タブレットに明日はあるのか - 縮小する市場に求められるもの

タブレットに明日はあるのか - 縮小する市場に求められるもの

2017.05.14

アップルが米国時間5月2日に発表した2017年第2四半期(1-3月)決算の中で、振るわなかったのはiPadのカテゴリだった。前年同期比12%減の890万台となり、13四半期連続での前年同期比割れという結果を続けている。

しかしそれでも、アップルはタブレット市場でのトップを堅持している。IDCが5月4日に発表した2017年第1四半期(1~3月)のタブレット市場動向によると、アップルのシェアは24.6%だった。2位のサムスンが16.5%、4位のアマゾンが6.0%、5位のレノボが5.7%だった。いずれのメーカーも、販売台数を減少させた。

トップ5の中では唯一、3位のファーウェイが前年同期比31.7%と成長を遂げたが、タブレット市場全体は前年比8.5%減と、市場が縮小している。

出典:IDC 2017年5月4日プレスリリースを基に編集部作成

「ラップトップ」と「デタッチャブル」への緩やかな移行

タブレットは、アップルのiPadが2010年に形成した市場だ。前述の通り減少を続けながらも、その市場のトップを走っているが、タブレット市場そのものが縮小傾向を続けている。その背景には、デバイスの多様化がある。

iPad(画像:アップルプレスサイトより)

タブレットは、まだまだスマートフォンのディスプレイが小さかった時代に、スマホで慣れた使い勝手で、コミュニケーションやゲームを楽しみ、より大画面でビデオ視聴や、生産性の向上、教育などの現場でも快適に使おう、という用途が与えられていた。

そうしたタブレットの「大画面」というメリットを失わせたのは、スマートフォンの進化だ。アップル自身、2015年に5.5インチのいわゆる「ファブレット」(スマートフォン+タブレット)サイズに属するiPhone 6 Plusを発売して成功を収め、最新のiPhoneではさらに画面サイズの拡大が見込まれる。

また、タブレットそのものの市場が、異なるスタイルのデバイスに脅かされている。世界最大のPC向けOSをコントロールするマイクロソフトが、タブレットとパソコンの中間的な存在としてSurfaceシリーズを提示し、PCのソフトウェアがタブレットで動くという状況を作り出した。

その後、マイクロソフトは、2015年にリリースしたSurface Bookで、ノートパソコン型とタブレット型を行き来できるディスプレイ取り外し可能なスタイル「デタッチャブル」デバイスを提案し、2017年には「ラップトップ」デバイスとなるSurface Laptopを発表した。

Surface Laptop(画像:マイクロソフトプレスサイトより)

また、「ラップトップ」分野では、Google Chromebookが、その価格の安さとキーボード付きでビジネスや教育分野での快適さを備え、大きく受け入れられた。米国の教育市場では特に顕著に受け入れられ、最新のデータではiPadがわずか11%のシェアを確保するに留まる中、Chromebookは58%ものシェアを占めるようになった

確かにタブレット市場はアップルが支配しているが、そもそも市場がタブレットから、デタッチャブルとラップトップへと移行しており、マイクロソフトとグーグルによるトレンドへと移ってしまったと指摘することができる。

アップルが解決しなければならない問題

アップルは2017年台2四半期決算のカンファレンスコールにおいて、iPadについて次のような認識を示した。「供給が逼迫する中で、890万台を売り上げることができた」というのだ。

裏を返せば、伸び悩んでいたのは、市場のニーズに合わせて製品を供給できていなかった点を示唆するものだ。実際にアップルは、2017年3月21日に、iPadのラインアップを見直している。

これまでのiPad Pro 12.9インチ・9.7インチモデルはそのまま残したが、7.9インチのiPad mini 2、9.7インチのiPad Air 2を生産終了とし、またiPad mini 4については128GBモデルのみをラインアップに残した。

その代わり、1世代前のiPad Airのデザインを採用した第5世代iPadを発表し、32GBのWi-Fiモデルで329ドルと、9.7インチモデルではこれまでで最も安い価格をつけた。

前述の需給問題とラインアップの整理、第5世代iPadの投入から考えられることは、「9.7インチの廉価版iPadにニーズが集まっており、これをしっかりと生産できる体制を整えた」ということだ。

第5世代iPad投入以前、399ドルで販売されていたiPad Air 2が最も安いタブレットだったが、実際に2017年に入る頃から、納期が8週から10週間となっており、需給のバランスが著しく悪い状態だった。例えば日本の4月の新学期に合わせてiPadを大量に導入したいと思って2月に発注しても、新学期までに間に合わないという状況になってしまっていた。

そうした機会損失が大きくなっている中で「890万台売り上げたのは良い結果だった」というのが、アップルの説明となる。今後、需給問題の改善から、iPadの販売台数の減少に歯止めをかけられるかどうか、注目していくべきだ。

タブレットというデバイスの位置づけ

アップルが需給問題を解決しても、タブレット市場を取り巻く大きな流れや、他のスタイルのデバイスとの関係性に変化が生じるわけではない。スマートフォンにより依存しながら、デタッチャブル、ラップトップといったスタイルのデバイスが重要度を増していくだろう。

アップルが需給問題の次に取り組まなければならないのは、タブレットを使う理由だ。

iPadは登場以来、メール、SNS、写真やビデオの視聴と編集、簡単な文書作成、といった一般的な用途を大きく変えるようなキラーアプリに巡り会っていない。そのため、日本で早くからiPad miniを導入した小学校では、2012年発売のデバイスが5年たっても、ビデオ編集を含め、まだまだ快適に利用できているという。

ある意味で、iPadは、非常に長寿命でパフォーマンスが落ちない、良くできすぎたデバイスなのだ。これは消費者にとっても、アップルが近年主張する環境・資源問題にとっても、非常に良いことだ。しかし決算書類の上では、買替え需要を喚起できずデバイス販売の低迷を招いている。

最新のタブレットを使う理由を作り出せなければ、今後も、良すぎるデバイスであるiPadの販売低迷は続いていくことになり、タブレット市場全体の縮小やメーカーの離脱が続いていくことになる。

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

根付き始めた「必ず座れる」通勤、 鉄道に続いてバス業界も熱視線

2018.11.19

座席指定の通勤電車から”通勤の高級化”の流れ?

ハイエンド通勤バスの実証実験を東急電鉄が実施

たまプラーザを舞台にした、日本初の郊外型MaaS

全席指定の通勤電車が首都圏の私鉄で運行され始めている。西武鉄道を主体に東急電鉄、東京地下鉄(東京メトロ)、横浜高速鉄道の各路線を乗り入れる「S-TRAIN」や、京王電鉄の「京王ライナー」などだ。座席指定ではなく、着席整理券による着席定員制の東武東上線の「TJライナー」もある。

帰宅時間に運行される京王ライナー

なぜ、私鉄各社がこうした通勤電車を運行し始めたのか。ラッシュを避けゆったり座ってオフィス街に移動できる利便性を提供するためだ。京王ライナーの場合、帰宅時間に下り方面に運行されるだけだが、これも「仕事で疲れているのに立って帰りたくない」という通勤需要に応えている。

S-TRAINやTJライナーの場合、休日には観光列車としての役割も果たす。S-TRAINはデートスポットとして注目される豊洲や、“食の街”として名をはせる横浜中華街を結んでいる。TJライナーは“小江戸”と呼ばれる川越や森林の多い憩いの場「森林公園」にアクセスできる。森林公園は今の時期、紅葉をライトアップするイベントが行われており、相当の集客がある。

ただ、どちらも平日はビジネスパーソンの脚となるという特徴を考えると、観光色の強い西武鉄道の「レッドアロー」や東武鉄道の「スペーシア」とは性格を異にする。

ハイグレード通勤バスでゆったりと

こうした“通勤の高級化”が、バスにも波及しそうだ。

東急電鉄は「ハイグレード通勤バス」の実証実験を2019年1~2月に行うと発表した。

ハイグレード通勤バスの外観(写真提供:東急電鉄)

ハイグレード通勤バスは客席が24席と広々としており、しかもかなり深めにリクライニング可能。Wi-Fi対応、USB、ACアダプタも装備し、パソコンなどが置けるテーブルも用意されている。そして、長距離バスのようにトイレまで備えているのだ。

座席は3列で、シート数は24席とゆったりしている(写真提供:東急電鉄)
かなり倒れるリクライニングシート(写真提供:東急電鉄)
テーブルにPCを置いて作業可能。写真左隅にACコンセントも確認できる(写真:東急電鉄)
通勤用バスながら、トイレ洗面台を完備(写真提供:東急電鉄)

 以前、両備グループの中国バスが運用する「ドリームスリーパー」という、超高級バスを拝見したことがある。しかもこちらは、さらに座席数が少ない14席で、個室タイプだ。とはいえ、ドリームスリーパーは東京~大阪や東京~広島を結ぶ長距離高速路線バス。睡眠を取ることが必須になると思うので、個室という選択肢になったのだろう。

一方、ハイグレード通勤バスは、読んで字のごとく“通勤”という言葉が入っている。つまり、長距離高速路線バスであるドリームスリーパーとは、まったく性格が異なる。

さて、今回の実証実験では、実験区間にたまプラーザから渋谷が選択された。このたまプラーザ駅がある東急田園都市線は、首都圏屈指の混雑路線だ。二子玉川や三軒茶屋からも乗客があり、朝の通勤ラッシュはすさまじいと聞く。国土交通省によると、ラッシュ時は185%の乗車率であるらしい。この田園都市線の混雑を少しでも緩和しようと、ハイグレード通勤バスの実証実験を開始する意図がみえる。

ただ、田園都市線の混雑は、東急電鉄そのものにも原因がある。というのも、東急の本拠である渋谷の再開発を急激に推し進めたからだ。セルリアンタワーや渋谷ヒカリエ、そして渋谷ストリームも開業した。どれもオフィス、商業施設、ホテルといった施設からなる複合ビル。オフィスが増えれば通勤客が増えるし、商業施設も朝の仕込みなどでラッシュ時に通う場合も十分に考えられる。そうした混雑を緩和するために、今回ハイグレード通勤バスを実験し、本サービスにつなげたいのだろう。

一方、東急電鉄はハイグレード通勤バスだけでなく、あわせてたまプラーザでオンデマンドバスやパーソナルモビリティ、マンション内カーシェアリングの実証実験も行う。オンデマンドバスはスマートフォンで乗車予約を行い、病院や公共施設への移動手段になる。パーソナルモビリティは、坂道や細い道路を移動しやすく買い物などに向く。マンション内カーシェアリングは、余っているクルマのリソースを同じマンション内で共有しようというものだ。

東急電鉄これらを日本初の「郊外型 MaaS」(Mobility as a Service:利用者の目的や嗜好に応じて最適な移動手段を提供すること)の実験だとしている。

このMaaSという考え方には、あのトヨタ自動車も積極的だ。トヨタは東京2020オリンピック・パラリンピックを舞台に「Mobility for All」を実現したい考え。パーソナルモビリティもこの施策に組み込まれる。

トヨタが実用化を進める「i-ROAD」(写真提供:トヨタ自動車)

 東急電鉄は実証実験でどのような結果を得るのか。“地獄”とも表現される通勤ラッシュの課題や少子高齢化への対応、高齢者の移動手段確保など、MaaSが貢献できる問題解決はさまざまだ。たまプラーザ~渋谷という、屈指の住宅街と屈指のオフィス街を結ぶこの取り組みが、“住みよい街づくり”にどのように関わっていくのか、楽しみだ。

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

カレー沢薫の時流漂流 第16回

文明の利器を使ったIT露出狂「AirDrop痴漢」

2018.11.19

漫画家・コラムニスト カレー沢薫さんの社会派連載!

第16回は、Apple製品ユーザーを襲う「AirDrop痴漢」について

我々の生活はありとあらゆるものが電子化し、飛躍的に便利になった。

しかし、あらゆるものの中には当然「犯罪」も含まれ、さらに「痴漢」まで含まれるようになってしまったのだ。

皆さんはiPhone、iPad、Macなどを使っているだろうか。そして満員電車など人が密集する場所へ行く機会が多かったりするだろうか?

上記に当てはまる人、特に女性は注意が必要である。私はと言えば、スマホはアソドロイド、パソコンはウィソドウズ、人ゴミどころか人がいるところにさえ滅多にいかないので鉄壁と言える。

「IT露出狂」の出現

最近、Apple製品を使用した「AirDrop痴漢」なるものが現れているらしい。「痴漢も電子化の時代、わざわざ相手の前に立って局部を見せるような奴は時代遅れですよ」と「AirDrop痴漢」がろくろを回すポーズで語っているかは知らないが、当然褒められたことではない。

「AirDrop」とは、Apple製品間でデータをワイヤレスで送り合うことができる機能である。自分のMacからiPhoneにデータを送ったり、iPhone同士で友人と写真を共有したりできて便利なものだ。しかし、「AirDrop」は登録いらずで簡単な一方、半径9メートル以内にいる「AirDrop」をonにしている相手になら、誰にでもデータを送れてしまうのである。

これを使って画像を共有しようとすると、「Petagine's_iPhone」など、近くにあるApple製品の端末名が表示される。ペタジーニのiPhoneなら止めておこうと思うかもしれないが、ここで「Danmitsu's_iPhone」とか、明らかに女性と思われ、しかも何かエロスを感じる(※個人の感想です)名前を見つけた場合、その端末にわいせつ画像などを送り付ける、というのが「AirDrop痴漢」の概要である。

相手に直接手を触れるわけではないので、人が多い場所だと送ってきた相手の特定はかなり難しい。被害者はわいせつ画像を見せられた不快感と、周りにそういう人間がいるという恐怖感を味わうことになり、加害者はそれを見て楽しむという、いわば「IT露出狂」だ。

便利な機能が出来るたびに、それを使った犯罪が現れるのが世の中というものだが、これも「AirDrop」の機能を悪い意味で上手く使った犯罪である。その知恵を他の事に生かせなかった上に、そういった行為を「楽しい」と思うセンスに生まれて来てしまったことは二重に不幸なことだ。

被害者は女性が多いが、男性でも被害を受けることがあり、グロ画像を送られてきたという被害もある。

また、俳優の加藤諒さんは新幹線に乗っていたところ、車内で携帯をいじっている自分の後ろ姿の写真が「AirDrop」に送られてきたと言う。わいせつ画像でなくても、「お前のことを見ているぞ」というストーカー的恐怖感を相手に与えることも可能なのだ。

被害と「誤爆」を防ぐシンプルな解決法

「AirDrop痴漢」を防ぐ手立てはないのか、というと意外と簡単で、平素は「AirDrop」の設定を「受信しない」にしておき、使う時だけonにすれば良い。

そのほか、名前や性別を特定されないように、「Gorira's_iPhone」など、ユーザーネームを変更しておくのも効果的だ。

画像を共有する相手などいないという人間は、Apple製品を買ったらまず「AirDrop」機能を切るぐらいでもいいかもしれない。何故なら、この「AirDrop痴漢」は知らず知らずのうちに加害者になる可能性もあるからだ。

恋人に送るはずだった語尾が「ぞえ♪」のLINEを上司に送ってしまったり、ツイッターのアカウント切り替えを忘れて美容垢に推しカプがどれだけ尊いか語ってしまったりするような「誤爆」が「AirDrop」でも起こるのである。

しかも、LINEなら登録してある相手にしか送らないだろうし、SNSならある程度他人が読むことを想定して投稿するだろうが、「AirDrop」の場合、半径9メートル以内にいる赤の他人に、1人で楽しむためだけのお宝画像を送ってしまうという事態になりかねないのだ。受信してしまった方も不幸だが、送った方もある意味それ以上不幸である。

このように、「AirDrop」は便利だが、意図せず自分の性癖を含む個人情報を流出させてしまう恐れもあるため、使う時だけonにするのが今のところ一番良いかと思われる。

ちなみに、この「AirDrop痴漢」は犯罪にならないかというと、もちろんそんなことはない。わいせつ画像を送るのは「猥褻物頒布罪」になり得るし、わいせつでなくても相手が不快に思う画像を送り付けるのは「迷惑行為防止条例」違反になる場合がある。

実際、電車内で「AirDrop痴漢」を80件以上繰り返したという男が書類送検されたという。送信者が特定しづらいと言っても「本気を出せば特定できるしバッチリ逮捕もされる」ということはすでに実証されているので、もしイタズラ感覚でやっている人間がいるなら、逮捕されない内に今すぐやめた方がいい。

このような使い方は、Appleが想定していなかったことだろう。つまり、最初に考え着いた人間は、アイディア力にすぐれている。

その力を犯罪以外に使えなかったのは、重ね重ね残念である。