世界シェア8%は次期中計に持ち越し、日産の成長を左右する市場とは

世界シェア8%は次期中計に持ち越し、日産の成長を左右する市場とは

2017.05.12

日産自動車が中期経営計画「日産パワー88」の最後の年にあたる2016年度の決算を発表した。6年間で営業利益率と世界シェアを共に8%まで引き上げるとした6年計画だったが、これらの目標は未達に終わり、次期中計へ持ち越しとなった。日産は今後の成長に向け、ある市場を重視している。

決算説明会に登壇した日産の西川廣人社長兼CEO

見方によっては達成の営業利益率8%

2つの8%を達成できるかが1つの焦点になった2016年度決算。まずは内容を見ておくと、グローバル販売台数は前年比3.7%増の562万6000台、売上高は同3.9%減の11兆7200億円、営業利益は6.4%減の7422億円という結果だった。

この数値でいくと、営業利益率は6.3%。日産の説明によると、為替影響を除外した場合の営業利益率は7.9%と、あと一歩で目標達成というところまで迫っていた。ちなみに上記の数値は「中国合弁会社持分法ベースの東証届出値」をもとにしているが、「中国合弁会社比例連結ベース」の数字をもとにして、為替影響を除外したうえで計算すると、営業利益率は8.3%となり、目標は達成しているそうだ。

シェア8%は次の6年間の宿題に

では、もう1つの目標であった世界シェアの達成度はどうだろうか。2016年度の全需はグローバルで9181万台だったのに対し、日産の販売台数は562万6000台。つまり世界シェアは6.1%で、目標とは1.9%の開きがあった。

決算説明会で日産の西川社長は、日産パワー88の振り返りとして、事業規模は3~4割の拡大を達成したとしつつも、世界シェア8%については「次の6年間で到達したい」と次期中計に持ち越す考えを示した。

日産パワー88を振り返ったスライド

シェア拡大に向け、西川社長が重視するのが中国市場だ。中国市場における日産のシェアは5%程度だが、これを8%まで伸ばすことができれば、世界シェア8%にも手が届くというのが西川社長の見立て。中国で存在感を増すため、日産は何をするのか。

世界最大の中国市場、ローカルブランドも成長

中国の自動車市場は世界最大の規模となっている。2016年(暦年)の全体需要は日産の集計で2688万台。米国の1749万台に比べても1000万台近く規模が大きい。

日産の中国事業を見てみると、2016年(暦年)の自動車販売台数は前年比8.4%増の135万5000台。「エクストレイル」「シルフィ」「キャッシュカイ」といった車種が好調で、その成長率は日本や北米などを抑えてトップとなるほど高い。

中国でも売れているという「エクストレイル」

ただし、中国の全需の伸びは2016年で対前年13.2%と「たいへん大きな伸び」(西川社長)を示しているため、結果的に、日産の中国におけるシェアは2015年の5.3%が2016年には5%へと低下している。販売台数の伸びが市場の成長レベルに追いついていない要因について、西川社長は「中国ブランドの勢い」が増している点を指摘した。

「エンジニアリングもクルマの品質も格段に上がっている」。これが西川社長のローカルブランドに対する見方だ。日産は中国に合弁会社の東風日産乗用車公司(東風日産)を持ち、ローカルブランド「ヴェヌーシア」を展開しているが、現地勢の勢いには追いつけていないという。

3つのブランドで巨大市場を開拓、EVも拡充へ

もちろん日産も手をこまぬいているわけではない。2016年12月にはヴェヌーシアからクロスオーバーSUV「T90」を発売。その結果として、2017年1~3月の中国における日産の販売台数は31万4000台と、前年同期に比べ5.3%の伸びを示している。全需の伸びは5.2%だったので、この3カ月については市場の成長を上回る伸び率を達成したわけだ。

ヴェヌーシアが中国の若者向けに発売した「T90」

日産としては、どちらかといえばロースペックなクルマをヴェヌーシアで販売し、ハイスペックなクルマを求める顧客には日産ブランドで訴求する構え。いずれ世界最大規模になるであろう中国のプレミアムカー市場ではインフィニティで勝負する。

中国ではエコカーの販売を促す「New Energy Vehicle(NEV)規制」が動き出そうとしているが、そのあたりについても、電気自動車(EV)のパイオニアである日産としては準備を進めている。すでにヴェヌーシアでは、小型の100%EV「e30」を展開しているが、2018年にも小型の廉価版EVを発売すべく仕込みを進めているそうだ。

画像はヴェヌーシアの「R30」。このクルマをベースとするEVがe30だ

世界最大の市場なので、どの自動車メーカーも中国には注目していると思うのだが、日本メーカーの決算会見を回ってみた感想としては、ここまではっきりと中国市場の攻略に意欲を示しているのは日産だけのような気がする。現地勢も力を増しているし、独フォルクスワーゲンなども同国で強力なライバルになると見られるが、この巨大市場で名をとどろかせることができれば、日産の成長は確実なものとなるだろう。

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

打倒iQOSに挑むプルーム・テックの戦い、世界市場も見据えたJTの新製品

2019.01.22

低温加熱式のJTがライバルと直接競合する高温加熱式に参入

専用リフィルも異なる3種類の製品で広範に網を張るプルーム・テック

海外市場でも兆し見えた加熱式たばこ、日本での成功がより重要に

日本たばこ産業(JT)が加熱式たばこの新製品、「プルーム・テック・プラス (Ploom TECH+)」「プルーム・エス (Ploom S)」の2製品を発表した。シェアトップのiQOSを追撃したいJTだが、ライバルに先行を許している今、どのような戦略を描いているのか。

JTが発表した加熱式たばこの新製品、プルーム・テック・プラス(左)とプルーム・エス

新たに高温加熱式に参入、ライバルと直接競合へ

新製品は、従来のプルーム・テックを改良したプルーム・テック・プラスと、シェアを争う「iQOS」(フィリップ・モリス)や「glo」(BAT)と同様の加熱方式を採用したプルーム・エスの2つ。iQOSとgloが高温加熱式であるのに対し、もともとプルーム・テックは低温加熱式と呼ばれる方式をとっていた。30度という低温で発生させた蒸気をたばこカプセルを通して吸うため、においが少ない一方、吸いごたえに乏しいともいわれていた。

低温加熱式で吸いごたえを追加したプルーム・テック・プラスと、高温加熱式のシェア奪取を狙ったプルーム・エスを投入

そこで、たばこ葉を増やすなどして吸いごたえを高めたのがプルーム・テック・プラスだ。その結果、本体が太く大きくなり、加熱温度も40度と少しだけ高くなったが、においの少なさはそのままに、吸いごたえをアップさせたことをアピールする。

プルーム・エスは高温加熱式を採用し、iQOSやgloと同様の吸いごたえを目指した。こうした高温加熱式は、たばこ葉を高温で蒸すことで蒸気を発生させるため、従来のたばことも異なる独特のにおいを発生させる。

JT副社長・たばこ事業本部長の岩井睦雄氏は、この独特の「におい」のせいでたばこの味わいに違和感を覚える喫煙者が多かったと話す。そのため、「満足度を高めるのは味わい」として、このにおいの低減に取り組んだという。

プルーム・エスでは、たばこ葉を熱する温度を200度に抑えた。これはiQOSの300度、gloの240度に比べて低く、これによって特有のにおいを抑えたという。

吸いごたえや加熱方式が異なる3製品をそろえる意味

JTは新製品投入後も既存製品の取り扱いを継続する。つまり、プルーム・テックのラインアップは3種類となる。iQOSも複数の製品があるが、こちらは機能の違いによって3種類に分けられており、プルーム・テックはそれに対して、吸いごたえや加熱方式によって異なる製品を用意したかっこうだ。

3つの製品を投入することで、選択肢を提供する

岩井副社長は「温度で選ぶ時代」と表現し、低温のプルーム・テック/プルーム・テック・プラスと、高温のプルーム・エスという選択肢によって「好みや生活環境、ライフステージの変化に合わせて、いつでも最適な選択ができる」ことを狙ったとしている。

たばこ事業本部長の岩井睦雄副社長

たばこ部分に互換性がないという問題はありそうだが、現在でも、においの少なさを重視して自宅ではプルーム・テックを吸いつつ、味わいを求めて喫煙所では高温加熱式の加熱式たばこ、と双方を使い分けている人が少なくない。そうしたユーザーに対して、「それぞれで求められるニーズを高いレベルで満たし、両方を提供するのが顧客満足度の最大化に繋がる」(岩井副社長)と判断し、製品開発に取り組んだ。

加熱式たばこ最大市場の日本から、海外市場を見据える

岩井副社長は新製品でiQOSからシェアを奪取し、「中長期的にはRRPカテゴリでもシェアナンバーワンを目指す」と意気込みを語る。

「RRP」とは「リスク低減製品」のこと。「喫煙にともなう健康へのリスクを低減させる可能性がある」と位置づけられる製品だ。

日本では法律上、液体にニコチンを含ませて販売することはできない。電子たばこは、このニコチンを含む液体を蒸気化させるため日本で販売できず、結果、加熱式たばこが普及したという背景もある。加熱式たばこの市場規模では日本が世界最大だが、iQOSが韓国や欧州の一部で販売を強化しており、グローバルでの市場拡大を狙っている。

JTは海外ではlogicブランドで電子たばこを販売している。海外での電子たばこ事業はありつつも、まずは製品の国内ラインナップを拡大して加熱式たばこのシェア拡大を図るとともに、紙巻きたばこを含むすべての製品の価値を向上させることで、市場の拡大に繋げたい考えだ。「日本での成功がグローバルでの成功につながる」と岩井副社長は強調する。

紙巻きたばことRRP製品の双方を拡充する
日本では加熱式、海外では電子たばこを提供中

紙巻きからの移行、数年以内に大きな山場

2018年は加熱式たばこが踊り場を迎えたと言われた。日本ではここ数年で急激に加熱式たばこの普及が進んだが、市場シェアが20%を越えたところでユーザー需要は一巡したとみられる。

ただ、プルーム・テックの全国販売の開始や、他社では直近のiQOSの新モデル投入などを経て、その動向から、需要の伸びは「足踏みしていたが、止まったわけではない」(岩井副社長)との認識にあるという。加えて、紙巻きたばこによる健康懸念の高まりや、オリンピックによる喫煙場所の規制といった外的要因もあり、「必ずシガレット(紙巻きたばこ)からRRPに移ってくる」(同)という見通しだ。

課題は、紙巻きたばことは異なり、デバイスを購入しなければならないというハードルの高さだ。一度購入した後、他社のデバイスへ移行しづらいという難題につながる。

他社の後追いとなった高温加熱式では、「差別化のポイントをしっかりと伝えていく」ことで買い替えを促進する。JTが主導する低温加熱式では、「若干下方修正したが、手応えも感じている」と岩井副社長は説明する。今後は製品の良さをアピールするために、喫煙者に直接説明をする営業スタイルを重視していく方針をとるそうだ。

JTは日本市場で紙巻き、加熱式のいずれでもシェアトップを目指す

JTは1社で複数の選択肢の製品を用意することで、消費者のニーズの受け皿を最大化しようと目論んでいる。この先にグローバルで展開する上で、ユーザーからどのような示唆が得られるのかを検証していき、海外での加熱式たばこの市場拡大にも乗り出していきたいと考えているようだ。

加熱式たばこは間もなく、国内市場シェアだけでなく、海外市場の争奪戦の行方も左右する正念場を迎える。

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

大手コンビニ3社、成人誌の販売中止を相次ぎ決定

2019.01.22

セブン、ローソンに続きファミマも成人誌を販売中止

インバウンドの増加、オリンピックの開催も影響か

コンビニ最大手のセブン-イレブンと業界3位のローソンが成人向け雑誌の販売中止を発表したのに続き、業界2位のファミリーマートも同様の方針を打ち出した。大手3社の足並みがそろい、日本国内のほとんどのコンビニ店頭から成人誌が消える。

国内のセブン-イレブン店舗数は2万店を超え、ローソンとファミマが1万5,000店前後でこれに続く。それぞれ今年の8月末までに取り扱いを原則中止するという。これまで一部店舗で成人誌の販売を中止していた例はあったが、今回は各社全店舗で取り扱いを中止する。業界では昨年1月から、ミニストップが他社に先駆けて全店で取り扱いを中止していた。

もともと諸外国にくらべ、女性や子どもの目につきやすいコンビニ店頭などに成人誌が置かれている日本のゾーニングの現状は特殊であるとの批判があった。また、インバウンドで訪日外国人が増え、この論調に拍車がかかっていたほか、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを控え、イメージ低下を防ぐ要請が強まっていたという背景がある。

コンビニでの成人誌の購買層は近年、高齢男性に偏るとともに売り上げの減少も顕著であったといい、ゾーニングの問題が取り扱い中止の大義名分になったという見方もある。ある出版関係者は、「一部では電子版などネット展開を強化している流れはあるが、今でもコンビニは重要な販路なので、相当な混乱があるだろう」と話す。どちらにせよ、日本の成人誌は岐路に立たされることになる。