を浴び続けた生徒は、何を想う?

3月、角川ドワンゴ学園「N高等学校」の卒業式が東京・お台場にて開催された。

「ネットの高校」として、3年前に設立したN高。この日、2016年の開校時に入学した第1期生と、途中転入・編入した生徒をあわせ、計1593名が卒業した。3年前、『VR入学式』で世間を賑わせたこの学校を巣立つ卒業生たちは、N高での日々をどう捉え、今後はどのようなキャリアを描いていくのだろうか。

卒業式は2019年3月20日、お台場にて行われた

卒業式を彩る最新テクノロジー

N高は、ドワンゴとKADOKAWAの経営統合で誕生したカドカワが設立母体となり、2016年4月に開校された通信制高校だ。同校は開校後、2年次編入なども受け入れてきたため、これまでも卒業生を排出してきてはいたが、「1年生~3年生をN高で過ごした生徒」が卒業するのは、初めてのことだ。

卒業式には多くの報道陣も参加した。生徒にとって、「卒業式に記者がいる」「自分たちが卒業する様子がテレビやWebで取り上げられる」というのは不思議な感覚だろう。とはいえ、もう「VR入学式」に「ニコニコ超会議」へのブース出展(N高ではそれを「文化祭」と表現)などの経験を経て、メディアへの露出には慣れてしまっているのかもしれない。

そして、今回の卒業式も例によって独特だった。

卒業式は任意参加で、会場には袴や制服に身を包んだ生徒が集まる一方、その様子をライブ配信することで、会場に来られない生徒生徒も参加できる仕組みになっていた。会場のスクリーン上にはニコニコ生放送さながら、リアルタイムでコメントが表示されており、こうした演出は「N高らしい」といった印象を受けた。

卒業式の様子。オンライン参加者のコメントがスクリーンを流れる

中でも印象深かったのは、当日来られなかった生徒を代表して、米シリコンバレーに留学中の佐々木雅斗さんが「ロボット」に自分の顔を映して卒業証書を受け取ったシーンだ。

使用したのは、ANAが“未来の移動手段”として開発する、視覚・聴覚・触覚などを備えた、ユーザーの分身となるロボット「ANA AVATAR」。同校ではこのロボットを試験的に授業にも導入しているそうで、こういった最新のテクノロジーを使うあたりもN高らしい。

遠隔操作ロボット「ANA AVATAR(Beam Pro)」を用いて卒業証書を受け取った佐々木さん

と、テクノロジーにばかり目が行きがちではあるが、そもそも「高校生がシリコンバレーに留学している」という事実も驚くべき点だ。高校に通いながらも、シリコンバレーでビジネスを学ぶ――、というキャリアを選べるのは、学校という場所の制約を受けない、ネットの高校のメリットと言えるだろう。

卒業式にはほかにも「異色のキャリア」を持つ生徒たちが集まり、特に活躍した卒業生に対する特別表彰も行われた。

表彰を受けたのは、東京から鹿児島県に移住し、農業や水産業を手伝い地域活性化に貢献する白鳥優季さん、第18回アジア競技大会ジャカルタ・パレンバン「ウイニングイレブン 2018」eスポーツ 金メダリストの相原翼さん、N高のプログラムを最大限に活用し、スタンフォード大学やオックスフォード大学のサマープログラムに参加した冨樫真凜さんなど。その活躍の幅は広い。

さまざまな分野で活躍したN高生に対しては、特別表彰が行われ、記念品としてクリスタルトロフィーが贈呈された

メディア露出が多いがゆえに高まる期待値

N高を卒業した個性豊かな面々は、今後は大学進学、就職とさまざまなキャリアを歩む。

日本初で唯一N高にのみ実在するという「起業部」に所属し、かつ起業第一号として「Easy Go」という会社を創業している、鈴木颯人さんと山田陽大さんから「N高で過ごした時間」についてコメントをもらった。

「元々は地元の進学校に通っていたのですが、『自分が好きなことをしたい』『起業したい』という想いがあり、N高に入学しました。年齢や場所に縛られず、多くの人とコミュニケーションを取れ、充実した3年を過ごせました」(鈴木さん)

「以前通っていた学校が自分と合わず、ネットで見つけたN高で『ここだったら新しいことができるかも』と入学を決意しました。今振り返ってみて、やはり『この学校に来てよかった』と思います」(山田さん)

Easy Go代表取締役の鈴木颯人さん(左)と取締役の山田陽大さん(右)

2人に限らず、卒業生のコメントを聞いていくと「この場所で挑戦してみたい」という想いの元、N高を選んでいる生徒が多い印象だ。

普通の高校とは違い、メディアに露出する機会の多いN高での生活は、良くも悪くも、世間からの注目を浴びる。まだ高校生の彼らにとっては、その視線が時に辛く感じることもあっただろう。ただ、その一方で鈴木さんは「初めて会う方とお話しする際、『N高出身です』と言うだけで、会話が広がることがよくあります」とその知名度を好意的に捉えている。

若くして、覚悟を持ってN高という環境に飛び込んだ生徒たちは、周囲の視線を浴びつつ、たくましく成長してきたことだろう。「N高出身」というキャリアは、彼らにとって1つの大きな武器になりそうだ。

カドカワは新たに2019年4月から、「N中等部」も開校する予定だ。「ネットの学校」という、世間の注目が集まる新しいコンセプトの学校だからこそ、在校生・卒業生の動向は、今後もしばらくは注目され続けそうだ。

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スマホは「望遠」でデジカメに追い打ち? OPPOの10倍ズーム技術が面白い

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2019.03.22

中国スマホメーカーのOPPOが独自のカメラ技術を説明

開発競争が続くスマホカメラ、トレンドは「望遠」へ

高倍率ズームスマホの登場で、デジカメの優位性に危機?

中国のスマホメーカーとしてシェアを急拡大するOPPOが独自に新開発したカメラ技術、「10倍ハイブリッドズーム」が面白い。実際に2019年の新機種からスマホへの搭載を進め、日本市場へも製品を投入するという。

OPPOが「10倍ハイブリッドズーム」技術を紹介

メーカー間の開発競争が続くスマホカメラだが、「望遠」が次のトレンドになりつつある。デジタルカメラに匹敵する10倍もの高倍率ズームを、OPPOはどのように実現したのだろうか。

1年で7機種を投入、気付いた「日本市場の難しさ」

OPPOは世界のスマホ市場で熾烈な4位争いを繰り広げている。サムスン、アップル、ファーウェイのトップ3社に続く集団の中で、2018年は中国Xiaomiに僅差で迫る5位になった(IDC調べ)。

OPPOは2018年、日本市場で7機種のスマホを発売した。OPPO日本法人の鄧宇辰社長は、これまでに国内販売チャネルを12に拡大し、あわせて認定修理店を全国に展開したことを挙げ、「日本のSIMフリー市場でいち早く成長するブランドになった」と振り返る。

オッポジャパン 代表取締役社長の鄧宇辰氏
2018年の1年間にスマホを7機種投入

2019年は国内展開をさらに加速する。日本の消費者に向けたコミットメントとして、件の「10倍ハイブリッドズーム」機能を備えたスマホや、FeliCa・防水対応のスマホ、新たに立ち上げたブランド「Reno」シリーズの市場投入を約束する。

また、話題の「5Gスマホ」の市場投入も急ぐ。日本では5Gの周波数がまだキャリアに割り当てられていないものの、ドコモ、KDDI、ソフトバンクを含む世界の事業者と標準化に向けて連携しており、準備を整えていることを強調する。

MWC19のQualcommブースではOPPOが5Gスマホを実演

一方で鄧社長は、日本市場の難しさについて、「1年の経験を通して、日本市場は他の国と違うことに気付いた。消費の習慣や求めるレベルも高い。グローバルのやり方を日本に持ってきても通用しない」とも述べている。日本市場における品質やサービスの要求水準の高さは、多くのメーカーが直面してきた課題だが、OPPOも同じ壁にぶつかったといえそうだ。

スマホカメラ、次のトレンドは「望遠」に

そのOPPOが市場攻略にあたり、特に注力をしはじめたのが「カメラ」だ。その中でも、業界では次の進化ポイントとして「望遠」技術に注目が集まっている。

そもそもスマホはデジカメと違い本体が薄いため、搭載できるレンズに物理的な制約がある。このレンズの制約から、スマホのカメラはどうしても焦点距離の狭さが弱点になってしまっていた。そこで最近はスマホに複数のカメラを内蔵し、それぞれで広角や望遠を使い分けることで、この弱点を克服しようと進化している。

OPPOの「10倍ハイブリッドズーム」技術は、この弱点に対し異なるアプローチで挑む。プリズムを使って光を屈曲させるペリスコープ(屈曲光学)構造をカメラモジュールに採用することで、レンズを従来の垂直方向ではなく水平に配置できるようにした。これにより、薄型のスマホであっても、光学レンズでは従来不可能だった高倍率ズームが搭載できる。

光を曲げるペリスコープ構造を採用

ただ、35mm換算での焦点距離は16~160mmの10倍となっており、一般的なコンデジの感覚では5倍ズーム程度の性能だ。8.1倍以上はデジタル処理を組み合わせた「ハイブリッドズーム」としているなど、いくつか注意点はある。とは言え、これまでにない望遠レンズをスマホで扱えるのは面白い。

10倍ハイブリッドズームによる画角の違い

OPPOは既に報道陣に向けて、この10倍ハイブリッドズーム技術を搭載するスマホの開発デモ機を公開している。2019年の第2四半期には製品化する計画で、日本市場へも2019年中に投入する見込みだ。

10倍ハイブリッドズームのデモ機。5Gにも対応できるという

特にカジュアルなカメラ需要の受け皿としてスマホに押されがちなデジタルカメラだが、高倍率ズームはスマホには無い、デジカメに残された得意分野のひとつだった。だが望遠もスマホで十分撮れるとなれば、いよいよその優位性も危うくなる。今回のズーム技術は、デジカメ市場をもう一段縮小させてしまう可能性を秘めているのだ。

最大のライバルであるファーウェイも「HUAWEI P30」シリーズで望遠カメラを搭載するとみられており、今後は各メーカーが高倍率ズームで競い合うことは間違いなさそうだ。

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